表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/42

Episode8 新たなる僕らの日常、アラタ騎士団——— 前編

「ふああぁ…うぅーさっむ」


 ベッドの中の温もりはすっかり冷え切り、暖房が完備されていた前まで過ごしてきた快適な講習所寮生活が恋しかった。朝六時…まだカーテンの奥は真っ暗だが俺は寒さをこらえながらゆっくりとベットから体を起こした。昨日の仕事の疲れがまだ残っているような疲労感を堪えながら立ち上がる。真っ暗な1人部屋、前まで同じ部屋にウルヴァもトレイスもいたが今では小さいながらも部屋を独り占めできることがちょっと嬉しい反面、少し寂しかった。さっと着替えを済ませ、白い息を吐きながら俺は静かに部屋からでる。他の部屋で他メンバー達も寝ているであろうから俺は静かに騎士団宅の廊下を抜ける…ちょっとした廊下を抜け騎士団本館に移動すると俺よりも先に何人かのメンバーが既に活動をしていた。


「うっす団長」


「いつも通りミナヅキでいいよ」


 俺は先に起きていたメンバーに軽く挨拶をして、水回りの部屋に行って身嗜みを整えて食堂へ向かう。食堂はまだ殆ど物が揃っておらず、食材もパーティしてから殆ど補充が進んでおらず結構スカスカの状態。それでも珈琲豆…いやどっちかというとチョコっぽい感じ、カカオ豆コーヒーとでもいうような粉末を2つのカップに入れ、既に一度沸かし済みのお湯を再度沸かし直して入れる。片方にだけ砂糖を加えごくりと飲んで眠気を覚まして、2つのカップを持って現在俺達の仕事用として使っている机の席に座る。机には今日の新聞と、優先的に回してもらえる軍から昨日届いた依頼書の束が置かれている。

 軍からの依頼、それは基本的には義勇兵爵の主な仕事であり収入源でもある。そもそも軍および国衛兵爵は主に帝国及び地方都市の「国防」を主とした組織である、だが当然軍としての組織のしがらみであったり、そもそも全ての国衛兵爵が常に戦いを求めている人ばかりではない。そのため帝国都内及び地方都市以外の多くの市町村への人員要請、野生動物の管理及び駆除、諸外国からの干渉対応など「帝国領土内」の仕事が毎日のようになだれ込んでくるのだ。ちなみに騎士団と非騎士団である義勇兵爵では優先度が異なり、最初に騎士団が仕事の参加不参加を決定してから、その後一般義勇兵爵達に公開されるという仕組みになっている。とはいえ俺達に回ってくる仕事もまだ少ないのは事実だ…。ちなみに一つの依頼に騎士団全員で行く必要はない。依頼の人数は足りなくても足りない分だけ他の義勇兵爵が加わるだけだから。そのため俺達は現在俺のグループ5~7人とラセツのグループ5~7人の二つに分けて活動。残りのメンバーは一応休みというか拠点での活動やお留守番をお願いしている。そんな生活を活動開始からおよそ10日ほど…というかもうあと数日で年越しだ。

 と丁度そのご本人が起きて来たみたいで、コツコツと重い足取りでラセツが大きなあくびをしながら俺の近くにある椅子に座る。ラセツが起きてきたころにはほぼ全員が起きて活動を始めていた。


「悪いな…おそくなった」


「大丈夫ですよ。依頼も昨日のうちに参加を打診済みですし、出発まではまだ時間ありますから、ゆっくり準備しましょう」


 そう言いながら俺は口にしていない方のカップと二枚の依頼書を手渡す。ラセツはカップの珈琲を口にしながら依頼書に目を落とす。俺達が受けることにした依頼は害竜駆除、外国勢力の制圧…今日はこの2つだ。その中からラセツは外国勢力の制圧依頼を、俺は害竜駆除の依頼を選んだ。どちらも依頼実行日が今日、期限が三日後となっている。この後は参加メンバーを選抜し準備をしなければ…。

