表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/42

Episode5 対決、1組対3組の集団模擬戦闘訓練——— 前編

「はぁ…はぁ…はぁ…」


 早朝、もう冬もそろそろ雪が降ろうとしている今日この頃の朝6時、こんな時間にもまだ殆ど周りが見えていないうえさらに気温も5度前後だろうと言ったところ、用がなければゆっくりと布団でまだ惰眠を貪りたいと思う時間帯に、周りからしたら何を考えているのかと思われるだろう俺達はこんな寒く暗い時間帯から、講習場のグラウンドでランニングを行っていたのだ。そう、朝練をしていたのだ。


「ランニングは基礎中の基礎だ。ありとあらゆる人生における全てのな」


 勿論普段から俺達も身体は動かし鍛えてはいるが、カトレナさんに絡まれた翌日から俺達は残り9日後に控えている模擬集団戦闘に向けてさらに特訓の追い込みをすべくこうして早朝から集まって身体を動かすことにした。もとより俺も部活動をしていた時はこうして早朝から練習もしていたし、こっちに来てからもウルヴァと早朝から仕事をしていた。いまさら早く起きる事は全然平気だったが、こうして朝練をしているのは俺達だけじゃなかった。


「俺達のハムストリングスが悲鳴を上げている。そうそれは鍛わっている喜びの悲鳴だ」


 参加しているメンバーはいつもの1組Dグループの男三人、そしてBグループのメンバー、そして2組Cグループのドレイク、あと2組Dグループの全員、総勢13人だ。…ドレイクさんとは初日で俺達とは意気投合していたのは分かるが、2組Dグループのメンバーと一緒にやっているのはちょっとした理由がある。


「こんな冬の寒さ如き俺達の筋肉の火照りの前では丁度いい水風呂みたいなものだ」


「っだーっ!いちいちうるせぇ!!」


 ついにランニング中の謎の掛声にウルヴァがキレた。そう…この謎の掛声をしていたのが、こんな寒い中でも上半身タンクトップ一枚な上、そのタンクトップ越しにも分かるくらい筋肉?外骨格隆々で身長もデカい、あご…というか首元に下向きのネックレスサイズのクワを一対携えた、2組Dグループのクワガタ系虫人種の男アルケイドさんだ。この人は叙爵後スポーツ騎士団に入団しレスリングの選手として活躍する夢があるようだ。それだけでない、他のDグループのメンバーも同様に叙爵後スポーツ騎士団への入団を希望する。いわゆるスポーツグループなのだ。早朝俺達に混ざって朝練をしているのではなく、むしろ俺達の方が2組Dグループの朝練に加わらせて…っていうか、やたら一緒にやらないかと声をかけられたので一緒にやることにしたのだ。

 そんなこんなでグラウンドを軽く3週ほど走り終わり軽く慣らす。ある程度体力に自信のあるメンバーが多いからか当然このくらい程度では全然へこたれない。各々でストレッチを開始する。


「つかハムストリングスってなんだよ」


「ハムストリングスは尻から膝裏にかけてまである太ももの筋肉の総称だ。走ったりするときには欠かせない部位だな」


「へー」


 なんてたわいもない会話をしながら体をほぐしていると俺達の目の前から真っ黒な甲殻に上半身を包ん…でいるのか、それとも黒光りの筋骨隆々なのか、仕上がった体をした虫人種の男…2組のスポーツDグループのアルケイドさんが俺達に近づいてきた。


「お前達、少し相談があるんだが」


「なんだよ…ボディビルの掛声してくれって話か」


「よろしく頼む。…っていうと話が逸れる、そうではなくてだな。お前達今日の戦闘カリキュラムに参加するつもりだったよな」


「あぁ、そうだが?」


「実は俺達2組も同じく今日の戦闘カリキュラムに参加するつもりなんだ」


「それがなん…」


 ウルヴァの言葉が途中で途切れた、ウルヴァも気付いたみたいだ。おそらくトレイスもとっくに気付いているだろうが、そう…模擬集団戦闘を意識しているのは何も俺達だけじゃない。当然2組だってそうだ。そんな時期が近付いている状態で別々の組が同じタイミングの戦闘カリキュラムに参加するという事は、則ち自分たちの戦い方を盗み見られるというわけだ。勿論それは相手にも言える話だ。そのためお互いに情報を抜き取られないように戦い方をセーブすれば折角の戦闘カリキュラムの時間を怠惰に過ごしてしまう…それはそれで勿体ない事だ。


