表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
over the sky  作者: ゆほ
2/9

Wednesday Afterschool 敵は身内にあり

このお話は冬のお話し、なんです。

中学からの親友千佳の情報によると、イケメン同級生の宮本圭祐はバスケ部では有望株らしい。


何故か金曜日までお付き合いすることになったけど、宮本が所属しているバスケ部ってのはとにかく厳しい。練習を休むなんてありえないらしい。


私にとってはその厳しさがありえないですが。


まぁその厳しい練習のおかげで放課後一緒に帰るなんてのは不可能そうなので、宮本が部活に出るタイミングで帰れそうだなと、ちょっとホッとしたりしている。


多分宮本もそのつもりなのか、私の帰り支度を待っているかのように教室にいる。


席を立って帰ろうとしたとき宮本が近づいて来た。


「あのー部活は行かなくていいの?」


「今週休ませてもらった。予想より短かくなったけど、藍沢と試しに付き合うことになったら多少は放課後一緒にいられるように12月頃から練習メニュー倍こなしてたから」


何か気合いが凄すぎるんですが、っていうか更に宮本が近づいてきた。


「一応さ付き合ってるんだから物理的な距離は狭めたいんだけど」


そう言って窓に両手を着いて私の前に立った。


後ろは窓、両側は机逃げ道なし。


っつうか近すぎだよ。宮本と私はほぼ密着した状態だ。


ひぇ〜



突然、ガラガラと教室のドアが開いた。


人が来たなら宮本は離れるかと思えばそうでもなく返って体をつけてきた。抱き合ってると言ってもいい体勢だ。


なんでぇ~?それに誰が来たんだ?


「お取り込み中なら失礼」


あっ生徒会長の声だ。


「取り込んでませんからっ!!」


私だと気づいて貰うために大声を出した。


「やっぱ生徒会長とは付き合ってもいいような仲なの?」


不機嫌そうな声で私を見下ろしながら宮本が聞いてきた。生徒会長は普段私のことを「奈穂なほ」と呼んでいるのは誰でも知っていることだから、親密であると思われるのは自然なことだ。


「未来永劫それはない。僕の心は桜子さくらこくんだけのものだ」


背後関係については全くコメントしないで生徒会長は言った。


「生徒会長として他に言うことはないのっ?」


風紀上、生徒が教室内で抱き合っているこの状態はどうなんだ?


「生徒会長として風紀を正す前に、同じ男として僕は彼に味方したいね。それに奈穂も潤いのある高校生活を送れていいんじゃないかな?」


見えないけど、生徒会長はニヤついているだろう絶対。ムカツク。


「だいたい何しに来たのよっ」


「昼休みに奈穂がイケメンに告白されたって聞いたから、下駄箱見たらまだ帰ってなさそうだし、何事か起きているのではないかと心配になり・・・」


宮本が体を離してくれないので、表情が全く見えないが後半は完全に笑い声になるのを押さえて言っている。


絶対面白がっている。


「君も何かあれば相談に乗るから」


宮本に援護射撃的なコメントを発してまた教室を出て行った。


宮本がちょっと体を離して私を見た。


「生徒会長と藍沢ってどういう関係?」


「言いたくない!」親戚、だなんて・・・


私はふてくされて顔を横に向けた。






部活に出る必要がない宮本と駅まで一緒に帰った。


駅の売店で宮本が缶コーヒーとミルクティを買ってきた。


「はい、これ」


宮本がミルクティの方を私に渡してきた。


1月の吹きっさらしの駅のホームは非常に寒い。温かい缶を持っているだけでもホッとする。


「あっ、じゃぁお金」


「いらない」


「だって」


「いいんだ。俺一度藍沢にジュースとかチョコレートとかご馳走したかったんだ。」


へぇ、ってあんまり高くないなぁ。


宮本は急に真面目な顔になって私をじっと見た。


穴が開くんじゃないかって思うくらいにじっと見られるから顔が熱くなってきた。


「だってさぁ、今俺がここにいるのは藍沢のおかげだから」


どういう意味かな??


「なんで?」って聞こうとしたら、私が乗る電車が来てしまった。


恥ずかしさもあって、結局疑問に思ったことが聞けないまま私は電車に乗り込んだ。


振り返ってホームを見るとこっちを見ている宮本と目が合った。


なんとなく右手を上げて小さく手を振ったら、宮本がこの上なく嬉しそうな顔をしていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