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51「世界を記し続ける者」

超説明回&ご都合主義です。


あらかじめご了承ください。




「そうだな……話す時か。とりあえずはここから移動しないか?」


俺は口を開き、移動を促す。


それぞれの顔に浮かぶのは困惑と期待が入り混じったようなもの。


しばらく足音だけが響き、視界が開ける。


「あ……」


それは誰の声だったのか、見れば聖女像あたりを覆っていた光が消えるところだった。


結界が効果時間を迎えたのだ。


空気中に光の欠片が舞い、不思議な光景を生み出していた。


誰とでもいうでもなく、聖女像のそばの椅子に座り、息を吐く。


「実は老け顔で10代なんだ、は無しの方向で」


「うぐっ」


口に出すべく息を整えたところでジェームズからの先手。


思わずうめいて彼のほうを向くが、その表情は硬くは無く、

どちらかというと何が飛び出すか楽しみな様子だ。


(仕方が無い。わかってる範囲で良いか)


異世界から来ました、というのは無しだろう。


ただでさえ厄介だし、自分が本当にそうなのかもわからない。


「俺自身もまだわかってないことがほとんどだけどそれでよければ」


そう前置きして、俺は語る。









「古代人……か」


「あくまで俺の記憶が正しければ、だけどな」


一番先に口を開いたイリスへと俺は答える。


結局、今から1500年以上前から何かが原因でこの時代に来たようだということにした。


「少なくとも、あいつらは全力で狙ってくるわね。色々な意味で」


「多分、ね。今度は負けないよ~」


姉妹はどこか違う答えを返し……。


「すっげえ! 今度何かくr イテッ」


「言うと思った! もう、いつも自分で道は切り開くんだ!っていってるのに」


事の大きさを感じているのか、どこか無理した様子のクレイとコーラル。


「いや、聖剣くれ!とじゃなきゃたぶん大丈夫だけどさ……」


思わず俺はそうつぶやき、ジェームズへと向き直る。


「そういうわけさ。一緒にいると厄介ごとが増えるかもな」


そういって、わざとらしく肩をすくめる。


本意ではないが、事実、俺の存在が不用意に表に出ればそれは戦争すら呼びかねない。


「おかしいな。俺の気のせいか? 既に厄介ごとばかりだと思うんだが」


その言葉に姿勢を戻すと、ジェームズは続けて何をいまさら、と返してきた。


「それで、君はこれからどうするんだ? 世界を征服したいならそうしてるだろうし、

 隠居したいならそうしてるだろう。私としては研究が進めばそれが一番なんだが」


「最初はわけがわからなかったさ。今は、できれば今を生きる人たちの力になれればと思ってる。

 世界を飲み込む何かがあるなら、それを凌ぐ力を持った英雄に会えればともね。

 いざとなればその手助けができればいいさ、こうしてな」


どこか1番冷静なイリスへと、俺は答え、おもむろにアイテムボックスの中からとある指輪を取り出す。


瞬間、空気が変わったのがその場にいる全員がわかったはずだ。


そういう俺自身も、まさかここまでの影響があるとは思っていなかったが。


取り出したのはメイン装備候補となる1つ。


火属性攻撃を物理、魔法問わず80%カットする効果を持った指輪。


代償は発動一回ごとの魔力消費。

ついでに装備してから効果が出るまでは1日かかる。


それでもコーラルレベルであれば実用に耐えうる程度の消費だ。


チョコ菓子より一回り大きいほどの大き目のルビーのような宝石を、

3匹のサラマンダーを模した台座が固定し、

宝石部分は常に揺らめいて、中に封じられた何かを表現している。


その場に漂うオーラは物語で主要人物が宣誓を行う直前のような沈黙を生み出す。


「だけど、もっと世界を見たいと思っている。俺は今の世界の事を何も知らない。

 ドワーフやエルフのような亜人にも協力すべきなのかもしれないし、

 意外と何も起きていないかもしれないからな」


俺は指輪をしまいこみ、皆の顔を見る。


「……いいんじゃないかな。俺も、もっと大きくなりたいと思ってるし」


おもむろに口を開いたのはクレイだった。


キラキラと、若さで満たされた瞳が力強く俺を見つめる。


(ああ……懐かしい)


