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Episode6 1組対2組の対決、そして夜の帝都の外へ… 前編

「おーい、ミナヅキ。あんま無理すんなよ。まだ二日しか休めてないだろ」


「大丈夫だ、別に大した怪我をしてるわけじゃないしな」


 二日前と同じ空、二日前と同じグラウンド、朝食を済ませウォームアップもばっちり。しっかり身体はほぐれ、コンディションはばっちりといった状態だ。


「…ステータスオープン」


 俺は周りに聞こえない程度に小さくつぶやくと、ぶぅんっと機械音と共に目の前に半透明のステータス画面が広がる。俺は開かれた画面の文字を上から眺めている。

 ミナヅキ アラタ。当然この俺の名前だ。異界人としてこの世界にやってきて4か月程度。すっかり前の世界の未練的なのも感じなくなってきた。それもこれも俺についてきてくれたトレイスとウルヴァがいてくれたからだ。

 次の備考欄には種族:祖人種と書かれていた。まあここも当然と言えば当然らしいが、異界人特別拘置施設で再会した俺と同じ世界からこの世界にやってきた同じ部活で同級生の依田君曰く、ここの欄は元々人間表記だったが施設で人種についての話を聞いて以降は祖人種の表記に代わっていたらしい。どうやらステータス画面は本人の見聞きしたこの世界で扱われる用語に自動変換してくれるようだ。現に異界人特別拘置施設にいた時はなかったはずの欄が追加されている。

 それがスタイル:ストライダーの表記だ。これは俺が最も体に馴染む戦い方に近いものを表現するのに使う帝国のバトルスタイルの一つだ。今俺がここにいる兵爵試験講習所にて教えられたから増えた物だろう。ストライダーは基本的に物理戦闘特化なバトルスタイル…ではあるものの、どうやら俺の成長方針は魔法攻撃力や機動力と言ったストライダー特有の物理性能の高さとは別のステータス成長が確認できた。これは異界人特別拘置施設で見た時のステータスの数値より、ここに来てからのステータスの数値の方が大きくなっていることから分かる。そして今の俺は物理と魔法の両方の攻撃手段に加え、防御と回避の両方の自衛手段をまんべんなく伸ばしているのがわかる。

 だがそもそもだ…、そもそもこのステータス画面ってのはなんなんだ?俺の知見や経験で情報の変わるよく分からないシステム。毎年100人以上もこの世界にやってくる異界人。しかもゲーム的な情報と、ゲームというのを認識している世界から来る事。これではまるでこの世界に俺達の世界の異界人が来ることが前提の世界の創りみたいになっている…。一体何のためにこんなシステムがあり、そしてなにより多少参考にはなっても本質的には役に立たない数値表記をしているのか…。力の強さの数字一つとっても同じ数値同士でも腕相撲と握力計測定勝負をしたら違う人が勝ったり、体力の消費も疲労感で減ったりはしない。魔力量消費も魔力が7割以上あっても短時間の使用で急性魔力欠乏症が起きる…。本当にシステム的にしか反映をしていない。結局相変わらずステータス画面は当てにはならない。とはいえ当てにならないと割り切りつつも、今の自分の戦い方が特化ではなく汎用的に育ち鍛錬を積んでいることが分かった。このくらいの確認程度には役立つだろう。あ、あと魔法適性は光、風、土の三種類だ。


「…っふ、異界人君。そんなところでぼーっと突っ立って、怖くて怖気づいてでもしてるのかな?」


 ステータス画面を眺めながら考え事をしていると、聞きたくもない耳障りな声が聞こえてきたので俺は画面を閉じ、うんざりしながら声のする方を見るとそこには、今日の対戦相手である2組のライオネットがいつにもまして腹が立つようなウザい顔で俺に近づいてくる。


