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06「ベテラン無双、ただし格下に限る-1」

戦闘は次になりました。


全体の中盤ぐらいまではファクトでも無双に近いことが可能、ということになります。


※残酷な描写アリ、はどの程度から言うのかイマイチ。

 わかる方いましたらコメントなどでお願いいたします。


ここに1つ、問題がある。


ゲームでも最弱、基本と良く扱われるスライム。

それだけを延々と倒したらどうなるだろうか?


いつかLvは上がるが、途中で萎えることだろう。


スライムでなくても良い。


何か1度なら簡単な行為をひたすら続けることは精神的に疲弊する。


様々に考え方はあるだろうが、ネットゲーム的には

この辺りを越えた所からベテランになるのだと思う。

超えすぎると廃人とか呼ばれてしまうのだが。


1度には0.1%も上がらない熟練度であったり、経験であったり。


後ろ指を挿されることもあるだろうが、その結果はその人を裏切らない。


圧倒的な攻撃力であったり、攻撃を耐え切る体力、風を切る速さ、全てを飲み込む極大魔法。


どれだって努力の結果なのだ。




「その遺物を使えばどの鍛冶職人でも、というわけではないのだな?」


「ああ、長く俺に馴染んだからこそだ」


呼び出された事務所で、副隊長だという彼に問われたことに答える。


工房から持ってきたハンマーに視線をやりながら、副隊長がため息をつく。


明日からどこかで延々と言われるままに作ってろ!みたいになっても人生面白くないので、遺物によるものだという勘違いをそのまま利用する。


「そうなると、代理の職人を用意して、君を外に引っ張りだすというわけにはいかないか」


話によれば、今の自警団は戦力が低下しており、その補充が不可欠だということだ。


街の誰かに聞いたかはわからないが、自分が鍛冶職人兼冒険者として旅の途中、ここにたどり着いた、という話が上手く伝わっているようだ。


建て直しに伴う期間、一時的にだが手伝ってほしいという依頼だった。


「何週間も街をあける、ということでなければ大丈夫だと思うが、出来ればフリーな立場でいたいのは確かだな」


そう答え、声がかかった時に余裕があれば同行する、という形で話を収める。


帰り際、訓練中と思わしき集団を眺める。


集団に声をかけているのは随分と迫力ある人物……隊長なのだろうか?


俺の視線に気がついたのか、隊長(?)が振り向いて近寄ってくる。


「君がファクト君か。トモが世話になったようだな。私はグランモール自警団の隊長、シルヴァだ。良い武器を作ってくれた。まるで遺物のマジックアイテムだな」


「運が良かったんですよ。きっと、精霊の祝福です」


握手に答え、そうごまかす。


と、シルヴァの動きが止まり、視線が俺の顔をまっすぐと捉える。


「随分と鍛えているようだ。器用そうな手先の中にも、自分以上の強さを感じるよ。こんな街中にいるのが不思議なほどだ。君は一体……」


どきりとした。


数値としてのLvが見えているわけではないだろうが、

体つきや腕の感覚、身のこなしで見破られたのかもしれない。


俺が、一般的な人間や兵士からは相応に強い位置にいることを。


「大丈夫ですよ、手の届く範囲はやらせていただきます。色々と」


突然やってきた鍛冶職人、その相手が自分でも相手にならないだろう強さを持っているとなれば、怪しいのは当然なのだが、何かの時は頼りにするさ、と背中を叩かれただけですんだ。


理由はあるのだろうが、今はありがたい。



先ほど、副隊長から受けた依頼の確認をしつつ、事務所を離れる。





「うーむ、色々あるなあ」


その足で白兎亭へと向かい、壁に貼られた依頼群を眺めていると1枚の依頼が目に入る。

『坑道の落し物探しをお願いします』

とあった。


読み進めると、一攫千金を夢見た若者らが、街近くの鉱山跡に向かうも、途中でモンスターに遭遇、なんとか逃げ帰るも親の形見である懐中時計を落としたことに気がついた。なんとか取り戻せないか?ということだった。


確かに、モンスターがいたとなっては二度目は無い。

特に外に出てくるわけではないようなので、自警団としても退治に迎えないし、冒険者としては実入りが無い、といったところか。


少し紙が痛んでいるところから、他の依頼より長くここにあるのだろう。


念のため、マスターに確認に行く。


「ああ、あれか。まだ有効だよ。依頼者は市場にいるはずだ。確か、兄妹で野菜を売っているよ」


マスターに礼を言い、市場へと向かうことにする。





どの時間でも賑わう市場。


様々な物品が売られるのを眺めながら、目的の店を探す。


野菜を売っている店はいくつもあれど、男女ペアで、となればすぐにわかった。


「ちょっといいかい?」


「あ、いらっしゃいませ! 何をお求めですか?」


元気良く受け答えをする少女に首を横に振り、兄であろう男性、

どちらかというとまだ少年に近いほうへと顔を向ける。


「白兎亭で依頼を見たんだが」


俺の言葉に、2人の表情が明るくなる。


「受けてくださったんですね! ありがとうございます!」


勢い良く手を取られ、ぶんぶんと上下に揺られる。


「カイン兄さんも落ち込み気味だし、誰も来ないし、もう駄目かと!」


妹さんも、きらきらとした視線を向けてくる。


「鉱山跡には2人だけで行ったのか?」


とてもそこまで無謀、いや、活発そうには見えなかった。


さすがにそんなことは無かったようで、

他にも何名かの男友達と一緒に、ということだった。


「襲ってきたモンスターなんですが、特徴からゴブリンじゃないか、ということなんですが。何匹か色が変なのがいたんです」


兄―カインが言うには、集団の中に目立つ奴らがいたということだ。


(色違い? 亜種か?)


