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216-外伝「マテリアルメーカー」

全く話もキャラも動いてない上に短いです。


説明回というかつなぎです。


次回分からはいつもな感じに戻ります。

ファクトはただの鍛冶職人である。


自称、と但し書きが付いてしまう部類ではあるが……。


事実、様々な武具を瞬く間に作り上げてしまう様は、

優秀な鍛冶職人だと言えなくはない。


ただ、彼と出会った人々の多くは、それを否定するだろう。


あれだけ戦える実力者がただの職人でたまるか、と。


あるいはその手広さから別の言い方もされるかもしれない。


武器も、防具も、薬も、多くの道具も造りだし、

それらによって様々な物事への一手を作り出す。


そう、それはそうではない存在から見てみれば、

万物を作り出す存在にも見える。


国を治める立場から、縛り付けるより味方にしておくほうが利があると考えた者。


共に戦った仲間として、どんな力を持っていようと気にしない者。


その力の異常さに考えが追いついていない者。


彼をいい意味で人外の能力を持っていると評する者は多くいた。


だが、彼のことをただの人間だと評する者も少なからずいたこともまた、事実であった。


そんな彼にとっては程度はともあれ、戦えることは極々当たり前のことである。


また、様々にやれることが多いのも当たり前のことであった。


作成特化のステータス、スキル構成とはいえ、

ゲームであるMDを生き抜く上で全てが他人任せ、では

どうにもいかなくなるのも確かなこと。


強敵はともかく、そうではない容易な部類ぐらいは

自分で入手できるに越したことはない。


勿論別のプレイヤーから素材買取の形で

素材を集めるのが一番時間を有効に使えるのは間違いなく、

ファクト自身も一部のアイテムはそうしていたこともある。


しかし、移動にも時間がかかり、

それだけの討伐、採取を定期的にこなせるような

伝手が確保できないこの世界では、それは望めないことであった。


また、MDには譲渡不可の素材という物も存在していた。


大抵の場合それらはより強力な、レアな性能のアイテムの材料となる。


であれば、取りに行くしかないのだ。


そこそこ戦える鍛冶職人(自称)


これがファクト自身の考える自分への評価であり、

出来るだけ世間からそう見えるようにしているのも確かであった。


物語の英雄のようにはいかないことは自分自身がよく分かっている。


強力なアイテム、武具は確かに所有している。


だが、それらは有限である。


この世界では再入手が至難であろう材料を使った消耗品など、

使いたくてもおいそれとは使えない。


であるならば、切りやすい手札、

補充しやすい手札で勝負するしかないだろう。


そして今日もファクトは自ら採取をするための腕を鈍らせない様、

さらには覚えている限り、覚えた限りのスキルや魔法を

手記として記すべく、土くれのゴーレム相手に確かめていた。






片手剣から始まり、槍、斧と確かめるようにゴーレムにスキルを放ち、

その結果を紙にメモを取りながら次の行動へ。


時にスキルや魔法の組み合わせで発生する

ボーナスのような物がないか、実験として繰り返す。


スキル構成の都合上、ほとんどがゲームでは

初級に分類される物たちだが、

基本に忠実に大きな動きで放たれる結果は

派手、というしかない結果を産む。


崩れ落ちるゴーレムを前に、

深呼吸をして一人、ファクトは考える。


今まで出来るだけ隠していた手札を

世にさらけ出すであろう行為の是非を。


(今さらではあるが……な)


