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Episode4 義勇兵爵講習合宿、開講——— 後編

 ライオネットが講習所建物の中に戻っていく。取り巻きの二人も後を追うようについて行ってしまった。しかし、俺はそんなときにふと建物の窓からこちらを覗いている男の姿が目に入った。同じく兵爵を叙爵しに来た人だったと思う、おそらく3組の誰かだろうが…もしかしてさっきの決闘擬きずっと見られてたのかな…?




 …———……


「…どうした、何か面白いもんでもあったか?」


 講習所内の一室、そこはまるで図書館とまではいかないにしても多くの学術書や冊子、多くの書物が置かれ自由に読むことのできる場所。その窓際の席に座る4人、どこかのグループ。


「まぁ…な」


「ふぅん…ラセツともあろうお方、ここで現を抜かしてていいんですかいね」


「おいキヨミツ!若様を呼び捨てにするなと」


「ツヅリ、ここで若呼びはやめろと言ったはずだ」


「っも、申し訳ありません…ら、ラセツ様」


「キヨミツ…俺もこんなところで現を抜かすつもりなんかない。俺達は一刻も早く叙爵とか言う面倒をさっさと済ませ実力をつけなければいけない」


「勿論でございます。若…ではなくラセツ様が御屋形様の跡を、キンジョ―家の正統後継者になっていただかなければ…」


「…なぁ、お前本当にそれでいいのかよ」


「キヨミツ!お前」


「いいんだよ…いいんだ、俺は、俺達は…これで」


 ツヅリと呼ばれた男は怒りのままに立ちあがったが、ラセツと呼ばれた男に口を遮られ、静寂の中でゆっくりとイスに座った。


「だが、もし…俺が、俺達がこんな駆け出し兵士みたいな奴らに後れを取るようなことがあったりなんかしたら…親父の元になんか帰れねぇよなぁ」


「ラセツ様!?そ、それは…」


「ま、そんなことはありゃしねぇ…が、万が一のためだ。しっかり身体をほぐしとこうじゃねぇか」


「おいほらホタル、行くぞ…お前何読んでんだ」


「…かいけつにゃんじろう、ふわふわザウルスの復習」


「…何読んでんだよ、ほら行くぞ」


 そう言うと4人は立ち上がり部屋を後にしようとした、ラセツはふと窓の外を覗くと、そこにいた異界人と目が合った。そんな気がした…。


「…そんなのがもし、異界人だったりなんかしたら…か」


 …———……




「ちょっとーっ!どういうことですかー!!」


 あれから俺達は実技のカリキュラムを終え身体を軽く流し、着替えたのちにコノハ達女性陣と合流し、俺達1組は教室のような場所で魔法に関する座学カリキュラムの準備をしていた。向こうでは俺達と違ってなーんのいざこざなんて起こることなく穏やかに実技カリキュラムを済ませたみたいだが…


「どうもうこうもねーよ。ミナヅキが決闘であのやろーをぎゃふんと言わせたんだよ」


「言わせてねーよ。引き分けで教官に止められたんだよ」


「いやまぁ、あれは実質お前の勝ちでいいだろ」


「そうかぁ…?」


「あーもー!なんでそんな面白そうなことしてるの、私に教えてくれなかったんですかー!!せっかくのいいネタがー…およよよよ…」


「俺の事寿司かなんかと勘違いしてないか?」


 そんなコノハのリアクション芸を見てか話を聞いていた他のグループのメンバーもくすくすと笑っていた。誰かが女性陣に話を漏らしたのかすっかり俺とあいつの決闘の話題で1組のみんなが集まり盛り上がっている。


「それにしてもミナヅキさん、あのライオネットさんと互角の勝負するなんて、凄いんですね」


「い、いやぁ…別にそんなことは…」


「っま、品が無いってとこでおあいこって感じかな」


「う、うるせぇやい」


 はははとみんなで笑っていると突然ばんっと机を大きく叩く音に全員が驚き静まり返る。するとそこには金髪をポニーテールにまとめた、眼鏡をかけた祖人種の女性がカリカリとペンを走らせる音だけを部屋中に響かせていた


「…失礼、くだらない話で盛り上がっていると予習に集中できなくて…」


 それだけを言い残してひたすら学術書とノートに食い入るように勉強を続けていた。一気に冷め切った教室でみんなが集まっていたのが、それぞれの席に移動し座学の準備を再開した。俺は小さくコノハに耳打ちをする。