「っへ、そっちこそ怖くなって来ないもんかと思っていたところだったぜ」


「いやいや、君でもあるまいし。僕が逃げ出す?馬鹿なことを」


「あぁ、そういやぁお礼もまだだったな。お前のおかげで3組に勝っちゃったからなぁ」


「っな!あ、あれは違う。そもそも貴様のとすり替えるつもりだった不良品が別のにすり替わってて」


「どっちにしてもお前の犯行じゃねーか!どうせ今回もしょーもない細工してんだろ。あーしょーもな」


「うるさいっ!そもそも小細工なんてなくても貴様など片腕だけで退場させてやろうじゃないか」


「っは、だったら俺は3分でお前を退場させてやるよ」


「ふん、無理無理」「んだとぉー」「やってみろよ」「やってやろうじゃねーか」


 ぎりぎりぎりと怒りの形相で睨み合いながら言い争う俺とライオネット、その傍ではいつもの事かと若干呆れ気味に終わるのを待つ残りの同じメンバー達。コノハだけは楽しそうに俺達の言い争いをメモしており、ウルヴァは2組Aグループのガーランドと魔砲の調整について、プラノはドロフィーを背中から抱き頬をつつきまわしながらトレイスから軍用家畜の飼育について話をしている。ヨハンは自分で作ったおやつをみんなに配っている。

 こんな風な和気あいあいは1組Dグループと2組Aグループに限った話ではない。2組Cグループにいるギャノンとポールワンは1組Aグループにいる四人と同じく水上都市『ベネトリーニ』から来ており顔馴染み、2組Dグループは色んな都市から来たスポーツ騎士団の入団希望の集まりだ。そのため1組と2組の集団模擬戦闘訓練前だというのにわりと仲が良く戦う前らしい緊張感がなかった。というかどちらかと言えば3組がかなり異質だったんだなと…。


 せっかくなのでここらで2組の戦力についても話をしておく。


Aグループ、所謂帝都の学童院上がりのライオネット組だ。貴爵のライオネットを中心に隷爵の三人がいつも取り囲んでいる。


『ライオネット』祖人種のグラップラースタイル。武器はレイピア。ざこ、へなちょこ

『ガーランド』祖人種のサポータースタイル。武器は魔砲と大剣を使い分ける。ウルヴァと同じくタンク気質なサポートタイプ。

『プラノ』龍人種のクラージースタイル。武器は畜用フォーク。上空からの光弾魔法を得意としている。だが油断していると直接上空から武器のフォークで突撃する。

『ヨハン』翼人種のストライダースタイル。武器は槌…というかやたら柄の長い中華鍋みたいな鈍器。いや多分中華鍋で間違いないと思う。


 …いや、私怨抜きで言うなら当然厄介極まりない。ガーランドとヨハンの二人掛かりで壁をしつつプラノの後衛による火力補助、そしてライオネットの要所要所での的確な指示や柔軟な動きはグループ単位で言えばトップグループの内の一つだ。


Bグループ、こちらは女性だけのグループなのだが…なんと驚くことに、こちらも全員が帝都の学童院上がりなのだが、信じられないが中心人物のセレイアさんはライオネットの許嫁というのだ。きっとあのヤローに騙されているんだそうに違いない…いややっぱこういう邪推は流石によくない。


『セレイア』水人種のサポータースタイル。武器は両手で持つタイプの長い杖。ポールのようにして戦ったり防御系の魔法を得意とする。

『レイフェル』祖人種のクラージースタイル。武器は短い杖。土壁を作る魔法で補助してくる。

『グラシアス』牛系獣人種のストライダースタイル。武器は重鈍なメイスに盾を持つ。このグループのタンク役

『セビアン』シルキー系精人種のクラージースタイル。武器は鎖。相手を捕縛し魔法を流し込んで攻撃してくる。


 女性だけのグループでここまで全員が戦闘に積極的なところは他にない。これはライオネットきっての頼みなのか…は考えないようにしておくとしても、それでも3組と異なり女性グループとも戦わないといけないというのは人数的にきついかもしれないところ。


Cグループ、先ほども軽く触れたがギャノンとポールワンは水上都市『ベネトリーニ』、そしてガイマンとドレイクはドロフィーと同じ鉱山都市『ビストリタルノフスティア・グルィツァ』という男だけのグループだ。ちなみにドレイクさんだけ隷爵でそれ以外が貴爵であるため普段の趣味や考え方は合わないせいかフリーな時はやたら俺達と一緒に行動していることがある。