 さて、メンバーの選抜を考える前に今俺達の騎士団の現状の活動について軽く触れておく。まずこのアラタ騎士団の団長を務めている俺、ミナヅキ アラタ。団長としてこの騎士団の総責任を担っている。んで役員グループとして戦闘分野のリーダーにラセツ、経営や事業系の分野のリーダーにフィラーレをお願いしている。…まだ俺達は事業に手を出していないためフィラーレさんは現在フリーの状態だけど。それとバーケニーさんには俺のサポートをお願いしている。俺が至らない部分を全面的にバックアップしてくれて助かっている。

 ここからはそれぞれ団員達の役割だが、マアダとイヴの2人が必要な物資調達班として動いている。…帰りがいつも遅いあたり多分寄り道多めなんだろうな。続いてウルヴァとドレイク、ツヅリの三人は拠点内部の工房を仕事場に、武器の調整や加工などを行っている。それぞれが講習所で鍛冶のカリキュラムや木工のカリキュラム、専門武器知識のカリキュラムを受けているからか知識や資格など充分足りているから任せられる。あ、ちなみに俺達の武器は訓練用のものをそのままもらい受け、実戦で使用できるように再調整した物なので手に馴染んでいる。

 次にトレイスは一つの空室を使って治療室にしようと計画している。とはいえまだ全然物が揃っておらず、適当に持ってきたベッドにトレイスの学術書が山積みの状態。トレイスの趣味部屋と化している…。まぁ医療具もゆっくりそろえていくつもりだ。コノハは元々ジャーナル希望だったのもあり、情報収集役を一任している。今日も朝早くから都内の様々な情報が流れる場所に行っているらしい…。そしてキヨミツは意外にもコノハが持ってきた情報を整理し俺達に回してくれる。まぁ俺達とは言ったがなんというか、ラセツのサポートをしているって感じだろう。今後は本格的な事業サポートもしてフィラーレの手伝いもしていくかもしれない。といったところでこれで現在、自主的に活動をしているメンバーは以上だ…

 そう、現在活動が依頼に同行すること以外自主的に何もしていないのが4名。あれこれ言えば一応やってはくれるものの、逆に何も言わなければ何も動こうとはしないドロフィー、同じくラセツの指示であれこれ動くものの、何も言われなければ自由気ままに遊ぶおつむが子供なホタル、そして…


「なんでこの私がこんな事をしなくちゃならないのですの!?あなたたちだってやるなら私のもやればいいじゃないの?」


 …今は人手不足でみんなが自分の洗濯をしている中で、相変わらず人に押し付けるのが当たり前。わがままで自分勝手なカトレナ…の女性三人組。特にカトレナとドロフィーは以前ちょっとした衝突があってから今もまだお互いにうまくやれているのかも分からない…怪しい状態でもある。

 そしてもう一人の問題なのがビヨンドだ。あっちこっちで依頼に同行はしてくれるものの、それ以外にやることをせずにいなくなることが多く、騒いだりしないがカトレナ以上に何もしてくれない。どうにも何人もの女の子を侍らせているっていう話をウルヴァ達から聞いた。今はいいかもしれないが今後全員の不満が爆発して自然解体しかねないかもしれない。そのため出来れば全員が納得する程度にこの四人との中をうまく取り持たなければ…だからこそ出来るだけこの4人に依頼を積極的に参加してもらい、メンバー内での関係地の構築をしていってもらいたいって寸法だ。

 色々打ち合わせた結果、今回は合宿で組んでいたチームを逆にしてお互いの指示系統が違う時の動きの練習をするという事で、俺はラセツ以外の3組Aグループの3人を、ラセツが俺以外の1組Dグループの4人をメンバーに加え、今回は俺の方でビヨンドとカトレナを受け持つことにし、ラセツの所にマアダが参加する両チーム6人構成という形となった。今日のお休みメンバーはフィラーレ、バーケニー、イヴ、ドレイクの4人だ。

 その後朝食を済ませつつ今日のメンバーに編成を伝えつつ、嫌がるカトレナを宥めつつ…、準備をして留守番メンバーに後を任せ出発する。ラセツ側のグループも含めた俺達12人は依頼目的地に移動するため拠点から一番近い軍指定の乗り合い停留所に移動する。すっかり時間帯も昼に近づいてきたのか外は明るく、そこには多くのおそらく依頼参加者と思われる多くの義勇兵爵達が集まっており、様々な依頼先行きの車やバスが駐車している。