「そこでだ、俺からの提案なんだが、今日の戦闘カリキュラムは俺達2組で参加する。その代わり明後日にある戦闘カリキュラムには俺達2組は参加せずに1組で使う。ちなみに3組は明日の午後の戦闘カリキュラムに多く入ってるって話だ。こうすればお互い平和にやれないか?」


「ちょ、お、おいまてよ!なんでお前達が今日入るんだよ!」


「別に俺達が明後日でも構わんぞ」


「お、おぅ…そうか…」


 アルケイドの提案は最もだ。結局それぞれの組でカリキュラムに入るタイミングを調整する。これが一番丸い方法だろう。だけど…


「…すみませんアルケイドさん。確かにその方がいいとは思うのですが、俺達のメンバーが全員いるわけじゃないので勝手に決めるわけじゃないですし…それに、最初からそうするように算段してもっと早くから決めておけばよかったことなので、当日に調整するのはお互いに大変じゃないかと…」


「確かにミナヅキの言う通りだ。こっちこそ出しゃばったことを言ってきて申し訳ない」


「い、いえ…ていうか俺の一存で断るのもおかしな話なので…なぁウルヴァもトレイスも問題ないならやっぱり変わった方がいいと思うか?」


「え、いや、確かにミナヅキの言う通りだとも思うし…俺は、どっちがいいのか」


「なぁ一つ聞きたいことがある」


 こういう時は比較的しどろもどろするウルヴァとは対照的にトレイスは冷静にアルケイドを見ている。


「この提案ってそもそも…っていうか、もしかしてライオネットに言われて持ってきた話だったりするのか?」


「っそ、そうだ!ミナヅキをわざと困らせるために仕組んだ話なのかよ!!」


 二人に迫られたアルケイドは少し考えたようなそぶりを見せた後、ゆっくりと首を横に振った。どうやら違うことにウルヴァは動揺したように俺やトレイスの顔色を確認する。


「意外だったな、てっきりあいつが仕組んだことかと思ったんだが…」


「いや、そうじゃないんだ。確かに昨日ライオネットから頼まれごとをされたのだ。明日の戦闘カリキュラム…1組の奴らと一緒に受けてほしい。とな」


「…ちょっと待てよ!?じゃあなんで日程を変える提案持ってきたんだよ!」


「気にしなくていい。別にライオネットの事を隠しておくつもりとかそういうことではなくただ俺の個人的な…スポーツマンシップに則って聞いてみたかっただけだ。受け入れてくれればそれはそれでいいし、断られれば予定通りって事だ」


「なるほどな、それならこの頼み聞こうぜミナヅキ」


 トレイスの進言もある、アルケイドさんの事を別にこれ以上疑っているとかそういうわけでもないが…俺はしばらく黙ったまま考え込んだが


「…悪ぃトレイス。やっぱり俺達はこのまま他の組のメンバーに見られてもいいから予定通りのカリキュラムでいかないか?カリキュラム日程変えたとなればあいつら今度は何するか分からないからな…これ以上へんな衝突とかされても面倒だしな」


「…そうか、それならミナヅキに任せる。確かに最悪俺らだけじゃなく他の奴らに迷惑かかっちゃ敵わんしな」


「あいつらの言いなりってのは癪だが…こっちもこっちであいつらの企みに乗ったうえでぎゃふんと言わせてやろうぜ」


「ふっ、いいチームじゃないかお前達。お前達とならいい戦いになりそうだ、俺の左大胸筋も当日が楽しみだと言っているぞ。無駄話で朝練の邪魔をして悪かったな、それじゃまた後で」


