Episode9 城塞都市最前線事変——— 後編
ムルフィルテンジュでは軍の宿泊施設を使うことが出来る。俺達の数日分の荷物も既にこっちに運ばれている。それもだがまずは医療施設で傷の手当てを受ける。俺とラセツ、それからビヨンドは軽傷で済んでいるものの、重症ではないにしてもドレイクはだいぶ傷が多い。他のものは大したダメージはないようだ。
「ごめんドレイク…無茶させてしまって」
「へへっ、まー今回ばかりは名誉の勲章って事で、気にするなよ」
と茶化し鼻の下を伸ばすドレイク。…そんな頑張ったドレイクに大変申し訳ないが、フェリスからの評価は「守備範囲外。そもそも私より戦えないのはあり得ない」との事だ…。まぁ、今後いっぱい頑張ろうな…頑張ったらちょっとくらい評価変わるかもしれないし、俺は応援してるぜ…
その後はみな自由に夕食を取る形となった。一応いつ戦争が始まるか分からないためある程度小隊全員で集まって行動するのが原則だが…とはいえ全部が全部みんな同じ行動をしないといけないというわけでもない。その辺りは合宿生活で培った集団行動能力がちゃんと活きている。マアダとイヴはだいたい一緒に行動してるし、そうじゃなくてもまぁざっくり男性陣女性陣で分かれて動いている。だが今はドロフィーの姿が未だ見つからない。俺は夕食を後にドロフィーを探して回った。その後何人かのメンバーが一緒に探してくれたが…
「フィラーレ様、団長、そっちにいましたか?」
「こっちもいないよー」
「あぁ…イヴさん達も探してはくれてるが、職員も見かけてはいるけどどこに行ったまでとかは把握してないみたいで」
ドロフィーを探すべく以外にもカトレナが積極的に動いている。自分のペンを持っていたことを根に持っているのだろう…勿論そんなことを聞くわけにもいかないので黙っておくとして、そんなカトレナに当てられフィラーレも、いや女性陣全員で探している。それでもドロフィーを見つけることが出来ない。
「まさか…この軍施設の外に」
「いやそれはない、筈だ。ここの施設の出入りは厳密にチェックがされている。戦域からこの施設に入ってくるまでは確認されていて、そこから出た形跡は報告されてない。…こういうのも本人には悪いかもしれないが、システムの抜け穴を通って外に出たとは考えにくい。だから施設内のどこかに入ると思う」
「…分かりましたわ。ありがとうございますミナヅキ団長。この後はわたくしが暇を見つけて探しますので、団長は先に夕食を取りながらゆっくりしてくださいまし」
カトレナがここまで真剣にドロフィーを探すのに少し怖さを覚えながらも、俺も疲れと空腹に耐えかね食堂に向かう。時間帯はもうすっかり夜、食堂はもう殆どの人がおらずスカスカの席で、人気メニューは売れてしまい残ったメニューから適当な料理を貰いササッと料理を済まそう…そう思っていた。
「あんだよ、随分つまんねー飯しか残ってねーのかよ」
そこにいたのはティラだった。いや嘘は何も言っていない。ティラなんだ…あのほんわかした雰囲気をしていたティラが今は性格、どころか見た目もマ反対、のほほんとした表情は厳つく目がぎらぎらとして、肌を見せないくらいしっかり着ていたお揃いのジャケットを肩掛けすると服を着ていた時には想像もつかないような、フェリスにも負けないメロンが二つ…ティラであってティラでないどなたか存じ上げない人が俺の隣に座る。
「…あの、昼間とは随分…その、違いますね」
「あーね、どーせあんたにゃバレてるから言うけど。あたしン中の月人種の血のせーよ。月人種ってのは暗い場所だったり夜だったりするとなんか元気になんのよね。…このことは誰にも言うなよ」
その話は聞いたことがある。この帝国にはいないとされる月人種…その特徴は他の人種よりも鋭く長い二本の犬歯を持つこと。精人種とのハーフである彼女もまた犬歯が長いと思われるが、それ以上に最大の特徴なのは月人種は日中よりも夜間の方が身体能力が高くなるという個性だ。月に愛された人種…故に月人種と呼ばれている。んで実は逆に夜間よりも日中の方が身体能力が高くなる人種も居て…それが鬼人種なのだ。実はツヅリは夜には弱いし、ホタルなんか仕事中だろうと夜になったらすぐ寝る。まぁラセツがそんな姿を見せたりなんかしないけど…。普通の鬼人種は夜が辛いのだとか。
「…もしかして、トモエさんは」