「俺達は…こっちのバスか」


「んじゃ、気を付けてな」


「そっちこそ」


「若様、お気をつけて!!我々がお供出来ない事誠に遺憾ですが、若様とミナヅキとの間に交わされた策との事で自分は苦しい思いを堪えて」


「分かったからツヅリ、さっさと行け」


 俺達は軽く別れを告げてそれぞれ別々の20人程度の小型バスに武器や荷物を荷台に預けて乗り込む。俺達のバスには既に何人かの今回の依頼参加者が搭乗済みだった。男女合わせて6人程のメンバーが揃っている。祖人種、精人種、獣人種…翼人種みたいな大きな翼の人はいなさそうだ。体格もみんなだいたい同じほど…俺達は適当な場所に腰かける。唯一同行メンバーのビヨンドだけはガタイのデカさから少々窮屈に感じている。


「おいおい…もっとでけーのはなかったのかよ」


「我慢してくれビヨンド、それに…でかいバスはそれはそれで席の数が増えるだけでさらに窮屈さが増すぞ?」


「っち、なら団長俺が快適に乗れる乗り物くれよ」


「そうだな…なるべく早く買えるように考えてみるよ」


 期限の悪いビヨンドを窘めながら席に座る。これで参加メンバーは12人…俺は害竜駆除の依頼書に改めて目を通す。今回の目的は帝都と近くの街を繋ぐ輸送路付近に数日前になってゴラドンが巣をつくっていたことが判明。開拓区域内それも人の通りのある場所で大きな巣が出来、輸送がストップしかねないためそのゴラドンを討伐、巣を駆除するというのが今回の内容だが…問題なのはそのゴラドンの種類だ。

 『ビーゴラドン』、それが今回の討伐対象だがこいつはゴラドンの中でも最もポピュラーな種と言っていいほどに個体数が多い。なにせ出産から成熟しきるまでに50日とかからない成長速度、体長はおおよそ2~3m、全身が黄色の甲殻に覆われまるで蜂と竜の特徴の組み合わせ…をだいたい1/3くらいに割ったくらいの強さを持っている。とはいえ毎年数多くの死者を出し種としてカウントした時のキルカウントならゴラドンの中でもトップと言っても過言じゃない危険なゴラドンだ。そんなゴラドンの討伐だが…その巣の大きさにもよるが小さい物でも数十匹のビーゴラドンが巣にいると講習所で習った。まぁ今回はデカい巣という事で数百、いや千を超える巣かもしれない。とはいえそもそも今は冬、ビーゴラドンは確か冬眠時期だったはず、それなのに討伐という名目を打っているとなると…難しい依頼なのかそれとも案外あっさりいけるのか、判断が難しい内容だ。


「なぁ…この人数でビーゴラドンの駆除って成功すると思うか?」


 俺は不安からか隣に座ったキヨミツに声をかける。いつもならトレイスに声をかけるところ今日はラセツのグループに同行したからいないのだ…。


「さぁな、けど無事に依頼が成立するってことは軍としては成功見込みがちゃんとあるって事だろ。現地で合流するメンバーもいるんだ、そこに大手の騎士団が来てくれていれば問題ないだろ」


 と随分楽観的な答えが返ってきた。まぁ軍も無駄死にするような依頼の実行はしないだろうし…大丈夫だろうな。


「それにしても…一体いつになったら出発するのです?この私を待たせるにしても長すぎますわ」


 退屈に感じてかカトレナがぶつくさと文句を言いだしてきた。するとバスの扉側から何やら喋り声が聞こえてきた。そして一人の男が、女性をはべらせながら入ってきたのだ。


「っけひゃひゃひゃ、俺様を乗せるバスにしちゃ随分おんぼろだな…まぁ仕方なく使ってやるけどな」


 その男は顔面が真っ白なくらい蒼白で、背丈は2mを超えるだろう高さ。だがガタイ自体は細身、紫のショートでオールバックな髪の下に見える精人種特有の長い耳…おそらくシャドーエルフ系だろう。ダーク系の胸丈インナーのような防具の上にコート、真っ黒なジーンズのようなズボンを履いていてゴテゴテとした装飾がついている…。女性の方は何も変哲もない普通の祖人種の少女?女性に見える。だがそれよりも…その男がバスに乗り込んだ瞬間みんながざわざわと騒ぎ出したのだ。


