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03「新しい生活へ-2」

結構勢いのまま、書きたい事だけ、なので言い回しとかをいじる場合アリ、です。



ファクトがグランモールに住み始めてはや1週間。


とある日、彼の家がある区画へと歩みを進める小柄な少年の姿があった。


年若く、皮鎧姿で少年兵といった様子の彼は手元に布で巻かれた短い棒状の包みを抱え、

何かを探すように辺りをきょろきょろと見渡している。


「この通りを抜けてすぐ、のはず……」


そして、目的の場所を見つけたのか、その建物へと駆け寄った。









-工房内にて


「今日はマリーおばさんの包丁直しがあったな」


家の掃除や、溶鉱炉の確保等に口を利いてくれた近くのおばさんに頼まれた依頼をこなすべく、棚の1つから包丁を取り出し、状態を確認する。


刃がつぶれたり、壊れているわけではない。


これなら手持ちの鉄塊で余裕だな。


アイテムボックスの中にあるタブを切り替え、最初の頃に見ていたものとは別グループのアイテム群から、小さなピンポン球サイズの鉄球とも言うべき素材を取り出す。


これは工房を構えてからすぐに近所から不要な金物をもらって

素材化したものだ。


スキル的には、熔解、というのだが精霊っぽいものが見えた今となっては、

各種精霊への原初転換とでも呼んだほうがよさそうな気がする。


ともあれ、これまでの出来事から、ゲーム中での素材サイズそのままだと非常にもったいないと学んだ俺は、手持ちの素材の大きさを細かく分けることにした。


例えば、鉄塊もピンポン玉大であったり、バスケボール大など、武器に見合った大きさに分けたりといった具合だ。


何度か試した結果、斧やそういった多く素材を使いそうな武具はそのままずばり、大量に素材を使う必要があった。

途中で何個も塊を追加する必要があったのだ。


逆に、包丁やダガー程度ならその分、使う素材も小さくてすむことがわかった。


様々に作ってみたが、どれもこれも短い回数で出来た上に、ほのかに光ってるものだから

部屋の1つに押し込んである。


武具はともかく、鍋や包丁まで光るようではおかしなことになるので、

色々と試した結果、2つの法則が見つかった。

1つ目は、元々、自分が持っていた素材だとなんでもかんでも確実に光るようなのだ。


この世界にある素材だと大体3分の1ぐらいの確率で光った。

それに、普通ので!と祈っていたらなぜか光ることは無かった。


きっと精霊さんが聞いていたに違いない、うん。


ちなみに、光ってしまった包丁はまた素材に戻しておいた。


2つ目としては、精霊っぽい何かに見守るように意識を向ければ

一叩きで出来上がり!ということが無いと言うことだった。

急ぎの時は便利だが、普段であれば味気ないので、この発見は大事である。


そんな訳で、今日は包丁ということでこちらの世界での素材を使うことにする。

早く出来たほうが良いだろうから、今回は精霊サポート?にお任せすることにした。


熱し、溶かし、元の包丁と合わせて叩く!


後ろのほうは実際の鍛冶では有り得ない手順ではあるが、

マテリアルドライブ中でならともかく、こちらでは

この程度でもなぜか成功する。


半日カンカンと叩かなくていいのだから、大助かりである。


金床の上には綺麗になった包丁の姿がある。


熱が収まった様子の包丁を掲げ、窓からの光に反射させる。


「うん、骨付き肉も一刀両断!って感じだな」


これなら喜んでくれるだろう、と布を巻いたところで、ノック。


どうやらお客さんらしい。


「どうぞ、開いてますよ」


俺の声にゆっくりと扉が開き、入ってきたのは少年だった。

体格にあった軽装ではあったが、兵士と言える装備。


まだまだ駆け出しという第一印象だが、はたして?


「あ、あの! ここが武器の修理もしているって聞いて!」


緊張からか、いささかオーバーな声と動きで抱えていた包みを俺のほうへと差し出してくる。


(中の人は女性声優?)


高めの少年独特の声に、なんとなくそんな印象を受ける。


「ああ、やってる。何をどうしたい?」


「はいっ! えっと……」


別に命令したわけでもないのだが、びしっと1度背筋を伸ばした少年はおどおどと工房内にやってきて包みを開ける。


「ずいぶん古いな」


そこにあったのは半ばほどから折れてしまっている一振りのロングソード。

柄等からずいぶん使い込まれた印象を受ける。

長く大事にされたのだろう。


この時点で依頼は大体受けるつもりだった。


だって、ロングソードだし。



この世界に来てからの俺の生活を見ている神様がいたら、

ロングソード好きだなあ?と思うかもしれないが、当然である。


ファンタジーといえば剣と魔法! 剣と魔法の剣といえば両刃のロングソードである!


魔法剣だって基本長剣!!!


