Episode9 城塞都市最前線事変——— 前編
1月、俺がこの世界にやってきてから初めて年を跨いだ今日この頃…年末年始は騎士団の活動を休止し数名のメンバーでお留守番を任せ交互に帰郷させている。勿論俺達、俺とウルヴァとトレイス…あと一緒について行きたいと申し出たバーケニーさんと一緒に、車で懐かしきクザスの村に3泊4日で帰ることにした。
永い事村のみんなに心配させ続けてしまったが、ようやく俺が接触した魔人種…ラプスラストによる細工の疑いを完全に潔白したことを伝えることが出来て、ヴィレインさんやリーヴさんもすごく喜んでくれた。それからというもの村のみんなで俺達の帰郷パーティーをすることになり、無事義勇兵爵を叙爵したことや騎士団を立ち上げたことなども報告するとみんな大盛り上がり。クザスの村はアラタ騎士団発祥の村だと誇張しようとも言いだされ困ったものだ。トレイスは一人クザミネの村に向かい家族とゆっくり話をすると言い一度別れる事になった。
そんなこんなで村でゆっくり年明けを過ごすことが出来、別れを強く惜しむヴィレインさんをなんとか宥めて俺達はまたアラタ騎士団拠点へと戻る旅路についたのだ。
「…あー、お前ら、勝手に動いて迷子になるなよ。それと俺達は団体だから周りのお客さんに迷惑だけはかけるなよ」
「「「はーい」」」
「わーってるよ、そんなガキでもあるめーし」
「あんたは充分ガキよラン、あんたが一番に迷子になるわよ」
「んなわけねーだろ!」
「おい騒ぐなラン、パオラもあんまりランを煽るようなこと言わないでくれ」
行きとは違い、大所帯で帰ることになったのだが…。というのもヴィレインさんや親御さんからお願いされ村の子供達を帝都の学童院に通わせてほしいと頼まれた、そのため俺達の騎士団に住まわせることになったのだ。子供達の親は基本仕事で村から離れられないため、一応の保護者としてシルクの親であるリーヴさんと、パオラのお姉さんたちであるイリナさんとナタリーさんもついて来ることになったのだ。まぁ一応建前的な理由だが俺達騎士団の家事とか色々してあげると言ってくれたり、あわよくば帝都での出会いなんかも…というわけだ。そのため俺達4人に加え村からついて行くのが全員で8人、12人で車には乗れないため荷物を車に詰めてトレイスが運び、残りのメンバーで大きな街から汽車で移動することになった。…今後大所帯での移動も増えるし、やはり騎士団で全員で移動できるものが欲しいところだ。なんて考えながら汽車の中で大人しく出来ない子供達に振り回されながら帝都に向かう。
「ごめんなさいねミナヅキ君、大変なことになっちゃって、それに急に連れてきてもホントに大丈夫?」
「えぇ…まぁ俺はいいですけど、他の団員メンバー達とうまくやれるかどうか…、一応この帰郷中に身内を連れてきたいと言ってたメンバーもいたし、事前に団員全員に打ち合わせはしていますから。まぁ俺達が連れてくるとは言わなかったから驚きはするけど。それに…またリーヴさんの食事が食べれるなんてこっちこそ願ったりですよ」
「ふふっ、嬉しいこと言っちゃって。おばさんみんなのために腕を振るって頑張るわよ」
「…ミナヅキ団長、やはりリーヴさんとはどういう関係を」
「お、落ち着いてくださいバーケニーさん。リーヴさんのお宅にホームステイさせてもらってただけですから」
「あらあらバーケニーちゃん、一緒にいた時間は短いかもだけどミナヅキ君の好みとか好きな味付けとか、色々教えてあげれるわよ?」
「…、…こちらこそ今後ともよろしくお願いします」
「ふふふっ、仲がいいのね」
なんて他愛もない会話をしつつ俺達の乗る汽車はまっすぐ帝都に向かう、そんな列車の中でなにやら騒がしさを感じ、様子を見ると…なんと子供達が他のお客さんと揉めている様子だった。ウルヴァやイリナさん達が見ているから大丈夫だと思っていたのだが…やっぱりみんなで見ておくべきだったかと後悔した。
「っへーんだ、やっぱりお前ら迷子だろー!」
「はー、うるさいガキンチョですねー、ミーたちじゃなくて仲間が迷子だっていってるのだ」