「…おい、あいつ」「ダチュラだ」「間違いないわね…」


「…ミナヅキ、ミナヅキ…あのお方は有名人ですの?」


「まぁ…結構な有名人だと思う。とは言っても俺もちょっと雑誌で見た程度だからあれだけど」


 俺は一応と思って持ってきたとある一冊の雑誌を取り出す。『季刊誌ルーブル』、俺はその雑誌をパラパラとめくる。

 『季刊誌ルーブル』それは帝国領土内で最も人気を博している雑誌の一つであり、出版している義勇兵爵騎士団が帝都及び各都市に飛び回り帝国内におけるおおよそ500万人以上の全ての兵爵をリサーチ、その中でも注目の高い兵爵を記事に取り上げ年に四回に分けて出版している。その記事の中でも特に注目が集めている内容が、年に一度だけ掲載される兵爵最強ランキングである。これは帝国軍として所属し国を守るために様々な活動を強いられる『国衛兵爵』、様々な権限を与えられ自由な活動を許可されながら兵職にも勤しむ『義勇兵爵』、義勇兵爵達が集い組織形態を持ち軍から認可された部隊『騎士団』、それぞれで去年一年の活躍を集約しさらに兵爵の代表とも呼べるヴァイルハン・グリフィスアンバー帝国軍総司令が監修を行い、その実績や実力から優秀な兵爵を上位100人、義勇国衛の二項目で分け200人、さらに騎士団として上位50組織のみに絞りランク付けされる。このランキングに載ることはいわば総司令お墨付きの実力者と言う箔が付くことなのだ。ちなみに他にも様々なランキングはあるようだ。


「…あったここだ。義勇兵爵最強ランキング、57位ダチュラ。騎士団に所属せずフリーで活動している中でも指折りの実力者だ」


 俺はランキング項目のページを開いてカトレアに回す。ランキング最上位は主に騎士団に所属している人が多いためそもそも野良の名前が載ることの方が珍しい。というかそもそもだいたい義勇兵爵だけで200~300万人程の57位だ。戦闘を一切しない兵爵はいるとしても100万人弱くらいはこのランキングを気にしている人もいる中で考えてもかなりというか圧倒的上位だ。


「そんなすげーつえー人がなんでこんな俺達でも参加できる依頼に…?」


「さぁな…金の為とか、依頼回転率とか…とりあえず適当に選んだのがこれだったとかそういうんじゃないかな?まぁ下手な詮索は無しにしよう」


 そんなこんなでそのダチュラという男が入ったのを最後にバスの扉は閉められ出発した。俺達を乗せたバスは東に進み、しばらく走り帝都の関所を抜け郊外に出る。さらにしばらく走り1時間が経過したころにようやく軍の一時拠点用のキャンプ地が見え、バスはそこに駐車された。俺達はバスから降りると皆各々で体をほぐしたり荷物を回収したりと個々に動いた。


「これで全員だな。それでは今回の依頼の概要を説明する。全員集まってくれ」


 軍の一人が呼びかけると俺達参加者全員が集まる。軍の人は運転手も含め6人程度しかおらず、さらに俺達参加者はバスに乗っていただけでなくキャンプの中からもっと多くの人が出てきて、最終的な人数は25人になった。


「今回の依頼内容は概要に書いた通りだ。ここから3㎞程離れたところにビーゴラドンの巣がある。だが今何故か巣で冬眠している筈のビーゴラドンが広範囲に活発に活動している。原因は分からんがこれ以上近づくとあいつらの縄張りに入ったとみなされ警戒する。輸送路を通って近くまで連れていくことは可能だが一番近いところまで移動してもそこから外側に1㎞離れている。我々に出来ることがあれば何でも言ってくれ。今回の作戦の指揮は勿論『コンバットJ』にお願いする。それでは後はよろしく頼む」


