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46「掘って進んでまた掘って-1」

ちょっとギャグっぽくまざっていく・・・・・・かも?

遺跡やダンジョンといえば何を思い浮かべるだろうか?


古代建築の塊のような廃墟?


禍々しいオーラを放つ古城?


それとも……空に浮かぶ大陸?


だが、目の前にあるのはどちらでもなかった。





「埋まってるな」


俺は一人、誰もいない場所でつぶやいた。


目の前には確かに洞窟だったであろう痕跡は見て取れるが、

細かくなった瓦礫が土砂のようになり、その上へ草木が生い茂っている。


かろうじて穴の上の方は大きな瓦礫が積み重なっているだけなので、

ねずみぐらいなら通れそうだが、人は無理そうだ。


(さてと……?)


俺は目の前の問題への対処を考えながら、出発の時を思い出す。







フィルとの面談の後、とりあえずはとガイストールに帰還した俺。


というのも、さっそくとばかりに調査を依頼されたのである。


そのダンジョン(仮)の情報をキロンと相談した結果は、

あちこちに行って来い、ということだった。


まだ見ぬ古代の武具だとか名品が手に入るかもしれないほうが、

工房的にも役立つだろうという判断だった。


そんなこんなで決まった最初の調査先へは、

襲撃のあった街から東へと馬で急いで数日。


とある山のふもとにそのダンジョンはあったのだという。


あった、というのはここ50年は情報がなく、

過去にそれらしいものがあったというだけなのだから頼りない話だ。


周囲の環境に危険なものはなく、出没するモンスターも

散発的な獣の類で、危険もあまりない。


街道からも大きく離れているので訪れる人もおらず、

冒険者としても何も旨みがない、あるいは誰かも目の前の状況に

かつてのダンジョンが埋まった事を悟り、興味をなくしたのだろう。


今回もあくまで調査で、探索と攻略までは頼まれていない。


これは俺の勝手な想像だが、恐らくはフィルもダンジョンとして意味がないことは

情報としては掴んでいる。


俺に、何かを期待しているのだろう。


(何もなかったです、と帰るのもなんだし、頑張りますかね)


俺は考えをまとめると、適当なところに馬を止め、

念のために魔物避けとなりそうなアイテムを装備させて一人歩き出す。


ちなみに1人の理由は、身軽であるということと、

今回の対象が、人数がいても意味がないという評判の場所だからである。


儲けになるかもわからないのに、何人も連れて行くわけにはいかないのだ。







そして、今目の前には崩れた瓦礫に埋もれた穴がある。


(まずは小高い丘のようになっているこの場所がどうなっているかを確かめねば)


俺は懐からロープを取り出し、近くの大き目の木に登るべく準備する。


数分後、木の上に到着した俺の視線の先には目立った穴もない様子の丘。


「仮にダンジョンだったとして、空気はどうしてるんだ?」


ここに限らず、入り口は1つだけという洞窟にはいつも疑問を覚える。


確か現実世界での本などでは、奥に行くほどガスがたまっていたり、

酸素の問題があるので生物が少なかったりすると読んだことがある。


MDではゲームだから、とあまり気にしなかったがここは

ゲームそのものではない。


状態異常に注意しつつ、無理のない探索が必要になることだろう。


一通り上から見た限りでは入り口は見当たらない。


変な崩落や、怪しい場所が特にないのは良いことといえば良いことだ。


「掘るしか、ないか」


俺は覚悟を決め、元入り口の前に立つと鉱脈探知(マテリアルサーチ)を実行する。


反応の密度から、正面5メートルは瓦礫で埋まってるように見える。


(道を作るのは、これでいっか)


俺は色々と思い浮かべながら、アイテムボックスから叩き付けても問題なさそうな、

ハンマーの類を1本取り出す。


威力は普通だが、この類の武装は

オブジェクトの破壊など、副次的な効果を持つことが多い。


斧で木を切るようなものだ。


今回はいきなり瓦礫を撤去するより、まずは砕くことにしたのだった。


念のため、手前のほうに零れ落ちている適当な石を相手にしようと

そちらに目にしたところで、俺は首をかしげた。


「何かの……像?」


瓦礫の1つを手に取ると、どうもただの石というより人の手が入ったように思えたのだ。


ふと入り口をふさいでいるように見える瓦礫を見渡すと、

いくらかは明らかに異質なものが混ざっている。


「ダンジョンの目印のような何か像でもあったか?」


瓦礫の中から像だったものだけを選ぶのはどう考えても無理なので、

俺はあきらめて、改めて適当な瓦礫の1つにハンマーを振り下ろす。


「いける、な」


良い音と共に、瓦礫は投擲に手ごろそうな大きさへと砕け散った。


再度の崩落に注意しながら、俺は手前から次々と大きな石へと

ハンマーを繰り出し、ある程度めどがついたところで

ステータスを活かして丸ごとどかしたり、あるいは

スキルで作り出した盾を、ザルのように使って周囲にかき出していく。


一応、像だったであろうものは出来るだけ回避しつつ、

それでも数もあり、大きさも巨大な瓦礫と格闘することしばし。


どれだけの時間がたったのか、俺の前にはなんとかしゃがめば

人が一人、通れそうな空間が出来上がった。


斜め下に向かって、長さもそれなりにあるように見える。


後で聞いたことだが、予算さえあれば人を雇って

もう少し楽に拡張できただろうというのはフィルの弁。


だが、価値があるかもわからない場所に予算など

表立ってつくはずもなく、あくまでも結果だけを見れば、である。


「……妙な声はしない、と」


耳を澄ました俺は、特に変なことが起きないのを確認して1度そこから離れる。


目の前には多数の瓦礫の細かいもの。


(さて?)