「あぁ、お部屋でおねんねさ。何なら呼んできてもいーぜ…セクハラ団長♪」
その言葉に飲み物を吹き出しそうにするのを堪え溢しながらむせ返る。やっぱ行きの時の事気にしていたんだ…。
「へ、へへー…ティラさま~どうかそのことはご内密に…なんなりとわたくしめにおもうしつけくださいませ~」
うーん、俺の中のコノハが代弁する…。ティラは上機嫌にふっふーんと変な持ち方でフォークをもって温かいヌゥメンをすする。
「…にしても、おめーんとこのクラージー見つかんねぇな。流石にもう探すとこ思いつかねーぞ?」
「えっ、ティラも探してくれてたのか」
「ったりめーだろ、あたしはそんな薄情なやつにでも見えんのかよ。…あたしからしたらあんたにしてもらった恩ってのはあんたの思う以上にでけーんだからさ」
「…ありがとうティラ。…よし、急いで食べてまた探しに行かないとな」
俺とティラは夕飯を一気にかきこみ、ものの十分で食べ終わると俺達はすぐに食堂を出ようとする…が、そこに現れたのはイワンさんだ。
「団員を探すのを遮ってすまない…ミナヅキ団長、出撃だ」
「出撃って…今ですか!?」
「あぁ、最前線で見張りをしている部隊からの連絡が途絶えた。本来なら俺達軍が状況確認に向かうのだが…恥ずかしい話少々軍が動くのに問題が発生してだな…、言ってしまえば義勇兵爵に依頼する方が都合がいいという訳だ。問題がなければそのまま帰還してくれて構わない。勿論報酬は上乗せする」
「ったく、ていのいーように利用するってこったぁ」
「まぁまぁティラ…分かりました。出撃します」
ドロフィーを探さないといけない気持ちはあれど、今は依頼中ではある。軍からの指示は優先して動かなければならない。何故かわざわざ一緒について来るティラと共に…防壁の上層部へと昇っていく。
「おい、どこ向かってんだよミナヅキ。飛べるわけじゃねーんだから下に行かねーと」
「ふっ、ティラよ…実は小隊で揃ってるとなかなか使いにくくて困ってたんだが、急な出撃命令…実はちょっとワクワクしてるんだ。まぁ折角だしとにかくついて来いよ」
そして辿り着いたのは…軍のブルーム出撃兼保管ガレージだ。俺はそこで管理をしている担当に話をして「それ」がある場所まで案内された。
「ま、まさか…これって」
「へへっ、そうさ。こいつが俺の魔動ブルーム『CTL-オーヴァイン 1385モデル』(※型落ち)さ。何回か乗ってはいるが、これでの出撃は初だぜ」
それはまさしくスマートなデザインで纏められた。まさにタイヤのないバイクそのもののようなブルームだ。俺が合宿卒業する時に以前約束してもらった通り軍から譲り貰ったのだ。準最新式の魔力原動機を搭載し圧倒的な速度が出せる上に静かに飛行することが可能な高性能エンジンがうりのこいつはまさに夜間飛行にも丁度いい。俺は丁度二つあるヘルメットの一つをティラに渡しつつ魔法式のキーロックを解除しエンジンを吹かす。
「…ふぅーん?」「な、なんだよ」「別にぃ~、べぇ~つにぃ~」
なにやら含みのある様子でヘルメットをかぶり、コートを着直して俺の後ろに座る。いつもよりもふくよかな感触が背中に当たりながらティラがしっかりと俺を掴むのを確認する。担当者がガレージのゲートを開ける…その先には真っ暗闇が広がってる。ライトで照らしても全く先が見えない。
「お暗いのでマップや高度計に意識して運転してくださーい」
「行くぞティラ。しっかり捕まってろ!」
俺は足を地面から離しペダルを踏むとブルームがふわりと浮遊し、そしてフォンッと静かなエンジン音と共に真っすぐ猛スピードでガレージを突き抜けた。速度は40㎞/h、高度は安定して飛行している。頬に当たる風が冷たく白い息を置き去りにする。
「冷たくはねーか」
「平気、ひゃはっサイコーじゃん!ねぇもっとかっ飛ばせねーの?」
「しっかり捕まってろよ!」
俺はさらに速度を上げる。だがあんまり速度をあげれば目的地までものの数分で到着してしまうことがマップで分かる。こういう依頼で使うには性能が良すぎるという困った悩みが出てくるとはな。
そしてやはりあっという間に目的地周辺に到着した。俺はライトを下に向けてゆっくりとした速度にして辺りを見回すがよく見えないわ、なにも見当たらないわで不思議に思いながら注意深く探しながら飛行する。
「おい、あっちだ。あそこに誰かいる!」