 軍の人がそう言うと、既にキャンプに到着していたメンバーの内から一人の男…男?何か黄色と黒の縞々模様のした防護服の様なものを来た人物が前に出る。というかよく見たら何人か同じ格好をした人たちがいる。…さっき勿論といったあたり、ビーゴラドンの専門チーム、だったりするのだろうか?それっぽいし。


「どうも、ご存じかと思いますが私達は害獣・害虫・害竜駆除を専門として活動していますコンバットJ騎士団、当作戦リーダーを務めますタカスミと申します。害竜駆除は非常に危険ですので皆様安全第一でお願いします。えー、今回の作戦ですが我々コンバットJ騎士団8人で専用の捕獲網を使用し周囲の個体やクイーン丸ごと巣を確保します。既に巣の近くに強烈な閃光フェロモン弾を発射してありますので暫くは警戒し多くの個体が巣の近くに集まっている筈です。なので皆様方は網を使用している我々が襲われないよう巣の近くに居なかった個体の討伐をお願いします。」


 …この慣れ方は専門家だ。いや専門チームだ。確実に絶対成功させるって気概が凄い。いやまぁそれが仕事ってもんなんだろうな。


「えっと…8人って事は、一人に二人が護衛につく感じでいいですか?」


「いや、ビーゴラドンを二人で相手するのは少し心配だ。既にこちらで配置割りを軍と打ち合わせしていて、君達騎士団6人、フリー参加してくれた10人を半分にして5人ずつの計3チームをそれぞれ東西南に配置…そして彼1人で北を任せることにしている。」


 そう言ったコンバットJ騎士団の視線の先にいたのは…相変わらず不真面目そうに女性を腕に抱きながら退屈そうにしていたダチュラだった。


「…ふん、あんな奴が役に立つとは思えねーぜ…」


 ビヨンドは彼を見るなりそう吐き捨てた。バスにいた時からビヨンドがダチュラに対してやたら苛立ちを見せているように感じる…。そんな風に見ていると他のフリー参加メンバー達は既にそれぞれのグループを作って作戦会議を始めていた。


「っと、俺達も作戦を確認しよう。とは言っても布陣自体は変更なし、前衛をカトレナと俺、後衛をキヨミツとツヅリ、ホタルは索敵、ビヨンドはフォローを頼む」


 俺の内容に対しラセツ一派だった三人は問題なく了承。相変わらず不機嫌にしているビヨンドだがそっけなくしてはいるが反対の意思を見せているわけではない。ただ一番反抗的なのは…カトレナだった。


「どうしてこの私が!前衛などというつまらないし危険な仕事をしなければならないのですの!?このリーナリアの村を統べるキャメロット・リーナリアの娘と知ってのその発言ですの!?前衛など貴方達男がやればいいではありませんか!!」


「あーあー、知ってる知ってる。落ち着けカトレナ…。何事も経験だから。な?」


 これだけ反抗的なカトレナをどうしても前衛に立たせたいのは…まぁぶっちゃけカトレナ自体が後衛よりも前衛としての適性が高いからだ。俺達が合宿にいた時野外行軍でウルフに襲われた際にカトレナはCグループ4人を背に殆ど一人で守ってあげていた…というよりたまたま自分の身を守っていたらみんなを守れていたのだけど。その時から前衛としての適性を感じていたのだ。まぁとはいえいきなり実戦でメインタンクさせるのは無茶だし本来なら数人で囲ってタンクの経験を積ませてやりたいのだが…、そうするとこいつ他のタンクにかまけて役割を放棄するからな…。だから俺とカトレナの2人だけで前衛をすることにしているのだ。それにうちの騎士団はまだ人手がギリギリ、純正のストライダー気質のタンクが少ないからカトレナには頑張ってほしいのだ。実際彼女のために調整を施しかなり使いやすくさせた盾を採用させている。あとは彼女の機嫌次第なので俺は何とか説得を試み渋々了承をしてくれた。


