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マテリアルドライブ  作者: ユーリアル
閑話群(設定にあるゲーム時代の小話です)
10/292

閑話「ある日のMD。雲上の支配者(四か月目あたり)」

時間軸はバラバラです。


ゲームであるマテリアルドライブ(MD)としての描写なので、

本編中とは描写、設定に差異があります。

読まなくても問題ありません。


ファクトはこんな奴だ、スキルはこんな感じなんだ、という参考やお楽しみになれば幸いです。

「ちょっと休憩するか……」


別に喋る必要は無いのだが、邪魔が入らないようにと

わざわざ入ったキャンプの中の作業場には俺一人。


壁にかかった時計の針の音、一定の火力で赤く燃える炉の炎の音。


俺自身が生み出す以外にはそんな音しかない空間だ。


長い単純作業の末、少しばかり気分が滅入っても不思議ではないだろう。


作業自体は別に街中でも、やろうと思えばやれるのだが、

最近の状況的には余りいい方法とはいえない。


大した秘密も実は無いのに、俺の鍛冶関係の秘密を

暴いてやろう、あるいは一目見ようと、

いつの間にかプレイヤーがそこかしこに集まってくるからだ。


俺以外の高レベルの鍛冶スキルを持った面々も、

理由は違えど基本的に人目のある場所で作業はしていないと聞いている。


その理由はしばらく前にあたったパッチである。


ようやくといえばようやくだが、

鍛冶、アイテム作成に関するスキル周りの

様々な条件が推測交じりだが判明していった結果、

以前ほどとは言えないが、作成に関するゲーム内経済の循環は

再開されたといっていいだろう。


だが、それは想像以上のデメリットを産んだ。


一部に依頼が集中しだしたのだ。


以前の仕様であれば、職人(と呼ばれるプレイヤー)の差は大きくなかった。


確かに記号的な組み合わせ等には個人差はあったが、

武具性能や、成功率で言えばハイレベルプレイヤーでなければ

いけない、という装備は多くなかった。


結果、住み分けが出来ていたのだ。


だが、現在は違う。


単純にレベル、作成用スキルのレベル、そして熟練具合。


簡単に言えば、高レベルの武具を作るには、作成用スキルだけでなく、

本体としての本人のレベルも上げる必要があるのだ。


だが、それだけではない。


まだ俺自身も掴みきれていない要因を元に、

鍛冶に限らずアイテム作成関係の結果はプレイヤーを振り回していた。


悩んだ同職が、秘密を知りたいと思うのはわかるのだが、

どうにも教えれるような事柄でもなく、

聞かれても困るし、教えれるようなことではない、と

正直に説明しても信じてもらえないのが現状だ。


ゆえに、作業中は知り合い以外には見せたくないというのが今の俺の本音である。


出来るアドバイスとしては、レベル等をとにかくあげろ、

ということとなるのだが、それは茨の道だ。


ダメージは与えにくく、相手の攻撃には余り耐えられない。


足も遅く、魔法も威力がさっぱり。


そして攻撃や防御のスキルも少ない。


あくまでもその筋の専門職と比べれば、ではあるが

俺のようなタイプは戦闘には向かないのだ。


安全マージンを取り、アイテム使用も前提であれば

ついていくぐらいはできるが、戦力にはほとんどならない。


MDに限らず、生産職、スキルのあるゲームで

それを軸に過ごそうとなると誰しもがぶつかる難問だ。


気の利いた仲間が常にいて、援助してくれればそれも関係が無いかもしれないが、

そうなってくると大体はそのプレイヤーは所属ギルドを優先することになる。


それが人の子という奴だ。