…どうやら傍から聞いている限りだと売り言葉に買い言葉のようだ。喧嘩をしてるのはこっちはランだけで、お相手は…ラン達子供達よりかは背は高いがそれでも俺達からしたらまだ子供…小学生低学年と高学年の喧嘩って感じ。ランと喧嘩しているのが金髪ぼさ髪ショートに子供にしてはイヤリングやらピアスやらがたくさんついたチャラそうな見た目、緑と白のノースリーブミニスカセーラー服に萌え袖の服装、そして細長い尻尾の生えたおそらく獣人種であろう女の子と、その子の後ろにいるのはそんな金髪女の子と同い年くらいだが性格は正反対そうな大人しめで、長い栗毛を三つ編みツインテールにした、金髪よりもちっちゃなお胸で黒い臍だしトップスに黒いミニスカ姿、背中に真っ黒な翼のある翼人種の女の子の2人組だ。そして二人とも腰にお揃いのジャケットを巻いている。汽車の中は暖かいから脱いでいるのだろう…。
「ウルヴァ…どういう状況?」
「あぁ、別にどうという事はないんだが、どうも友達が迷子になったみたいで探して回っているんだとさ」
「そしたらランのバカが迷子はお前達だろって言ったせいで喧嘩になったってわけ」
なんというか、ホントに子供らしい理由で喧嘩してるだけだったとは…とはいえ当人たちが騒ぐだけならいいがここは公共の場、しかも狭い汽車の中だ。他のお客の迷惑になるしとりあえず事を鎮める必要がある。
「あー、えっと…すみません。うちのものがご迷惑をかけて…ほらラン、謝れ」
「なんでだよ、こいつら俺達とそんな変わんねーだろ。そのくせ大人ぶってるのが腹立つ」
「腹立つじゃないのラン!」「いって蹴んなパオラ!」
「…ふーん、でも実際ガキンチョのほーがおこちゃまなのは事実なのだ!」
そう言うと金髪の子がごそごそとポケットから何かを取り出す。それは一枚の…見覚えのあるカードだった。
「じゃじゃーん!兵爵免許証~。これこそがちゃんとミーたちのほーが大人だって証明なーのだー!」
「なぁぁっ!!」「えぇっ」「うそぉ~」「ちょ、見えない…」
金髪の子がどや顔で子供達に見せつける。子供達は羨ましそうにこぞって眺める。…にしても、確かに規約上は問題ないにしてもこんな子供でも義勇兵爵になれるもんなのか…と驚きを隠せない。というか、この調子だとこの後ランの奴なんか学童院に通わせるよりも合宿参加させろとか言いだしそうだな…
「…ルミちゃん、そんな風に出してるとまた失くすから」
「おっと、そーですねククルー…っと、そこのガキンチョのたいしょー」
ルミちゃんと呼ばれた金髪の子は子供達に見られながら免許証を仕舞い、俺に視線を向ける。
「もし、ティラ…えっと。ミーたちよりも背が高くて、銀髪で、髪が長くて、ぼんやりしてて…おっきな弓とアコーディオンみたいなのを背負ってる月…じゃなくて精人種の子がいたら、集合場所は『ムルフィルテンジュ』だから向かっておいてって伝えておいてほしいのだ」
ムルフィルテンジュ…奇遇にも俺達も帝都の拠点に着いてすぐに向かわないといけない場所こそ、同じ城塞都市ムルフィルテンジュなのである。とはいえ初対面にそこまでの事を言う必要はないし…
「分かった。見かけたら伝えておくよ」
「よろしくなのだー。…ガキンチョもこれくらい大人のたいおーを勉強するよーになのだ」
「うっせーまいごー、べーっだ…あいたっ!!」
…結局最後まで喧嘩したまま二人が別の車両に行くのを見送り、ようやく騒がしいのが収まってまたゆっくりな汽車の旅を送り、そして帝都の駅へと到着した。子供達が帝都に目を輝かせ自由にめぐってあげたい気持ちを我慢させて真っすぐ拠点へと帰る。こんなにも急いでまっすぐ帰ってきたのはこの後俺達は依頼の出発をしなければならなかったのだ。拠点の中ではみんなが出発の為に慌ただしく準備を進めていた。
「ごめんなさい、こんな忙しいタイミングで…」
「あらあら、ここがみんなのお家なのね…こっちこそみんなが帰って来る時までに過ごしやすくなってるように頑張っておかなきゃね」
「おいエルヴァ!依頼書見つけたぜ!!」
「こらラン!!勝手に机のものいじるな!!」
「ねーナタリー、さっきの団員さん見た?」
「みたみたー!えーちょーヤバなんだけど。まだフリーかな?」
「えーフリーじゃないやろー。でも声かけよー」
こっちもこっちでもう既に喧しい様相が見えている。この調子で団員どんどん増やしていったら大所帯になると思うのだけど…いや他にも連れてくるって聞いてるし増えるのは確定か。なんてぼんやり考えていると、どたどたと奥から走ってくる音が響いてくる。
「先輩っ!?もう着いたんですか!!せんぱぁーい!!」
「きゃー、シルヴィ久しぶり~!元気だった~?まだ男遊びしてる~?」
