Thursday Afterschool そういう気持ち
放課後ともなると残っている生徒はごくわずか、私は今日一日の疲れがどっと出て、机にうつ伏せになっていた。
私の前の、各務くんの席に私の方に体を向けて座っている宮本。
残っているクラスメート達は宮本応援体制で遠巻きに私達を見守っている。いやどう見ても興味本位なだけでしょ。しかし抗議する余力は既になかった。
「お疲れのようですね、奈穂ちゃん」
「う゛ー」
気を遣って否定してあげる気力もない。
ミス青葉にドン引きだったくせに何気に呼び方が「奈穂ちゃん」に変わってるし、順応性の高いやつ、宮本って。
「やっぱり俺のせいかな?」
「違うでしょ」
「そお?」
「はい」
この疲労感の原因は生徒会長とミス青葉だ。
絶対人のことからかって楽しんでる。
顔だけあげると宮本と目が合った。
「ん?」て笑いかけられてものすごく照れくさかったから視線だけズラした。
宮本はこの2日間で私を嫌になったりはしていないのだろうか?
想像とちょっともしくはかなり違う、みたいに思ってないのかな?
どこがいいの?って聞いてみたい気もしたが、それって好きな人に気持ち確かめるみたいで、聞きにくくって、この2日間あんまり弾んだ会話もないし。
明日でおしまいって感じが濃厚だなあ。
「奈穂ちゃん?」
「あっごめん」
「せっかくなんでどっか一緒に行きたいんですが、希望とかある?」
「んー・・・」
宮本とやってきたのは公立図書館。
学校の最寄駅からもう一駅歩くくらいのところにあるんだけど、比較的新しい図書館で、AVコーナーが充実して、完全防音の専用の部屋があって、中で所蔵しているDVDやCDを見たり聞いたり出来る。
その室内は個別指導の学習塾みたいに仕切られた机が左右の壁際に2つずつ並んでいる。
机にはディスプレイとCDとDVDのプレーヤーが設置されていて、椅子は机一つに対して二つずつ用意されている。
大抵は一人で来ていたから、余った椅子には鞄を置いたりしていたけど、今日は荷物は足元に置いた。宮本は私の左側に座った。
見たいDVDを閲覧室の検索用PCで探して、閲覧希望をプリントアウト、貸出カードと一緒に持って行くと席が空いていればヘッドホンとメディアを一緒に貸してくれる。
本当はオーケストラのコンサートDVDが見たかったけど、あいにく貸出中だった。宮本の方はプロバスケのDVDに食いついていたみたい。
結局二人で見て差し障りのなさそうな子犬が出てくる映画にした。
「しかし、ガッコの近くにこんな図書館があるなんて知らなかった。」
「バスケ部終わるの遅いらしいね。」
終わったら真っ直ぐ帰るしかないでしょ。
映画は面白かった。主人(犬)公が美犬と恋に落ちたりして、何かにつけて一所懸命なところが可愛かった。
全体的にはコメディだから笑うところがいっぱいあって、でもその隙をついてちょっと泣ける場面になってきて・・・
不覚にも・・・
目に・・・・涙が・・・・・
宮本に悟られたくなくて首を不自然なくらい真っ直ぐにディスプレイの方に向けていたけど、鼻水が・・・・・
思わず「ずずっ」って啜ってしまった。
映画に集中していればその内お笑いモードに戻るだろうとそのままにしていたら、宮本に肩を抱かれてそのまま、宮本の体に引き寄せられた。
は、恥ずかしい-
確か、後ろに一人利用者がいたはず。
座っている向きは背中合わせだけど、もし先に向こうが席を立ったらと思うと顔中が茹でタコみたいになった。
映画はコメディ路線に戻ったみたいだけど、もう話が頭に入らなくてどこが笑いどころか分からなくなっていた。
宮本の方も笑っていなかったと思う。
エンディングロールに鳴った頃、おでこの左の方にやわらかくて温かいものが触れた。
も、もしかして宮本・・・
おでこにキスしたぁ??
そのことが原因なのか、宮本も私も図書館を出るまでは無言だった。
こっちから話しかけても宮本が何か言うまで黙ってても気まずい気がするのは何故??
その代わり宮本と私は手をつないでいた。
私達は駅へ戻る線路伝いの道を歩いていた。既に日は落ち真っ暗だった。街頭と進むべき道の先に見える駅の存在を示すものだけが明りだった。
駅を目前にしたところで宮本が私の方へ振り返った。
「怒ってる?」
私は黙ったまま首を左右に振った。
「・・・すごい、すごい恥ずかしいんですけど」
本心だった。
手をつないでいるのも
おでこにキスされたのも
宮本の体に引き寄せられたのも
嫌じゃなかった。
私は宮本のことを好きになっているのだろうか???
奈穂&宮本あと1日です。




