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20「北の地で-2」

じわりと登録などが増えていて感謝です!


良いなと思った箇所があれば遠慮なく書き込んだり、つぶやいていただけると小躍りします。


誤字脱字等ありましたら、こっそり直しますのでご報告願います。

街はまさに活気にあふれていた。


街が大きくなる度に防壁の外に新たに区画が作られ、

さらにそこを囲むように防壁が、の繰り返しで何層にも分かれた造りらしい。


内側に行くほど古く、歴史ある街になっていくようだった。


中心に行くほど、住宅街となるらしく、外側ほど

冒険者や彼らを相手にする商売人が忙しそうに行き交っている。


酒場も多く、パーティーを組んでいると思わしき

集団が朝から騒いでいるのが見て取れる。


「へー……すごいな」


「いつ来ても騒がしいぜ。おい、クレイ、コーラル、飲まれてるんじゃない」


俺自身の感想はあっさりしたものだったが、クレイ達は街の雰囲気に飲まれたのか、ぽかーんとした様子で馬車から顔を出していた。


「!? あ、うん。燃えてきたぜ!」


「クレイったら、もう」


必死なクレイの様子に、コーラルが誘われて小さく笑う。


良い感じに緊張はほぐれたようだ。


「ジェームズ、今日は宿で部屋を取ったあとは街をのんびりでいいのか?」


「ああ、情報も集めなきゃいけないしよ」


そういってジェームズは馬車を止める。


どうやら専用の場所に預けるようで、荷物を持って4人で連れ立って歩くことになる。


「よし、じゃあ俺は露店のほうから回ろう」


先ほどからジェームズが飲みたそうにうずうずしているのを見て取った俺は、

役割分担を自ら申し出る。


「じゃあ私はジェームズについていきます。魔法使いの冒険者がいるかもしれないし……」


コーラルの一言に、ジェームズの動きが一瞬固まったのは気のせいではないだろう。


別にお酒が駄目だという子ではないが、飲みすぎにはうるさいようなのだ。


「じゃー、それなら俺はファクトとだな! よろしく!」


「良いものがあったら奢ってやるさ」


答えながら前を向くと、大き目の宿屋が見えてきた。


「あれだ。よし、何にしても荷物を置いてそれぞれ出発ってことで」


ジェームズに従い、それぞれに横並びで部屋を取って宿屋の前で合流し、2組に別れて街中に歩き出すことになった。


街の構造そのものは複雑なようだが、賑わっているのか、騒がしいほうへ向かうと、

すぐに多数の露店が壁に沿う形で大量に並んでいるのがわかった。


どちらかというと、生活より冒険のにおいを感じる中身だ。


ここでは武具も多く扱われているようだった。


新品のものから、冒険者達のお古なのか、使い込んである様子の物まで様々だ。


あちこちの店頭での交渉事の叫びや、行き交う馬車等の音が響いている。


いくつかの店に顔を出し、話をしながらアイテムとして手に取ってみるが、

残念ながら全て一般品ばかりだ。


ならば情報は、と思い色々と話しかけてみるも、

今までに聞いたものと余り変わらない。


これはこっちは外れか?と考えた頃、一際目立つ声が離れた場所から聞こえた。


「なんだあ? この汚え壺は。子供の工作かよ」


目を向ければ、離れた場所にある木の下に出ている小さな露店を取り囲むように数名の男。


いかにもなチンピラ風だ。


「ファクト、あれ……」


「大きな街だと良くありそうだな」


小さな店に因縁をつける図、といったところか。


背中に走る昔の光景を見ているような不快感を覚えながら、

遠巻きに様子を伺っていると、特に暴力を振るうわけでもなく、

一通りの嫌味のような言葉を浴びせ、男達はすぐに動き出した。


「深部に潜れない奴にはお似合いの店だぜ」


男達の、店主を馬鹿にする声を聞きながら、

俺は興味を引かれ、ガラクタばかりだと男達が言っていた店に歩み寄る。


「見させてもらうよ」


「ああ、ごゆっくり」


あんなことがあったばかりだというのに店員の彼は落ち着いた様子だ。

ああいったことに慣れているのか、別の理由か。


(深部ね……ダンジョンでもあるのか?)


「安いけど、使い道がわからないんだけど」


クレイのぼやきどおり、ぱっと見は確かに、錆びた金属の板や、ヒビの入った壺等、

アンティークだ、とでも言わないと二束三文にもならない感じだ。


頭をよぎった男達の言葉を隅にやり、良いものでもないかと

色々と手に取る度に出るウィンドウも、アイテム名は壊れたなんとかとかばかりだ。


俺がスキルを使って還元すれば素材になるし、フィールドにもやさしいのだろうが……


と、店主の傍に分けて置かれた、珍しく刃こぼれもないダガーが目に入り、思わず手に取る。

値段的にはこれまでに他の店で見た良質の武器より何倍もする値段がついている。


ウィンドウに出てきたものは……


「これ……ヒートダガーだ」


俺の言葉にクレイと店主が大きく反応する。


クレイは新しい武器への興味、彼は……?


