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08「ベテラン無双、ただし格下に限る-3」

地の文の言い回しなど、文章らしくない部分は後々修正予定です。


強さ的には圧倒ですが、

ズバッ! 勝った!では面白くないので難しい所です。



「……帰ればよかったかな」


後半は俺の後悔で始まった。


ゴブリンはまだまだいたのだった。


角を曲がっては遭遇し、小道があれば不意打ちが来る。


数値上はダメージは無いが、疲労と思われるものが蓄積されていく中、

1つ1つ、MD時代を思い出しながら落ち着いて対処をしていく。


まず、取り付かれないこと。


想像してみて欲しい。

恐らくはダメージは受けないとわかっていても、何匹もの何かに胸元までよじ登られる感覚を。


いくら仮想現実、VRだとわかっていても襲い来る嫌悪感。


ましてや、今は現実(と思わざるを得ない)である。


(恐怖を忘れるな、恐怖に麻痺するな! 恐怖は……隣人だ)


かつて出会った、尊敬するMDプレイヤーの1人は強敵との戦いでのコツについてそう語っていた。


「動きは単純。しっかりとフェイントを混ぜ、一撃必殺!」


口に出して、動きを確認しながら一撃一撃を落ち着いてぶち込んでいく。


数をこなすうちに、大体返り血がひどい部位なども体が覚えてきたようだ。


『ギヒィッ!!』


浅く入ったゴブリンの1匹が、武器の効果である電撃の追加攻撃を受けて痙攣する。


その姿にいくつもの感情を交えながら、しっかりと止めを刺す。


ある程度、群れを倒したところでその体をあさり、硬貨を持っていないかとか、倒した証明になりそうなものを探す。


倒した証明として、余り気持ちのいいものではないが、その耳を切り取って、別のタブに放り込んでいく。


アイテムボックスに入るということは、耳という部位がただの身体的部位ではなく、アイテムと扱われているということになる。


ゲームだと、【ゴブリン討伐数 4/20】みたいな表記だったから、特にアイテムは無かったのが痛い所だ。


多分、これで合ってるとは思う。


牙や毛皮が有効そうな、アイテム名になっていたような奴らはその部位がアイテム化出来そうだ。


(チームに分かれて探索でもしてるのか?)


先ほどから、まとまった群れと、そうでない少数とのランダムな襲撃となっている。


「ま、そのほうがありがたいけどね」


自己突っ込みをした上で、更なる探索を続ける。



(ライティングの時間は2時間に設定した。明滅を始めているからもうすぐ2時間)


「ライティン…グ!?」


とっさの回避。


耳元を何かが高速で通り過ぎ、岩壁に当たる。


笑い声、そして現れる影。


暗闇で何かが光ったと思ったら物陰からの弓矢。


動き的に俺以外を警戒している様子は無い。


ゴブリン達には、何かしらで動きのわかる方法があるのかもしれない。


続く襲撃。


こいつらはさっきまでより体格が一回り大きい。


エリートゴブリンといったところか?


「ファストブレイク! ついでに盾生成-大盾-《クリエイトシールド》!」


俺から見れば、無防備に襲い掛かってた先頭の1匹を突き刺し、絶命するのを確認しながら、大き目の盾を生み出して淵をがっちりと掴んで構える。


ちなみに、かなり薄くした。


「どんな飛び方をするかは投げてからのお楽しみ! いっけぇえ!」


MD的にはそれなり、という数値だった腕力に任せて、水切り石の要領で横向きに投げつける。


腕力特化のタイプが本気で、きちんと作られた大盾を投げた時には森がひどいことになった記憶のある行為だが、俺ぐらいだとこの程度が限度だ。


空気を切る音を従え、正面の何匹かをあっさりと分断し、岩壁にぶつかることで甲高い音を立てながら周囲を巻き込んでいく。


「……次は止めよう。自分のほうに来たらなんとも出来ないな、これ」


自分には跳ね返ってこなかった幸運を強く思うほどの、後に残る惨劇。


半端に両断された1匹や、まだ生きているが足だけ切れてしまった奴だとかが残ってしまっている。


前の壁盾も大盾も、盾としては微妙な作りをしたのですぐに光となって消えていった。


後に残るのは何かに刻まれた姿のみ。


(凶器の無い完全犯罪!……でもないか)