「…期間限定の高級パフェですからね」


 …俺の財布を犠牲にしながら…。とまぁそんなこんなで打ち合わせを済ませ、軍のキャンプの中で軽く腹に物を入れてから俺達全員で輸送バスに乗り込み直し再度道を進んでいく。輸送バスにはコンバットJ の8人と半数チームの5人、俺達アラタ騎士団の6人と半数チームの5人そしてダチュラの2台編成で進んでいる。ダチュラに同行していた女性はそのまま軍のキャンプ地で待機しているみたいだ。バスは順調に道を進んでいると、不意に横を見た時に冬の自然色の中にひときわ目立つ大きな黄色の虫の様なものが飛んでいるのが見えた。…あれがビーゴラドンだと言うのは一目でわかった。遠くからでもその姿がはっきり見えた。

 すると次の瞬間、ごうんっ、とバスの天井から物音が響いた。その音に乗っていたほぼ全員が驚き上を見上げる。姿なんか見えるわけがなかったが、すぐにおそらくバスの天井にビーゴラドンが乗ったのだと察した。こんな状態でもダチュラはバスの椅子でゆっくり寝ている…。


「どうする…窓を開けて仕留めるか?」


「いや、さっきもあの人ら言っただろ…このバスには忌避剤を散布済みだって」


「だけどバスの上に乗ってるじゃねーかよ」


「忌避剤効果ねーんじゃねーのか…?」


 俺達騎士団だけじゃなく明らかに周りもざわざわしている。ビヨンドも武器を持たず窓を開けて素手でやり合おうとするのをツヅリ達が制止している。俺は揺れるバスを立ち上がって軍の運転手の元にゆっくり進む。


「すみません…何とかしてコンバットJ騎士団と連絡する方法は…」


 なんて言っている間にも運転手は運転スペース横にあるトランシーバーの様なものをガチャガチャいじくっている。するとスピーカーの様なものから声が聞こえてきた。


『…あー、こちら前方車両。そちらの屋根にゴラドンが乗っているのは見えている。今から煙を炊くから窓を開けないでくれ』


 その連絡と共に向こうのバスの屋根の一部が開き、そこから発煙筒を持った腕が出てきた。すると徐々に色の濃い煙がこちらに流れてきた。その様子に気付いたこっちのメンバーはすぐに窓を閉め切る。しばらくするとごとごと聞こえていた音は聞こえなくなり一匹のゴラドンが近くから遠ざかるのが確認できた。


『おそらく離れただろうが、もう少し焚いておく。運転手は気を付けてこちらに追従を続けてくれ』


「ありがとうございます」


 そんなこんなで既に危険区域なのを感じながらバスは進む。そしてしばらくしてバスは途中の道で止まる。そこはまだ町と街を繋ぐ道路の途中、だが進行方向右手側には雪は歩く妨げにはならないくらい少ないものの冬の寒さで枯れ木の森と化した未開拓区域が見える。ここから先は巣まで1㎞しかない地点、枯れ木とはいえ視界の悪そうな森の中にあるみたいだ。そう考えながら俺達はバスからさっと降りる。そしてコンバットJ騎士団以外のメンバー達が武器を準備する。ひときわ目立ったのは…やはりダチュラの持つ禍々しいデザインの大鎌、いや処刑鎌だ。淀んだ黒色の柄に元々一つの刃だったのを二つにし、その二つに刃がついている不気味で謎なデザインだ。だが今は気にしたって仕方がない。

 ここから先は既に事前に打ち合わせた通りだ。コンバットJ騎士団が持参した魔導書を全員が発動すると、8人がかりなのに一つの大きな網状のものが現れた。両端を担当している二人を先頭に双方4人ずつで網を持ったまま森の中を走り出し巣があると思われる地点から大きく離れてお互いに弧を描くようにし、高く高く空に舞い上がる網が囲い込んだ。そして最終的に先頭の2人が一番奥で出会い、銛の一部ごと完全に網で包囲することが出来る。ここまでで20分だ。

