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Episode10 そして物語は歴史の中へと混ざり合う——— 後編

「…な、なんでだよ…俺はこの世界で唯一の…チートスキル持ちで…クソな人間に虐げられた亜人や魔族を…救って…それで、ハーレムスローライフを…」


『…莫迦ね。この世界じゃあんたみたいなのがそんなものを与えられることなんか、こうして悪い〔人間〕に利用される時ぐらいしかありえないのよ。大いなる力を与えられる人ってのは、自ら大いなる使命を背負う覚悟のある者数百万人いるうちのたった一握りの超幸運な者にだけ与えられるの。あんたの力を誇示して楽をして生きたいと願うだけの愚かな人間にはまず訪れないわ。…もう私の名前を呼ぶのもやめて頂戴ね』


 …なんて顔をしているのだろう。ラプスラストからの衝撃の告白により恭介の心が完全に壊れたのだろう、言葉にもできない絶望しきった顔をして膝から崩れ落ちた。それだけではない…恐ろしい事にこのタイミングで他の女の子の中から困惑の声が上がった。おそらく催眠とか魅了とか…そういったマインドコントロールが解けた、いや解かれたのだろう…、それだけではない。自身もまたラプスラストによって自分こそが選ばれた異界人だと信じていた子も中に混ざっていたみたいだ。そんな子も自身が万能であると思い込んでいた力が、今何度試しても何も発現しないことに…絶望している。俺達は自然と武器を持つ手を下ろしていた。


「……ぁぁあああああ!!キャプテン!!キャプテン!!おれはぁ、おれはあああ!!だ、だまされていたんです!!だまされっ、た、たすけてください!!!たすけてキャプテン!!!」


 もはや見る方が辛いほど、落ちぶれたと言わざるを得ないような情けない態度で俺の足にしがみついてきた。本来ならそのまま刺されるかもしれない。もっと不意打ちを警戒しなければならないだろうが…俺はそんな事を思えるほど厳しい男にはなれなかった。


『あはは、助からないよ♡あんたには最後の仕事が残ってるの。そこにいる帝国の人間を道連れに爆発するって言う大事な仕事がね。大丈夫だよ、女の子達も一緒に爆発してくれるから寂しくないよ♪』


「なぁっ!?爆発だって!!」


 一気に動揺が広がり全員が騒めき焦りを見せる。女の子達の中には泣き叫び悲鳴を上げる者も…恭介もまた声にならない嗚咽を漏らし愚図っている。


「ラプスラスト、そんなことは…やめろ。やめてくれ」


『あーそーそー、爆発しちゃう前に…、プリコット、トーコ、ルエノラ。ミナヅキ君は是非連れてきてちょーだい♪』


「承知しました」「あいよっ」「りょっ」


 驚くことに、先ほどまで困惑していた女性達の中から三人が突然俺に向かって、武器を構えたまま真っすぐ向かってきたのだ。ラプスラストの指示があるまで他の女性達に紛れて演技していたという事だったとは…俺は咄嗟に防御姿勢を取るが、三人掛かりでは防ぎきれないし、他のみんなも唐突な出来事に間に合わない…




「おっとぁ、そいつぁ…通しゃぁしねぇよ」


「まだわたくしとの約束も済ませていませんもの」


「こいつは俺の大事なダチで、俺達のリーダーだからな。やるわけにはいかねぇよ」


 だが、俺に武器が届く寸でのところ、なんとマアダ、イヴの2人が二本の槍で、カトレナの盾が、フィラーレのフォローを受けたトレイスが剣で。三人の女性達の武器を受け止めていたのだ。それもそのはず、重症だったラセツ達が来たのだから、残りのメンバーも来たっておかしくないとそう確信していたのだから。


「「フェリスーっ!!」」


「ルミナ!ククルー!」


 …どうやらフェリス達バンドクラブも全員終結したみたいだ。バーケニーを抱えてて動けないティラの周りにバンドクラブが集まる。


「…ラプスラスト。今ここに俺達アラタ騎士団が全員終結した。みんながいてくれる限り、俺は…俺は絶対、お前の所にはいかない!俺がこのみんなの、リーダーだ!!…だから、ここにいるお前の部下以外の、他のみんなを開放するんだ!!」