「っな、なぁ…あいつ誰だっけ?」


 すると近くに座っていたラフィラさんが返事をしてきた。


「ごめんなさい、あの人私と同じグループでバーゲニーさんって言うんだけど…ちょっと気難しいというか、生真面目な人で…ほら、初日の食事会で欠席したの、自室で勉強するために行かなかったって」


 そういえば食事会…一人来てないって聞いてたが、あの人だったか。一応同じ組だし…こう居心地も悪くなるのはお互いにいたたまれないだろうなと思い、意を決して席を立ち彼女に歩み寄る。


「こ、こっちこそ…騒がしくしちゃってごめん。えっと…バーケニーさん、って呼べばいいかな?俺は水無月 新。せっかく同じ組になった事だし、仲良くしていこうぜ」


 …しーん…、無視。圧倒的無視。彼女は眉一つこちらに動かすことなくひたすら熱心に勉強をしている。ウルヴァはそんな様子を見てイライラしているようだ。


「ミナヅキー、もうそんな奴の事はほっとこうぜ」


「…そうね、ほっといてくれると助かるわ」


 すると彼女がふいに口を開き、ペンを置き眼鏡をずらし眉間に指を当て疲れ目をほぐしている。


「こっちとしても叙爵するための講習を邪魔することをそんな自慢げに語られても困るの、慣れ合ってたりなんかして不合格にさせられたらたまったもんじゃないの、だから関わらないで勝手に落ちててちょうだい。異界人君」


「なっ、おまっ」


「おい落ち着けウルヴァ」


「…ウルヴァ、バーケニーさんの言う事は最もだ。話だけなら確かに余所者が講習の邪魔をした。そう解釈されても仕方ないさ」


「お、おい…ミナヅキ…」


 血の気の多いウルヴァを二人掛かりで落ち着かせながらも、俺は『異界人』という存在がこの帝国でいかに肩身が狭い存在なのかを…身をもって体験することになるとは思いもしなかった。するとトレイスが俺の服の背中側をつまんで引っ張り、耳元で囁いた


「ミナヅキ、おそらくだが…あいつ異界人否定派なんじゃないか?」


「…あぁ、多分そうだろうな」


 異界人否定派。俺が異界人特別拘置施設にいた時にモリシマさんが教えてくれたことだ。異界人を帝国で受け入れること自体を否定し、全ての異界人をこの帝国領土から追い出そうという運動をしている人や団体があるらしい。特に俺達異界人を狙った犯罪だっておきかねないと聞いている。今思えばバーケニーさんだけじゃなくあいつ…ライオネットもそうだったんだろう。まぁ背中を刺されていないだけ俺はラッキーだと思わないとな…

 そんなこんなでぎくしゃくしたままの魔法に関する座学のカリキュラムは終わり、そして一日。また一日と俺達は順調にカリキュラムをこなしていき、仲良くしてくれた仲間たちと共にそれなりに楽しい合宿生活をはじめて…100日の講習機関の30日が経過していた。




 14月、だんだんと冬の寒さが深まり、冷たい空っ風が常に吹き付けもはや日中でも温かい恰好が離せずみんな着込んでいる今日この頃、俺達Dグループは順調…とまではいかないがとりあえず最低限着実に単位やカリキュラムノルマを達成している。今は主に任意カリキュラムの出席消化をこなしている。

 任意カリキュラム、必須カリキュラムとは異なり基本的に全てのカリキュラムを受ける必要のない内容ではある。主に音楽、舞踊、芸術など女性に人気のものや、狩猟、鍛冶、車やバイクさらには帆浮船の運転など男性に人気なもの、そして魔法や戦闘に関する深い内容や実戦経験などもあったりと数十種類の中から好きなように選んで受けることが出来る。人によっては専門分野を深めるために数を絞って受け資格や特殊免許を取得したり、もしくは幅広く色んなものに触れ知見を広めたりと人によっては様々だ。

 俺達Dグループは全員がそれぞれ別々のカリキュラムを受けている。ウルヴァは軍で研究開発をすすめた最新の魔法武具「魔砲」という大型銃の使用訓練カリキュラムを、トレイスは野生動物の生態系調査と解体による生物学のカリキュラムを、コノハは最新の流行や騎士団の情勢、メディアなどの情報系のカリキュラムを…それぞれ好きなのを受けていた。