 そう言い残しアルケイドさんは他のDグループのメンバーの所に戻っていった。俺達はそのまま朝練組と一緒に軽い運動ののち、軽く体を綺麗にしてから朝食のため食堂に向かった。食堂でコノハ達と合流して「荷物」の準備をしてからそのまま今日の戦闘カリキュラムに足を運んだ。

 今日の戦闘カリキュラムの参加メンバーは朝練組である俺達1組DグループとBグループ。2組のDグループに加え、ドレイクさんのいるCグループに、1組のAグループと…そして3組のBグループの計6グループ、合計26人の参加メンバーだった。俺達がグラウンドで各々だらだらと待機しているとカリキュラム開始時刻とほぼ同時刻ぴったりにレゾット教官やリディ教官含め数人の兵爵達が現れた。


「やぁ諸君、今日も戦闘に関するカリキュラムの参加ご苦労。この時期に戦闘訓練を受けるグループというのは…当然数日後の模擬集団戦闘訓練を意識している事だろう。そのため今日の訓練は2グループごとに分かれ各グループ自由にやってみたまえ」


 教官たちの挨拶もほどほどに俺達はそれぞれ2グループごとに分かれて活動を開始した。俺達Dグループは同じく1組Bグループと共になった。そして俺達は「荷物」の中から…各々がそれぞれこの1か月近くで選び手に馴染んだ訓練用の武器を手に持った。

 30日という日程の中で俺達は最低限一通りの訓練用武器に触れたり、体の動かし方や受け身の練習、怪我をしない体の使い方、さらには倒れた人を運ぶ練習などとにかく戦いだけでなく運動に関するたくさんの経験…カリキュラムを受けてきた。そして任意の戦闘カリキュラムや専門武器や魔法に関する知識。そしてなにより…戦いにおける各々の戦い方、戦闘スタイルが自分たちの中で確立された。




 戦闘スタイル。それは帝都における戦闘術で主に4種の部類に分割される。

・ストライダー

  いわゆる戦闘における肉体派職。ファイターやタンクと言った基本的に殴り殴られの武力に長けた戦い方を得意とする。

・グラップラー

  殴り合いをするストライダーとは異なり、隙を伺い高火力を叩き込んだり回り込んで背後や横から奇襲を得意とするアサシンのような戦い方を得意とする。

・クラージー

  いわゆる後衛職もしくは魔法職。メイジもしくはウィザードと言った後方からの広い視野で魔法や遠距離攻撃などを叩き込む戦法を得意とする。

・サポーター

  攻撃することよりも補助を得意としており、前衛で壁役になったり、後衛で援護に回ったりととにかく味方を守ることを得意とする。


 以上の4つがあり、これらは自分自身の性格や体格、これまでに身に着けてきた知識や技術などに大きく左右され、それらの診断結果でどの戦闘スタイルに適しているかの適性度を測られるのだ。そしてそんな戦闘スタイルを元に俺達5人のグループでポジションを組んでいる。


 そんなわけで俺達Dグループの構成は、前衛にウルヴァと俺ミナヅキ、後衛にトレイスとドロフィーとコノハという構成だ。ウルヴァのスタイルはサポーターでメイン盾として防御に徹してもらう。トレイスとドロフィーの二人はどちらもクラージーとして魔法による攻撃を行うが、武器が大杖一本で魔法一本化しているドロフィーと異なりトレイスには状況に応じて懐に入り込んできた敵の対処もしてもらうためレイピアと魔導書の二刀流を任せている。

 んでもってコノハはグラップラー気質なのと翼人種なのを加味して飛行して遊撃をお願いしている。そして最後に俺は意外にもストライダーの気があったのでサブタンクをしつつ、前線指令塔とメインアタッカーを担うことにした。武器には相当悩んだが、とりあえず片手剣と魔法アイテムの3つ持ちにしてみている。これが一応俺達Dグループの構成だ。まぁ今回はBグループとの模擬戦だから4人にそろえるためにドロフィーには一旦観戦してもらう。