結果、俺のように基本フリー、未所属で高レベル、

となると皆無ではないが、かなり限られる。


もっとも、そのレア度を実感したのは結構後のことであるが。


それもこれも、日々の細かなスキルレベル上げと、

チャンスがあればひたすらフィールドやダンジョンで戦い抜いた結果だろう……。


と格好良く言いたいところだが、ほとんどは旧MDからの引継ぎといえる。


なんだかんだで、VRというのは疲労するのだ。


本当はそこまで疲れていないはずなのに、

これだけ走り回ったのだから疲れるだろう、というような精神的なものか、

実際の体力は別として疲労を感じることがほとんどだ。


もしかしたら、ゲーム機そのものに、事故防止に

一定時間で疲労を感じるような電気的な何かが出てるのかもしれない。


ともあれ、結果的にレアな鍛冶職人となった俺が

外部に立ち上げた予約用のサイトは盛況で、

今日もずらずらと連絡先と作成依頼が並んでいる。


持ち込みあり、無し、個数や条件その他。


自分で作業内容から期限を設け、

それまでに基本的に作るようにしているのだが、

明確さが気に入られたのか、最近大口の話も多い。


となると1人こもって作業も増え、冒頭に戻るわけだ。


「どうするかな……雲海にでもいって、回収もするか」


俺は気分転換と、素材採取を思いつき、リストから

知り合いに声をかけるのだった。









雲海、それは文字通り雲の海である。


場所としては無駄に麓から上り続けるルートと、

いくつかの転送ポールを使って頂上付近までいけるルートと2つ。


オリンポス山と名前の付いた、巨大な山にあるフィールドだ。


オリンポス山は地球で言うヨーロッパの山脈たちをイメージしているのか、

この山以外にも多数の山々がある中、一番の高さを設定上誇る山だ。


一応、現時点でも頂上は踏破され、イベントボスや

ダンジョンがあることでも知られているのだが、

イベントの終わり方からして、まだ隠された何かがあると推測されている。


ともあれ、難易度の低くないこの山であるが、

人気のスポットがいくつもある。


そのうちのひとつが今、俺が挑もうとしている雲海である。


おおよそ8合目あたりに出現する転送ポールより少し歩いた先に、

現実にはありえない形で真横に突き出た高台がある。


簡単に言えば、山に突き刺さった滑走路のようなものだ。


そこに何があるか?といえば基本的には何もない。


ただ、その先端から飛び降りることが出来る。


その先はまさに雲の海。


視界一杯に広がる真っ白な綿のような雲を抜けてからが勝負だ。


とあるイベントを終わらせると、この場所はフリーのフィールドとなる。


それまでは限定された場所、なぜか歩ける雲の上でしか

行動が出来ない場所であるが、フリーとなると動ける範囲がかなり広がる。


雲の合間から見える地上の姿は壮大の一言で、

何度も見るためだけに訪れるプレイヤーもいるほどだ。


もっとも、このフィールドの本当の姿はそんな景観ではない。


それは……。





「次! 右斜め前! エアスラスト!」


暴風ともいえる空気の抵抗に抗うように、

さらに強風が俺の体を襲う。


手加減された威力の風の魔法は、重力に逆らうように俺の体を吹き飛ばし、

雲の姿をした場所に強制的に着地させる。


「おおっと、はねるはねる。危ないところだった……」


息を整えながら周囲を見る俺の視界に入るのは、

俺と同じように風の魔法で自らを跳ね飛ばした職人仲間数名と、

護衛ついでにとついてきた前衛タイプのプレイヤーがこちらも数名、

10人にも満たないパーティーである。


何故自分で自分を魔法攻撃してまで雲の上にいるのか?

