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Episode7 さよなら義勇兵爵叙爵合宿、そして旅立ち——— 中編

   …———…


 ウルフ共との戦いの場所から少し離れた身開拓地域内の高台。そこにはイヴァン総監督長を含む複数人の教官達と、そして二人の子供が戦いの結末を眺めていた。


「…どうやら、無事に事が済んだみたいだな。にしてもまさか今期生の中に限界を超えた奴が二人…いや三人も出るとはな」


「おぬしが講習生の救助をわざと遅らせろと言ったときにはおぬしの祖父にどう文句を言うものかと考えておったが、…なるほど、おぬしが助けてやったり今目を付けていると言った奴は確かに、大した異界人じゃな」


「ははは…まー、ホントにいざとなったら俺が行くつもりだったからさ。ジジィには内緒にしててくれよ」


「全く…、総司令の後を継ぐ最有力候補というのはヴァイルハンに似て破天荒でなければならんというのかのぅ」


 椅子に座るイヴァンの後ろで話を聞いていた少年は照れ誇らしそうに鼻を指で擦る。するとイヴァンの膝の上にいる小さな子供がイヴァンからミニスコープを受け取る。


「ねぇおじーちゃん、おじーちゃんおこってるの?すごくないの?」


「んー?そうじゃのぅ…勿論物凄い事じゃぞ。だけどじーじはのぅ、危ない事はしてほしくなくてのぅ」


「そりゃあなぁ、おチビ。あいつらはおチビよりもよえーからおじーちゃんが見てやらねーといけねーんだ。ま、おチビは俺達と一緒に」


「なにをゆーとるんじゃバカもん!!ワシはまだ孫らがおぬしら若い世代の奴らと一緒に国衛兵爵としての活動をするなど認めぬからな!なーにが最年少国衛兵爵、天才魔法少年爆誕じゃ!ヴァイルハンの奴め、雑誌などという物で好き勝手書かせおって!ワシはこの子を絶対に戦いの場になど出させぬからな!!」


「わーーった、なんでもねーよ!そーかんとくちょー!…んで、今回の褒美はなんかあるんすか?」


「ふんっ…、ワシは好かんが、雑誌にはおぬしの好きに書かせて構わん。あやつらにはワシから準備しといておこう」


「りょ、…まーこんだけ色々根回ししてやったし、あの異界人の面倒みるのはこんなもんでいっか。後は任せた~」


「…ラプラス嬢の誘導に抗っただけってのに高く評価するだけじゃなくあれこれと動き回るのに、一切挨拶してやらんとは…相変わらずよのぅ。帝国軍総司令長の孫、セブン・グリフィスアンバー」




 …———…


 あれからまた数日が経過した。結局俺達の野外行軍は中止、教官達によって搬送された俺達は命に別状がないにしても様々なトラウマが残っていた。昨今の義勇兵爵の講習内ではじかに感じれない兵爵と野生動物とのあるべき距離感。教官の中にはあれこそ本来全ての兵爵が一度は通るべき体験とも語っているが、命に関わる危険、大きな動物の命を奪ってしまうという罪悪感。血生臭い惨状。ありとあらゆるその日の体験が夜な夜な夢にフラッシュバックされる。何人もの講習参加者がこのタイミングでの辞退を考えたが…俺達講習参加者同士で、ここまで来たのだから頑張って最後まで受けようと励まし合った甲斐があって最終的に辞退者は一人も出なかった。ちなみに俺とライオネットは心身ともに限界を超えていた筈なのに、案外次の日にはけろっと回復していた。まぁライオネットは俺の顔をみて嫌味を言うなり、何か用紙を破って捨てていたが…相変わらず義勇兵爵を辞めるって事とは無縁そうな態度でほんのちょっと安心した。セレイアさんとの約束も果たすことも一応できたし。

 ただ正確には参加者総勢51人から1人いなくなり50人となった。今回問題の原因となった3組Dグループだが、リューゼルトが他のグループメンバーに命令して3組としての行動から逸脱し、本来講習生が通る道にいないウルフの縄張りにちょっかいをかけたことにより刺激されたウルフが縄張りを超えて3組に襲撃した…というのが判明し、主犯格であるリューゼルトが退講処分。そのほかのメンバーは最終的な叙爵には響かないものの厳重注意となった。ちなみにドロフィー以外の俺達1組Dグループと2組Aグループも団体行動違反として厳重注意された。