 そしてこの模擬戦に大切な道具として全員が手首にリストバンドのような形をした『戦闘不能測定器』を取り付ける。これは装着者にシャボンのような薄い魔力の皮膜を覆わせ、訓練用の武器での接触のダメージを軽減するのと、一定以上のダメージが測定されると自動的にアラームが鳴り訓練でなければ戦闘が出来ない状態になったかもしれないという事をお知らせするという代物だ。


「おいおい、ミナヅキ…これ見てくれよ」


 そんな中俺達が模擬戦の準備をしていると、ウルヴァは武器としていつも使っている盾ではなく、デカい鞄を運んできた。中からはなんと…大砲!?いやバズーカか?ともかくどでかく武骨な砲筒を取り出して肩に紐かけ脇に抱えるように持った。そのあと砲筒にはウルヴァがまぁまぁすっぽり隠れるほどの折りたたまれていた盾を展開した。


「お前それ魔砲かよ、持ってきていいのか?」


「あったりめーだろ、講習で使用免許取ってきたし、そもそもこいつは戦闘訓練用に調整されたやつだ。とはいっても俺の使いやすいように調整済みのやつだからな」


 と言いながらウルヴァはトレイスからレイピアでこつこつと盾をつつかれる。結構しっかりとした盾って感じの音がした。すると俺達のところにリディ教官が近づいてきた。


「でぇ~いボーイッズ。Bグループがうぇいてぃーんっぐ。してるから、ハリーしてちょーっどぅわ~い」


「あっ、ごめんなさい。大丈夫です」


 俺達はすぐに隊列を組んでBグループの面々と向かい合う。Bグループは男のみのグループで構成されていて、二人がコノハと同じ和風都市「スンボリ」から、もう二人が砂漠都市「ワルダイース」から来た合わせて4人で構成されているグループだ。それぞれが和服のような恰好と砂漠の民族衣装の様なものを着ている。


「おい、おっせーぞ、はやくしろよ」


「まぁまぁ…そんな焦らなくても気楽にやろーよ」


 Bグループの後衛にいる背が低く黒い毛の犬の顔をした白いガラベーヤのような民族衣装を着ている獣人種の男…ジョンが苛立ちを見せているのを前に立つ和服をだらしなく着ているこちらも背の低い鬼人種の少年…ホオズキがだらけた様子で諫める。


「それでぇ~んわ、…んっんー。BグッループとDグッループのぉ~模擬試合、開始っ!!」


 リディ教官が腕を振り下ろすと早速Bグループの最前衛に立っていた派手な民族衣装…ジョンのとは大きく異なる薄い上着だけのような恰好をして、蠍の尾の様なものがあるグループ内で一番背が高くガタイのいい虫人種の男、イプロクスが一気に…というには遅いくらいの速度で踏み込んで両手持ちの鈍重そうなハンマーでウルヴァに一撃を叩き込む、ウルヴァが魔砲に取り付けられた盾で受け止めるがその力強い衝撃に二歩三歩下がる。俺達もウルヴァに合わせラインを下げる。


「『敵を貫き穿て 閃光と共に走れ 雷撃よ』」


 トレイスがスペルワードを唱えるとイプロクスに向かって電撃が走る。イプロクスはハンマーの柄部分で防ぎながら下がる。お互い牽制と言ったところだ。こういう小集団戦においてはお互いのメインタンクがぶつかり合う必要がなく距離を取って牽制し合う、後衛にいるクラージーやサポーターによる打ち合い合戦をしながら衝突の瞬間を待つ…だがそこに一石を投じるのが、グラップラーによる敵集団に奇襲を仕掛け後衛職をダウンさせてそのタイミングで一気に勝負に出るというわけだ。そのためにはお互いのグループの構成が大事になる。

 俺達のグループはさっきも確認した通り、前衛にウルヴァ、サブに俺、後衛にトレイスを置きつつ、遊撃役のコノハがいる。コノハも既に奇襲を仕掛けるタイミングを見計らっている。