MDでも街のそばといえばゴブリンなのだが、強さはかなり差があった。

色や武具が違うといったわかりやすいもの以外にも、単純に時折、妙に強い集団がいた覚えがあるのでここでも油断はしないほうがいいだろう。


「元々そんなに奥に行けなかったので近くにあると思います。よろしくお願いします!」


街と鉱山跡の距離など、手元の紙に位置関係なんかを書き出してもらった。




(高さは俺の2倍ぐらい、横幅もそれなり…、か)


街近くとはいっても、相応に距離があるらしい鉱山跡へと足を進める。


ちなみに使う魔法はファストムーブ、速歩だとか呼ぶこともあった移動用魔法だ。


熟練により効果時間や、速度上昇の幅が広がる。


偶然誰かに遭遇して見られないとも限らないので、小走り程度に抑えておくことにする。


進みながらも、使う装備をアイテムボックスから選びながら街道を進む。


アイテムを捨てたり出来ない俺の性分に合うように、MDではアイテムボックスはほぼ無限の容量を持っている。


何故かこの世界でも使えるソレのタブ数は数えるのも面倒だ。


後ろの方に行くほど何を入れたか覚えていない。


それでも、RPGでは最後まで回復薬は取っておくぜ!な日本人ゲーマーには性に合っていたのだろう。MDでも溜め込む人は多かった。



途中の木陰で足を止め、自分が装備できた武器防具を入れるように決めていたタブを選び、無難そうな一式を取り出す。

内訳は

・状態異常用の耐性付きペンダント

・一定時間事に自動回復する指輪

・腕力要求の低いエルブンチェイン

・素材狩りに良く使っていた電撃付与付きロングソード

である。


そういえば、MDじゃエルフには遭遇したことが無い。

高難易度の森の奥なんかにいるらしく、戦闘プレイヤー達から素材を買い求めたぐらいの存在だ。


例に漏れず長寿だというから、今のままでは会えないのは確実ではあるが、もしかしたら……何かわかるかもしれない。


出した装備に着替え、剣を何度か振り回す。


恐らくは自分にだけ見えているショートカット群も戦闘用に切り替え、

いくつかの攻撃用スキルを発動し、動きを確かめる。


「よし、行くか!」


整った街道から離れ、そうであったことがわかる程度の鉱山跡へ続く道を進む。









―鉱山にて


薄暗い岩壁の一角に、ぼんやりと灯りがある。


廃坑、つまりは真っ暗闇のはずの空間にある灯り。


金属音と、笑い声のような声が静寂を切り裂き、空間を満たす。


ゴブリンである。


どこから手に入れたのか、粗末な武具をまとい、各々食べ物を口にしている。


その内の1匹が自分の手元で小さいものを転がす。

依頼主の兄妹がいればすぐにわかったであろう時計。

ファクトが受けた依頼の目的の品である懐中時計。


その時計を照らす灯りに下卑た笑いを上げるゴブリンの1匹。


赤黒い肌。


周囲のゴブリンが濃い緑が主な体色の中、明るい場所に行けば更に目立つだろう。


一頻り眺めて満足したのか、そのゴブリンは部屋を照らす灯り、ランタンのようなケースに視線を向け、何かを確かめるように覗き込む。


『ギィッ!』


その時、部下なのか、部屋に1匹の普通のゴブリンがやってきて声を上げる。


何事かを報告するように語り合った後、俄かにその部屋が騒がしくなる。


『ギィッ! ギギッ!』


リーダー格の指示に従うようにゴブリン達は暗い坑道へと駆け出した。










―入り口付近にて


「こっちは依頼人達のか、小さいのがゴブリン、と。多いな」


陽光がまだ届く鉱山の入り口付近、俺は足元を調べていた。


入り口まで追ってきたのだろうゴブリンの足跡はかなりの数だ。


数匹、では終わらないようだ。


もし鉱山跡を住処にしているとすればまだまだいると思うべきだろう。


どこかの1匹見たら30匹、な黒い奴とは違って命が危ない。


もしかしたら見えているHPゲージが尽きる様なダメージを負えば目が覚めるのかもしれないが、とても試せない事柄だ。


陽光が届かない部分には暗闇が広がっている。


夜目の利くモンスターならともかく、俺では何も見えない。


「何も見えないよりマシか」


灯りを頼りに奇襲されるかもしれないが、目の前に敵がいました、では話にならないので

小さくつぶやき、探索用にも使える魔法、ライティングを発動する。


何かが燃えているわけでもないし、電気というわけでもない、まさに魔法、な光源。


頭の少し上あたりをふよふよと漂い、歩けばついてくる。


ゲームの時には気がつかなかったが、火にしても水にしても、もしかして精霊さんが何かしてくれてるんじゃないだろうか?


冒険者で攻撃用の魔法使いは余りいないと聞くので、資源が減った、という話と無関係ではなさそうではある。


今のところ光の中にそれっぽいものは見えないが、いると仮定してよろしく、とつぶやいておく。


誰かが見たら変な光景だ。


気を取り直し、いざ、と踏み出した先で金属音。


しかも一気に遠ざかっていく。


(! 見張り、か。どうやらカイン達が逃げられたのは偶然のようだ)


野良のゴブリンがたまたま中で暮らしてしました、なら見張りなど置くまい。


いつ襲われても良い様に姿勢を整え、奥へと向かう。


(なんだったかな、こういう時は……そうそう!)


「さあ、狩の始まりだ!」


……ちょっと違ったかもしれない。



いつも長さは4000程度の予定です。

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