……まあ、それは誇張だが、わかりやすいじゃないか。


正直、斧や槍1つ作るより長剣を何本も作っていたほうが気が楽だし、楽しい。


「はい。先輩から頂いたんです。でも、自主訓練で折ってしまって」


俺が意識を横に飛ばしている間に少年が事情を説明してくれた。


(ふむ、元の長さにするには足りない感じだな)


「折ったとしても破片が足りないようだが?」


「そうなんです! 勢い良く折れちゃったので、どこに行ったやら……」


落ち込む少年の言葉に、俺は思わず問いかける。


「って、何を斬ってたんだよ?」


第一、それは砕け散ったというのだ。


「い、岩です。先輩が『無茶を通してこそ鍛えられる!』っていうものですから」


(…多分、その先輩の言いたいことは少し違う)


「良くわかった。直すというより鍛えなおしになる。長さは短くなっても構わないか?」


「もちろん! それで御代なんですけど……」


おどおどした様子でテーブルの上に出してきたのは銅貨の山。


相場は良くわからないが、十分と思っていないのは少年の顔からわかる。


だが、本人にとっては大金だろうこともわかる。


「暮らせるのか?」


「え?」


だから、俺は聞く。


「これだけ出して、君は暮らせるのか?と聞いているのさ」


目をあわせ、ゆっくりと俺はその言葉を吐き出した。


「……正直、何も買えません。自警団からの少しの給金が出るまで、エールどころかジュースの一杯も買えないですね」


肩を落としたまま、少年はつぶやく。


(あ、自警団なんだ。ここじゃ志願制っぽいな、若いし)


出てきた単語にふと考える俺。


「でもっ! 武器が無くちゃ戦えませんし、何より……強くなりたいんです!」


俺の思考をさえぎるように、ぐいっと顔を上げ、強く言い放つ少年、その顔は本気だ。


「強くなってどうするんだ? 威張るのか?」


脳裏に浮かぶのは、マテリアルドライブ時代に俺のような生産者を自分では何も出来ない、と蔑み、自分のような強いプレイヤーに使われるのを誇りに思え、とばかりに作成を強要しようとしてきた微妙なプレイヤー達であった。


「いえ、守りたいんです。家族を、何より横に立つ仲間を!

 だから、この剣にもう一度誓いたい!」


「誓う?」


少年の声に答えるように、剣の破片達からふわりとほのかな光。


それを視界に納めながら問い返す。


「先輩から譲ってもらった夜、剣に誓ったんです。

 自分は強くなる、誰かを守れる力になるって。

 でも、多分自分が馬鹿だったから剣を折っちゃいました。

 だから今度は、一緒に歩もう!って誓いたいんです」


自分一人じゃなく、剣と共に歩みたい。


少年はそう言ったのだ。


破片から昇る光は消えていない。

少年には見えていないようではあるが。


「よし、その半分でいい」


だから俺は銅貨の山を指差してこう言った。


「え?」


「半分の費用でやるって言ったんだ。若いんだ、買い食いだってしたいだろう?」


上手く行っているかはわからないが、茶目っ気を混ぜて半分戻すように促す。


「いいんですか?」


若さゆえの遠慮無さか、すぐさま袋に銅貨を戻す少年。


「その代わり、皆に宣伝しておいてくれよ」


その姿に苦笑しながら、俺なりの報酬を要求する。


「はいっ!」


元気良く答えた少年に頷き、

出来上がるまで座っているように言い、準備に取り掛かる。


金床の上に破片を置き、大体の調整をする。


使う塊の大きさを定め、少し短い長さに足りるような大きさを選んで素材を取り出す。


(何か危なっかしいからな、おまけしておくか)


武器生成-近距離B-《クリエイト・ウェポン》


小声でささやき、スキル実行。


工房内に音が響き、ひたすらに俺はハンマーを振り下ろす。


Cは単純な作成、加工。Bからは特殊効果付与、Aとなると専用品などが作れる。

B、Aと来ると色々とやれることは増えるが、主なとこはこんな感じだ。


また、良い素材だと良い効果が、という形になる。


つまるところ……


-ショートソード(状態異常耐性:弱)


完成した剣は俺にはそう見えた。


長さ的にはショートソード扱いのようだが、ショートソードとしては妙に長い。

ぎりぎり境界線の上にある長さのようだ。


素材が素材なので、効果としては1番下、毒や麻痺等に一応、強くなる効果だ。


「ほれ、振ってみ」


ほわー……とこちらを見ていた少年に手渡し、先を促す。


「へ? あ、はい! あ……結構軽い」


少年は何度か素振りをしたところで満足したのか、鞘に剣を収め、振り向いた。


「ありがとうございます! また来ます!!」


声の勢いそのまま、飛び出していった。




「また? 手入れ以外には来ないほうが良いと思うんだがなあ……」


ドアから顔を出し、少年の後姿を眺めながらつぶやく。


「あ、スキル見せた上に、名前も聞いてないな」


新しい生活に気分が浮ついたままなのだろうか?

少々言動が若くなってきている気がする。


少年が騒がなかったところを見ると、その筋ではスキルは一般的なのかもしれない。


―もしかしたら、少年が何も知らないだけかもしれないが。



その答えと少年との再会は1週間もしないうちにすぐ叶う事になる。


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