俺はその瞳を見て、いつかの記憶を掘り起こす。


ゲームへの楽しみ、やりたいことへの情熱。


全てが入り混じった、わくわくとした感覚。


それはあらゆる困難への原動力になる。


「よく言った。クレイ、その意気だ」


ジェームズは笑い、勢いよく少年の背中を豪快にたたく。


横でコーラルも笑い、頷いている。


「ファクト、心配しなくていい。みんな、半分は君の事をわかった上でこうしているし、

 半分は単純に事が大きすぎて横においているんだ。君の事を知ったからと、

 関係を無かったことにしたくない、そういうことさ」


その様子に呆けていたのか、横からのイリスの声に俺は正気を取り戻す。


「そういう……ものか?」


勿論、これはここにいる面々がその意味では特殊なのだとはわかっている。


ほとんどの人は話を信じないだろうし、ひどければ人外扱いだろう。


それこそ、つかまる事だって考えられる。


どこぞの国が総力で自分を手に入れようとする事だってありえるだろう。


色々と積み上げていかなくてはならない。


「しばらくは大きな戦いに顔を出しては少し目立って、アレ? あいつ……。ってのがいいんじゃないかしら」


『それはいい案ですね。不幸にも、今の世界には争いはかなり満ちてるでしょうね』


キャニーに答えたのは俺ではなく、ランタンもどきに入ったままの精霊だった。


その場の視線が精霊のほうを向く。


『……とりあえず、話は済んだも同然なのでしょう? ファクト、

 その聖女像を彼らに使わせてあげなさい』


力が封じられているとはいえ、揺らめく光はまだ黒い彼女?がその視線を聖女像に向ける。


「おっと、そうだったな。その板の部分でこの像に祈ってみてくれ」


俺は椅子から立ち上がり、素材の違う部分を指差す。


ジェームズたちは何のことだかわからない様子だったが、

意味が無いことは無い、と判断したのかおもむろに祈りをささげはじめる。


最初に光ったジェームズは、その感覚を確かめるように

なにやらポーズをとっている。


「なるほどな。いっそのことこの辺りを砦にして、国の訓練施設でもいいかもしれん」


自分の事を把握するのも一流の冒険者の素質とでも言おうか、

彼は自分の何が変化したかをおおよそ掴んでいるようだった。


「途中で見つけた物と、これを報告しておこうかなと考えている」


「うむ。そのときはぜひとも研究人員に加えてほしいものだ」


そう答えるイリスは祈りをささげるつもりはないようで、

ペタペタと聖女像の周りをチェックしていた。


続けてクレイ、コーラルと祈りをささげ、それぞれに光に包まれる。


「おや? これは何だ?」


「ん? 何か隠してあったのか?」


声を上げたイリスのそばへと歩み寄ると、小物入れ程の空間。


中にあったのは金属製の輪。


一瞬腕輪かとも思ったが、装飾からはそんな感じではない。


何かがはめ込めそうな?


「持ち帰って調べましょうか」


背中からかかるコーラルの声に頷き、連れ立って街に戻ることにした。


『わたし、ついていってもいいのかしら?』


余裕が出てきたのか、精霊の声は小さな鈴を転がすような、

耳に気持ち良い声となっていた。


「無論! 貴重な研究対象……冗談だよ」


背中に例の遺物を重そうに抱えながらイリスはそういって歩き出す。


「そういえば、途中は何もいなかったのか?」


「残骸はあったけどよ、動いてる奴はいなかったぜ」


ジェームズの横を歩きながら聞いてみるが、帰ってきたのはそんな答えだった。


『昔はここにくる人間は、相応に強かった。そう、皆ね。

 だから途中の魔法生物とでも言うべき彼らはただの儀礼でしかないのです』


歩くたびにゆれるランタンの中で、精霊はそういってどこか懐かしむように言葉をつむぐ。


帰り道、何かが出てくる様子も無く、順調に進む中、

精霊の語りは続く。


『貴方達がどこからこの空間に来たかはわからないですけれども、

 間違いなく、元の場所の近くではありません。ここは、世界にいくつも入り口があるものですから』


「貴女があの場所にいたのは転送という手段を使わず、直接下にもぐってきた結果ということですか?」


ランタンを覗き込むようにコーラルがそういって精霊を見つめる。


『ええ、下にあるのはわかっていたのだけれど、深さは間違えましたね。

 もっと下だったらよかったかしら?』


「もしそうならこの出会いも無かった。それはつまらないな」


ふふんと、鼻息荒くイリスはそういって無駄にポーズをとる。


そうこうしているうちに行きと同じポールが見えてくる。


そこからは特に何もなく、俺は何日か振りに空の下に出る。


「あーーっ! 天井が無いっていいな!」


年甲斐?もなく俺は叫び、思い切りのびをする。


勿論、地下も背を伸ばすぐらいの高さはあったが圧迫感が違う。


それは皆もわかっているようで、笑いながら俺を見ている。


止めてあったそれぞれの馬に乗って、時間がすぎれば野営の時間だ。


俺は思った以上に疲れていたのか、食事の後はすぐに横になってしまった。








「ん……」


パチパチと薪のはじける音。


目を開けば、見張りなのか、ジェームズが1人起きていた。


「まだ夜明けまで時間はある。寝直したらどうだ」


「いや、少し歩いてくるよ」


俺に気がついたジェームズに答え、少し重い体を起こして立ち上がる。


空は高く、満天の星空だ。


あの星達のどこかには生命がいるのだろうか?


