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マテリアルドライブ  作者: ユーリアル
閑話群(設定にあるゲーム時代の小話です)
5/292

閑話「ある日のMD。料理マスターになれ?(二か月目あたり)」

閑話の時間軸はお話ごとに違いますので、

キャラと出会うお話が出てきたりもする予定です。


時間軸はバラバラです。


ゲームであるマテリアルドライブ(MD)としての描写なので、

本編中とは描写、設定に差異があります。

読まなくても問題ありません。


ファクトはこんな奴だ、スキルはこんな感じなんだ、という参考やお楽しみになれば幸いです。

「我が蒼紋刀に切れぬものなど!」


「いや、それはいいから作ってくれよ」


空高く掲げた彼の右手に光るのは、

俺の作った青い刀身の細い刃物、その名もずばり、蒼紋刀。


刀とかいいながら、ジョークアイテムとして名高い、刺身包丁である。


この武器で特定の種族を倒すと、アイテムとして様々な魚介類が手に入るのだ。


しかも、新鮮そのもの。


ちなみに場所はとある浜辺。


照り付ける太陽は現実と同じ様にその熱を伝えている。


「いや、だってよー。現実じゃこんなでっかい鯛、やらせてくれないんだ」


「そりゃあ、安くは無いよな。お金は有限だし」


蒼紋刀を持った彼は現実では料理学校に通うという学生で、

ゲーム内ネームはスレインという。


ゲーム機による脳への電気信号により、様々な質感などを体験できるマテリアルドライブ。


その他のゲームも仮想現実、VRとしての機能を実装する形で

新しい世界をプレイヤーに提供している。


その中には、飲食も含まれた。


当然、ゲーム内部で飲食したからと栄養が取れるわけではない。


MDでも、現実での空腹や栄養状態によって、ゲーム内部に警告が出るようになっている。


ともあれ、実際には摂取してないとしても、ゲームをプレイする上で

飲食はプレイヤーの楽しみの1つである。


冒険の途中や、強敵を倒したあとの騒ぎなど、出番は多い。


MDでもスキルや魔法、アイテムにも戦闘には不要な、

こういった部分をカバーするものがそれなりにあるのだ。


これらは通常のスキル割り振りなどと違い、クエストをこなすことで

自動入手できるものがほとんどということもあり、

ゲーム性を損なうことなく好みのスキルや魔法をプレイヤーは身につけている。


スレインはそんなプレイヤーの1人で、

現実だとお金も手間も、様々にかかる料理に関することを、

ゲームを楽しみながら実践しているようだ。


バーチャルでの経験はそのまま現実に反映されるわけではないが、

まったくやったことがないことをやったり、

何度も反復が必要なことをやるといった、特定の範囲では

ゲームを含んだVR系での経験は非常に有効らしい。


一説では、軍の新人訓練や銃器の取り扱いの訓練に使われているとかなんとか。


ちなみに俺とは、今持っている蒼紋刀を依頼されてからの付き合いだ。


「それで、やっぱり刺身にするのか?」


「いやー、醤油アイテム手に入れるのも面倒だし、ここは塩焼きで行こうかなと」


「じゃあなんで刺身包丁出したんだよ!」


思わず俺は突っ込むが、スレインは「えー」という顔で向き直り、

次のような言葉を言い放った。


「金がないから今はこれしかない! 今度作ってくれ!」


「さ、さいですか……」


変な口調になりながら、俺は脱力した。


気を取り直したのか、スレインは慣れた手つきで

大きさは60cmもあろうかという鯛を捌いて行く。


色合いからして真鯛だろうか? 気にしたことも無かったが。



「ほいよっと、後は焼くぜ! 赤き恵み、ここに! ファントムバーナー!」


スレインの叫びと共に、名前の割りにささやかな炎が用意してあった

薪の束にまとわりつき、適度に燃やしていく。


「名前だけ聞くと、攻撃魔法なんだよなあ、それ」


「確かに。でも、ちゃんとこのまま火力調整も出来るんだぜ?」


長い串に鯛を刺し、豪快に囲炉裏焼きのごとく焼いていくスレイン。


漂う匂いに、鼻が思わずひくつく。


バーチャルだとわかっていても、こういうときは反応してしまうのだ。


鯛にカーソルを合わせると、生だったステータスが

それっぽいものに変わり、名前も塩焼きとか付いてきた。


「そろそろか」


「おう! さあて!」


いざ!という時、二人を影が覆う。


え?と上を向くと、ぬめった白い肌の何かが1匹。