 俺は宙に浮くディスプレイ越しに強くラプスラストに訴えかける。ラプスラストの部下と思われる女性達からの攻撃を防いでくれている仲間がいる。爆発するかもしれないと困惑し錯乱している女の子達を取り押さえている仲間もいる。


「ミナヅキーッ!爆発なんかしたら俺達まで吹っ飛んじまうぜーっ!もう駄目だ!俺だけでも逃げるからな!マジだからな!あーもーおしまいだぁぁ何してんだよ、こんな奴らなんかほっといてみんなで逃げるべきだろおおぉ…」


「若様ー!お逃げくださいーっ!!若様だけでもーっ!!ミナヅキの事は放っておいて若様のお命は他の誰とも替えがたきものー!!このツヅリ若様の為ならお命など惜しくはありません。ですので若様はお逃げをーっ!!」


 …約二名、騒がしいのがいるけど…それでも俺達のことを本気で心配しているのも分かっている。だからこそ、俺は自分の選択を…正しいと思った事を曲げるわけにはいかない。


『そぅ…残念ね。それじゃあ、バイバイ…おバカなミナヅキ君』


 画面越しのラプスラストが腕を前に突き出す。手の小指と薬指を折り曲げ、中指と親指の腹がふれあい…手に、指に、力がググッ…と込められる。その瞬間プリコット、トーコ、ルエノラと呼ばれた三人は瞬時に取っ組み合いから離れる。俺達は静かに画面越しのラプスラストを睨み見つめる。




『…、…はぁ~ぁ』


 ラプスラストの親指と中指が音を鳴らすことなくゆっくりと離れていく。そして重い吐息と共にだらんと力なく身体がだらける。


『そーゆーノリ、マジで私嫌いなのよね。もういい、興醒めしちゃった。もうそいつらもいらないし爆発もしてあげないでおくから好きにしていーよ。プリコット、トーコ、ルエノラ。もう帰ってきていーよ』


「了解しました」「あら、彼はもういいの?」「うぃ~、さき上がりまーす」


 三人の女性達は恭介が使ったような、足元に黒い魔法陣を展開させその中へとゆっくりと入っていくように消えていった。そして画面の中のラプスラストも俺に向かって笑顔で手を振って


      …———次は、直接、戦争で会いましょ♡———…


 それだけ言い残して空中に浮かぶディスプレイはプツリ…と消えていった。静寂…唐突な終わりを迎えたが、彼女の干渉がなくなった事こそがこの戦いの終わりを意味している。だが、誰もその実感がわかなかった。俺達もラプスラストに振り回された、彼女の手のうちで踊らされていただけに過ぎなかったのだ。




 それからの後処理はあっという間だった。すぐに待機していた軍の人達が駆け付けラプスラストに関する残存魔力の調査及び索敵が行われたが殆ど跡形もないという状態のまましばらく捜査が進み、恭介と女性達は身柄を拘束され俺達もまた治療と検査を受ける流れとなった。結果から言えば全員異常はなく、多少の無茶がたたった程度で済んでいる。誰一人欠けることなくこの戦いを終えられたことは大きな進歩と言える…と思っている。

 ちなみにイワンさんからは強敵を撃退したのは大きな成果だが、この一件程度ではまだまだランキング入りは果たせないと辛口なコメントを貰っている。実際ラセツもビヨンドも、敗北したことや、全快状態の恭介にリベンジすることすら叶わなかったことなどを自身の弱さ故と悔やんでいそうな気がした。

 あ、それと今回の一件でテトフルクバンドは俺達アラタ騎士団に加入することになった。元々彼女達はバンドをメインに活動したいのだがまだ知名度も少なく拠点もなかったので仕方なく依頼で各地を転々として細々とバンド活動をしていたらしい。この一件で俺達とは随分仲良くなったし、拠点にもまだ結構な空きがあるので拠点の空きスペースの一部を彼女達のコンサート会場として貸してもまぁ大丈夫だろうという事でメンバーに加わることとなったのだ。