『ギャノン』祖人種のサポータースタイル。武器は魔法の矢を射出するボウガンであり火や呪の魔法矢を射出する。

『ポールワン』水鳥系翼人種のクラージースタイル。武器は魔導書。水や毒、風といった魔法を使う。

『ガイマン』ドワーフ系精人種のサポータースタイル。武器は硬鞭に盾。このグループのメイン盾で基本防御に徹する。

『ドレイク』地龍系龍人種のサポータースタイル。武器は両手槌。二枚目盾だがいざとなると近接火力役に変わり、火の魔法をじかにぶっ放す。


 主にガイマンとドレイクによる二枚前衛を盾に、ギャノンとポールワンによる後方魔法攻撃はまさにスタンダードな並び、グラップラースタイルがいない分真正面から4人が突っ込んでくるのは分かりやすくも対処もまたパワー勝ちするかパワー負けするかって感じだ。


Dグループ、全員がスポーツ騎士団に入団を考えているメンバーで構成されている。内訳はシルヴィアとアルケイドが帝都、ルクロとパトリックが城塞都市『ムルフィルテンジュ』、アンジュが農業都市『アンダルハーグ』となっている。


『ルクロ』祖人種のサポータースタイル。武器はレイピア。水泳希望なためひょろマッチョ、だが参加している水人種達より速く泳げるらしい。今真冬だから証明が難しいって話らしい。

『パトリック』翼人種のストライダースタイル。武器は…スポーツ競技用のステッキ。どうやらこの世界特有の空中版ラクロス希望とのこと。

『アンジュ』シルフィ系精人種のクラージースタイル。武器はパトリック同様スポーツ競技用のステッキ。パトリック同様空中版ラクロス希望とのこと。

『アルケイド』クワガタ系虫人種のストライダースタイル。武器は無く、レスリング希望なためレスリング特有の技で仕掛けに来る。

『シルヴィア』虎系獣人種のグラップラースタイル。武器は手甲鉤。トラック陸上希望で1組のホオズキに並んで足が速いのが特徴だ。


 全員がスポーツ希望なだけあって、あまり戦闘に乗り気でなくともその身体能力の高さでどうとでも戦える辺りは普段から身体を鍛えているだけはあると言わざるを得ない。単純なフィジカルだけで充分強い。


 こうして全員を見てきたが…二日前に戦った3組はそれぞれが個人もしくはグループで戦ってたことに対して、2組は俺達みたいに組全体の連携がしっかりしている。3組戦みたいに穴をつく戦術が使えないし、なんなら個々の能力は3組ほどではないにしろ俺達1組と比べたら2組の方が若干高い。そんな相手に俺達はどう戦うか…。勿論3組との戦いの合間に2組の対策だって一応考えてきた。そんな一応の策が一体どこまで通用するのか…

 そんな風に考えている間にも教官達が集まり、集団模擬戦闘訓練が始まる10時に近づいている。俺達はそれぞれ1組と2組で分かれ戦闘準備に取り掛かる。


「ちょっとまて、なんだこれ…?」


 俺が1組で集まっている陣地に行くと、Bグループのキコクとジョンの二人が体と同じくらいのサイズの真っ黒な箱を背負っている。というかどう見ても大型のスピーカーである。絶対重い奴。明らかに重いって顔して背負っているもん。てかなんでよりによって一番力あるイプロクス持ってあげないんだよ。


「3組との反省を活かして、ラフィラさんの為の歌魔法を補強する武器として教官から認可が下りました。たとえ2組が何人で歌や演奏をしようが音量で勝てるかと。あ、戦いが始まってから設置をするのでイプロクスさんは護衛してもらい後衛の二人に拡声器をおねがいすることにしました」


 2人の傍にいた予備の眼鏡をかけているバーケニーさんが説明してくれたのだが…まぁ理解は出来るんだが納得がしないな。いやまぁ理屈は通ってるんだが…声量の暴力でぶん殴るのは違うだろ。

