未来
これは童話といえるのか?
「こんにちは。こんな所でどうしたの?」
真っ白な閉ざされた、寒くて、寂しい世界。ひとりぼっちの私に声をかけてきたのは鏡に映った私だった。
「その通り。私はあなた、あなたは私」
口に出していない、質問ですらないただの感想に返事を返してくる彼女は、私と違って笑っている。しかし、私には彼女が怒っているように感じられる。
「またまた正解。私はあなたの心。だからあなたの考えがわかるし、あなたには私のことがわからない。理解しようとしていないことを理解出来るはずがない。だから私は伝えに来た。向き合いに来た」
伝えに来たと彼女は言った。彼女は私の心だと。だから理解してしまう。彼女の怒りの原因を。
「そう、あなたの思っているように、私はあなたに、私と向き合わないあなたに怒りを持っている。でもそれは、あなたが自分に持つ怒り。私というきっかけがあったにせよ、あなたはそれを自覚した」
それでも、私の意志は弱いから、後押しが欲しい。たとえそれが、自分自身からのものであったとしても。
「だったらあなたに応えてあげる。背中を押してあげる。あなたが前を進めるように、あなたが未来を見据えるように。そして見続けてあげる。決して立ち止まらないように。だから頑張って?自分の中に閉じこもっていても、良くなることはないからね」
YES.了解。少しずつでも私は進むよ。
「そうと決まれば此処から出なきゃね。いつまでも此処に居たらみんなに置いて行かれるよ」
それは困るね。私はみんなと一緒に行きたいんだから。ありがとう、思い出させてくれて。
「どういたしまして、“わたし”。迷ったときには相談しなよ。私じゃなくても、聞いてくれる人はたくさんいるでしょ?」
わかってるよ。これからもよろしくね“わたし”。
一歩進むと、此処はもう真っ白ではなく、少しずつだが色が芽生え始めていた。
いつだって、自分の行動を決めるのは自分自身。だから考えることを止めない。自分の行きたい場所にたどり着くために、迷っても、歩みを止めることのないように。まずはそれに必要なものを揃えよう。
今まで止まっていた分駆け足で、みんなの隣を歩けるように、自分自身を誇れるように。