叫ぶまもなく、2人は跳ねるようにその場から離れる。


轟音、そして砂煙。


「な、なんだあ? ファクト、わかるか?」


「そういやここ、こいつが出る可能性があったな。ノービスクラーケンだ!」


ノービスクラーケンは名前の通り、イカのでかいアレだ。


その中でも、弱い部類に入る。


ただ、共通能力として持っている墨吐きを含め、能力低下の攻撃が多いのだ。


ゆえに、攻略サイトなどの数値だけを見て単独で挑んだりすると、あっさりやられる。


「ちょっ! なんかぬるぬるするし、抜けられないんだけど!?」


そう、今のスレインのように触手のような足に絡まれたりするのだ。


「動くなよっ!」


俺は叫び、アイテムボックスから切れ味重視の一振りを取り出してスレインを捕らえる足の根元付近を切りつける。


いやな悲鳴をあげ、ノービスクラーケンはスレインを手放した。


砂浜に落下し、全身を粘液とそれによってめいっぱいついてきな砂に覆われるスレイン。


「うえぇ、どーすんだよコレ」


「我慢だ我慢! こいつのドロップは料理的な意味で美味いからな。最後はスレイン、頼むぞ!」


なお、鯛は最初のボディプレスでパーである。


なんとしてもこいつから食材を入手しなければならない。


「頼むぞたって、俺レベル低いよ?」


そう、俺の戦闘力も高くないが、スレインはそれに輪をかけている。


確かにドラゴンの肉だとかも食材としては美味いらしいが、あくまでスレインは現実での経験になる材料を優先しているため、そんなにLvを上げていないのだ。


今もノービスクラーケンの攻撃を必死に回避している。


「大丈夫大丈夫! 武器生成-近距離B-(クリエイト・ウェポン)!!」


アイテムボックスから微妙に緑というか、青く光る石を取り出し、俺はスキルを発動する。


制限有りの武器作成で、雷属性のナイフを作ったのだ。


続けて何度もスキルを発動し、何本もナイフを作り出す。


「よいしょっと!」


何本も同時に迫る攻撃を手に持った長剣で俺は器用に回避すると、

すぐさま攻撃を仕返すが倒れる様子はない。


ノービスクラーケンに限らず、なぜか湖や海だったり、沼といった水系統のモンスターはタフだ。


俺の攻撃も効いているはずだが、まだまだといったところだ。


「スレイン! 一緒に投げてくれ!」


作ったナイフのうち何本かをスレインの方向に投げ、俺は反対側に回りこむ。


「おっけー! おおう、俺のメイン装備より強いとか泣ける!」


冗談を交えながら、スレインはナイフを拾い、次々と投げつける。


巨体からすれば小さな攻撃。


それでもナイフが秘めた威力と属性効果は効果覿面で、

その体をビクビクと震わせ、一時的な麻痺を産む。


「よし! スレイン、両目の真ん中あたりに突き刺せ!」


俺の叫びに従う形で、ゲームらしく高く飛び上がったスレインは見事に蒼紋刀をノービスクラーケンの弱点に深々と差し込む。


砕けるポリゴン、そして静寂。


「終わった終わった。ついでだ、海に入っちゃうか?」


「うん、確かにドロップ来たけど、砂はなんとかしたい……」


ほぼ完全回避していた俺と比べ、スレインは全身粘液と砂まみれのままだった。



その後、汚れを落としたスレインは、入手したイカっぽい身とイカ墨(なぜかボトルに入っている)を使って、パスタを作ってくれた。


夕暮れの美しい海を眺めながら、2人は拠点に戻ることになった。


作って欲しいという次の道具の打ち合わせをしながら、その日は過ぎていった。





---------------


○作成武器


蒼紋刀せいもんとう

タイプ:刀

付与効果

魚介系統のモンスターを倒すとモチーフに近い魚介類が素材として入手できる。

数等はランクに応じつつもある程度ランダム。


脇差に近い姿で、比較的短い。

威力はそこそこだが、切れ味は抜群。


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○他にも同時に連載中です。よかったらどうぞ
続編:マテリアルドライブ2~僕の切り札はご先祖様~:http://ncode.syosetu.com/n3658cy/
完結済み:兄馬鹿勇者は妹魔王と静かに暮らしたい~シスコンは治す薬がありません~:http://ncode.syosetu.com/n8526dn/
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