 しかも当の本人であるラフィラの武器までも盾の他になんとギターまで持ってきていたのだ…多分きっと歌う歌魔法も聖歌じゃない、ポップなやつだろう…いつも着ないようなバンドで着そうなチャラけた格好にグラサンまでして、ピースじゃねーよ。


「…つかミナヅキ、お前武器変えてるじゃん」


「ん?あぁ、まぁな…ライオネット対策だ」


 前回俺は剣を持って集団戦闘訓練に参加したし、そもそもライオネットとの決闘でも剣を使っている。おそらく対策だって考えて来てるだろう…というわけでこっちは裏をかいて今回の武器は魔銃と盾のセットにしてきたのだ。

 魔銃、ウルヴァの使う魔砲を小さくしたようなもので俺の元の世界にあったような拳銃よりもごつい…片手式ラッパ銃に似たような形状をしている。これの最大の特徴はこの銃に刻まれている術式によって、使用者の魔力を吸わせ魔法弾を形成し撃ち出すことが可能なのである。手動でのリロードは不要ではあるものの射出後は再使用するのに数秒の溜め時間が必要になる。ちなみに最大装弾数は三発だ。勿論当然だがこの魔銃も訓練用に調整されたものを使用している。

 あといつもと違う事で言うなら…Cグループのイレイザさんの武器がナイフから、等身大程の人形を持ってきたことだろう。いや人形を武器と言っていいかは諸説あるが。


 そんなこんなで俺達は最終準備を済ませ、2組も準備が終わっているのが見える。今回のシュミレーションは3組ほど具体的でしっかりとまとまってはいないが、それでももうここまできたらやるしかないのだ。あとあんまり準備が長引くとキコクとジョンがスピーカーの重さに耐えられなくなるからな。そしてようやくイヴァン兵爵養成機関総監督長がゆっくりと拡声器を持ちながら口を開く。


「えー、1組の皆さんは一度聞いた話でしょうが改めて… この模擬集団戦闘訓練はいつか来たるどうしようもない戦いのための備えというわけではなく、あくまで隣の友を、同じ組の仲間と共に一致団結しほんの少しの勇気を試す団体競技です。この模擬集団戦闘訓練を楽しかった思い出の一つにしていただければと思っています。…それではこれよりー…1組対2組による模擬戦闘訓練を開始する」


「それでは…1組対2組による集団模擬戦闘訓練、開始っ!!」


 うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!激しい怒号がお互いの組から飛び交いながら一気に二つの組が距離を詰めた。10m程離れていた最前線は一気にお互いの武器が当たるか当たらないかの距離まで縮まる。

 だが二日前に行われた1組対3組との試合とは大きく異なり、お互いの組の後衛に位置する数名は「武器」の設置作業を行っていた。魔法による複数の壁を作り、スピーカーを設置する。だが2組も同様に考えていたのか向こうサイドもスピーカーの設置をしている。その間にも前線組は既に衝突を開始して後衛への攻撃を防ぐ動きをしている。


「設置、終わったぞ!」


 キコクとジョンの二人が息切れてそうな声でスピーカーを使って俺達に設置完了を伝える。それと同時に2組側も設置完了を伝える声が聞こえてきた。ほぼ同時の状況にお互いが交戦を中断し一時距離を取る。

 今の状況を軽くまとめると、俺達1組はCグループの女性4人とBグループのキコクとジョンを合わせて6人を抜いた10人で前線を張り、2組は…なんと女性陣だけのBグループとCグループのガイマンにポールワンの二人を除く10人で前線を張るという奇しくも同じ構え…なんて偶然的な言葉で片付けれるわけがない。


「お前ら!俺達の真似のつもりかっ!?」


「っふ、何を根拠のない言いがかりを…まぁたまたま同じやり方に辿り着いたことは驚きだが、これでどっちが優れているか小細工なしにはっきりわかるだろうな」


 白々しい事を…はなからそのつもりで準備をしてきたくせに、だが勿論あいつの言う通り根拠なんてものはない。それにあいつらもこれで同条件…とはいかないだろ!絶対まだ姑息な手を考えている筈だ。