こんな暗闇の中でライトもなしにどうやって見つけたのか分からないが、俺は言われるままティラの指さす方角に向かう。そこには軍指定の制服を着た一人の女性がいた。だがそれ以外には誰も見当たらない…
「すみませーん…最前線からの連絡が途絶えたと連絡を受けてきたのですがー…」
俺が呼びかけるとその女性は俺の方を見る。金髪で長いストレート髪のいたって普通の祖人種の女性にしか見えない。手には剣を握っていること以外は。だがどう見ても戦闘をしたであろう形跡は周囲からは見れない…
「すまない、通信用魔具の不調で連絡が出来なかったのだ。仕方なく他の部隊の所まで行って自分達の部隊の状況報告をしようとしたところだ」
「…他の仲間はどこにいる。ここに来るまでには見ていねーぞ」
「おそらく君達を敵と見間違えて塹壕の深くに身を潜めたのだろう、その方が安全だからな」
「それと、その剣はなんだ!こんなところ剣を構えてフラフラと」
「ここは戦場ですよ?どこから敵に襲われるか分からない場所で呑気に鞘に納めておく方が不注意的でしょう」
「もういいだろティラ、…すみません呼び止めてしまって。この先に他の前線部隊がいるのですね。そこで落ち合いましょう」
明らかに不信な態度を見せるティラを落ち着かせ俺達はその女性を置いて先に向かう…それは俺達がその女性に対し背を向ける事と同義であった。
俺は何かを感じ即座にブルームを横方向に急回転させ回避行動をとる。それと同時に俺達が飛んでいた場所に斬撃が飛んできたのだ。間一髪のところを躱しそのまま急旋回して再度女性の上空を飛ぶ。その女性は剣を振るった後の姿勢を取っていたのだ。
「あんにゃろー!やっぱり…しゃらくせぇことしやがる!!」
ティラが片手を離し、後ろ手に回して取り出したのは…弾倉がまるで管のようになって体に繋がったままの機関銃の様なものだ。引き金を引くと無数の弾が女性目掛けて射出された。だがその弾は女性の素早い剣幕で簡単に弾かれる。俺はティラを振り落とさない程度に運転に専念する。女性の反撃である飛ぶ斬撃には気を付けなければならないためにも。
「お前は一体なんだ!裏切りか?それとも帝国の制服を奪って着ているのか?…いやどっちにしろお前が最前線部隊に何かしたんだな!?」
「っふ、ははは!…ご名答。他愛も無かったよ。…亡命した身とはいえ一応祖国の人間だから今は少しおねんねしているだけだがな」
「亡命!祖国!?」
「ってっめぇ!!!」
ティラが怒りのままにバイクから飛び降りるとさらにもう一つ機関銃を取り出し、空中をゆっくりと下降しながら二丁の機関銃で撃ちまくる。流石に二倍の弾幕相手に女性側も受けきれず弾の動きに合わせ回避する。俺は急ぎ再旋回しティラを回収し戦闘から離脱する。
「っおいっ!!何やってんだよ!あいつをぶっ飛ばすんだろ!!」
「違う!まずは報告だ、見張りの部隊がやられたとなるとおそらくあの女以外に敵が都市の方に向かった可能性がある。それに…あいつが倒したという部隊だ、誰の報告もないままだと、手遅れになるかもしれないだろ」
「…そうだな、私が悪かった。夜の所為で熱くなり過ぎた。とにかく他の部隊との合流して
ドォ————ンン………
遠く、いや防壁で爆発が起きた。さっきの女性が俺達のいる位置から攻撃したとは思えない。となるとやはり…他にも敵がいて、襲撃が始まったのだ。俺はさらにエンジンを吹かせ他の見張り部隊と合流する。当然他の部隊も先ほどの爆発は気付いており慌てている様子。俺は急ぎ連絡のない部隊がやられたこと、そしてその舞台を襲撃した女性の特徴を合流している部隊から本部へ、さらに他の部隊に連絡がいきわたった。それと同時に…俺は本部からとんでもない報告を耳にした。
現在動くことのできるアラタ騎士団全員で襲撃の対応にあたり、全滅した
まだ爆発してさして時間もたっていないのに、夜とはいえラセツがいながらも…みんなが、やられた。いや正確には俺達だけではない。今回参加を表明していた殆どの義勇兵爵、そして本来この城塞都市を守る国衛兵爵達も次々とやられていっているのだ。画像で送られてきたたった一人の男に…
俺は急ぎティラと共に爆発のあった防壁に向かった…。そこはひどいありさまだった。壊れた防壁の前で多くの人が爆破に巻き込まれたのか戦った後なのか何人かの人が倒れているのが見えた。だが倒れている人の近くでまだ戦闘が続いているためけが人の回収がまだ出来ずにいる。だが俺はそんなことを気にする余裕はなかった。俺は確認をしないといけないことが「二つ」あった。
