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捨てられたぬくもり

…ここはどこなんだろう


…寒い、なぁ…。


…ぼく、一人になったの??




ぼくは、どうしたらいいの?









ぼくの名前は、とめ。

ぼくの大好きな、おばあちゃんがつけてくれたんだ。



あのね



おばあちゃんはぼくを暖かい気持ちにしてくれるの。

ぎゅって、抱きしめてくれるんだよ。


でね、おばあちゃんと毎日一緒におねんねするの。おばあちゃんと一緒におねんねするととっても暖かいんだ。

ぼく、おばあちゃんにいつも暖かくしてもらってたんだ。



だけどね、ぼく、今はおばあちゃんに暖かくしてもらえない。


さむいよ、おばあちゃん。



ぼく、しらないおばさんにね。


ずっとずっと遠い

しらない所に、つれていかれて

しらない所に置いてけぼりにされたんだ。


おばあちゃん、ぼくどうして

こんな所に置いてきぼりにされたの??

おばあちゃん、ぼく、おばあちゃんにいけない事した?


だからぼくを、捨てたの…??




ぼく、直すから。

だから、おばあちゃん。



ぼく、おばあちゃんに会いたいよ

ぼく、暖かくしてもらいたいよ


ぼく、一人はいやだよ










ぼく、おばあちゃんに会いたい。

だから、歩くよ。










「汚い犬だなぁ」


学校帰りの少年が、道の片隅を弱々しく歩く柴犬を見つけた。

少年は、柴犬に向かいそんな言葉を吐き捨てた。

柴犬は、くぅ〜んと助けを求めるように少年を見つめる。


「…あっちいけ!!」


少年は、足元に転がる小石を柴犬に向かって蹴り飛ばした。




ぼくは。


嫌われてるの…??



柴犬は、よろよろと、

また歩きだした。



ぼくが今どこにいるか

ぼくもわからない。


ぼく、生きているの??

それさえもわからない。




おばあちゃん、ぼくの事覚えてるのかな??

忘れてるのかな??


でもぼく、おばあちゃんに忘れられていても

会いたいよ。


会いたい


会いたい



だってぼくを暖かくしてくれる

大好きなおばあちゃんだもの






知らない道


知らない人


知らない匂い


知らない空




全部知らない。





『お前も捨てられたのか』


『…だれ?』


『おれはサスライのケンさ。』


『ケン…??』


『そうさ。お前どこから来た?』

『おばあちゃんの所から…』


『おばあちゃん?だれだよそいつ??強ぇーのか?』


『暖かい人…』


『暖かい??へぇ〜変わった奴だな!!』


『それに優しいの』


『ふ〜ん』


『ケンは、どこから来たの??』


柴犬のとめに、友達ができた。

雑種のケンだ。



2人はすぐに互いに打ち解けた。



『な〜、とめ。』


『なあに??』


『お前、どこ行くんだ??』


『おばあちゃんの所だよ』


『そのおばあちゃんて奴、どこにいんだ??』



チクチク…

ムネが痛くなった。




『……わかんない』






おばあちゃん、ぼくばかだから


おばあちゃんのいる所、わからないよ。


おばあちゃん

ばかって

ばかだね。






『…よおしっ!!とめ!!』


『なに??』


『俺がそのおばあちゃんの所に連れて行ってやんよ!』


『本当に…??』


『おう!!』


『どこかわかるの??』


『……さぁ』


『…ならムリだよ…行けないよ』

『でも!!歩いていればきっと会えるさ』










歩いていれば…

きっと…







『ありがとう、ケン』






2人は走りだした。

知らない道を、知らない空を

知らない匂いを


探りながら、2人で。







ねぇ、おばあちゃん。



ぼく、絶対会いにいくよ。


だから待っててね





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