どう処理したものかと考えたとき、脳裏に1つのアイデアが浮かぶ。


各種作成だが、当然失敗もある。


素材も様々なものだし、何も良いものだけが出来るとは限らないのだ。


なまくらが出来上がることだってあるし、

その種類の役割をなさないこともある。


俺は瓦礫の1部に歩み寄り、

意識してそれを素材にして無理やり石の鎧を作ろうとスキルを実行する。


作ろうとするもの自体はちゃんとしたものだが、

素材としたものが瓦礫であったためか、

一瞬鎧のように形が出来上がったかと思うと、数秒後、崩壊した。


だが、崩壊した場所は瓦礫のあった場所ではない。


あくまで、俺の手元に近いところである。


実験の結果、瓦礫に次々とスキルを実行すれば

移動が楽だろうことが推測できた。


だが、今は行わない。


ダンジョンの中がどうなっているかわからない以上、

下手に入り口を広げて中からよくわからないものが出てきても困る。


「まずは報告と……いや、一応入り口すぐぐらいは見ておくか」


人手を集めてきてみたら何もありませんでした、ではそれはそれで意味がない。


俺はアイテムボックスから一通りの装備を取り出し、

それらを着込んだ上で入り口を見る。


「出来れば腐った何かとかいませんように……」


祈りが何かに通じる事を願って、俺は空間に身を躍らせた。






「見える範囲に異常は無しっと」


取り出したショートソードの先に魔法の明りを固定し、

左手でたいまつを掲げるようにして俺は入ってすぐの空間を眺めていた。


明らかに人の手が入ったように見える石畳。


そして柱や天井。


神殿、ではないが何かの地下空間なのは間違いない。


風化したのか、あちこちがぼろぼろだが……。


「こりゃ大規模な戦闘や魔法は禁止だな……」


そこまでもろくはないだろうが、

最悪全て地中に、ということも考えなくてはいけない。


少なくともこの中でファイヤーボールをぶちかます!

などということはやめたほうがよさそうだ。


所々に、元々の明りを沿えたのであろう部分が見つかったので、

ショートソードをそこに置き、探索を開始する。


高さ、広さ、素材や年代など。


勿論、あくまでMDで見た覚えがないかを中心とした探索だ。


(覚えはあるんだけどな、この空気。なんだったかな?)


入り口からすぐの空間の高さは人が5人はそのまま縦に出来そうな高さ。


広さはヘリポート3つ分、といったところか。


よくよく見れば、入り口の崩落具合と比べれば、中の程度はそうでもない。


むしろ良好といって良い。


ぼろぼろのように見えるが、

それでも中が不明だった年月、そして

その前に何かだったことを考えるといささかきれいすぎる気がする。


ダンジョン全体に何か魔法がかかっているのかもしれない。


俺は思い立ち、右手に適当にシルバーソードを持つと地面へと突き刺そうとした。


妙な手ごたえ。


具体的には、いつもの地面であれば泥に手をつっこむぐらい

ある程度簡単に入っていくのだが、今回は砂利に無理やり押し込むような感覚。


かなりの抵抗がある。


これは地質が、というような次元ではない。


外はともかく、中は何かしらの原因があって状態が良好なようだ。


「モンスターや財宝は別として、何かある、ってことで」


俺は一人そう納得し、報告に戻ることにした。


ちなみに入り口部分は一度撤去した瓦礫から、

よさそうなものをいくつか選びほぼふさいでいる。


空気は通るが、小動物以外は通れない、という具合だ。


そして馬の元に戻った俺はフィルの待つ街の一角へと馬を走らせた。





「目立たない範囲であれば好きにするようにとのことだ」


「なるほど。了解したと伝えてくれ」


フィルは公務の途中だったようで、門番をしていた

兵士に用件を伝えた後、このような返事が返ってきた。


俺は兵士にさらなる伝言を頼み、その場を後にする。


露店でにぎわう市場を横切りながら、俺はどんな流れで動くかを考えていた。


ジェームズたちに頼むのは簡単だが、この際なので

よさそうな相手がいないか、探すのも良い。





「……で、こうなるのか。偶然とは恐ろしいな」


「? 何か問題でもあった?」


とある酒場、俺の視線の先で首をかしげる少女というべき女性。


その体躯はぱっと見に反して鍛えられており、

十分しなやかな動きを行ってくれることだろう。


彼女の後ろにいる若干幼い感じの残る少女も、

見た目にだまされては痛い目を見るだろう実力であることが俺にはわかる。


「いや、問題ないさ。よろしくな、キャニー」


差し出した右手をきょとんと見つめた後、笑顔で握り返す少女、キャニー。


身軽で潜入、脱出に向いてそうな冒険者ということで

聞いて回ったところで紹介されたのは彼女達であった。


妹を紹介してなかったわよね?というキャニーの誘導に従い、

まずは食事だとばかりにテーブルに着く。


そして、妙な縁となった姉妹との再会を俺は果たしたのだった。


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