「わかるのか、あんた」


「まあね、これでも色々作ってるんでね」


探るような店主の視線に、俺は肩をすくめて答える。


俺が思わず声に出したのには理由がある。


ヒートダガー、名前の通り追撃として炎の追加ダメージが発生する魔力剣の1つだ。

刀身が熱いのか、炎が襲い掛かるのかは、良く覚えていない。


ただ、わずかな魔力で効力を発揮するので、初心者から中級者まで、人気のサブウェポンだった。


入手方法として有名なのが、ドワーフの里でのクエストによる入手である。


ドワーフはMDでは最初はそう友好的ではない。


商売などのやりとりはあるが、深入りはしない、といった感じだ。


里でのクエストをこなすことで、信頼の証としてこのダガーが送られるのだ。


エルフと違い、比較的近い場所にいるので、MDではポピュラーな異種族である。


(そうか、ドワーフがいるのか)


MDでもドワーフ達の居場所は一箇所ではなく、ガイストールのような街の傍に

必ずといって言いほど隠れているのだ


店主の反応は、掘り出し物が1発で見つかった、という反応ではなく、知っていることへの驚きだった。


「近くに彼らの里があるのか? 出来れば挨拶をしておきたいんだが」


「なんだ、そこまで知ってるのか。ああ、こっから1日も馬で走れば着くよ。

 ちょっと迷うけどな。入り口代わりに小さな廃墟があるからそこを目指すと良い」


ドワーフ達を知っているかのように装うと、彼はすぐさま話し出してくれた。


ただ、入り口から先は詳しくは教えないのがルールだと言い、

行けばわかるとだけ店主は付け加えてくる。


「ありがとう。でもこのダガー、売ってても良いのか? 贈られた品だろう?」


俺が問うと、店主は首をかしげた。


「いや? 作ったのはドワーフに間違いはないけど、そいつ自体は遺跡で見つけたもんだ。詳細は彼らに会ったときに教えてもらったんだけどな。俺は必要な場所まで行かないからよ」


特に冒険者として働いているわけではないという彼は、

日々をあちこちの遺跡で過ごし、適当に漁っては売ることを繰り返しているらしい。


それでもこの街だと日銭は十分に稼げるようで、

ヒートダガーはたまたま見つけた隠し部屋にあったとか。


確かに、握りの部分は若干古さを感じる。


ドワーフはこのダガーを見て、彼のことを、ダガーを贈られた相手と勘違いしたのだろうか?


(可能性としては有り得る。となると、買いだな)


「そうか。これ、もらうよ。後、そっちの壊れた奴らも」


予想通りなら話が早いので通行証代わりにと購入することにした。

おまけに、素材に戻すこと前提で壊れた武器や金属製の何かをまとめていくつか買い込む。


「まいど! 1、2……うん丁度だな」


値段的には普通のダガーが20人分買える位だったが、性能的にも申し分ない。


クレイ、もしくは護身用にコーラルに持たせても良いだろう。




クレイと2人、他の店も見るべく歩き出したときだった。


「なあ、ファクト。俺、ドワーフ見てみたい! さっきの話だと近くにいるんだろう?」


「クレイは異種族に会うのは初めてか?」


俺が持ったままのヒートダガーに目をやりながら、そんなことを言ってきた。


「いや、前に見たことあるけどさ。ドワーフってすごい武器作るんだろう? 格好良さそうじゃん!」


冒険者でも男の子!と言った感じか、クレイの言葉には力が篭っていた。


確かに、森の民なエルフと違い、ドワーフはどちらかというと土、岩などの地面に近い種族だ。


隠れ住む都合上、森が多いが、近くに山があることが多い。


基本的な素材を入手するにも、お世話になる相手だった。


「確かにな。近くにいるなら、一緒にこなせる依頼がないか、ジェームズたちと合流して探してみるか」


俺の技術的な修行にもなりそうだと感じ、俺は快諾した。





――宿屋にて


「なるほどな。そいつがあれば顔パスってわけか」


「かもしれない、だけどな。2人の武器の強化も出来るかもしれないし、ドワーフにも魔法使いはいるはずだからな、良い話が聞けるかもしれない」


ジェームズもドワーフには出会ったことがあるらしいが、まだ親しくなったことは無いそうだ。


ちなみにここはクレイの部屋だ。


部屋割りは両端を俺とジェームズ、中2つを若い二人が、となっている。


こうしておけば内緒話も聞かれにくいし、襲撃の際も、俺とジェームズが最初に気がつける状態になっている。


「いきなり落とし穴が作れる魔法があるらしいので、それをぜひ知りたいです」


何か思い入れがあるのか、コーラルがぐぐっと拳を握って力説してきた。


土系統の魔法は、文字通り地面を操る。


いきなり土の壁が出てきたり、鋭い岩が乱立したり、今言ったように穴が開いたり等だ。


直接のダメージ以外に、足止めという点では相手を殺すことなく行えるので火等より有効な場合もある。


「いつ行くんだ? 明日?」


「待て待て。場所はここから北西だったな? そっちで一緒にこなせる依頼が無いか、1日かけて確認の上で向かう。路銀も無限じゃないんだからな」


鼻息荒く、勢いの良いクレイをジェームズが宥め、方針が決まった。


「モンスターの素材集めか、採取なんかかな。コーラルはどう思う?」


「そうですね、薬草類はいつでも需要がありそうですし、いいんじゃないかと」


丁度その方向に退治して欲しいモンスターの住処がある、なんてことは恐らく無いだろうから、

こういった依頼に落ち着くことだろう。



食事の時間となったが宿屋ではなく、酒場でとることにした。


依頼探しがついでに行えると思ったからだ。


良さそうな酒場に3人で入り、酔って騒ぎながら、丁度良さそうな依頼を見繕って夜は更けていく……




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