俺は倒れた人の中から団員達を必死に探した。みんなの姿はすぐに発見できた。意外にも一番持ちこたえていたのはカトレナだった。カトレナが盾でみんなを守ってくれていたのだ。だがそんな彼女ももう満身創痍で立っているのがやっとだった。俺は急ぎブルームを乗り捨てて猛ダッシュでみんなの傍に駆け寄った。幸いみんな意識はあるみたいで…結構な大怪我ではあるが持ちこたえれそうだ。
「カトレナ!!」
「…、…だ、…ん……」
俺の声に気付き、視認すると安堵したのか表情が和らぎその場にゆっくりと倒れ込む。俺は咄嗟にカトレナを抱きとめる。…傷だらけで衰弱しきりぼんやりしているみたいだが辛うじて意識は残っているみたいだ。俺はカトレナをティラに預けてもう一度数を数える。
…7人、ドレイクさんは怪我で出撃を止められただろう…ドロフィーは未だ見つかってない状態がかえって幸いしたみたいだ。…ラセツ、トレイス、マアダ、イヴ、ビヨンド、フィラーレ…そしてカトレナ…
「バーケニー!?」
俺はもう一度、いや何度も周囲を確認する。だがバーケニーの姿がどこにも見当たらなかった。いやむしろ何か事情があり作戦に参加出来なかったに違いない。だから何も見つかるな…俺はそう願いながらがれきの下までくまなく探す…、何も見つからなかった。
「探しているのはこの人ですか…あらたせーんぱい」
ドクン…と俺の中の全てが口から吐き出しそうになる感覚を覚えた。頭の中が全部混ざり合って何も考えられない。なんで、どうして、そんなわけ…おまえなのか…?俺はゆっくりと声がした方向に振り返る。そこにいたのは、『桐谷 恭介』だ。俺は目を疑った。
「なんて顔してんすかキャプテン、それにしてもまさかキャプテンも異世界転生してるなんて思いもしなかったっすよ。…あ、もしかしてキャプテンもチートスキルもらえた感じっすか?でもキャプテンってクソな現実でも馬鹿正直に頑張ってたしチートスキルも宝の持ち腐れしてるんじゃないんすか?」
一方的に話しかける恭介は翼も羽も、道具すらも使っている様子もなく宙をういている。俺は恭介が何を言っているのか…分からなかった。
「にしてもキャプテンって前々から思ってたんですけど…なんでこう正しい事と違うことするんすかねぇ、試合とか見ててもこうした方がいいって分かる事全然しないから負けたりするのに…この世界だって侵略国家の帝国に肩入れするしさ…これだからやっぱり人間ってろくでもないんすよ」
「いつまで…いつまでそんな生意気な口きいてんのよ!!」
すると恭介の足元ではボロボロになったフェリスさんが立ち上がり、無数のナイフを飛ばす。だが恭介が軽く手を振るうと複数の爆発がナイフごとフェリスを吹き飛ばす。魔法だ、あいつは詠唱を行わずに感覚だけで魔法を使ったのだ。
「リーダー!!こんにゃろう!!」
カトレナを安全なところに寝かせたティラが再度両手に二つの機関銃を構えひたすら打ち続ける。だが恭介がこれを片手で闇の魔法を作り出すと、その闇の中に弾丸が呑み込まれていった。ティラが驚く間もなく恭介はさらに手から強力な雷を放つ。その雷はティラ目掛けて襲い掛かるが、とっさにボロボロな姿のトモエが横から押し倒したことで直撃は避けられた。
「トモエ―!ティラー!逃げるのだー!!」
「こいつ、全部の魔法を使ってくる!」
いつの間にか動けないフェリスを二人掛かりで運んでいるルミナとククルー。だがその2人の足元から風と水の魔法が渦巻いて二人を飲み込んだ。その直後恭介目掛け数発の魔法弾が放たれ爆撃する。そのおかげかルミナとククルーを攻撃する魔法から解き放たれフェリス含めた三人はその場で突っ伏す。爆撃を受けたのにけろっとしている恭介が攻撃が飛んできた方を見ると、崩れた建物の陰にいたのはどこかに隠れていたのかまだ無傷なドロフィーが怯え全身を震わせながら杖を構えていた。
「なぁ~んだ、まだいたんだ」
恭介は無数の氷柱を空中に生成し、ドロフィー目掛け放たれる。ドロフィーは怯え動けずにいると、そんなドロフィーの前にさっき介抱したボロボロのカトレナが全身を盾にドロフィーを守ったのだ。
「あ…ああぁ…あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!いやっ!いやぁぁ!!ごめんなさいっ!!ごめんなさいいぃ!!」