拠点奥から現れたのは、俺が以前異界人特別拘置施設にいたころ…正確にはエルフ市見学の際にティストレイ連邦の襲撃事件があった時、たまたまリーヴさんが以前帝都で働いていた頃のお店の従業員を偶然助け出した、その時の三人いたうちの一人なのだ。助けてもらったお礼にと俺達の騎士団に雇われの希望を出したのだ。それがまた丁度リーヴさんが働いていた時に一緒にいた後輩の子だとは何ともまぁ出来た偶然ではあったが、どうやらうまくやっていってくれそうでありがたい限りだ。
「ミナヅキ団長、連れてこられた方の事が心配なのはわかりますが…依頼の参加に間に合う最終汽車の出発時刻が迫ってますので」
「っと、そうだった。ウルヴァ、コノハ、それとシルヴィさん、みんなが拠点生活できるように案内とサポートをしてあげてください」
「分かってるって」「任せてください団長さん」
「後のみんなは全員出発準備できてるか?」
「それなんですが旦那ぁ、まずいんですよ。スンボリに帰郷した3人がまだ帰ってきてないんですよ」
スンボリに帰郷した3人。それはキヨミツとツヅリ、ホタルの3人だ。本当ならラセツも一緒に帰るつもりだったが帰郷する気はないとの事で3人だけで帰らせたのだが…
「まぁいないものは仕方ない、3人はお休みってことにしよう。こうなるとかえってラセツが帰郷しなかったのが不謹慎ではあるかもだがラッキーだったな」
コノハが了承し事態をみんなに伝えに動く。これで今回の参加メンバーはキヨミツ達3人に加え、リーヴさんや子供達に拠点内の案内や説明を任せるために残ることとなったウルヴァとコノハ。この5人を休みとした残りの11人全員だ。正直かなり頼れるメンバーばかりお休みとなっていて、戦闘以外での不安が大きい…。だが考えていたって仕方がない。もう依頼の為に出発しなくちゃいけない時間になった。
「それじゃ、後の事は任せた!!」
「おぅ、こっちの事は任せておけ」
「無事に帰ってきてくださいね~」
俺達は拠点に残るメンバーに手を振りながら出発する。荷物は近くの輸送騎士団に依頼し、俺達は改めて汽車に乗り込む。行先は当然…依頼先である城塞都市『ムルフィルテンジュ』だ。
「しっかし、今日は一日中汽車に乗りっぱなしかぁ…もうしんどいぜ」
そうぼやきながら今回の依頼書に目を通す。内容は前にも確認した通り本日5日から一週間、城塞都市『ムルフィルテンジュ』で《ティストレイ連邦》からの軍事攻撃に備え前線維持を行うというもの。とは言ってもずっと劣悪な環境である最前線で一週間過ごせって話ではなくあくまで戦争が始まったら前線に行って戦いティストレイ軍を追い返すだけだ。そのため殆どの時間をムルフィルテンジュの軍施設内である程度自由に過ごしていいとの事だ。噂では一度も出撃がなくムルフィルテンジュで過ごすだけで報酬がもらえた…なんてことがあったとコノハから聞いているが、まぁ流石にそんな期待は無しにちゃんと準備しよう。今回の依頼に差し当たって一応俺達だけでも戦力を整理しようとの事でラセツの席の近くに座り相談を開始した。まずは参加団員が俺含め11人という事で、
ストライダーが俺、ラセツ、カトレナ。
グラップラーがマアダ、イヴ、ビヨンド。
クラージーがトレイス、ドロフィー、フィラーレ。
サポーターがドレイク、バーケニー。
こんな感じだが、サポーターはドレイクが前衛、バーケニーが後衛と役割が違う、それを加味して今回のチーム分けは
Aグループ、俺、ドレイク、ドロフィー、バーケニー
Bグループ、ラセツ、カトレナ、トレイス、フィラーレ
Cグループ、マアダ、イヴ、ビヨンド
…こういった感じでまとまった。まぁおそらくどこかの野良メンバーと一緒にやるだろうしとりあえずはこの布陣でいくことに決めた。
そろそろ出発かなと持っていた時計を見てから、窓の外から見えるホームの時刻表を見る。だが丁度どこかで見たことありそうなジャケットを着た人が時刻表の前に立ってるせいで全然見ることが出来ない。しかもあろうことか時刻表の前でうろうろするせいでなかなか見ることが出来ない…。重そうな幅のデカい荷物ケースだから余計に見えないな…
「…ん?」
そんなうろうろしている人…いや少女を眺めていたら、確かに見覚えのあるジャケット、ウェーブかかっているが銀色の長い髪、そして背中には、アコーディオンは見えないが弓を背負っている。…まさか、もしかして、先ほど汽車に乗っていた少女達が言っていた迷子の子、だろうか?いやとは言っても間違いだったらまずいよな、ってかもう出発まで時間無いし、というか俺達には関係ないし…あーもー!!