 対してBグループの構成は、前衛にサポーターでタンクのイプロクス、そして後衛にクラージーのジョンに、鬼人種のキコク。そしてグラップラーのホオズキがいる。そしてBグループの戦術として、ホオズキの裏からの奇襲とイプロクスの真正面からの押し込みをして、二人の後衛から固まってる敵集団に魔法をぶち込む…という想定だ。つまり俺達が真正面からイプロクスに勝負を仕掛けてもイプロクス一人のダウンと引き換えに俺達全員のダウンを狙うことが出来る。

 ならこちらはコノハがジョンとキコクの二人を仕留めに行ってほしいが、それをしっかりとホオズキが見張っている状態だ。そしてホオズキが動けばこちらは後手になる。だがこちらが仕掛けようにも中衛で待機しているホオズキが妨害する…そう、Bグループの要はあの挨拶の時にだらけていたホオズキだ。ホオズキは体格も比較的小柄なのもあるのか、短距離走は異様に早くAグループどころか今合宿参加者の中でもトップレベルの足の速さだ。その足の速さで瞬時に俺達の後ろに回り込んで刀…模擬刀で後衛を仕留めに行く動きを得意としている。ぼんやりしているのもこいつが本気になった時の足の速さのギャップのためだろう…多分。いややっぱりそんな深い理由はないとおもうわ。


「ミナヅキ…どうする?」


「とりあえず魔法は一旦ストップだ、その牽制にあんま意味ない。魔力温存しておけ」


 トレイスは放っていた魔法を止め、じりじりとさらに睨みを利かせBグループ側も二発ほどの魔法を撃ってきたのを弾いてからは飛んでこなくなった。ホオズキがいつ仕掛けるか分からない以上あまり時間がないが策を講じてみる。

 勝つために必要なプロセスはやはりホオズキの攻略だ、鬼人種特有というわけではないだろうがホオズキの刀の扱いは上手くコノハが相手しても分が悪い。だからと言って二人掛かりをすれば残った二人が相手三人と相手しないといけなくなる。なら俺がホオズキの相手をしてその間にコノハが飛び込んで後衛二人を…いや違う、「それ」は駄目だ!!


「…トレイス、コノハ…一か八かだが」


 俺は後ろにいる二人に見えるように、片腕を背中に回しあらかじめ決めておいたハンドサインを背中で見せる。二人は俺の背中をノックする。了解の意味だ。ウルヴァへの指示は…あとでするとして、俺達はじりじりとした睨み合いを続ける。


「…、『敵を貫き穿て』


 トレイスが再度スペルワードを読み始める、次の瞬間にはもうすでに俺達の視界からホオズキが消え…今まさに回り込んでトレイスを狙う動きをしている。


「今だっ!!」


 俺はこのタイミングで、ウルヴァを抜き去りイプロクスに単騎で突撃を開始したのだ!この行動にはBグループの奴らも想定外だっただろうがすぐにイプロクスが俺を止めようとハンマーを振り下ろす。だが俺はその攻撃を回避しイプロクスの身体を慣れたステップで抜き去る、そして後衛のジョンとキコクがすぐ目の前まで迫った。


「『冥府へ引きずり込め 亡者の腕を伸ばし 深淵の沼よ』」


 ジョンが詠唱すると地面から黒い手の様なものが生え、足を取られる。俺は移動することが出来なくなるとイプロクスとジョン、キコクによる波状攻撃に襲われる。その猛攻をなんとか凌ぎ耐え続ける。機動力を生かして相手の攻撃を躱すコノハに行かせてたらこの猛攻に堪えれていただろうか…。そんな事を考えながらみんなの様子を横目に見るとホオズキと対峙しているみたいだ。ならホオズキを撃退するまでの間俺が堪えれば光明が見える、気がする。俺は動かせない足を軸に三人の攻撃を剣で防ぎつつイプロクスのハンマーをなんとか凌ぎつつ反撃のチャンスを待つ。