氷柱の雨がやみ、泣き叫びながらもはや意識すらも残ってないようなボロボロのカトレナを、その身体を以て自分を守ってくれて倒れそうになる彼女を強く抱きとめる。ただ泣き叫びながら謝ることしか出来ないドロフィーをよそに恭介は再び俺の方を見る。
「やれやれ…この俺がわざわざキャプテンと話してるって時に、それにしてもキャプテンってホントモテるっすよね。しかも頭も悪くて趣味の悪い女ばっかり、まぁキャプテンも付き合わされてうんざりしてるのは知ってるっすよ。まぁ俺もこっちの世界に来て俺の魅力に気付いてくれる人に出会えて、ちょっとだけキャプテンの気持ち理解してあげれましたよ」
みんなが戦っているのに俺は未だ恭介を前に動けないでいる。俺のぐちゃぐちゃになってぐつぐつと煮え切っている感情が、思考と体の動きを抑圧する。そんな俺を無視して恭介の嬉しそうに語る減らず口は止まることを知らない。
「まぁいーや、キャプテン…いやミナヅキアラタ…あんたのウザい顔を最後に拝めてよかったよ。それに丁度いい話を聞いたんすよ、可哀そうだと思ったんで彼女を解放してあげようかなって」
そう言うと恭介は腕をあげると、隣の何もない空間から…気を失っているであろうバーケニーさんの姿があった。その瞬間、俺の何かがプツリと切れる音がした…。剣を取り出し、恭介がいるであろう数十メートルの高さまで、これまで跳んだことのない高さにまでジャンプし、一瞬で目の前に迫る。
「きょおおおおおおおすけええええええええ!!!」
感情のままに刃を振るう。お前が、『お前如きが』バーケニーさんを『俺の女を』勝手してんじゃねぇえ!!周りとか後のことなど考えていなかった。ただ、目の前の『敵』を叩き斬ることしか頭に、心になかった。ただ意識は驚くほど正確に状況を捉えていた。俺の左右死角から迫る魔法攻撃に対し俺は背中側に土魔法のガードを作り出し、恭介の咄嗟に伸ばした手から放たれる魔法を盾で防ぐ。盾が数秒と持たずに砕けるがもうその頃には剣の届く距離だった。
「うわっ」と恭介が怖がるように腕を顔の前でガードするように上げるが、そんなことはお構いなしに俺は剣を振りかぶる…だが俺の攻撃は寸でのところで何かにぶつかったかのような鈍い感覚が手に響き、それ以上恭介に届くことがなかった。
「っあはは、なーんてね。僕の絶対防御スキルだよ。このスキルがある限り僕は絶対に攻撃は喰らわないんだ。にしてもキャプテンのスキルってもしかしてここまでジャンプするだけのもの?あはは、しょぼすぎて笑えるんだけど」
俺はもはや恭介が何を言おうがどうでも良かった、残った跳力の全てを使ってバーケニーさんに手を差し伸ばすが…バーケニーさんの身体に手が触れた途端、俺の手が体をすり抜けていった。実体はここにはないのだ。俺は目の前の絶望に視界が歪む感覚を覚え、さらに背中の土魔法がついに耐え切れなくなり、俺の身体に魔法がつき貫いた。
もはや思考も、感情も、何もかもが真っ暗だった…。俺の身体はゆっくりと跳力を失い下降を…落下を始める。…だがもはやどうでも良かった…。たまたま俺の手には魔法銃が握ってあり、引き金を引くことさえも…痛みはなかった。ただ俺の身体は…全てを失ったかのように…真っすぐと地の底に叩きつけられ…まるで捨てられた人形の如く、俺は身動きが出来なかった。
俺は…負けたのか…恭介に…、…恭介、なんかに………——
———……ふふふっ…見ーつけた……———
——久しぶりだね、ミナヅキ君——
本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。
今年ももう最後の投稿となります。ここまで本投稿を読んでいただき誠にありがとうございます。4月から始め38本、まだまだ自分の描きたい世界はこれからもどんどん鮮明に描いていきたいと思っていますので、来年もどうかよろしくお願いいたします。
また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。
来週の土曜は投降をお休みさせていただきます。
次回は1/10に、Episode8のEx編を投稿予定です。もし少しでも面白かった、続きが待ち遠しいと思えたら嬉しいです。次回もよろしくお願いします。