もしかしたらここは惑星の1つで、

地球と同じ時間を過ごしているのかもしれない。


そんな考えすら浮かぶ星の光を見ながら、俺は手足のコリをとるように軽く動かす。


「そうか。気をつけてな」


そういって薪を足すジェームズに頷き、

なぜかこちらを見ている精霊をランタンごと抱えて歩き出す。


目的地はすぐそばにある小川だ。








『静かですね』


「ああ……」


俺は精霊に答えながら、ぼんやりと様々な考えを浮かべては消していた。


ついに話してしまったこと。


これからの悩み。


そのほかだ。


まずは目の前の精霊の対処ではあるのだが。


『私が何をどう知ってるか、聞きたい顔をしてますね』


「まあな。ここはどこなのか、俺は誰なのか、疑問は尽きないさ」


答えて、草原に寝転がる。


耳には小川の小さな音。


涼しい風が体をなでる。


『この世界が本物で、システムの影響はどこにも無い、というのは間違いないですよ』


「!? 今、なんて?」


何気ないようにつむがれた精霊の言葉に俺は飛び起きる。


『わたしには、貴方の知っている世界と、正しく時間が流れたこの世界と、2つの記憶があります』


「君は、俺と元が同じなのか?」


恐る恐る口に出すと、精霊は頷いた。


『この世界は現実であって、現実ではない。詳しい話は省きますし、意味がありませんが、

 この世界では貴方は貴方でしかなく、別の貴方ではない。わたしもそうですが』


世界も、そこにいる存在も唯一無二、ではないのだという。


『わたしに何かをした存在はこの世界だけのもの。それは間違いないですね。

 いうなればボスクラスなんでしょう。1人とは限りませんが』


自分を覆う黒い光を悩ましげに見ながら、精霊は語る。


『わたしという存在が貴方と同じ時間にいたとき、見聞きしたものは記憶として知っています。

 ですが、それだけです。今の世界の辞書、というわけではありませんから』


と、そこで精霊はなにやら不機嫌そうにこちらを見る。


『というか、いつまで衝撃を受けているんでしょうか?』


「いや、受けるだろ。要は、俺の正体を知ってるわけだろう?」


言葉にこもった感情が変わってきた精霊に余計に驚きながら、俺はなんとかそう答える。


頭のどこかで何かがひっかかりながらも、答えが出てこない。


『知ってるも何も、まだ思い出さない?』


とうとう口調まで変わった。


小さなほっぺをぷうと膨らませ、なにやら覚えのある身振りで俺をしかるようににらんでくる。


(ん? んんん?)


それは俺の脳みそを刺激し、何かが駆け巡る。


だが……。


「いやいや、それはない。精霊じゃなかったろ」


『まあ、他の姿持ってたしね? ほら、早く出しなさいよアレ』


アレ?


いや、目の前の存在が精霊じゃなく、アイツだというならそれらしいものがあるが。


「いや、だって。ヘルプのマスコットだったじゃないか、ユーミって」


そう、ランタンの中での独特のアクションはMDで各種ヘルプの際に登場し、

案内をしてくれるマスコットキャラのものだった。


途中、新要素が加わるたびに悪ノリともいえる解説は増え、

ついには専用クエストまで用意された。


その姿は3頭身ほどのウサギの着ぐるみ幼女で、

一定のファンもいたはずだ。


ちゃんと全てのヘルプを確認し、専用クエストをこなし、あれやこれやとすると

認定証とでもいうべきアイテムをもらえた。


アイテムボックスの隅にあるそれを取り出し、実体化する。


月明かりに照らされるそれは、小さなペンダント。


特にボーナスも無く、ただ単にコレクターとしての欲求を満たすだけだったもの。


――世界の辞書


石の部分に開いた本の絵が刻まれたシンプルなものだ。


特別魔力が込められているわけでもない。


だが、どこか不思議と目の前のランタンに吸い寄せられるような感覚がある。


おもむろにランタンの蓋をあけると、ペンダントを放り込んだ。


瞬間、世界が揺らぐ。


ペンダントは精霊、ユーミへと吸い込まれ、代わりに黒い光がその体からはじけるように飛び出した。


『我は世界の辞書にしてこの世界を記し続ける者。今なら、何の問題もない!』


勇ましくユーミは叫び、手を振るうともやのような光は掻き消えた。


あとに残るのは、夜と小川の音。


「終わった……のか?」


『ええ、今はね。とりあえず、ファクトのことは知ってるけど、元の世界のことは知らない。

 MDのことはかなり、この世界のことはそこそこ知ってる。それだけ覚えておいて』


ウィンク1つ、ふわりとユーミは精霊の姿のままで俺の肩に乗る。


「一緒に、旅してくれるか?」


『ええ、面白いじゃない。新クエストみたいで、ね』


まずはジェームズにどう説明したものか。


そんな悩みと共に俺はユーミと共にキャンプ地点に戻るのだった。



メイン部分だけで言えば半分になります。

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