「それじゃあ改めてになるけど、よろしくお願いします団長さん」


「こっちこそ、みんなが仲間に加わってくれること心強く思うよ」


「…ふん、あくまでバンド活動に精を出すためだ。むしろ私達が戦闘しなくてもいいくらいお前達が頑張ってくれないと困るんだからな」


「私達も、団長さんを満足させるための演奏頑張るからね」


「…ルミナ、そういえばあの子供達も一緒にいるんじゃないの?」


「げーっ!あのガキンチョー!忘れてたのだー!!」


 相変わらず騒がしい5人は俺達の中でも輝けると、うまくやっていけると確信している。

 あぁ、勿論もう一つ、忘れていないがあれからすぐにドロフィーは自分からカトレナにインクペンをちゃんと返したのを俺も確認している。相変わらずぎこちない口ぶりだったが、意外にもカトレナが辛抱強くドロフィーの話を聞いてあげて、そのうえでちゃんと許してあげていたのは正直俺でもビックリだった。…いや、カトレナは案外元からそう言う奴って言うのを俺が気付いてなかっただけだったんだろうな。今ではすっかりドロフィーもカトレナに心を開いているようにも見える。カトレナの方は相変わらず我儘で自分本位なのは変わっていないが…




 …そして残った問題として、身柄を拘束した女性陣と恭介の対処だが…、驚くことにラプスラストの部下を除いた女性7人全員が異界人だったのだ。オズランド帝国の人間が1人もおらず殆どが暗示によって恭介の彼女という役目を与えられた都合のいい存在として扱われていたのだ。中には中毒症状を発症している女性もおり完全な完治はいつになるか分からないレベルの人もいたのだ。

 それと全員がラプスラストの魔力を内包しており、さらに言えばその魔力を元にした爆弾、つまり術式が刻まれており魔力の排出と術式の解除で完全な解放はまだしばらくかかるとのこと。

 最終的な処遇は、全員【異界人特別拘置施設】に移動し、中毒が起きていない女性は魔力問題が解決後、帝国に対して帰順する意思を見せるならクラスⅠに、帰順する意思を見せないならクラスⅡに入ることとなる。そして中毒症状のある女性達と、今回の一応の首謀である恭介は…強制的にクラスⅢへと入れられることが確定した。…帝国のルールとか、あんなことした恭介を野放しにしたら大変なことなのは分かるが…俺は本当に恭介に対してあれでよかったのかと、夜な夜な考えるようになった…。


 それと…結局ラプスラストに聞けなかったこともあった。戦いの中で恭介が言っていた、全能力が世界レベル…ステータスがカンストしていると。おそらくこれもラプスラストが直接介入し数値を書き換えたのだろう。俺達が見ることのできるステータス画面なんて飾りでしかない。数値を弄ったところで恭介自身には反映されることなく、最強になんてなれるわけがなかった。だけどならば尚更…このステータスってのは一体何が目的でこの世界にあるのだろうか。それこそラプスラストのような悪い人間に利用されるため…?この世界の人間にとって無価値な産物なのだろうか…?




「…ステータスオープン」


 俺はそんなよく思ってもいないステータス画面を開く。最初こそ依田君が言っていた通り役に立たない数字の羅列に見えていたが、今となっては俺が戦闘を重ねるたび俺自身の成長を指標しているようにも見える。そして内部に保管されている複数の画像の数々。施設でみんなと過ごした1枚や、合宿での日々、騎士団設立を記念した1枚に、村に帰って撮り直した1枚…そんな俺の大切なステータスを眺めながら俺は改めて考える。

 ラプスラストがステータス画面に干渉できて俺にもできない道理はない筈だ。ならば、ならば異界人の為に正しく、使いやすいステータス画面に改良してあげることが出来れば…少しでももっと異界人が暮らしやすくなるのかなとか考えてしまう。それこそ、もう恭介みたいな被害者を増やさないために…




「また、あの日の事を思い出していますか?」


 聞きなじみのある声に俺ははっと我に返る。そうだ、俺達は拠点に帰ってきたのだ。あの戦いの後俺達は依頼完了という形でみんなで拠点に帰って休息を取り、元の騎士団生活に戻ったのだ。いや、今では随分騒がしくなったものだ。リーヴさん含めたクザスの村の人達と、キヨミツ達が連れてきてくれたスンボリの人達とで俺達の家事事情は驚くほど快適になったし、テトフルクバンドのみんなも拠点で音楽を奏でている。しかしこうなると今度は騎士団の資金がじゃぶじゃぶ減っていくのでフィラーレに頼んで事業着手に本腰を入れるつもりだ。そのため俺もバーケニーも今は全く依頼に行けずじまいで体が硬くなりそうだ…。しかも俺自身こういうのはまだ慣れないもので、特に書類作成のノウハウ取得をバーケニーに頼りっきりだ。