行動をつなげにくいスキル、つなげやすいスキルなどを

メモしながらファクトはそう自嘲気味に笑う。


メインのスキルは鍛冶職人に必要な物たちとは言え、

戦えないわけではなく、また、作成に必要なために

多くの種類に手を付けている。


ファクトの表情をゆがめているのは、

やろうと思えば同じことをこの世界に来てすぐにやれたはずだろうという思いだ。


もっと早く同じことをして

世界に知識を広めていれば結果は違ったのではないだろうか、と。


ファクトの知らない場所で、モンスターの手によって

命を落としてしまった人間が少なくないことは想像するまでもない。


そんな人々が、もし初級でも攻撃スキルを手にしていたら

救われたかもしれない、生き残っていたかもしれない。


「考えるだけ無駄。それに傲慢が過ぎるな……」


今さらながらにファクトがこんなことを考えてしまうのも、

スキルを実際に手にし、これまで勝ち目のなかった怪物を倒し、

喜びとともに帰ってくるということを冒険者の何人もが成し遂げるのを

目にしたからかもしれなかった。


これで家族の暮らしが良くなる。


そんなことを祝いの祝杯により赤ら顔になった中年の冒険者が言うのを聞いたり、

このまま町は僕が守る、と仲間と共に出かける若者を見たりしたからかもしれなかった。




第二次精霊戦争が始まったと記録に記されたこの時期。


世界は伝承の再現、再発見に沸いたとも伝えられている。


失われたはずの魔法。


伝える者のいなくなった技術。


それらがダンジョンや遺跡から手がかりが発見され、

多くの物が再現可能な技術、知識として世に広がっていった。


それは怪物を打ち砕く刃としての攻撃スキルであり、

脅威をはねのける防御スキルであり、

闇を焼き尽くす魔法であった。


精霊が火となり、風となり、

あるいは薬剤の薬効となり、巡っていく。


いわゆるGMでもなく、ゲームや世界の設計者でもない

ファクトには厳密にはわからないことであったが、

彼の物らしき手記の一部にこんな言葉がある。


─精霊は停滞を望まない。


─何かであった精霊は別の何かになりたがる。


─だから、精霊が巡っていることが正しい姿なんだ


と。


そんな多くの言葉と謎を後の世に残したファクトだったが、

今は目の前の課題に必死であった。


スコッターズの工房の一室。


ファクトが自室にしている部屋に、うめき声が響いていた。


声の主はファクト自身。


彼の前にあるのは何枚もの書面。


その全てが断りにくい筋、さらには内容も

なんとかしたいと思える物だった。


脅威となる怪物が、といったものもいくつもあったが、

共通しているのは、増える情報という名前の資源、

それらを扱うための手法が不足している、なんとからないか、という物だ。


言うまでも無く、原因はファクトにある。


本人はさりげないつもりで、徐々にというつもりで

世に出した手記達。


だがそれらが生み出す結果は、ファクトが思っている以上に

劇薬であったのだ。


「俺は一般人だってのに……」


そんな言葉も答えを導くわけでもなく、

本人の気質も手伝って、頼られたからにはなんとかしなければ、と思いなおす。


実のところ、手紙をよこした大半は

ファクトに全て解決してもらおうなどとは思っておらず、

あくまでもアイデアの1つぐらい出てこないだろうか?といった

軽いニュアンスの依頼として手紙を出している。


そのことに気が付かないまま、ファクトは返事を書き、

いくつかは直接出向くことで解決を図ることにした。


現地に出向いたファクトの手の中には、常にいくつもの冊子があった。


わざと古びた状態になっている紙に文章が記されたものだ。


精霊戦争前の手記としてヒントになるかもしれないから持ってきた、

という建前をいうためだけの物。


共通した文体、共通した考えにより記されたその手記と考えられていた冊子たちは

当然のことながら作者は表向き、不明である。


だが、その内容は多岐に渡り、為政者たちの助けになったということも

人々の間に噂として広まっていく。


そして、一人の過去の人間が書いたのではないか、

という噂に集約されていくのであった。


不明な作者。


人々はそのあらゆる物事を記した人物を

神の使いとも、万物を見通す能力者だとも噂した。


古の、賢者なのではないかと。


いずれにせよ、多くの物事、怪物やその姿、能力や生態。


伝承にしか伝わらない武具の製法のヒントや材料、その入手方法。


かつて存在したという流派の技や一族の魔法。


断片的にであってもあらゆるものが記されているとされる

その手記達を書いた者を、人々は噂する。


万物を産み出した者、マテリアルメーカーと。


真実はたった一人の元現代人が覚えている限りの知識を

ゲーム知識交じりで拙く書き上げた物なのだが、本当のことを知る者は後の世にはいない。



決して編集された手記達はク○アバイ○ルとか呼ばれてませんので、はい。


どこかに現代農業とか乗ってるかもしれませんが……。

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