「…まずい、魔力が持たないっ…」


 ジョンがぼそりと呟くと俺の足を掴む黒い手の魔法の力が緩まり、その隙に思いっきり引き抜くと、無事抜け出すことに成功し自由に動けるようになった。おれはそのまま一気にジョンとの距離を詰め、剣で縦に切りつける。するとビ———っと大音量の機械音がジョンの手首から鳴り響いた。それと同時にもう一か所離れたところから同じアラーム音が響いた。


「ん~っっジョンぼぉうーいと、ホオズキぼぉうーい。ファイトふっの~う」


 リディ教官が二人の戦闘不能を高々と言い放つ。ジョンは手に持っていた杖を脇に抱えながら戦闘不能測定器のアラームを切る。同じくホオズキの方でもオフにしたのか、けたたましく鳴り響いていたアラーム音は聞こえなくなっていた。


「くっそぅ、てっきりコノハが飛び込んでくると思っとったんやが…」


「こっちも同じこと考えていたけど、それは読まれてると思ってな。」


「ミナヅキに粘られてこっちが先に根負けか~、想定外だったね~」


「…ちょおおいっ!!なに感想戦みたいな雰囲気出してんだ!!俺様はまだ終わってねぇぞ!!」


「俺達、だろ…ま、もぅ疲れたしいったん休憩しよーぜ」


 そんな雰囲気で結局この一戦はお開きとなった。水分を取りながら観戦していたリディ教官、そして何故か…いや何故というほどでもないが、ドロフィーと同じように人数あぶれしていたため、俺達の戦いをがっつり見ていたアルケイドからもアドバイス等を聞きつつそれぞれのグループでの作戦を改めて立て直していた。というか俺達の戦いを2組に見られるならまだしも、作戦の相談にまで踏み込んでくるのは些かどうかとはおもうのだが…


「安心しろ、俺はたとえ敵であろうとお前たちにとって最高の戦術案を共に考えてやろうではないか」


 うん、そういうことじゃねーんだわ。まぁともかく、そんなこんなで俺達1組内で訓練や反省会を繰り返して来たる9日後に向けて着実に準備を進めた。ここらで俺達1組の戦力を纏めてみる。


Aグループ、水上都市『ベネトリーニ』から来たカップルのマアダとイヴに、ファイグルとカロアの四人。


『マアダ』、水人種のグラップラースタイル。ごつい身体に似合わず武器は両手にジャマダハルという短剣を使用、呪、毒、氷の魔法を使用。かなり器用なタイプだ

『イヴ』、ウンディーネ系精人種のグラップラースタイル。武器は槍を使用。強力な水魔法が使え、サブに氷魔法を使う。かなり火力特化な戦法を使う。

『ファイグル』、水人種のグラップラースタイル。武器は短弓を使用し走り撃ちなんかも出来る。

『カロア』、水龍系龍人種のサポータースタイル。武器は1m以上もする鈍重な錨を使用。そんな重そうなものを担いだまま平気で走ったりもする。ただ戦闘は性格的に不向きな様子。


 全員が水上都市出身とあって水上での戦闘が得意なメンツが揃っているが、残念ながら集団戦闘では水場想定ではないのでその特徴はあまり活かせれない。だが3人がグラップラー向きの戦闘スタイルであり地に足つけて戦うよりAグループ全員で裏取りする動きをするつもりらしい。まぁ海上じゃあ固まって陣形組むのが難しいからなのかもしれないが。ともかくAグループは1組の陣形的に遊撃をお願いするつもりだ。


Bグループ、先ほど俺達と戦闘訓練を行った砂漠都市『ワルダイース』からはイプロクスとジョン、和風都市『スンボリ』からはキコクとホオズキの4人。ちなみにこのグループは全員男だ。