 だがドロフィーだけは受けたいカリキュラムが見つからないのか全然受ける様子がなかった。最初はコノハと同じカリキュラムを受けたみたいだが一回で行くのをやめ、ウルヴァとトレイスのカリキュラムにも興味を全く示さなかった。このままではドロフィーは不合格になりかねないと思い、仕方なく俺はドロフィーと一緒に彼女がなんとか受けてくれそうなカリキュラムを選んで参加している。


「にしても…ドロフィーが興味持ってくれる方法なんかないもんかなぁ…」


「なぁ、ミナヅキ…もうあいつの事なんて放っとこうぜ。別にお前が面倒みてやる必要なんかないんだしさ」


「んー…、それはそうだけど、折角同じグループだしさ。ほっとけなくてな…まぁコノハもラフィラさん達もたまにならドロフィーと一緒にカリキュラム受けてくれるって言ってくれたしな。」


「けどよぉ、お前だって受けたいカリキュラムあるんだろ?」


「まぁ、無くはないんだが…」


「あ、なんかあんのか」


「あぁ、魔導ブルームのカリキュラムをな」


 魔導ブルーム…空飛ぶ箒、ブルームに魔力式の動力エンジンを搭載したものだ。聞こえはカッコいいが、言ってしまえば空飛ぶ原付だ。


「…そういえば、お前あの折れたブルームどうしたんだ?」


「あぁ、身元証明とかクザスの村での滞在とか、あとラプスラストに関する書類提出と一緒に軍に物品証拠として押収されたぜ。まー元から修理も難しいって感じだったし、その代わりに次のブルームは軍が買ってくれるんだってさ。しかも魔導ブルームもオッケーってさ」


「まじかよ!ずっりー」


「まぁ…ドロフィーがやっぱり興味なさげだから、あいつのカリキュラムどーするかだけ考えないとな…」


 なんて愚痴りながら俺達いつもの三人は講習所内の廊下をぶらぶらと目的もなくふらついていた。今日分の俺達のカリキュラムは既に終わり、外出に行くほどの暇ではないものの時間を持て余していた。廊下の先にはソファーに雑誌等の娯楽物の置いてある談話室があるためダラダラと向かっていた。そんな時誰かの話し声が聞こえてきた。まぁ別に話し声なんておかしなものではないものの俺達はなんとなく声のする方へと廊下を曲がった。


「一体何を考えていますの?…何かおっしゃったらどうです!?」


 次第に声は大きなものになり、何やら揉めているというか…誰かを怒鳴りつけるような甲高くキツイ声が響いてきた。その声の元をたどると、今は物置くらいにしか使われていない、薄暗い小部屋に、扉を背にして三人の女性が立っているのが見えた。


「先ほども言いましたが、今日あなたと一緒になったカリキュラムの途中あなたが私の机の周りをウロチョロしたかと思えば、それから私が大事にしていたインクペンがいくら探してもどこにも見当たらなくなってしまいましたの」


「勿論私達は持っていないし…私達も一緒になって探したけどどこにも見当たらなかったわ」


「ちなみにあんたがこそこそ動いてるのは私達もはっきり見ていたわよ」


 …どうやら俺達からは見えないが女性三人の前にはもう一人いるみたいだな。そしてなんとなくだが…なんだか妙な気がするので、二人が関わらないでおこうと小声で制止するのを無視して俺は小部屋に足を踏み入れる。


「あ、あの~…」


 俺が声をかけると三人は驚きながらもゆっくりとこちらを振り返る。中央にいるおそらく一番声の大きかった女性は紫色の髪色で長い髪をいっぱい縦ロールしており格好もまるでお嬢様かのような重たそうなドレスを着た…髪に隠れて見えにくいがおそらく耳が長いのでエルフ系の精人種、左右はどちらもこんな季節にとは思うくらい身軽そうな服装をした、一人は肌がグレーみたいな黒っぽい色をした耳の長い…精人種の女性に、もう一人は背中を見ていた時から気になっていたが背中に立派な一対の蝶の羽のようなものがある…虫人種の女性だろう。

 だが一番驚いたのはそんな彼女たちの間からもう一人見えたのが…なんとドロフィーだったのだ。ドロフィーは俺に気付くと彼女達を押しのけて俺の後ろに隠れたのだ。そんな態度だものだから中央にいた紫色の縦ロールの髪型の女性は明らかに不機嫌そうに俺を睨みつけた。


「…あなた、確か噂の異界人だったかしら。その女の保護者のつもりかしら?それともこの一件はあなたの指示だったのかしら?…その女が今日のカリキュラムの時に私のお気に入りだったインクペンを盗んだのだと問い詰めているのですが」