 当然その間も決して俺達だってぼーっと見ているわけではない。コンバットJ騎士団に同行し俺達も護衛予定地点まで走り続ける。そして俺達だけでない。巣の近くを警戒するビーゴラドンも俺達に対し既に警戒態勢に入っている。網の内側にいる個体は気にしなくともいいと言っていたが、何匹かは巣の外側に出たままだ…だからこそ俺達がいる。俺達はこいつらを討伐すればいい。ここまで色々内容だの作戦だの言ってきたが、ここから先は分かりやすい話だ。


「各員、包囲が完了した。これから我々は包囲網を狭める。同時にビーゴラドンを刺激することになるため充分注意し討伐に当たってくれ」


 コンバットJ団員の掛声に頷き俺達は武器を構える。今回俺が持ってきたのは剣と魔法銃の組み合わせ、右手に剣を左手に魔法銃を構え見上げると上空には3匹のビーゴラドンが飛んでいる。明らかに狼狽えている様子だ。すると一匹が俺達ではなく網に向かって跳びかかるが網はびくともしない。そして次の一匹が…こちら目掛けて突撃してきた!


「っはあぁ!!」


 ビーゴラドンの突撃に合わせ俺は剣で攻撃を凌ぐ、3m程もあるその大きな巨体による突撃だったがこの世界のパワー形態がどうなっているが分からないが俺の力一つで充分止めることが出来る。動きが止まった瞬間にキヨミツの魔符が勢いよくビーゴラドンに攻撃を叩き込む。だがビーゴラドンの丈夫な外殻に弾かれ大したダメージにはなっていない。そうしている間にビーゴラドンの鋭い爪や尻尾の毒針がうねうねと受け止めている剣を素通りし俺に触れようとしているのをみるや俺は咄嗟に弾き飛ばして距離を取る。


「うーん…硬いな。これなら叩き潰せるタイプの武器持ってくるべきだったな」


「無くはないが…まぁ地道にダメージ与えて弱ったところを処理するしかない」


 愚痴りながら再度飛び上がり体勢を立て直すビーゴラドンを眺めているとツヅリが一矢放つ。その矢はひらりと躱され、刺激された2匹のビーゴラドンが地面に降り立ち襲い掛かる。


「カトレナ!右のを頼む!受け止めるだけでいい!!」


「ええぇ!!??い、いやですわ!ひいいぃぃ!!」


 口ではそういうものの嫌々ながら盾を構えるカトレナ。真正面から突撃する2匹のビーゴラドンを俺とカトレナが受け止める。少々不安ではあったがしっかりと踏ん張って止めれているのを見て杞憂だったようだ。俺達が止めているのを見てすかさず後衛のツヅリ、キヨミツ、ホタルの3人が一斉に攻撃を仕掛ける。ツヅリの放たれた矢はビーゴラドンの硬い甲殻を貫通し深く突き刺さり、攻め手を変えたキヨミツは水魔法を繰り出し、まるで刃のようにした水を撃ち出し硬い甲殻に深い切り傷を付けた。そしてホタルは…俺を足場に高く上空に飛び上がり


「…オリベ流忍法、土岩潰しの術~」


 上空に土魔法で硬い土の板を形成し、そのまま俺が押さえつけているビーゴラドンの後ろ半身部分を押しつぶしたのだ。いきなり目の前でこんな馬鹿でかい土塊が落ちてきたら滅茶苦茶びっくりしたが…、とりあえず一匹は仕留めた、とまではいかないが、土塊に潰され足元で悶えているうちは足止め程度にはなるだろう。後はもう一匹に集中砲火しつつ、網に飛びついた奴や他に集まってきた個体を警戒しなければ…と思った矢先。

本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。


実は思い切って本投稿の相談をしてもらっていたのですが、やはり作品としての未熟さを指摘され無事消沈しました。それとは別にTRPGの話を受け、その方面でのアプローチをしてみてもいいのでは?と考えたので、今後本ストーリーとは完全別枠でTRPG向けの内容を考えてみようと思っています。本格的な始動はだいぶ遅くなると思いますがもしよかったらそちらも楽しみにしてくださると幸いです。


また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。


次回は11/22に、Episode8の中編を投稿予定です。もし少しでも面白かった、続きが待ち遠しいと思えたら嬉しいです。次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