「ちょっ、団長!?どこ行くの!?」
「すまん!ちょっと用事が、間に合わせる!!」
コノハ達が驚く中俺は席から勢いよく走り出してそのまま列車から降りる。そして走ってその子の元に駆け寄る。当然その少女は俺を見て驚く。
「勘違いだったらゴメン!!君の名前はえっと、ティラ…ちゃんで間違いない?ああと、ミーじゃなくてルミちゃんとククルーちゃんのお友達の!」
あれこれ喋っているうちに出発の汽笛が鳴り響いた。俺は少女と列車を何度も交互に見る。やっぱり人違いかと思い戻ろうとすると、腕を掴まれ少女を見るとコクコクと頷いた。合ってたよ出発まで時間無いのに!
「やっぱり!言伝を預かってて、えっと、ムルフィルテンジュに集合で、えっと今俺が降りた列車が丁度それ行きで、…あーもー!!」
扉が閉まる寸前、俺は一か八か彼女の荷物ごと彼女を抱え列車に飛び込んだ。当然列車の出入り口で様子を見ていた仲間達もいたが構わず押し蔵饅頭の如くみっちみちで列車の中に入り込んだ。その瞬間プシューと扉が閉まり列車はムルフィルテンジュへと出発した。
「…はい、大変申し訳ございませんでした」
俺は人があまり通らないのをいいことに列車の通路中央で土下座していた。そして俺の周りには複数の女性陣が…そりゃあ見ず知らずの男にいきなり出発間際の列車に無理やり乗せられたとか、事案以外の何物でもなかった。列車の中だから勘弁してもらったがそうじゃ無ければ俺はサンドバッグにされていただろう…。ちなみにその女性は別車両にて俺以外で事情を唯一知っているバーケニーさんが彼女の対応に当たっていた。バーケニーさんがいなかったら、バーケニーさんがクザスの村に訪れていなかったら…俺は…いやもう終わっているようなものだが
「…話が終わりました。彼女もだいぶ落ち着きました」
話を終えたバーケニーさんがこちらの車両に戻ってきた。それと無理やり連れてきた彼女も一緒だった。
「結論から言えば…彼女も私達と同じ依頼を受ける予定の兵爵でした。ただ本人は、この列車が依頼に間に合うための最後の一本だという事は把握していなかったみたいですね」
「あの…ありがとうございました…。私いつもぼんやりしてて…昨日からみんなと一緒にいたはずなのに逸れちゃって、乗らなきゃいけない汽車も乗りそびれちゃいそうになったし…」
「何あまいこと言ってんのよ。もう少し危機感もって、ほら一発蹴りいれてやりなさい」
「まぁまぁフィラーレ…ところで荷物は大丈夫でしたか?」
「うん…全部ある。本当にありがとう」
そんなのほほんとした彼女に毒気を抜かれたのか俺を取り囲んでいた女性陣はすっかり説教雰囲気を無くし、これ以上は邪魔になるとの事でようやく俺は解放された。彼女は他の女性陣と一緒の席に座るのを見て俺はやれやれと男性陣の席に座る。
「おう、新手のナンパお疲れさん」
「んだよ、団長もその気あるならそうと言ってくれりゃぁよかったじゃねーか」
「別にそんな気で彼女を呼び止めたんじゃないわ!」
「…団長?少し大事な話が」
するとすぐにバーケニーが俺の隣に座る。すると周りを気にしながら顔同士を近づけるようにして話す。
「…あの子、月人種とのハーフで間違いないです」
「っ!…、…分かった。ありがとう」
月人種…、それは現在帝国にはいない、とされている3種類の人種のうちの一つ。だが月人種に関しては完全に存在していないわけではなく、純血の月人種が帝都にはいないだけで、混血の人がこの帝都に数百人いるか居ないかと噂されている…。なぜ混血しかいないのかと言えば、20年くらい前にこの帝都を統べる祖人種の王の証を持つ人が、他国…それも月人種が一番多い国を統べる月人種の王の証を持つ人を処刑したため、帝都と月人種の王の証持ちが統べる国との関係は完全に最悪な関係となり、帝都にいた純血の月人種は元々他国の人間だったため国に帰ってしまったから。と言われている。