 とまぁそんなこんなありつつも、講習期間も残り数日となり叙爵までに必要な参加カリキュラム数も達成し、試験自体も合格。相当なにかやらかさない限りは叙爵は確定ってことで…俺達1組メンバー全員、男10名女7名+ドレイクさんの全18名による食事会が始まった。場所は合宿始まった初日のお店そのままに、あの日来れなかったマアダさんとイヴさん。そしてなんとバーケニーさんも来てくれたのだ。


「いやぁ~皆さん、この永かったようで短かった気もしなくもない義勇兵爵叙爵合宿もあと数日、色々ありましたけどここで出会った我ら一組の縁、心残しないよう最後まで楽しみ尽くしましょう!それでは~…



      かんっぱ—————っいぃ!!!


 コノハの音頭でみんなが一斉にやいのやいのと食事を楽しみだす。これまでの思い出を語ったり、これからに想いをはせたりとそれぞれが思い思いに話し出す。


「いやーにしても…命あっただけ儲けとは言いますが、まさか旦那とライオネットさんがスーパーな全開パワーに目覚めてウルフを蹴散らしたなんて…も~気絶なんてしてる場合じゃなかったじゃないですか~、ちゃんとたたき起こしてくださいよ。生で見たかった~」


「お前はホントそればっかだな。こっちはあの後凄い大変だったんだぞ?」


「つーかさミナヅキ、あの全開パワーに何て名前つける?」


「んなもんスーパーミナヅキとスーパーライオネットで決まりだろ」


「そんなダサいのはライオネットだけにしてくれ。つーかマジであれまたやって見せろって言われても全然再現出来ねーし、次なんてあんまり期待するなよ」


「まぁそんな力でボロボロになった後も、ドロフィーの試験合格まで面倒見てやったことは…なんつーか、災難だったな」


「いうてコノハもだけどイヴさんやCグループのみんな…特にバーケニーさんが手伝ってくれてたみたいだし、そのおかげで俺もその合間に魔導ブルームの資格も取れたし、みんなのおかげだよ」


「まぁ私は同室だったから面倒みてあげたけど…バーケニーさんが私達の部屋に凸って来た時にはビックリしたね」


「…ただの気まぐれです」


 相変わらずつんけんしたような態度だけど、明らかに言い訳があまりにも適当、さらに周りもバーケニーさんに対する見方が柔らくなってるのがわかる。この永そうで短くなくもない講習期間で彼女との関係だけじゃなく彼女自身も変わった。変われたみたいだ。…ところでバーケニーさんが話題の中心になった時のみんなから俺へのあたりが強くなったのはナンデカナー、チョットシセンイタイナー。


「それにドロフィーさんの講習所を去った後の予定が未だ白紙なのをなんとかするのを手伝った方がいいかと」


「…そういやぁドロフィーもだけどよぉ、俺達もまだなぁんも決めてねーがミナヅキどーすんだよ。流石にもう決まってるだろ」


「あ、あぁ…そのことなんだが…」


 ウルヴァの投げかけに俺は口籠り少し気恥しそうにしているのをみんなが不思議そうに見つめる。無駄に静まり返りみんなの視線が俺に向いてさらに喋りにくくなる。


「俺さ…意外な話かもしれないが、この世界に来てここでの生活が一番長くてさ…それで、俺…出来ればみんなと別れたくなくてさ」


「んなもんみんな同じ気持ちだぜ」


「あぁ、だからさ…出来れば可能な限りでいいから…その、俺、この講習メンバーで新しく騎士団をつくりたいと思ったんだ」


 しーん、と俺の声だけが響く。というかみんなぽかんとした顔をしている。


「いや、俺もさ…自分で何言ってるかって感じかもしれねーけど。やっぱりここでの生活が楽しかったから、だから…ここにいる奴らとならこれからもこの世界でやっていけるってそう思って…」