「っい、いやっ!俺は何も知らねーよ!!それに…俺もドロフィーと一緒にカリキュラムを受けてたし、そん時ずっと一緒に居てあげたがそんな様子は俺は見ていないぜ。…一応俺からもドロフィーには聞いてみるが、誰かと見間違えたりとかしてたりしないか?もしくは、…ドロフィーが気付いていないだけでうっかりポケットとかに入ってたりとか。俺達も探すのに協力するし、だからほら…あんまり強く責めたりとかは…な?」


「…、…このお方もさっきのカリキュラム一緒にいたかしら?」


「いたわよ」「いたぞ」


 中央の紫縦ロールの女性が連れの二人に聞くと、しばらく考え込んでいるのか、俺を睨んだまま黙りこんでいて静かな空気が流れる。だが彼女のため息交じりな吐息で緊張の糸が切れる。


「…わかりました。王子様だか勇者様だかに免じて、この場は引き下がってあげますわ。その代わり条件がありますわ!」


 条件!?とその場にいた全員が驚いた。っていうか両隣にいた二人が一番驚いて見えた。


「数日後にあります全員参加の必須カリキュラム、組対抗の小隊を模した模擬集団戦闘訓練。私達3組と、…あなた方が何組か忘れましたが、あなた方の組が勝てばその女が盗んでいないという事を信じてあげてもいいですわ。ただし、私達が勝てば…私のインクペンの弁償に、慰謝料も含めてきっちり耳をそろえて払って頂きますわよ!!」


 彼女の堂々とした条件の内容とは逆にぽかんとしている俺達をよそにどんどん話をすすめ、言いたいことを言い終わると彼女は満足そうに俺達を退かさせて部屋を出て行こうとする。


「…勿論、この条件を言ったからにはこのカトレナ・キャメロット・リーナリア。リーナリアの村の領爵主娘として約束を違えないことをここに宣言するわ。それじゃせいぜいその日まで私達に逆らったことを後悔していなさい。おーっほっほっほっほ」


 …カトレナだって!?初日にドロフィーに因縁つけて来たって話の、まさかこんな形でかかわることになるなんて…なんて思いながら彼女の高笑いを俺達は黙ったまま見送ることしか出来なかった。というかその条件俺達は受けるって言ってないが…無効になんねぇかなぁ…


「おーい、どーすんだよ…こんな面倒起こしやがって…」


「いやいやいや…抱腹絶倒面白ネタでしょう」


 するとカトレナたちの出て行った扉の横からひょこっとコノハが顔を出した。見るからにうっきうきの笑顔をしている。最近こいつの笑顔を見るたびイラっと来るようになった。


「旦那ぁ~、最近ライオネットさんと面白い事してなくて自分寂しかったんですよぉ~」


「そりゃあ意図的に避けてたからな…良かったな。お前だけは、楽しそうで」


「およよよ、ダメですよ旦那方ぁ、人生どんなことにも楽しまなきゃ勿体ないですよ」


「こいつはほんま…」


「まぁまぁ…とりあえず作戦会議だ」


 というわけで俺達もこんな薄暗い小部屋にいつまでもいる必要がないので、元々向かっていた談話室に移動した。ドロフィーはコノハにくっついたままで一緒には来てくれた。こっちもこっちで大事な話があるからな。各自飲み物を持参しつつ、俺はいくつかの戦闘や魔法のカリキュラムで使った参考書を机に広げた。コノハもなにやら独自で作った名簿らしきものを取り出した。全員集まって座ったつもりだったが、ウルヴァの姿が見えない。


「あれ?ウルヴァは?」


「あいつなら他の1組の奴らに声かけてくるって」


「そ、そっか…じゃあまぁいいか。さてと…、なんだっけ。組対抗の模擬集団戦闘訓練…あれはいつあるんだっけ?」


「俺達一組と三組がやるのが一番早くて10日後だ」


「10日後か…」


 模擬集団戦闘訓練。それは開講式でも説明された通り参加必須のカリキュラムのうちの一つ。読んで字の如く小隊を模した集団での戦闘訓練である。とは言っても戦闘はがっつりしたものではなく、俺の元の世界で言うところの体育祭のようなちょっとした運動イベントだ。ルールは教官に認められた模擬戦用武器のみ使用可能。魔法は使用可能だが罠など小道具の使用は不可。グラウンドを二分しお互いの陣地として、2時間のうちに相手チーム全員を戦闘不能にした方の勝ちである。戦闘不能の判断は審判役の教官達と判定用の道具を使用するため滅多に大きな事故につながる事はまぁ~起きないらしい。それと強いて大変なことをあげるならこの行事はいち組み合わせ一回のみ、つまりぶっつけ本番一本勝負なのだ。