だがそれだけではない、そんな関係最悪な国が行っているとある政策の所為で関係のない帝都に在住している月人種のハーフはとばっちりで嫌われている。勿論それだけを理由に帝都の市民権を得れなかったり制度を受けられないというわけではない。現にハーフの彼女は兵爵としてこの帝都で生活が出来ている。だからと言って決して安全ではない。駅のホームを一人でふらついているなんて恰好の的なのだ。偶然とはいえ俺達がこうして強引に連れ去る形で保護したのは結果的にはよかったのかも…。とは決して口にはしないが。
「…おそらく、いいお友達に恵まれていたのでしょう。自分の立場を呑気でいられるくらい守ってくれていた素敵なお友達が」
「それもそーだな、あの二人組のちっちゃなお友達もランと喧嘩するくらい必死で探してそうだったし。…合流させてやらないとな」
なんて思いながらとんだ騒ぎがありながらも、俺達は無事城塞都市『ムルフィルテンジュ』へとたどり着いた。
ホームに降りたその光景は見たことはなくともまさに堅牢なる城といって言い程の荘厳なる鋼装飾が張り巡らされたレンガ造り、猛々しくどこか落ち着きのない空気が張りつめるような雰囲気作りがここがただの駅だと思わせないような雰囲気を出している。いや実際歩く人たちの中に武器を担ぎ鎧を身に纏っている兵爵と思わしき人々が半数以上見受けられる。とはいえ一般の人や子供達もいるのが癒しにも感じる。
駅を出れば街の中は道路や通路は狭くさらには階段が多く民家がぎゅっと押し詰められたような街づくりがしてあり、街中が戦場になることを想定とした作りをしているとの事だ…俺達はとにかく西に西に…高い所にある軍の最前線本拠地を目指した。
「はぁ…やぁーっとついた…」
ひたすら階段をの乗っていくだけの苦行かと思ったが、意外にも本拠地まで直行のロープウェイがあったからすんなりとこれたが…いい加減座りっぱなしで腰が疲れてきた。それはともかく軍基地の中は相変わらず花さが一切感じない仰々しい硬く冷たい鉄とレンガ造りの建物となっており、一区画なんか近くに溶鉱炉でもあるのか冬なのに熱気がむわぁと襲ってきた。そんな中で働く人々をかき分けて俺達は窓口まで進む。
「おぉ、よく来てた。アラタ騎士団の方々だな。俺はE.R.D.O斥候部隊隊長を任されているイワン・ハイランドだ、よろしく」
俺達に対応してくれたのは、まるでまさに軍人とも言うべきだろう制服の上に全身ミリタリー武装を身に着け、腕っぷしなんかまるで2Lペットボトルのような厚い腕、身体が横綱並みに分厚くさらに顔も濃ゆい…中年の祖人種の男性だ。こんなごつい見た目で斥候と言われてもかえって目立つと思うけどなぁ、なんて思ってはいけない。例によって『季刊誌ルーブル』の国衛兵爵ランキングで堂々の25位こそイワン・ハイランドなのだ。むしろそのくらいのランクの人故の斥候技術があるのだろう、というか…こんなガタイ強そうなのが唐突に音もなく不意打ちしてくるとか恐怖でしかないだろ…
「こ、こちらこそ…よろしくお願いします。アラタ騎士団団長のミナヅキ・アラタです…総勢11名での参加です」
「そうか、ご足労感謝する…、ん?11名?12名ではないのか?」
「いやあのそれが…俺達と同じ依頼で、ここに来るまでの途中仲間とはぐれ迷子になってしまったらしく、同じ行先だったのでここで仲間と合流出来ないかと…少しこの子の仲間がいないか探したいのですが」
よくもまぁいけしゃあしゃあと…という女性陣からの冷たい目線が背中に突き刺さるが…嘘はいってないから。それを伝えるとイワンさんは他の職員に声をかけ、おそらく確認させに向かったのだろう。しばらくもしないうちにすぐにその職員が戻ってくると、その後ろからぞろぞろと4人の女性達が…そのうちの2人が見覚えのある二人。ジャケットを着ていて服装は違えどもルミちゃんとククルーちゃんだ。
「あー!ガキンチョのたいしょー」
「ティラ!よかった、無事ここに来れたんだな!心配したぞ!!」