「お前…」


 突然俺の頭と体をウルヴァとトレイスががっしりと掴む。


「お前えぇ!!お前ホントバカかよ!もっと早く言えよそれ!!なんでこんなギリギリの、みんながここ出てから後のことだいたい決めたタイミングで言うんだよ!!」


「マジでお前、そんな事を大それたようなことで言うんだよ!!もったいぶるなよ!!それ聞いたら俺達について行くぜって言う奴もっといただろ!!!バカバカ!ほんまバカお前!!!今から急いで、さっさと全員に声掛けしねーといけねーだろ!!」


「あだだだだだだだだ!!!ギブギブギブ!!ホンマゴメン!あでも店で暴れるな、もげる!腕もげる!!!」


 二人からがっちりホールドされて、全員が爆笑して、バーケニーさんは頭を抱えて困惑し、ドロフィーはおろおろ、コノハは審判の真似事をしている。そしてお店の人から怒られた。


「いやー、やっぱ旦那は最高ですね~。にしても今から騎士団メンバー募集ですか…とりあえず五人は確定してるとして」


「「「…五人?」」」


 俺とウルヴァとトレイスが同時に声をあげる。まぁ当然俺達三人は確定として…?と俺達で見合う。


「…いやいやいや!えっ、まさか自分達1組Dグループでやってきたというのに!なんでそんなナチュラルに省くのですか!?」


「え、あ、いや。だってコノハお前…ジャーナル系の騎士団に入団するって」


「いやーそりゃあ他にやりたいことなかったらって話ですよ~。そんな事より旦那方と一緒にいた方が100倍面白いしネタになるじゃないですか~。任せてください、旦那の面白ネタは自分が責任をもって世に広めますから!!」


「そんなものを広めたら世に迷惑だろ。だけどコノハが来てくれるなんてもちろん大歓迎だぜ!これからもよろしくな」


「おっまかせあれー!…んで、それと、ドロフィーも…ですよね?てかそういう流れでの旦那の発言ですものね?」


 コノハの発言に全員の視線がドロフィーに集まる。ドロフィーはやっぱり困り顔をしているが、ちゃんと考えているのか分からないがとりあえずこくこくと頷いた。


「確かに5人だな…そういえば確か騎士団って正式に認められるのに何人かるんだったよな?」


「16人なのであと11人ですね。軍からの非公認って形なら別に足らなくてもいいのですが…」


「おいおい、今から後11人かよ…ホントに集まるんかよ」


「仕方ねぇな~ミナヅキ~!」


 すると俺達の座っている所から遠くの席から声がする。マアダさんがイヴさんを膝に座らせたまま大声で話しかける。


「俺達二人も入ってやるよ~」


「えっ、いいんですか!ありがとうございます!!」


「しっかり稼がせてくれよ~」


 そうだ、マアダさんの言った通り、騎士団をつくるってなるとここで仲よしこよししてるだけじゃ駄目だ。ちゃんとしっかりみんなの為にも金を稼ぐ方法を考えないといけないのだ。勿論軍からの依頼をしていれば多少は稼ぎはあるものの、それだけに限らずちゃんと仕事を準備しないと…講習所を去る前にしっかり考えておかないと。


「あー、おほん。ごほんごほん。うおっほぉん。げほげほ」


 なんて考えているとドレイクさんのせき込みが激しくなってるのが聞こえてきた。


「ドレイクさん…のどに詰まったんですか?水いりますか?」


「っちげーよ!!まー、そのなんだ。お前らは1組からしか募集かける気ない感じか?」


「ありがとうございますドレイクさん!これでプラス三人か」


「まだ何もいってねーよ!いやまぁそのつもりで言ってたけど…」


「これであと八人…あと二グループ分か。ラフィラさんとかどーですか?」


「ごめんなさい、私もう騎士団決まってて…てか、まず私じゃないでしょ?」


 ラフィラさんのにっこにこで笑ってない目が俺に突き刺さる。いやーさっぱり何のことか分かんないんですけど違うんですよー。他意はないんですよー。


「え、えっと…バーケニーさんはどうかな?バーケニーさんが来てくれるとすっげー助かる事多いなぁ~」


「…真面目な話、お断りします。私は安定して雇ってくれる騎士団で仕事がしたいので、まずそもそもちゃんと人数が揃っていない。拠点の準備もしていない。明確な仕事ヴィジョンが見えない。お話にならないですね」