「まぁ、な…バーケニーを助けれたのはよかったが、それはそうとこんな大変な仕事ばかりだと助かり損とか…なんてな」


「何馬鹿なことを言っているのですか。…少々予定を詰めて仕事しているからネガティブな事を考えているんですよ。少し休憩しましょう」


 そう言うと机の上に乱雑に置かれた書類をテキパキと片付け、ほんの小さなスペースにカップを2つ置いて、温かいインスタントコーヒーを注ぐ。俺は彼女が戻ってきてから一緒にカップを手に取り口元に運ぶ。


「私が貴方について行くのはただ助けられただけってわけないじゃないですか。貴方だからついて行きたいと思っているのですよ。貴方が私の行く道を示してくれているから、貴方の目指したい先があるから、私はそのための力添えをしているに過ぎないのですよ。…まぁ最も、最初は随分強引なお誘いを受けたものですけど」


「ははは…あの時は必死だったからな。…なぁバーケニー、今でも異界人は嫌いか?」


「…」


 俺の何気ない質問にバーケニーは静かに口からカップを離す。その上り立つ湯気で眼鏡が白く曇り表情が読めなくなる。


「…いまだ分かりません。元々私が異界人否定派だったのは明確な動機とかはなくただ自分が育った協会に異界人否定派が多かっただけという、周りに合わせて大人ぶっていただけでした。でも貴方は私が会った初めての異界人で、貴方は私を何度も助けてくれました。強引ながらも私を必要としてくれました…私は貴方を信じると同時に、心のどこかで異界人はいい人ばかりだと思っていました」


 …正直バーケニーの身の上話を聞くのはもしかしたら初めてかもしれない。なんてことを思いながら話を聞いていたが、彼女の肩が小さく振るえているのに気付いた。


「だけど、あの男は貴方と違い…とても恐ろしく、何よりも貴方が私を求めている時と違い、あの男が求める私は…私自身を否定し、私の全てを奪おうとしていました。それが…貴方と同じ異界人だと」


 同じ…その一括りでこの世界の人達は恐怖の対象となる。それこそが『異界人』と言う存在…。そして俺もこの国でだいぶ受け入れられてきただろうが、『異界人』であることはこれからもずっと変わらないだろう。


「だからこそ、私は…私自身で、異界人としてでなくその人と向き合い、道を誤ってる人が居れば正し、正しい道を歩めるように手を取り合えるようにしていきたいと思います。…貴方みたいに。貴方と一緒に…」


 眼鏡の曇りが晴れるとその瞳には迷いはなかった。真っすぐと俺を見つめ、カップの取手を持つその左手の薬指にはめられた金属の輪がきらりと光る。そうだ、俺自身も何も迷う必要なんかない。俺を受け入れてくれたみんなの為にも…全ての異界人を救おうって程じゃないけど、経緯はどうあれ俺と関われる範囲で異界人とはしっかり向き合い、この国に受け入れられる生き方が出来るように導いてあげるよう努力したいと、心にとどめてこれからも頑張っていけばいいんだ。