 そうこうしているうちについにお互いのスピーカーから大ボリュームのライブ勝負が始まった。俺達の方は相変わらずラフィラさんが、2組は…おそらくBグループの誰か一人といった様子。音楽の力で調子もあがり戦いはさらに激化し始めた。俺達Dグループはドロフィーを除いた4人と2組Aグループが衝突。ドロフィーは他の2組グループの牽制のために奮闘してもらっている。なにせ2組にはフィジカルメンバーが多すぎてこちらには前衛が足りていない状況、しかも3組戦では前線で歌っていたラフィラさんは今回がっつり歌ってるため後衛でライブしている状態だ。

 ならばどうするかと考えた時3組Bグループの戦い方を参考に、遊撃チームと火力チームに分かれた戦い方を考案した。AグループとBグループのホオズキを含めた5人チームには相手の連携を乱させ、Bグループのイプロクスさんが壁役になり後ろからドロフィー、それと設置後前線に戻ってきたキコクにジョン、それとCグループのバーケニーさんの火力チームが連携の乱れた2組を殲滅する…というものだった。まぁ欠点?があるとしたら、言うなれば…殲滅予定の2組側のフィジカルが想定以上だったことかな

 2組Dグループはスポーツ騎士団に入団希望と言ってるだけあって全員の運動神経が高く、アルケイドを除く4人とCグループのドレイクが遊撃チーム全員とタイマンで優位に立ち、アルケイドはイプロクスさんと真っ向レスリングを仕掛け、残りのCグループメンバーが後衛火力チームと相殺させている。このままではフィジカルで根負けしそうな状況だ。


「ミナヅキ!このままじゃあっちが持たねぇ…一度全員でひいて対策を練り直さないと」


「分かってるさトレイス、ウルヴァ!目隠しを」


「おっとぉ、そうはいかせないよ。『敵を捕まえろ 逃げられぬよう 闇の手よ』」


 俺達が引こうとしたタイミングでライオネットは呪文を唱えると腕から黒い腕の様なものがにょろりと伸びてくる。その黒い腕はまっすぐ俺に伸び、防ぐ盾をひらりとかわし俺の腕を掴んだ。俺は引きはがそうとするが腕はがっちりつかんで離さない。


「っく、しまった。…ウルヴァ!目隠しだ!!」


「お、おうっ!!」


 それでもウルヴァに指示を出し続けすぐさまウルヴァは魔砲から黒煙を発射し2組Aグループの視界を奪う。俺は辛うじてまだ見えているトレイスにハンドサインを伝え残し、腕に捕まれているライオネットの魔法をさらに掴み


「…伸びたりするなよ…なっ!」


 そのまま両陣営、特にメインで戦っている主戦場から遠ざかるように走り出すと、ライオネットは間抜けな声をあげながら引っ張られてきた。


「ごほっら、ライオネット様~!?」


「けほけほ…ちょっとーっ、何も見えないじゃない!」


「ライオネット様どこにもいないっピー!」


「ヨハン、足を踏まないでくれでゴワス」


「いったぁ!ガーランドも図体デカいんだから動かないでよ」


「何にも見えなくて危ないっピ…あ、煙が晴れてきたっピ」


 黒煙の中からは残された2組Aグループの姿が現れると、その周りには…三人以外の姿が無くぽつんと残されていたのだった。


「「「………ライオネット様ぁ~~~!!?」」」




 ライオネットの三従者たちをやり過ごしたトレイスとウルヴァ、コノハの三人はA、Bグループと合流し数の差で2組の集団を押そうとする。


「っふ、いいだろう。お前達が束になっても俺の活躍を増やすだけに過ぎないという事を教えてやろう」


 同じ虫人種で同じくらいデカい体躯、同じタンクとしての戦い方をするイプロクスと対峙しているアルケイドは、デカく思い身体をものともとせずがっしりとその身体を掴むとイプロクスの身体が完全に地面から離れ、そのまま周りの一組メンバーをまるで蹴散らしかねないくらいにジャイアントスイングしておよそ2~3m程遠くにぶん投げた。ずしんという衝撃音で周りを驚かせながらアルケイドはファイティングアピールのポーズをとる。