 痛いところを全部突かれた。というか騎士団を始めるのに拠点がいる事も忘れていた…これも解決しないと…


「うーん、仕方ない。ならバーケニーさんを納得させるための作戦を考え直すとして…あと他には、Bグループとかどう?」


 ここにいる残りの人にも色々声をかけようとするが、何故かやたら変な苦笑いをする奴が多かった。


「…いやぁ、ミナヅキ…誘ってくれるのは嬉しいんだが…その、ちょっと…実は……




「おい!ライオネット!ライオネットはどこだー!」


 あれから食事会はお開きになり翌日、俺達いつものDグループメンバーは講習所休憩室にいるというライオネット達の所に向かっていた。そこには俺達が慌ただしくしているのとは反対に静かにセレイアと共にお茶を優雅に楽しむライオネットの姿があった。そして何よりも…ライオネットの傍にいつものお供三人組、だけでなく、なんと1組のファイグルやカロア、ジョンにイプロクスにホオズキまで集まっていたのだ。


「やあやあミナヅキ君。こんなすがすがしい朝にそんな騒がしくされちゃあたまったもんじゃないよ。君も僕を見習って少しは大人な行動は出来ないかなぁ?」


「ライオネット…て、てめぇ…」


「まぁ待ちたまえ。君が何か言いたそうにしているが。実は僕からも君に話したいことがあるんだ。ふふっ、少し緊張しちゃうなぁ~」


「いーんだよお前の話なんか、全部聞いたから、いちいち長いから結構だ」


「おい聞け、ちゃんと僕の口からきけ。…ふっふっふ、実はここでの交友関係を大事にしようと思ってね。そこで講習参加メンバーに声をかけて新しい騎士団を設立することにしたんだ。一昨日から1組メンバーを中心に声をかけていたのさ。そういえば君達Dグループに声をかけるのを忘れていてね。いやぁ申し訳ない」


「…俺こいつと同じ考えに辿り着いたとかちょっとやなんだけど…」


「そうか?結構似た者同士だろ」


「おいふざけんな、あんなのと一緒にするなよ」


「お前こそふざけんな聞こえてるんだよ。…まぁともあれ僕たちは16人集まったからこれにて正式に騎士団をつくることが出来る事になったんだ。それにしてもまさか君達も騎士団をつくるために同じように声をかけているとはねぇ…せいぜい頑張ってくれたまえ。僕が一度声をかけた後故もう参加出来そうな人はいなさそうに思えたけど…もし人数が足りなくても安心したまえ。その時は是非、この、ぼ・く・が、団長を務める、この僕の騎士団に加えてあげようじゃないか。なぁに遠慮することはない、君と僕の仲じゃないか熱烈に歓迎しようじゃないか。特にミナヅキ君なら立派な僕の部下として大活躍間違いなしだろうね」


 うわぁ…絶対嫌だ…、こいつと同じこと考えたことは1万歩譲ってまだ許せるとしても、こいつの下につくとか…たとえここで一緒に頑張ってきたみんなとまた一緒に頑張れるといえど、絶対無理。ありえない…そんな選択肢を取る気はないぞそんな目で見るなコノハその手に持っている手帳を破り捨てるぞ。


「…ちなみに、その騎士団って、登録に拠点とか名前とかいるらしいが」


「拠点に関してはまだ正確には決めていないが、いざとなれば僕の家を使えばいいさ。出来れば他で拠点が欲しいが…。それに名前はもう決めているさ。そう、いずれこの帝国で1番の騎士団になり上がる我らの騎士団の名は『最強!Knights of Strongest』!!」


「「「「「「「だっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ」」」」」」」


 全員で一斉に口を滑らせたが急ぎ口を閉じる。いやもしかしたら一周回って逆にアリなのかと思ったが、やっぱり最強、最強騎士団ってどう考えても二回言っててダサいわ。しかもみんなダサいと思っててくれたわ。


