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私の復讐。

作者: 幽幻 桜

おはこんばんにちは。

幽幻 桜です。


別の小説投稿サイトのコンテスト応募用に創った作品をこちらでも載せます。


今回は重ためなお話を創りました。

最後はどうなるのか、是非その目でお確かめ下さいませ。

裏切られた。


だけどそれは他の人にとっては些細で小さなものだと思う。


とても小さくて――とても、下らない。


私はアンタ達を。


ただひたすらに、信じただけなのに。




私は昔、とある部活に所属していた。

何の部活かは言わない。

だって、もしかしたらその部活がそういう……何か、こう。

ドロドロしてるイメージがあるかもだから。

だからしょうがないじゃん、で済まされたくないから言わない。言いたくない。


私はその小さな箱庭で、ただただ信じていた。

その人達を。

ずっとこの日々が続いて、いつまでも楽しく仲良くいられるのだと信じていた。




その安定していた歯車は、突然壊れた。


いや……もしかしたら、ずっと前に軋んではいたのかもしれない。




その小さな箱庭で、私は見てしまった。


貴方が、他の人の頭を撫でているのを。

私以外に――笑っているのを。

それだけなら良かった。


何人もの人間を侍らせてる奴もいた。

私が嘗て、『トモダチ』だった人達。

それだけなら良かった。


私がいないのを良い事に、私の容姿をバカにしてる奴もいた。

その子は私の前では私の事を可愛いと言っていたのに。

それだけなら良かった。


私の技術が足りない、私より自分の方が優れているなんて笑ってる子もいた。

一緒に頑張ろうね、って二人で誓ったのに。

それだけなら良かった。




そうして皆で口を揃えてこう言った。


『■■なんて、いなきゃいいのに』


その一言で、全て壊れた。




――私は、気付いた時には駅前にいた。

空はどんよりしていて、少しずつ、ほんの少しずつ、小さな雨粒が降ってきていた。

(信じられない……信じられないよ……!)

だって、昨日まで、ううん、『あの光景』を見るまでは、私と。

(笑い合ってくれてたじゃん……っ)

悔しくて、だけどあの場で何にも出来なくて。

スマホの画面を見る。

そこには、私を心配するメッセージが入っていた。

だけど、その文面すらも最早信じられなかった。


いっそ、見た光景が嘘なら嬉しかった。

夢であれとも願った。

だけど、耳に焼き付いて離れない言葉。

醜悪な笑顔。

あれは、全部現実だった。


(……もう、無理だよ)

私は、グループを開いてただ一言だけ、『辞める』と送った。




「何で辞めちゃうの⁉ ■■がいないと寂しいよ!」

「何かあったの? 相談乗るよ?」

次の日、学校でそう言ってきたお前ら。

だけど私は無視して靴を履き替える。

お前らが。お前らが原因なのに。

だけど、そう心配する顔は嘘がお上手なこって。本当に心配してる様にも見えた。

(あれが、本当に夢ならいいのに)

でも、あの息が詰まるような感覚。凍り付いていく身体。

あれは、夢でも何でもない。

私は更に二人を押し退けて廊下を歩く。

と。

(先生……)

顧問の先生も、たまたまだとは思うが、私の前に現れた。

私は挨拶する余裕もなく、無言で教室に行こうとする。

が。

「■■が無視するんです……」

二人の内の一人が、泣きそうな声でそう先生に縋った。

何で、何でアンタが泣きそうなんだよ。

泣きたいのはこっちだわ。

でも、無視を決め込んだ。

そうしたら……

「もう放っておけ。

そんな生き方するやつ、幸せになんてなれない」

私は耳を疑った。

まさか、先生まで。

私は流石に振り返る。その三人の表情はとても、とても冷たかった。

(あー、そっか)

私はもう全てを確信した。

私は、必要とされてない。もう要らないんだ。

「ははっ」

急に笑い出した私を驚いた目でみる三人。

「もう信じらんない。二度と私に関わんな」

私は、部活を辞めた。




だけど辞めたとて、言われた言葉が失くなる訳でも、消える訳でもない。

特に、最後に言われた、私は幸せにはなれないって言葉。


幸せに、なれないのか。


その言葉は重くのしかかり、呪いになった。




学年が上がっても、環境が変わっても。

その学校にいる限り、その呪いは解けなかった。

私はそこで、どうしても幸せになれていなかった。

確かに、心の何処かで不幸を常に感じていた。

(もう一生、このままなのかな)

私は、学校を卒業した。


次に入るのは、専門学校。

そこでは、幸せになれるかな。




結論から言う。

私は今、とても幸せだ。


専門に入ってすぐ、私は一人の男の子に恋に落ちた。

恋に落ちる、とはまたちょっと違うかな。

どちらかというと、ありきたりな言葉で申し訳無いのだけれど、『運命』――みたいなものを感じた。

こう、頭と身体が雷に打たれたような感覚。

私だけ、こんな気持ちなのかな。

そう思っていたら、相手も私が好きになったようで。

相手は私を可愛いと思ったと言ってくれたのだけど。

それは後になってから知った。


学校帰り、一緒に帰る事が増えて、恋バナなんかもして。

彼女とか……いるのかな。

聞く。

いない。

好きな人は?

……いる。

胸が痛んだ。

(幸せになれない)

その言葉が反芻する。

ううん、もう、お前らはいないんだ。

そう頭の声を掻き消して、目の前の貴方に笑い掛ける。

えー誰だろう。

当ててみて。

学科に所属する女の子の名前を挙げていく。

……いない。

先輩の名前も挙げていく。

……違う。

残っているのは――

「わた、し……?」

違ったらどうしよう。怖い。

でも。

「■■っさんが可愛いと思った……」

頬を赤らめて、顔に手を添えて照れる貴方。


――……っ‼


彼氏は、いない。

好きな人は貴方。

でも。


(幸せになれない)


また頭の中にその声が響く。

でも、変わらなきゃ。

私が幸せになれないなんて、誰が決めるの?

お前らじゃない。

――私だ。

私が、自分で、幸せを掴み取るんだ――……!


「俺と、付き合って下さい」

「……っ! はい!」




さっき結論を言ったね、幸せだって。

専門入学からほぼずっと一緒にいて、小さな喧嘩もあったけど、色んな初めて、嬉しい事、楽しい事。――痛い事も、全部。

一緒に経験して、一緒に刻を重ねて。


専門も、一緒に卒業して。

卒業したら、一緒に暮らし始めて。

それからは大きな喧嘩もしたし、嫌な面も見え始めた。


だけど、一緒にいたい。

ずっと、一緒に生きていきたい。


そう思えるようになって。

そんな中、プロポーズをされた。

返事は――決まっているよね。




私は今、幸せだ。

心の底から。

もう声は聞こえない。


復讐は、遂げられた。

元より復讐する、なんて強い気持ちがあった訳じゃないけれど。

でもきっと、これは復讐。




私にとっての復讐。それは。

アンタ達の、誰よりも。

「幸せ」になること。

お読み下さりありがとうございました。


今回は重ためな作品では御座いますが、それでもハッピーエンドに仕上げました。結果は明るい作品になるようにしたかったのです。


明るめな復讐も良いとは思いませんか?


楽しんで頂ければ幸いです。


それでは、また。

おさらばえ。

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