「っあー!ちょっと何こっそり二人だけで休憩してるのよー!!事業計画書類完成したのー!?」


 なんてぼんやり考えていたらフィラーレに見つかってしまい、その声にぞろぞろとみんなが集まってきてしまった。


「ミナヅキ―!今日の依頼2チームとも終わったぞー」


「お疲れウルヴァ、ラセツ達のチームにもゆっくりしておくように伝えておいてくれ」


「ミナヅキ君、今日の献立メニューなんだけど…ちょっと足が出そうで」


「全然大丈夫ですよ。リーヴさん達のおかげでみんなの食費も少しずつ浮かせれてるので助かってます」


「ミナヅキ団長!ライヴ開催日は決まったの?パンフは?」


「パンフは出来た、配るだけだ。開催は来月だからそんな焦るなフェリス!」


「ミナヅキよぉ、武器の調整部屋もう少しグレードアップしてくれねぇか?」


「あー…すまんドレイク、事業用予算に余裕が出来たら回すから、もう少し辛抱してくれ」


「ミナヅキ―!俺も義勇兵爵の爵位取りにいかせてくれよー!!」


「お前はまず学童院で先生から苦情の電話が来なくなってからだラン」


「だんちょー、あげるー」


「…ありがとうティラ。出来れば食べかけアイスじゃなくて一つ丸々が欲しかったけど」


 なんやかんやで騒がしくなった様子を見ているバーケニーはふふっと楽しそうに笑っている。まだまだ忙しい日々は終わらなさそうだけど、俺達はまだまだもっと強くなる。もっと頑張れる。もっとみんなの想いを叶えるように俺も団長として頑張らないとな。




   …———…


「へぇ~、彼もすっかり立派になったもんだねぇ~」


「当たり前でしょう、私達が送り出したのですよ。立派になってもらわないといけませんわ」


「まぁ…少々立派過ぎて、私は連日寝不足ぎみなのですが…」


 白い施設のような壁に複数人の声がこだまする。一つのテーブルを囲むようにして男女のグループが座ってお菓子を食べている。


「まぁキャプテンならやれるっておいらは確信していたでやんすけどねぇ」


「…あんたの確信はいまいち信用されないのよヨーダ」


「むきーっ!なんてことを言うのでやんすか!天野川の兄貴~、カノンちゃんになんか言ってやってほしいでやんすぅ~」


「ちょっと!ヨーダが私にちゃん付けで呼ぶな!!」


 あははと笑う声が広い部屋で反響する。そうここはかつてミナヅキが短い間お世話になった異界人特別拘置施設内にある食堂、そこにあるテーブルを囲っているのはかつて一緒に生活を共にした依田、天野川、黒城、無月、カノン、そして職員のモリシマが一冊の雑誌を囲んでパーティをしているのだ。その一面は当然、ミナヅキ率いるアラタ騎士団の1件がでかでかと書かれたものだった。