「流石ライオネット様でゴワス!」


「めっちゃかっこいー!」


「いかしてるっピー!」


「はっはっは、よせよせお前達、他のみんなにもちゃんと確認をとって正式決定としないと」


 まさか周りの雰囲気を全く気にしないどころかライオネットを褒め称えている三人組。あーっといけません、許嫁であるセレイア嬢カップを机に置き頭を抱えうなだれています。これは新手の恥辱プレイか~。


「まぁ、つまるところもう僕達の騎士団設立において問題はだいたい何とかなるレベルなのさ。あとは君達の方の騎士団をどうするかだけど…どーしても君達は君達で頑張りたいというなら非公認騎士団として活動していけばいいんじゃないかな?それで困った時はいつでも僕の騎士団に入りにくればいいしな」


「…待て」


 そんな俺達の会話を突如として割り込んできた、まさか俺達の騎士団に入団希望のある人がまだいたのか!そんな淡い期待をもって声のした方を見るとそこには…2組Dグループの面々、スポーツ騎士団に入団希望のメンバーだった。


「ふっ…ミナヅキよ。もしくは俺達と一緒にスポーツ騎士団に入団しないか?」


「…すまん、アルケイド」


「どうしてだミナヅキよ、俺達と共に流した汗は偽物だったとでもいうのか。俺達こそがスポーツ界のビックバンになるんじゃなかったのかよ」


 Dグループ全員が地に這いつくばり悔しがる臭い演技を披露した。いやまぁ実際今でもバスケには未練たらたらかもしれないが、ここでみんなとやったスポーツも楽しかったが…出来ればやっぱりせっかくの異世界だからこれまでとは違う人生への道を行きたい。まぁライオネットの下につくくらいならスポーツ騎士団に入団するかもしれないな。

 とかアルケイド含めさっきから騒いでいたためかいつの間にか多くの人が集まっていた。だいたいはいつもの事かみたいな目で見ているが…


「ほぅ…随分盛り上がってるじゃないか」


 そんな人の中からウルフ相手に共闘したラセツ率いる3組Aグループが俺達に歩み寄ってきた。


「ラセツさん。すみません騒がしくって」


「あー構わん構わん。ところで随分面白い話をしてるそうじゃないか」


「え?まぁ…別に面白くはないかと」


「そうか?充分面白いが、俺がもっと面白いことを言ってやろうと思ってな。俺達3組Aグループの4人はこの合宿終了後ミナヅキ達の騎士団に入団する決意を表明しに来た」


 ええええぇぇぇぇ!!!休憩室にいた全員が驚きざわめきだした。何だったらラセツ以外のAグループメンバーも全員驚いていた。


「おいおい、ラセツ一派がミナヅキ側についたぞ」


「マジかよ…」


「い、今からでもミナヅキ側に移ろうかな…」


「待てよ、いまさらそれは無しだろ!」


「おい、聞こえるぞ…」


「わ、若ぁ!お戯れを!!」


「おいラセツ!家の事はいいのかよ」


「っふ、言っただろう。こんなところで負けているようじゃ、親父の元になんか帰れねぇってな。親父には修業が足らなかったと言伝を出そう」


「くそぅ…ミナヅキのやろーめぇ、ずるいぞ!!」


「いやー、悪いねぇライオネット君。まぁこれも人望って奴かな?」


 なんだかよく分からないがライオネットの悔しそうな顔を見れたし、残り人数は後4人、今講習参加メンバーが集まっている丁度いいタイミング。


「よし、後4人だ!みんなここにいる奴に聞いて回るぞ」


「オッケー!」「よっしゃー!」「はいはいさー!」


 俺の掛声で三人が一斉にここにいるメンバーに声をかけ始める。


「っふ、ふん!残念ながらもう既に他の連中にはもう殆ど声をかけた後だ。もう僕のとこに誘われ済みか断るかしか残っていない。残念だがもうこれ以上は当てが無いさ」


 相変わらずライオネットが口を挟む。それが間違いないと言わんばかりに返事はだいたいNoばかり…だがそれでも声をかけ続けていると人ごみの奥からウルヴァの驚く声が聞こえた。


