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33「先に見える物-4」

さ、寒い!


何かモンスターのリクエストだとかあった場合にはお気軽に感想や

メッセージいただければ検討します。




集まってくる職人達。


上は白髪の老人から、下はまだ中学生ぐらいじゃないのか?と思うような少年まで。


おおよそ15名ほどだろうか。


キロンと木箱を前に、並んでいる。


俺もその中にこっそりと加わり、話を聞く姿勢をとる。


「覚えてる奴もいるだろうが、例の道楽貴族による依頼が1件、残っていた。お題は燭台。素材が少々難儀だな。こいつだ」


キロンが木箱の蓋を開き、取り出した青銅色の塊。


白色の部分など、まだらに混ざった不思議な素材。

どう見ても木材ではない。


キロンの手にある素材を見た途端、職人達に動揺が走る。


無理難題を、というより何でそれで?という空気だ。


「そうだ。知っての通り、こいつは特定の魔力が通るとその箇所から燃える。正確には光を発する、だがな」


曰く、魔法の中でも雷属性の魔法が通ると、通った先のほうからゆっくりと発光していくらしい。


まるで紙タバコのように徐々にこの物質は消えていき、

ほうって置くと最後まで光って消滅するそうだ。


「それだと燭台を作ったところで、落雷だとか何かあったときにすぐなくなってしまうのでは?」


俺が疑問を口に出すと、キロンはなにやら変な顔になって頷く。


「それがな、面白いことに普通に火を近づけたり、火属性の魔力を込めた指先でつつくと止まるんだ」


どちらも魔法使いとまではいかなくても、ちゃんと勉強して使えば使用人のような職業でも問題ないらしい。


……そうなると。


「それ、燭台で作る意味あるんすか?」


「……無い! が、それが希望だからな、依頼はこなすのみだ」


若い職人の疑問に、キロンも開き直った様子で答える。


場に笑いが産まれ、各々が自分が作れるであろう量の素材を抱えていく。


俺は、デザインの元となる燭台を借りることにする。


ステータス的にも器用な俺だが、器用であることと、センスがあることとは別問題だ。


ある程度は頭に浮かべたものが反映されるとはいえ、

そもそものデザインはセンスが必要だ。


「ファクト、どうした?」


「いや、どうやって作ろうかなあとね。遺物で量産しちゃまずいだろう?」


キロンの声に、苦笑しながら答える。


デザインの元となるアイテムは目の前にあるし、

後は実際にアイテムの情報を見てスキルを実行するだけだ。


ただ、今のやり方では本来俺が目指す方向の作り方ではないことは間違いない。


「そうだな。まあ、横で1個目は見てればいい」


キロンも自らの道具と素材を手に、作業台に向かう。


どうやら火は使わず、削りだしのようだった。


燭台そのものはシンプルに上に蝋燭を立てるタイプだ。


キロンはノミを手に取り、豪快に打ち込んでいく。


音を立て、40cm四方はあった塊が手早くそれっぽい姿に変わっていく。


「こんな骨太でいいのか?」


「普通の金属のように薄くしたら割れちまうさ。このぐらいが良いんだ」


参考にしている燭台と比べて、厚みのある状態だが、

確かに試しに削り取られた破片を触ってみると、

軽い音を立てて折ることが出来た。


感触としてはレンガに近い。


「これじゃ落としたら砕けるんじゃないか?」


「その通り。まあ、そういう趣味じゃなければわざわざ落とさないだろうからな」


確かに、それもそうである。


30分ほどすると、大体の形が出来たようでキロンが手を止める。


まだら模様のもともとの色合いが生かされた装いだ。


磨き上げればさらにその雰囲気はいいものになるだろう。


「後はこいつを細かく削ったり、整えるだけだ」


「良くわかった。ありがとう」


他の職人の様子を見てくるというキロンを見送り、

俺自身も1つの塊を手に取る。


(大きさは手ごろ……か。まずは上下はどっちにするかな)


作業台の上に塊を置き、模様を色々と確かめる。


アイテム名称は雷鳴石となっている。


MDでは見たことが無い素材だ。


「こっちのほうがいいか?」


向きを決めた俺はノミを手に、キロンがしていたように力を込めて1回目の加工を行う。


スキルはなしだ。


もともとのステータスの影響か、すんなりとノミは1回目の加工に成功する。


大きく削られた雷鳴石。


予想以上に割れやすい相手に、下手をすると余分なところまで割れることに気がつき、

少しの間、手が止まる。


どこからノミを入れたものかと考えた時、

ひょっこりと精霊が飛び出し、なにやら指差す。


(ここに打ち込めってことか?)


幸いにもまだ材料もあるし、何より数をこなす必要もある。


指し示される場所にそのままノミでたたきつけてみる。


すると、先ほど以上に、それこそ【パカッ】とか言いそうなぐらいの

勢いで雷鳴石の形が変わる。


「おお! うーむ、俺も簡単にこんな風に出来たら早いよなあ」


キロンの置いていったサンプルを手に、一人つぶやく。


そうそう上手くは行かないかと思いきや、

俺の声に反応したかのように精霊が動きを変え、また指差してくる。


「ここか? もしかして聞こえてるのか? まだ良くわからんなぁ」


その後も、精霊の案内のような形で指を指された箇所にノミを入れていくと、

さくさくと加工することが出来た。


15分後、目の前にはサンプルと酷似した燭台もどき。


これからヤスリなどで削れば完成だ。


2つ目に手を出してしばらく、俺が適当にノミを入れようとすると、

精霊がノミに抱きつき、俺の動きを制止する。


良く見ると、模様に隠れる形で小さなひびがあった。


今のまま打ち込んでいたら、ここから大きくかけていたことだろう。


雷鳴石の向きを変え、改めて作業を進める。


その後も順調に数を稼ぎ、もどってきたキロンを驚かせることに成功する。


夜も更けた頃には、予定の数が全体で完了し、納品には問題ないようだ。


他を手伝う形で燭台を箱に詰め終わったとき、俺は1つのことに気がつく。


(これ、普段は蝋燭を普通に使って、いざ何かあったときには緊急の灯り対策になるじゃないか)


蝋燭が無かったり、あるいは蝋燭が使えない環境であったり、

そんな時、魔法1つで灯りとなり、さらには通常の灯りの魔法と違って

雷鳴石の特性を知りつつ、それで出来ていることがわからない限りは打ち消すことが出来ない。


(キロンは道楽だといっていたが……もしや?)