「っかは!?そんな…俺様が」


「体勢を立て直せイプロクス!まだアラームは鳴ってねぇ!」


 倒れたイプロクスの前に立ちはだかり魔砲を連射するウルヴァ、だが魔力が十分に充填されていない弾を何度射出してもアルケイドは自らの鍛え抜かれた胸筋で受け止めポージングしている。

 そんな前衛同士の戦いを横目に、マアダとイヴの二人は水魔法の様なもので空中を走る水の道を作り、その上を滑るようにして飛行しているパトリックとアンジュの二人と対峙していた。二人は槍…ではなくまるでラクロスのステッキのように先っぽが網状になった棒を持ち、宙に浮遊する手で握り包めるサイズの球を二人で打ち合いながらマアダとイヴをまるで的当てするかのように狙い撃ちあっていた。マアダとイヴも反撃したいが、移動できるのは動きが見えてしまう水魔法の上のみ…上空を自由に飛行できる二人の前では思うように動けないのであった。


「ちょっと!!スポーツマンとしてそれはどうなのよ!?」


「別に球が相手選手に当たったりするのは試合じゃよくある事よ。それが嫌ならさっさと諦めて降りたら?」


 アンジュが拾った球をマアダ目掛けて打ち込む。だがその球は空中で弾かれ、こぼれ球をパトリックが拾いに行く。マアダ達の面前にはコノハがいたのだ。


「およよよよ、随分面白い事してますねぇ…何を隠そう自分実はピンポンが結構いける口だったりするんですよ」


 そう言いながら手にしていたナイフをまるでラケットのようにして握り、球を持つパトリックを睨む。パトリックはラケットを振るい球を撃ち出すがその球をコノハは器用にナイフの腹で打ち返す。


「へぇ…やるじゃん」


「ありがとうコノハ、ダーリン!私達はコノハのフォローを」


 二人はそれぞれ様々な種類の魔法の弾を射出しパトリックとアンジュの攻撃に転じる。パトリックとアンジュは魔法を躱しながら球を拾っては打ち出すがコノハにはじき返される。一見拮抗しているようにも見えるがマアダとイヴの消耗が激しいように見られている。

 そんな上空の戦いと別に地上でも魔法が飛び交っている戦場があった。ジョンとキコク、ドロフィー、バーケニーの四人と、ギャノン、ポールワン、ガイマンの三人の遠距離戦だ。1組側からは3人の遠距離魔法を壁役であるガイマン一人で撃ち落とし、2組側からはギャノンとポールワンの打ち出す魔法をバーケニーが撃ち落とすが弓の回転率では全てを落としきるのは不可能であり随時壁魔法を展開し攻撃を防ぐのに利用した。魔力の消費は1組の方が多い状態ではあるが、状況は悪いわけではなかった。


「このまま攻撃を続けて。ガイマンって言うタンクがいるとしても一人で四人の攻撃を完全に防ぎきることは不可能よ、倒すことが目的じゃない。いつかアラームが鳴って退場することになる。強力な魔法じゃなくていい。消費の少ない魔法をどんどん打って削るのよ」


 バーケニーの指示の下でひたすら打ち合いをする戦況の近くでカロアとドレイク、ファイグルとルクロがそれぞれ戦っていた。お互いに近しい戦闘スタイルであるためか拮抗状態からなかなか抜け出せないでいる。


「くっそー、いい加減この状況を打開したいんだが…おい、ルクロ、シルヴィア!三人で各個撃破だ。固まって相手するぞ!…シルヴィア!?」


 ドレイクが叫びながら辺りを見渡すがファイグルと戦っているルクロの姿は見えてもどうやらさっきまでいたはずのシルヴィアの姿が周りに見えなかったのだ。ただドレイクの目にあるものがうつったのだ。それはいつの間にか1組の前線をこっそりと抜け魔法で作られた壁の横から1組の後衛でライブに向かおうとするシルヴィアの姿だ。ドレイクは咄嗟にニヤリと笑う顔をしかめさせ、カロアとの戦いを黙って続けた。