「ほっほっほ、おやおやこんなにもみんな集まって…なにかイベントでもあるのかい?」


 すると今度はなんと驚くことにイヴァン総監督長まで俺達の集まりにやってきたのだ。そもそもイヴァン総監督長がこうして俺達に会うのは何かの行事の時くらいしかないため、俺達全員イヴァン総監督長が来たことに驚き固まり、声も出なくなっていたのだ。だがそんな事はお構いなしにと、まるでモーゼの海割りの如く歩くだけでみんなが道を開け、まっすぐまっすぐ俺とライオネットに向かってきたのだ。


「さて、えーっと…ミナヅキ・アラタ君と、ライオネット・サー・ニコラメス君だったかな?数日前の野外行軍中にウルフに襲われた件、君達二人の多大なる尽力によって誰一人としてかけることなく事なきを得たこと。我ら教官陣による救助が遅れてしまったことと、このような感謝を伝えるのが形式的ではなくまた遅れてしまったこと、深く…深くお詫びしよう」


「い、いえ…その…」


「そんなことありませんイヴァン総監督長。僕らは僕らの正しきことと思っての行動をしたまで、そのようなお褒めのお言葉だけでなく僕の名前まで覚えていただいたことの方が名誉ある事だと、僕はそう嬉しく感じました」


「相変わらず…、…あのイヴァン総監督長。形式的でなくそのうえで遅れたという事は…もしかして問題があったとか、まずい事でもあったのですか?」


「ふむ…実はその通りでのぅ、君達の命がかかっているから不可抗力ではあったものの、結果から言えば君達は兵爵見習い未満という立場、つまりまだ狩猟許可がない状態での監督者不在での狩猟行為。さらに狩猟対象も狩猟許可がまだ未登録のウルフの群れ、そういった要因から軍上層部でこの1件をどう処理するかが決まるまで君達には黙っていなければいなかったのだ」


 …思ったような事とは一切真逆の方向に話が進んでいった。あれこれもしかして俺達も…退講処分されるのでは…と青ざめた顔でライオネットと見合う。


「ほっほっほ、お主らさっき自分達で言ったではないか。自分が正しいと思ってした行動だと…安心せい、最終的な決断としては今回の1件は軍としては正式には未公表…つまり軍は何も見ていない。知らないという事で決定した」


 俺達はほっと肩をなでおろした。


「勿論軍の不関与という事で本来送られるべき獣害討伐などの報酬もない…のじゃが、まぁその話とは一旦別にして、少々今回の講習生は非常に優秀な者が多いと聞いている。なので今回だけ特別に少々豪華な叙爵おめでとうプレゼントを準備することにしたのだ。お主ら二人に軍からのささやかなプレゼントをな」


「「プレゼント!?」」


「そう…色々何にすべきかと悩んでいたが、ちょうど今思いついてのぅ。二人には…いや、諸君ら2つの騎士団結成を祝って、2つの騎士団拠点をプレゼントしようとな」


 うおおおおぉぉぉぉ!!!と周りからの歓声がわき上がる。どうやらこの話の流れからしてこの1件は優秀な講習生に軍からのプレゼントという形で報酬を渡すという…そういう事でいいと思う。そんな周りの雰囲気のなかでイヴァン総監督長はパンパンと手を叩くとまた周りは静まり返った。


「とはいえ、すぐお渡しできるわけではないからな。まぁもし他に要望があるなら遠慮なく相談に来るがよい。…あぁ、例えば、拠点内の内装とかのぅ」


 そう言い残してイヴァン総監督長はまた人の波をかき分けて去っていった。だがイヴァン総監督長が騒ぎを少し鎮めた程度ではみんなの熱は収まることはなかった。すぐにまたざわざわと騒ぎになりだした。そして主に2つの騎士団に所属することになったメンバーがそれぞれ集まり拠点のプレゼントを喜び、内装要望をさっそく考えたり、他の騎士団に参加しなかった人は共に喜んだり羨ましがったり、アイデアを提供したりと…まるで集団模擬戦闘訓練の相談をしているのではないかと思うくらいの大盛り上がりだった。