世間には理解されていないだけで、依頼主はなにやら奥深い考えを持っているのではないか?


「これ、届けるのか?」


「いや、手紙を出しておくと後で取りに来るんだ。それで終わりさ」


出来上がりの1つを撫でながら聞いてみると、そんな答えが返ってきた。


「どこの誰だかは聞いても大丈夫……なのか?」


「ああ、問題ない。ここいらじゃ有名だよ」


「ははっ、そこらの子供でも知ってるよ。ちゃんとした商売にも手を出してるんだけどね」


横から、荷物を運んでいる職人の1人が混ざってくる。


曰く、儲けの傍らでこんな感じで何に使うのかわからないものや、

奇特な寄付なんかをしているらしい。


結果的にはそれが好印象となって、儲けの元の商売もちゃんと軌道に乗っているというのだから

意外と商魂たくましいのかもしれない。


そんなことを思いながら他の作業に戻り、日々を過ごす。



そんなある日のこと、

俺はついにアイコンの1つが黒色から白く変わるのを確認する。


武器生成スキルの復活である。


皆が寝静まった夜、俺はこっそりと裏口から工房を出、

路地裏に入ってキャンプを起動する。


視界が変わり、最近入っていなかったキャンプの空間へ。


「ふぅ……しばらくぶりだな」


併設された部屋の1つ、ワラ人形のようなものがいくつも立ち並んでいる部屋へ。


以前の俺であれば、ここで地面やら空中やらに武器作成で多量の武器を次々と作成し、

ワラ人形に投げつけるなどの戦闘訓練を行ったことだろう。


ソロ、もしくは限られたメンバーで戦闘を行う時にはシステム以外の強さを持っていなくてはいけない。


そんな、考えからの練習だった。


だが今は違う。


(人形1つ1つがパーティーのメンバーだと思って……)


武器生成C(クリエイトウェポン)!」


最初は単純なナイフをイメージし、素材を地面に転がした状態でリミット付の武器生成。


1本のナイフが人形の腕の中に生成される。


(行ける!)


思えば、補助や回復の魔法は当然パーティーメンバーにかけられるし、攻撃魔法だってやろうと思えば同士討ちだって出来る。


前衛の攻撃スキルとてそのままだ。


なら、何故作成用のスキルがそれに従わないという理屈になるのか。


何より、これまでだって自分の手の中以外に作っていたではないか。


誰かの手の中に作ることは出来ない。


それはただの思い込みだったのだ。


武器生成C(クリエイトウェポン)!……よし」


再びの詠唱、そして生成。


今度は2人分を作る。


予感だけはあったのだ。


実際にハンマーを使って作るほうは当然1度につき、1つ。


素材だって1つ分しかないし、行動も1つ分だ。


第一、一度に2つ作れるようなハンマーの動きなんてものがわけがわからなくなってしまう。


が、こうしてリミット付のほうであればそんな手順は要らない。


当然、場所と、物、そういったイメージは必要になるようだ。


4人分まで同時に作ったところでイメージがぶれる感覚があり、

すぐさまナイフも消えてしまう。


(要修行というところか)


気を取り直し、とりあえずの目的は達成したので

俺はキャンプから工房に戻ることにした。


その時の俺ははっきり言って、油断していた。


いくら路地裏とはいえ、100%人の目が無いなどと誰が決めたのか。


キャンプから出、工房に戻る際に離れた家の屋根の上に1つの影があったことを、

俺が気がつくことはなかった。






翌朝のことである。


「地下水路に変なのがいる?」


「ああ。引きずり込まれただとか、野良犬が姿を消しただの、そんな噂さ」


朝食をともにしていた職人から街で今流行っている話などを聞いていると、

そんな話が出てきた。


「それが本当なら、自警団やらの出番だろう?」


「勿論そうさ。冒険者にも依頼が出ている」


指差す先には真新しい紙。


見れば、今聞いたような事件のあらましと、探索者募集のお知らせだった。


「ふーん。モンスターかな」


俺がパンを口にしながら、そんなことをつぶやいた時、背中に予想しない声がかかる。


「それを調べて欲しい。彼らと一緒にな」


振り向けば、くたびれた様子の白衣はそのままの男性、ミストだ。


「どうしてこんなところに?」


何故ここに、というほうが先に立ってしまい、そんな質問を投げかける。


「全ては精霊と共に。となれば鍛冶とて密接な関係にあるものだ。それに、また、と言っただろう?」


変わらない表情のミスト。


その瞳には理知的な光。


だが、俺はつむがれた言葉に1つの疑念を抱いていた。


――ミストは事件を噂になる前から知っていたのではないか?


ということだった。


ともあれ、まずは話を聞くことからだ。


キロンに許可をもらい、部屋の一角でミストと向き合う。


そしてミストから依頼の内容が語られるのだった。


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