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15「冒険者稼業-2」

大分過ごしやすくなってきましたが、今度は日々眠い。

体調に注意しつつ、頑張ります。

一般的にはゲームでの武器はただの道具だ。


数値や見た目、自分の好みで取り替えられるだけの存在。


より強い武器、より格好いい武器。


そこに、製作者が思いを込めたか、適当に作ったか、は関係が無い。


何せ、倒す相手はいずれにしてもデータなのだから。


使う人間が満足すればそれはアイテムとして、正解なのだ。







「抱えて持って行きますか?」


突然の来客の言葉に、俺は皮肉を混ぜて丁寧に聞き返してしまう。


名乗りを上げた使者はグランモールを管理する貴族の者だという。


街の自警団の大元でもあり、私兵ともいえる集団を抱えているらしい。


当然、貴族の上には国としての王がいるので、

当たり前といえば当たり前の構図だ。


「丁度馬車で来ておりますので、それで運ばせていただきます」


若い背格好の執事風の使者はそう答え、早速とばかりに値段交渉に入るようだ。


市場で買いあさった後か、最初からある程度は見越していたか……。


いずれにしても、随分と急な話だ。


「値段は、ああ……このぐらいなら妥当かと思うのでそれで」


使者として来たからには相応の目利きだったようで、提示してきた額は相場からしても離れてはおらず、妥当なところだった。


事前に聞いていた、職人に対する態度や扱いからは拍子抜けするほどだ。


もっと買い叩かれると思ったのだが……


「まだ用意できますか? 出来るだけ早く、多く」


そんな思考が顔に出ていたのか、使者はにこりともせずに言葉を足してきた。

やはり、そう甘くは無いようだ。


「いつまでかによるが、何のために?」


使者が語った内容は、ジェームズ達の言っていたことと同じだった。


まずは出せるだけ、援軍は後から、ということだ。


現実では戦力の逐次投入など、と怒られそうな気もするが、モンスター相手ならありなのかもしれない。


そうでなくても、当然戦っていれば武具は消耗する。


補給的な意味もあるのだろう。


「主はモンスター達の侵略が始まったものとして、既に王の下に陳情に向かっております」


つまり、急いで結果を出せということだ。


「武器だけなら5日で50人、なんとかやってみよう。鎧は、期待しないでくれ」


それでは5日後に、と言い残して使者は去っていった。





「さてっと……手抜きしすぎず、目立たずっと」


一般的な鍛冶職人と同じペースではそれはそれで遺物があるのに、と疑われる。


便利な存在と思われて使われるのもそれはそれで面倒だが、なんともしがたい。


ある程度稼げたらいっそのこと、作って戦える鍛冶&冒険者として行ってみようか。


(まずは鎧から行くか、材料を多く使うし。1個もありません、はまずいだろう)


武器は部屋に詰め込んである微妙に光る武器にしようかと一瞬考え、

何故光ってるか、でややこしくなりそうだと考え直し、やはりやめることにする。


シンプルに行こう、シンプルに。


「付与無し、シンプルに……鎧生成-金属C-(クリエイト・アーマー)


鍛冶職人スキル的には、武器とは比べ物にならない謎な変化をするのが防具だ。


武器はまあ、槍なんかは伸びるだけなんだが鎧は、なぜか膨らむんだよなあ……。


素材となる鉄塊を引っ張り出し、スキルを唱えてハンマーを振り下ろすと、見る間に光に包まれた鉄塊だったものが膨らんでいく。


飛び出てくる部分を押さえ込むようにハンマーで叩いていくと、段々と膨らみ方は収まり、1着の肩当て付きの上半身用の鉄鎧が出来る。


銘は単純な━スチールアーマー━だ。


継ぎ目の調整をすることである程度の体格差はカバーできる造りだ。


隙間を狙ってくるような対人だと厳しい時もあるだろうが、

そこまでの腕を持った相手や状況であれば、別の意味で苦戦しているだろうから、大丈夫だろう。


出来栄えを確かめるために、手加減をして適当に剣で斬りつける。


金属音、そしてわずかに傷がつく鎧。


問題はなさそうである。


「さて、じゃあ次行きますかね」


とりあえず、今日は鎧を3つと、武器を多少終わらせておこう。


見分けるために、スペック上は同じだが微妙に形が違うようにと意識して作っていくことにする。


MDの時や、他のゲームでも疑問といえば疑問だが、

こうしてリアルな感覚の中で出来上がると疑問に思うことがある。


――主材料となる素材以外の部分はどこからどう来てるんだろうか?


もしかしたら、俺が現実世界の感覚で鉄だとか言っているだけで、

実際には俺の知っている純粋な鉄、Fe元素からではないのかもしれない。


ここには成分分析に必要な機材も無ければ、自分にもその知識は無いので不明なままである。


武器を作った時の柄であったり握りであったりと謎は尽きないが、便利だし、気にしないほうがいいのだろうか?