「っま、待てよ…あ、後4人!後4人まずは集めないと…」


「おう!それなら俺様が入ってやるぞ!!」


「私も~、面白い事閃いたしー!」


 そんな声が聞こえたと思うとそこにはさっき断ってたはずの3組のビヨンドとフィラーレがそこにいたのだ。


「ビヨンド!フィラーレ!君達、僕の誘いには断ったじゃないか!!」


「まーな…ま、ノリってのはこーゆー時に乗っかるもんさ」


「ミナヅキんとこは貴爵がすくなそーだしぃ?楽に稼げそう…じゃなくて、事業には貴爵の責任者が必要だから~、私がやってあげよっかなって思って。しばらくは帰んなくてもパパが家業してるし、アルフィーと離れるのは寂しいけど」


「二人とも…ありがとう!あと二人!!」


 ライオネットがぎりぎりと悔しそうにしているのをよそに、俺はみんなでワイワイしている中から彼女を探す…そう、一度は断られたバーケニーさんだ。みんなでワイワイしている中に彼女の姿は見えなかった。


「…っあ!」


 すると丁度休憩室から出ていこうとするバーケニーさんの姿が見えた。俺はみんなをかき分けて急いでバーケニーさんに駆け寄る。


「バーケニーさん!あと二人なんだ!!頼む、入ってくれない?」


 俺が手を合わせて頭を下げると、バーケニーさんは歩くのをやめたがこっちを見ようともしてくれない。するといつもより小さくて暗いトーンのような声が返ってきた。


「…拠点のあてが出来て良かったですね。あれだけの人数がいればわざわざ私を誘わずとも…あと二人くらい入ってくれるんじゃないですか?」


「あー、いや…そうかもだけど、そのうちの一人はバーケニーさんにもう一度お願いしようかなって、…ほ、ほら、騎士団の経理とか管理とか…バーケニーさんがいてくれた方がやっぱり助かるし」


「…経営ならフィラーレさんが私よりよっぽどうまくこなせますよ。それに何より、愛想笑いの一つも出来ない私なんかがいたらつまらなくなってしまいますよ」


「そんなことない。…なんて無責任に言うもんじゃないかもだけど、ほら、初日の食事会には来てくれなかったけど…中止にはなっちゃったけど野外行軍で一緒にカレー食べたりとかさ、昨日の食事会にも参加してくれたじゃん。その時のバーケニーさんすっごく楽しそうにしてたし、みんなもそんなバーケニーさんがいて楽しかったって思ってたよ!誰だって最初はどうやって楽しくなるかなんて手探りなんだし、今やっと一緒にいて楽しいって思えるようになったんだからさ。そんな今離れ離れになったら勿体ないじゃん。だからバーケニーさんとは出来ればもっと一緒に頑張りたいって思ってるんだけど…」


 なんか言っててこっぱずかしく感じてきて最後の方はごにょごにょ言うだけになっちゃったけど、でもとりあえずバーケニーさんには入って欲しいって説得は言えたと思う。事実、しばらく黙り込んだままのバーケニーさんが急に振り返り


「…仕方ないですね。とりあえずまずは内装について相談する前にちゃんとどの程度の要望まで応じていただけるか総監督長に確認すること、特に拠点面積、あと内装に合わせた活動ヴィジョンの設計、考える事はいくらでもありますよ。私を無理に引き入れた分こき使いますから覚悟してくださいね」


 さっきまでとは明らかに元気なトーンで返事が返ってきた。そして俺を置いてみんなで相談するうちにずかずかと入っていく。だがすれ違いに見た顔はどこか嬉しそうな顔をしていた。俺は彼女の見えない後ろでガッツポーズをする。すると今度はバーケニーとは入れ違いでフィラーレが俺の所にやってくる。

本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。


…やってしまいました。謎の体調不良で数日寝込んでしまいました…、熱っぽくはなかったのですが、倦怠感と咳込みが激しく数日寝れない日々が続きました…ぼーっとして筆が全然乗らなかった。仕事は何とかまぁなんとかって感じだったので良かったっちゃよかったのですが…、それにしてもこの一週間は全く筆が進まなくてホントにヤバいです…。そろそろ投稿ストップが近づいてきたかも…


また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。


次回は11/1に、Episode7の後編を投稿予定です。もし少しでも面白かった、続きが待ち遠しいと思えたら嬉しいです。次回もよろしくお願いします。

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