「にゃっははー、案外うまくバレずにいけたいけたー♪ホオズキ君も足が速くてずっと追いかけっこしていたけど、なんか見失ってくれたしラッキーラッキー」


 こそこそと1組が作った防壁の影をこそこそ進むシルヴィア。その先にはスピーカーに挟まれ大音量で歌うラフィラの姿があった。彼女はスピーカーの音を防ぐために耳栓をして、さらに歌うことに集中してか視野狭窄の状態だった。そのため自らに近づくシルヴィアの存在には気づいていなかった。一歩また一歩と背後に回り込もうと…


「…ん?」


 後ろに回り込もうとしたその時、正面に等身大の人形が佇んていた。だが次の瞬間人形が手に持っていた薙刀を振り上げて、シルヴィア目掛けて振り下ろす。


「にょわぁぁ!?…絡繰魔法かこれ!Cグループの誰かが操ってるんでしょ」


 人形は各関節をギコギコ鳴らしながら執拗にシルヴィアを追いかけ攻撃してくる。シルヴィアはひらりひらりとかわすが何度かめの回避の後に横転してしまったのだ。


「…まずい。転ばせるタイプの水魔法が撒いてある…これじゃうまく走れない」


 足元がおぼつかないまま人形を相手するシルヴィア。その様子を壁の上から魔法を使いながら眺めるトリーダとイレイザの二人。そしてその自らの近くでの戦いに気付いているのかいないのか定かではないがそれでも歌い続けるラフィラ…。1組の後衛でも激しい戦いが繰り広げられている一方で、2組の後衛ライブでも同様に激しい戦いが行われていた。




「くっそぅ…2組の歌魔法を止めさせれば一気にこっちが有利に傾くのに」


「あらあら…そんなことは当然私達も分かっていますわよ」


 防壁に囲まれた2組の奥側に潜り込んだホオズキとトレイス、その2人を完全に抑え込んでいる状態と言っても変わりないBグループのグラシアスにセビアン。そしてリーダー格であるセレイア。両手に盾を構えるグラシアスと鎖による拘束をするセビアンの2人ではあるもののホオズキの機動力があれば突破できない相手ではなかったが、それを困難にする要因がライブ場をまるっとドーム状に覆う水のバリアで包み込んでいるセレイアの魔法のせいでホオズキの機動力だけでは突破が出来ず、かといってトレイスの魔法によるデカい一発はグラシアスに防がれ、こちらに隙が出来てしまえばセビアンの拘束が待っている状態だ。かといって弱い攻撃では水のバリアが突破できないという状況。


「うーん、僕達じゃ無理そうだし、ここは一度下がって他のフォローに行こー」


「…それもそうだな」


「残念ですが、逃がすつもりもありませんわよ」


 セビアンの攻撃を躱しながら撤退をしようとしたその時、セレイアが杖の石突をこつんと地面に突き立てると、防壁の隙間を埋めるようにして水のバリアが二人の退路を塞いだのだ。


「ふふっ、さぁ…残念ですがここで1組の戦力を大幅にダウンさせていただきましょうか」

本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。


…はい、いつもならここで本編4のEx編を投稿する予定でしたが…諸事情と言いますか、仕事が忙しくて書けなかったと言いますか、書きたい内容がうまくまとまらなかったと言いますか、…結局完成しませんでした。はい。

なのでこの本編6が終わった後にExを二本投稿しようと思ってますが…それまでには書き上げたいと!

あとあと、キャラノートも書き上げて、世界設定も書きつつ、次の本編も書いて…あー、誰か助けてー!


また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。


次回は9/23の火曜日、午後7時にEpisode6の中編を投稿予定です。もし少しでも面白かった、続きが待ち遠しいと思えたら嬉しいです。次回もよろしくお願いします。

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