それはこのフィールドで採取できるアイテムにある。


「お、あったぞファクト」


「幸先がいいな」


待ちきれないとばかりに、雲の絨毯の上にある塊、

突き出たソフトクリームのようなそれを武器で崩し、

中身を確認していた職人仲間が手に取った何か、

それは青白く、魔力を感じさせるアイテムだ。


その名も雷精の卵。


名前のとおり、雷属性を帯びた魔石に分類されるアイテムで、

大きさなどで品質は違うが、武具に雷属性を付与しやすくなるアイテムなのだ。


このアイテム、普段は特定の幽霊のような相手や、

クエストで入手するぐらいしか方法が無い。


そんな中、この場所では確実にではないが、結構容易に手に入るのだ。


もっとも、この場所にも問題はある。


「うわああああーーー!!」


「1名脱落、か」


同じように雲の上を歩いていた一人がいきなり雲の中に消えていった。


正確には、落っこちたのだ。


この歩ける雲の絨毯だが、全てが大丈夫な足場というわけではない。


ある程度法則性はあるものの、歩ける場所と、そうでない場所がある。


間違えて歩けない場所に踏み入れば、当然落ちる。


その上、何もない空の上であるからには……基本的には落下してゲーム的には死亡する。


ただ、痛みやえぐい表現に規制があるように、

精神的に問題ある影響を与えそうな高所落下、にも

MDでは制限がある。


正確にはわからないが、無理、と本人が意識したときや、

気絶相当の状態になったとき、といった状況になると

自動的に死亡扱いになるのである。


逆に言うと、平気な人はぎりぎりまで大丈夫、ということだ。


スカイダイビングが大丈夫な人と、そうでない人の差と考えればいいだろうか。


ともあれ、極々稀に遭遇する専用モンスター以外、

ここには敵もいない。


なのに先ほどの雷精の卵以外にもいくつかの有用な素材が手に入るということで、

鍛冶や作成関係者からは人気だし、

そもそもの高さと落下を楽しむということでも人気の場所なのである。


「ひのふの……なんか多くないか?」


しばらく後、いくつかの足場を飛び回り素材を回収する俺たち。


俺は次に飛ぶ足場を探して周囲を見渡していたが、

背後でメンバーの1人がそんなことを言い出した。


「ん?……確かに大きい奴も目立つな……って、待てよ?」


「いや、それフラグだって」


足場の端から下を覗いていた槍をメイン武器にしているらしい

メンバーも足場の上に広げられる採取したアイテムたちを見てつぶやく。


そんな発言の中身に、俺は思わずそう返したのだった。


確かに、調子が良すぎるといえば良すぎる採取結果。


偶然といえば偶然で収まるのだが、そこはそれ、

結果には原因があるというものである。


「「「あ……」」」


それは誰だったか、俺か、メンバーか、あるいは全員か。


思わず漏れた声の原因は、体を襲うプレッシャー。


瞬間、晴天だった青い空がどす黒くなり、雷鳴とどろく雷雨となった。


専用のBGMと共に雲間から見えてくるのは空飛ぶ巨躯。


「やっべ、ブルーさんじゃないか」


ブルーさんというのは愛称だ。


もっとも、この相手に対して愛称、という言い方が正しいのかはわからないが……。


まだ結構距離があるはずだが、それでも巨大さがわかるその相手。


いわゆる東洋風の姿で、青い鱗が目立つ龍だ。


本来戦うシーンでは、地上の専用イベントであるエリアボス。


だがこの雲の上ではどうも体力が倒せるように設定されていないのか、

無敵と思われる状態のどうしようもない相手なのである。


「ま、デスペナが痛いけど素材でトントンってことにするか」


「そうだな。んじゃ、また街で」


強敵を前に、俺も含めて口調は軽い。


当然といえば当然で、この雲の上でブルーさんと

まともに戦うのは不可能だからである。


広くなく、いつ落ちるかも知れない足場、

広範囲の攻撃にその威力、戦線を維持するのは非常に困難だ。


噂では1時間ほど戦い抜いたギルドがあるというが、

倒されたという話は聞かない。


つまり、そういうことである。


後は雷に打たれるも良し、なぎ倒されるのも良し、

あるいは飛び降りるも良し、である。


俺はその中から飛び降りることを選んだ。


雷鳴とどろく空の中、というのも景色としては一流で、

感動するものに変わりは無いからであった。


「じゃ、お先に!」


叫んで体を空中へと躍らせる。


自由落下の最中、俺は雲間に人形のような、

半透明の姿の何かを見た気がした。


その正体を確かめる前に、

俺を逃がさないとばかりにやってきた落雷が

空中で俺を射抜き、俺はHPをゼロにしたのだった。

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