オリハルコンなんかは元素記号自体が無いわけだし、うん。そうしよう。


「これで終わりっと。まあ、こんなもんか」


この瞬間に使者が戻ってきて、いきなり扉を開けられたら実はまずいわけだが、幸いにもそんなことは無かった。


目立たないように物陰に鎧は置きつつ、武器に取り掛かる。


(補給の問題を考えると、壊れにくい物がいいだろう)


多少肉厚なものがいいのかもしれない。


所謂、ツーハンデッドソードまでくると誰でも、というわけには行かないだろう。


となると……これだ。


「武器生成-近距離C-《クリエイト・ウェポン》」


作る武器は━ディフェンダー━だ。


MDにおけるディフェンダーや、俺の知っているものは、

普通のロングソードと違い鍔が大きく、手首を保護することが出来る他、

受ける、はじく、といった行動に適した造りをしている。


何故適しているのか、までは調べた覚えは無いので、

文献を調べるなり、さりげなく同業者に聞いてみることにしよう。


幸いにも、スキルを使えば厳密に武具の造りや細かい意匠を知らなくても出来上がる。


きっと俺の脳内の記憶だとか、イメージだとかを参考にしているのだろう。


武器の出来具合や、カスタム具合を見る限りでは知っていれば知っていただけ、自由は利くようだ。


神様だろうか、精霊だろうか、どこに感謝するべきかはわからないが、ありがたいことである。


一人感謝を心に浮かべながらも特殊効果は何も付けず、何本もディフェンダーを量産していく。


考え事もしていたためか、昼というには少し遅い時間になっていた。


少し考え、気分転換をかねて市場に行って、色々と買い込むことに決めた。


まだ売り払っていないモンスターの素材なんかも買い取ってくれる業者がいるかもしれない。





――市場にて


「薬草、か。ポーションも無限ではないし、あるに越したことはないな」


最初は野菜でも売っているのかと思ったが、良く見れば乾燥させた色々な薬草を売っている様子の店を見つける。


「いらっしゃい。ウチのは1つ1つ丁寧に処理してるよ」


店番をしていた若い女の子がそう言い、確かめろとばかりに一番多い山の薬草を一つまみ、渡してくる。


「今のところお世話になったことは無いんだが、どう使うんだ?」


「あんた、運が良いんだね。普通に暮らしてても、あんたぐらいまでに一度はお世話になるもんさ」


女の子は豪快に笑い、直接食べてもいいし、濡れた布で巻いて怪我に貼り付けても効果があるのだと教えてくれる。


摂取して栄養を取ることで効果がある形と、成分が作用する形とがあるということのようだ。


両方の効果があるというのは驚きだが、さすがファンタジーというところだろうか。


銀貨1枚で10束、ということだ。1束が豪華な栄養ドリンク、ぐらいだとすると妥当といえば妥当なのか?


「この先も運が良いとは限らないな。1枚分もらうよ」


懐から今の時代の銀貨を1枚出し、女の子から薬草の束を受け取る。


瞬間、ウィンドウが浮かび上がりアイテム名として━生命の薬草━と名前が出てきた。


「ありがとね! 最近は物騒だから外もおちおち採取してられないんだよ。お兄さんも良かったら採取の護衛や、代理採取受けてみてね!」


女の子はそう言い、そういった事情から販売できる日は不定期だが、場所はいつもここだという情報にお礼を言い、足を他の店へと向ける。


途中、名前に何か覚えがあるなあと考えていると、初級の回復ポーション作成イベントで、採取をしなければいけなかったアイテムの名前だと思い出す。


ある程度稼げるようになってからは、直接ポーションをNPCから購入していたのですっかり忘れていた。


今度の機会に、こういった初期アイテムの作成レシピやイベントを思い出してみることにしよう。


同行者にさりげなく配るには使い勝手はいいかもしれないからだ。



色々な店を回りながら、冷やかしつつ色々と触ってみる。


ウィンドウが出て名前がわかるのは日常生活には不要な、冒険用のアイテムの類だという共通点が見えてくる。


例えば、果物では名前は出なかった。


逆に、フィールドにいる獣の肉なんかは、なんとかの肉、という表示が出た。


全て見覚えがある名前が出るということはMD時代にもあったもの、ということになるのだろう。


MDでも、クエスト用の素材を除いてはいちいち木材や布の名前はなかったはずだ。


行く先々で問題の起きない範囲で様々に触ってみようと決め、遅い昼食を取って工房に戻る。








「初期装備に近い武器に防具、ポーション類……と」


つぶやきながら出来上がったディフェンダーを大きな布で包んでいく。


最初の時には準備もしていなかったのでそのまま渡したが、せっかくの自分の作品なのだからちゃんと渡したいと思い、市場で購入したのだ。


鞘は適当に必要なら準備してもらうことにしよう。


旅路ならばともかく、戦争となればいちいち鞘に戻すことは少ないはずだ。


出来ている分を包み終えた時、俺は1つのことを決めていた。


「うん。地図を手に入れよう」


(ソレが出来なくても地形を把握したい)


MD時代のクエストやアイテムを再現するにしても、どこに何があるのか、どこがどんなクエストだったかを思い出す必要がある。



そうなると、ここが実際にどこでどういう場所になっているのか、少しでも広い範囲で地図を手に入れたいところだ。


これまで思いつかなかったことから見て、目の前の生活に思ったより視野が狭くなっていたようだ。


大陸の移動でもあったなら意味を成さないだろうが、1000年程度じゃ大きく違わないだろうし、大体でも位置関係がわかればいい。


ただ、問題なのはそうそう地図が売っているかということだ。


現実世界でもそうだったように、地形を含んだ情報というのは非常に重要だ。


ましてや、国が乱立しているという今の状況では、自分の国の情報をほいほいと入手できる状態にあるとは思えない。


そうなると……これが早そうだ。


俺は荷物をまとめ、白兎亭へと向かうべく工房を出る。


貴族が行うという作戦の会議場所、集合場所を聞き出すためだ。


理由はもちろん、冒険者、理想はその場にいるであろうジェームズに地図とまではいかなくても地形や街の情報を得るための交渉をするためだ。



善は急げということで、俺は早足で目的地へ向かうのであった。


なかなか書きたいことにお話が追いつきませんが、着実に書いていこうと思います。


時折「キャラ紹介他」には追記されてることがあるので、お暇でしたらそちらもどうぞ。


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