『イプロクス』、蠍系虫人種のサポータースタイル。武器は両手持ちするハンマー。虫人種特有の甲殻と持ち前のタフネスでタンク役を担っている。

『ジョン』、黒犬系獣人種のクラージースタイル。武器は1m程の杖で呪の魔法を一番得意としつつ闇や雷の魔法も使える。足止め系の魔法が得意だ

『キコク』、鬼人種のクラージースタイル。武器は小さな魔銃。闇の塊や土塊のような魔法の弾を飛ばして攻撃する。

『ホオズキ』、鬼人種のグラップラースタイル。武器は刀。今回の講習メンバーの中でも1、2を争う足の速さを活かした素早い戦い方が得意だ。


 このグループは主にイプロクスが前線を張りジョンとキコクの二人掛かりで魔法攻撃を叩き込む、もしくは裏からホオズキが後衛を攻撃しに行くというかなりこのグループだけで完結したような構成になっている。とは言ってもAグループが遊撃を担当するのでホオズキにはなるべくサブタンクとしてイプロクスの補佐に回ってもらい真正面からぶつかるグループとして動くようお願いしている。


Cグループ、このグループは全員女性であり女性だけで構成されたグループ。ラフィラとバーケニーの二人は帝都、トリーダはベネトリーニ、イレイザはワルダイース出身である。


『ラフィラ』、天使系翼人種のサポータースタイル。武器と呼んでいいのか分からないが盾を使用。グループのメイン盾として動く。

『バーゲニー』、祖人種のサポータースタイル、ラフィラとは対称に後衛から大弓による援護射撃を行う。氷魔法一本でのサポートもする。

『トリーダ』、水人種のストライダースタイル、武器は薙刀…だが戦闘に対してからっきしなため最悪見学も視野に入れている。

『イレイザ』、ダークエルフ系精人種のグラップラースタイル、武器は一応ナイフだがこの人も戦闘はからっきしだ。


 女性陣だけのグループという事もあり1組の中では比較的戦闘に積極的なメンバーは少ない。それでもラフィラで前を張り、バーケニーの援護射撃があるので何とか頑張ってもらいたいところだ。それとラフィラが俺達1組に微力ながらもバフをかけると言っていた。まぁこれは当日のお楽しみらしい…


 んで最後に俺達Dグループだ。俺達はさっきの戦闘訓練でもやっていたが


『ミナヅキ』、祖人種のストライダー、武器は剣。風、光、土の魔法が使える。

『ウルヴァ』、祖人種のサポーター、武器は盾付きの魔砲、火と毒の魔法弾を射出可能。

『トレイス』、祖人種のクラージー、武器はレイピアに魔導書、雷の魔法をよく使っていたが、どうも呪の魔法の方が適性が高いみたいだ。

『ドロフィー』、ムフロン系獣人種のクラージー、武器は大杖、土、氷、闇の魔法が使えて、強力な攻撃魔法の他土や氷の壁を作る魔法も得意そうだ。

『コノハ』、天狗系翼人種のグラップラー、武器は短剣で強力な風魔法と合わせた上からの遊撃を得意としている。


 これが俺達1組の全貌だが…実際のところ全員が全員戦闘に意欲高いわけじゃない。戦い以外の目的があって義勇兵爵になりたい人がいる。そういう人に無理を強要するわけにはいかないので、比較的戦いに積極的なメンバー、主に俺達のいるDグループやさっき戦ったBグループが主体となり、そうじゃない人はフォローに回ってもらうって感じだ。


本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。


突然ですが本編の内容とは関係ない話になりますが、新しい読者層開拓を狙って次週から1日前倒し投稿をしていこうかなと思います!

具体的には次回は9/5の金曜日、その次が9/11の木曜日…と1日ずつずらしていき最終的にまた土曜投稿に戻そうと考えています。

また投稿時間も5時や7時といった夜遅くない時間帯にしようと思います。


…はい、予約投稿を活かし時間を決めての投稿にしようと思いました。次回から頑張っていきますのでよろしくお願いします。


また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。


次回は9/5の金曜日、午後5時にEpisode5の中編を投稿しようと考えていますので、もし少しでも面白かった、続きが待ち遠しいと思えたら嬉しいです。次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