するとメンバーの中のうちの一人、青髪で短髪、おでこから二本の角が生えた鬼人種の女の子が、周りを取り囲むメンバーを突き飛ばす勢いで連れてきた少女、ティラに抱き付く。
「うん。ごめんね…私がぼーっとして逸れたのがいけないの…」
「すまない。私がちゃんと見ていなかったばっかりに」
…どうやら相当大事にされてきたみたいだ。俺は安堵からふぅと吐息を漏らすと、女性達のメンバーの最後の一人、女性達の中で一番背が高い…どころか祖人種の女性で俺よりもデカい人は見たことない。体格もスタイルもいい褐色肌にピンクの長いストレート髪、ジーパンに赤いシャツを腰巻き、黒いインナーを見せるようにみんなとお揃いのジャケットを前開きで着ている女性が俺に手を差し出してきた。
「私達の大事な仲間を連れてきてくれてありがとう。私はこのバンドグループのリーダーをしてるフェリスよ。よろしく」
「こちらこそ、騎士団の団長を務めているミナヅキ アラタと言います。合流させることが出来てこっちも一安心ですよ」
俺はフェリスさんの手をがっちりと握る。その様子を見ていたイワンさんがフム…とじっと見ている。
「…丁度いい。君達アラタ騎士団とテトフルクバンドクラブの5人で今回の依頼に当たってもらうことにしよう。本依頼では16人で1つの小隊としてまとまって動いてもらうからな。君達は合わせて丁度16人、随分出来過ぎた偶然だけどな」
えっ…と驚く俺達全員、いきなりの決定に戸惑いながらもお互いがお互いの顔ぶれを伺う。するとティラが青髪の鬼人種の子から離れゆっくりとバーケニーの傍に近寄りぺこりと頭を下げる。それから気が抜けたように俺達はお互いに挨拶をし合う。
「私はティラ・ファー・レイスンと申します。担当はピアノとかアコーディオンとか…あ、戦闘では弓が得意です。サポーターします。…種族は、えっと、精人種です。よろしくお願いします」
「ミーはルミナ・エーゲルデバルドなのだー。ビントロングの獣人種のグラップラーで、武器はクローを使うです。…楽器?ミーはカホンとか打楽器やってるのだ」
「ククルー・キャンピス。黒天系翼人種、クラージーで魔力珠を使う。楽器は葦笛…以上」
「…トモエ・カワナギだ。いいかお前ら、ティラに手を出したりでもしたら叩き斬ってやるからな。覚悟しとけよ!!」
「トーモーエ!一緒に行動するメンバーでしょ…全く、トモエは鬼人種のストライダーで刀をメインに戦ってるわ。楽器は…三味線を使ってるわ。んで私はさっきも挨拶したけど、テトフルクバンドのリーダー、フェリス・ガリュージョバーン。祖人種でトモエと同じくストライダー。私は格闘技をメインに、あと短剣でも戦うわ。楽器はギターをやってるわ。よろしく」
これで全員と挨拶が済んだ。向こうも俺達11人と和気あいあい…とまではいかないが問題なくやれそうだ。程よく挨拶が終わるタイミングでイワンさんに連れられ移動すると、大きな集会場のような場所に案内され、そこには100人くらいだろうか大勢の人が集まっている。中には雑誌で見た人もいたりする…もしかしなくても全員今回の依頼で集まった義勇兵爵達なのであろう。俺達は空いている一角の席に座る。
本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。
最近めっきり寒くなってしまい、自分の仕事も落ち着き雑務の多い生活…執筆も思うようにいかないながらも今回もなんとか投稿に間に合わせることが出来ました。とはいえ今後どこかで休みを取り書き溜めもしたいし、年末年始は個人的に投稿していくつもりですが、どのタイミングにしようかなと悩み中…
ちなみにTRPGの方は執筆で全然進んでいません、助けて(
また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。
次回は12/20に、Episode9の中編を投稿予定です。もし少しでも面白かった、続きが待ち遠しいと思えたら嬉しいです。次回もよろしくお願いします。