「それにしても、折角これだけの異界人を連れて来たってのに…せっかくならこっちにも顔を出しにくればいいものを」


「そう?まだ例の1件からそんなに時間たってないしまだまだ落ち着かないんじゃない?」


「…大変そう、だし…」


「ならいっそおいら達の方から顔出しに行ってやるでやんすよ」


「落ち着いてねぇって言ってんのにわざわざ顔出しに行くなよ、迷惑だろ」


「…あ、だったらさぁ今度僕達も正式にお店に雇われることになったから、お店の方の案内を送る形で誘うのはどうかな?折角だしお店でパーッとお祝いしたいなぁ~」


「成程、それはいいですわね。…とは言っても私もフィズィ―ネ家に帰ればこれからきっと忙しくなるだろうし、私こそお店に行けるかどうか…」


「大丈夫でやんす。おいらもココアちゃんも仕事さぼってでもキャプテンに会いに行くでやんす。その時はいっぱいサービスしてほしいでやんすよ~」


「ちゃん付けするな、ココアを巻き込むな!お前が真っ先にサービスをねだるな!!」


「あはは、みんなサービスするからいつでも遊びに来てね」


「さっすが兄貴でやんす。おいら毎日遊びに行くでやんす~。あ、勿論三人が来る時もおいら絶対行くでやんすよ」


 呆れるカノンと黒城、反対に無邪気に喜ぶ依田。そんな様子を眺めて笑う天野川とモリシマ。ふとモリシマがチラチラと時計を確認する。


「…そろそろ出発したいのですが…彼女はまだかかりそうですかね?」


「あらモリシマさん、女の子は時間がかかるものですわよ。そんな待ち方をしていたら嫌われますわよ」


 そんな風に話していると、どたどたと廊下から走ってくる音が響き、勢いよく扉が開くとそこには、荷物を持った生傷と汗だくだらけになった桃井 咲良が入ってきた。


「はぁ、はぁ、えろぅ遅くなってすんません…時間を忘れて熱中してました…」


「…咲良さん。また『秘密の特訓』ですか?止めさせたいわけではありませんが、まず人との約束は守ってからでないと」


「ごめんやでカノンちゃん…ま、また今度お詫びするから」


「…いつも通りみたいなノリで言っていませんか?今度が一体いつになるか分からないのですよ」


「あ…そーだった。えっと…」


「もうお詫びなんていりません。これからの場所は今までを降りじゃ駄目なんですからね。だから今は胸を張って、一緒にここを出るんですよ」


 カノンの言葉にみんなが机を片付け、近くに置いてある荷物の準備をする。


「さぁ、これでみんな揃いましたね。ではこれから皆さんを10時発の城塞都市『ムルフィルテンジュ』行きの汽車が出る駅までお送りします。もう一度言いますがあの街は今戦争の最前線下にありますので非常に危険です。それでも本当によろしいのですか?」


「よろしいも何も、我がフィズィーネ家は元よりムルフィルテンジュでずっと軍の為に紙を作り続けてきたお陰で今では隷爵も手頃に買うことが出来るほどまでに発展した、逆を言えば本家本元こそ私の帰る場所。親戚の家とか、藤峰 奏音花としての人格には関係ない話とか、そうかもしれなくても私は私として、咲良さんと一緒に戦う事こそが私の使命ですわ」


「私も…カノンお姉さんと…一緒にいくから…」


「僕達も咲良ちゃんが心配だし、それにオーナーもムルフィルテンジュに二号店出すための従業員を募集してたから丁度良かっただけだし~。そもそも僕と龍ちゃんならどこ行っても心配しなくて大丈夫だよ」


「ふん…」


「…、…いや、おいらはホントは行きたくないでやんすよ?けど、けど…おいらを買うことになったおっさん…じゃなくて貴爵様が…今こそムルフィルテンジュへの販路を増やすべきでエルフ!…とか頭のおかしなこと言ってるでやんすから!!そのせいでおいらもそんな危ない街に行く羽目になったでやんす~。助けてくれでやんす~兄貴~キャプテーン…」


「みんな、…ありがとう」


「おいらは一緒にしないでくれでやんす~―っ!!」


 みんなが桃井に視線を、エールを送る。


「私は…私は、この施設を今日出所し、城塞都市『ムルフィルテンジュ』で2年かけて国衛兵爵を叙爵する。そして、この国の為…もう二度とあんな酷い事を起こさせないため、ティストレイ連邦との戦争を終結させるための戦士として戦う!ミナヅキ君が先を歩いたんだ。今度は…私の番や!」


 去年のエルフ市での惨劇、被害は運よく最小に抑えれたが…あの日の悔しさ、不甲斐なさは彼女の中に深く…深く残り続けた。その悔しさをバネに…彼女の決意は固く揺るがないものとなった。彼女の生傷と汗がそれを証明していた。


「…分かりました。ではすぐにお送りします。皆様ならきっとこの世界でもうまくやっていけるでしょう。…ここもまた一段と寂しくなりますが、私もミナヅキ君も応援していますよ」


 モリシマの後を歩く6人。その足取りはまっすぐこの施設の出口に、そして城塞都市への向かうものだった。そしてこの国の、この世界の大きな転換点に触れることになる人間の一人、桃井 咲良…。2年という時を経て、この物語は大きく揺れ動くことになっていくのだった…———


本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。


はい、本投稿を最後まで読んでいただいた方にはお分かりになられると思いますが、今回の投稿をもって『ミナヅキ アラタ』を主人公としたこの物語を一旦終了する形としました。ここまでのご愛読、本当に、本当にありがとうございました。

ですが、この物語は終わっておりません。そもそもミナヅキを主軸とした物語というのは彼という主人公の物語にしか過ぎません。この作品は今後もお話がまだまだ続きますので、これからのご愛読の程本当によろしくお願いします。


また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。


現在次回投稿は未定ではございます。ですが一応次の投稿予定は2/7を予定しておりますが、少し趣向を凝らしたものをただいま準備中です。そのため本投稿が一時的に停滞する。もしくはこれまでとは異なる投稿形態になるかと思います。ですので今後は気長に本投稿の程宜しくお願いします。


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