放っておいてもどうしようもないので、ゴブリン達にそのまま襲い掛かり、壊滅させる。


どちらが正義というわけではないが、悪人の所業に思えて仕方が無い状況である。



「武器、変えるか」


いくら振るっても、ぬぐっても、なにやら赤黒い気がする。


このまま使い続けて、いきなり血まみれの剣、とか名前が変わっても嫌なので別の剣、確か混乱効果のある特殊効果のついた一振りを選ぶ。


混乱には精神的なものと、毒物的なものとがあったはずだが、これは後者だ。


鉱脈探知マテリアルサーチの結果によれば、後1分もすれば一番反応のあった場所のはずだ。


と、前方に自分のライティング以外のほのかな明かりが見える。


まっすぐ進まず、その途中にあるわき道のようだ。


わらわらとそこから湧き出る集団。


中には色違いの1匹がいることが確認できた。


こちらを指差して何事か指示を叫んでいる。


「そうは……させないっ」


敢えて前方に駆け出し、相手の陣形が整わないうちに色違いに接近、振りぬく。


残念ながら、身をよじった色違いの片腕を少し切り裂いただけだが、俺の勝ちだ。


そのまま暗闇だった奥へと駆け抜け、振り返るとぽかんとした様子の色違いが、奇声を上げて周囲に襲い掛かるところだった。


目に入るものが全て敵と思っているのだろうか、必死の形相だ。


「悪いが、これも勝つ為ってことで」


MDであったなら、色々批判を受けそうな戦い方が続くが、ここでは文句を言うプレイヤーもいない。


せっかくの混乱効果が発動する者は少ないまま、ゴブリンを惨殺していく。


頭、首、肩、腰、腹と近寄ってくる相手を確実にしとめていく。


(肉の感触がっ! 終わったら川で水浴びでもするぞ! 絶対だ!)


防戦も混じると、襲い掛かる不快な感覚。


人間に近い姿のモンスターの肉を切り裂く感覚というのも、慣れてはいけなさそうな感覚だった。


走る痛み。


見れば、脇から襲ってきた1匹の剣が俺の太ももに刺さっている。

ぬめるような光を放つ刀身が半ばまで食い込んでいる。


嫌な笑みを浮かべるそのゴブリンの表情が驚きへと変わる。


「残念。予想済みだっ!」


効果を発揮したペンダントに視線をやりながら、ゴブリンの胸元にロングソードを迷わず突き出す。


体に降りかかる返り血に顔をしかめながら、太ももに刺さった剣を抜き、適当に投げつける。


不幸な1匹に命中し、すぐに顔色が黒くなっていく。


結構な猛毒のようだ。


「さあ、終わらせようか!」


実際の剣術なんかを学ぶ必要はあるかもしれない戦闘内容に反省点を自覚しつつも、終わりへ向けて声を荒げる。




「もう……いないか?」


何度目かもわからない静寂。


今度こそ終わりのようだ。


周囲に転がるゴブリンだったものに注意しながら、脇道へと向かう。


小部屋、とは呼べない広さの部屋だった。


壁は元より、周囲に様々なものが散乱している。


光を受けて輝く貴金属のようなものから、ガラクタまで。


と、ライティングの灯りが不意に動き、ランタンのような何かに吸い寄せられていく。


(? なんだあれ……)


中に油が入っているわけでもなく、まさかガス灯というわけでもない、光を放つ透明な何かで出来た箱。


「見えないけど、なんかいる……ような?」


箱の素材もタダのガラスではなさそうだ。


金属である剣であったり、鉱石なんかからはそれっぽいのが見えるので、これは魔法関係の精霊さんなのだろう。


蓋を開けると、光はふわりと空中に舞い、しばらく俺の周囲を漂っていたかと思うと、岩壁に飛び込んでいった。


後には自分のライティングの光のみ。


「これ、何かのマジックアイテムか?」


しばらく箱を眺めた後、状況を思い出す。


(早く、帰ろう……疲れた)


意識したことで一気に襲い掛かってきた疲労に抗いながら、それっぽいものをどんどんとアイテムボックスに放り込み、片付けていく。


根こそぎである。










「外だぁぁぁあーー!!」


とりあえず叫ぶ。


ダンジョン、とは言いがたいが、何かに潜るのは久しぶりだった。


大体は、素材ポイントで確保! アイテムで脱出!だったからだ。


太陽はまだ夕方前。今のうちに川へGOである。


地図を見ながら川のある方向へとダッシュダッシュ。


陽光に照らされたエルブンチェインは、まあ敢えて言うまい。


川を視界に捉え、後のことは考えず、飛び込む。


「冷てっ!」


叫んだ後で、川の汚れに驚く。


「うわちゃぁー、魚よ、すまん」


少し動くだけでどこからか汚れがにじみ出る。


しばらくして、体も冷えてきたので岸に上がる。


「あー……よっしゃ、帰るか」


乾かすことを忘れていた自分のマヌケ具合に少し苦笑しつつ、武具達をアイテムボックスに戻し、換えの服を出して大自然の中で手早く着替える。


放り込んだアイテムボックスのアイテム達はステータス上、生乾きの衣服、みたいな感じになっているが仕方が無い。



達成感を胸に、俺はグランモールへと帰還して行った。





ユーザ情報などの通り、

7月後半までネット環境微妙のため、

書き溜めか、別途手段で更新予定です。

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