「ちなみに一組と二組でやるのがその二日後、一応言っておくと二組三組でやるのがそのさらに二日後だ」


「俺達の戦闘訓練が一番最初かよ」


「安心してくだせぇ旦那、明日の戦闘訓練カリキュラムはグループ全員で参加なんで、自分たちの調整はまだ間に合いますから、あとこれ…三組の名簿です」


 コノハが俺の参考書の上いっぱいに手作りの名簿を並べる。一人一人のコメントなど細かく書かれておりそれぞれグループごとに分けられ、グループのメンバー全員が写った写真もついている。


「お前、結構まめなことするな…」


「ま、ジャーナリスト目指すならこれくらいってね」


 俺達は早速名簿に目を通す。真っ先に目に入ったのは…当然カトレナの映った写真だ。3組Dグループ、俺達と同じように五人で構成されたグループだ。だがメンバーは男4人に女性はカトレナ一人と言うアンバランスな構成…だがそれ以上に、もう一つ気になる名前があった。そう、3組Dグループでカトレナと一緒にいる、義勇兵爵試験に二度の不合格をしたという話を聞いた…リューゼルトだ。金髪で整った短髪、整った身なりで格式高い服装を着ているように見える…だが、どこかどことなく人相の悪そうな顔に見える。こうしてみるといくら俺に怒りの感情をぶつけてきたりしたライオネットの方が気品高く余裕のある顔に見えた。…やっぱ思い出すとイラっと来るし忘れよう。


「3組Dグループ…今期の問題グループとして有名ですね。今のところまでメンバー全体のカリキュラム出席率が低いのと、問題行動が悪目立ちしていて教官たちから要マークされてるって噂です。グループ内連携は最悪って話もあります。ただそれはそれとして個々の戦闘能力は高いって感じですね。まとまりのないヤンキーチームってとこでしょう」


「なるほど…」


 俺は次の二枚を手に取った。Cグループは女性ばかりの4人グループ。メンバーのうちの3人が農業都市『アンダルハーグ』からの参加者、その中の二人ともう一人の3人は叙爵後演劇騎士団への入団を決めているとの事らしい。写真からもメンバーの中には男装をしている一人がすっごい気になる。なんかキラキラしてるし…。そしてBグループは全員が貿易都市『ヴェリパドキノヴォ』からの参加者で構成された4人、男二人はそれぞれ兎系と馬系の獣人種、そして残りの二人は先ほどカトレナと一緒にいた両隣の女性二人だ。だがコノハは最後の一枚を俺に見せてきた。


「勿論BとCのグループも戦闘訓練を多く受けられていて強そうですが、…問題なのはこのAグループです。この人達は、言ってしまえばバリッバリの実戦経験を仕込まれた人達、らしいんですよ」


 俺達はAグループの名簿に目をやると真っ先に気になったのが全員がこの帝都ではあまり見ない、和服だったり着物だったりと比較的和装寄りな恰好を身に着けている点だ。それもそのはず全員が和風都市『スンボリ』からの参加者だ。そう、コノハと同じ出身都市だ


「らしい…って、お前と同じとこからきてるんだし、むしろ他のやつの事よりも詳しいんじゃないのか?」


「自分だってスンボリの全てを把握してるわけじゃないですよ。…ただそれでもキンジョー家といえば有名な武家の一族ですから、噂だけならいっぱい聞いていますよ」


 そんな話を横に聞きながらAグループの写真をじっと眺める。中心人物と思わしき男の頭には一対の立派な角…多分鬼人種だろう。その男は俺とライオネットが決闘紛いをしたあの日、窓から覗いていた男で一致する。そんな実戦経験豊富な男があの時何を思って俺達を見ていたのだろうか…?

 なんて考えているとどたどたどた…と複数人が小走りで駆け寄ってくる音が響いてくる。顔をあげるとウルヴァを先頭に、全員ではないにしろ1組の他のグループたちが集まっていた。


「ミナヅキ!また面白いこと始めたって?」


「3組とも因縁つけたらしいじゃねーか!」


「勝手に話を盛るな!!俺じゃねーよ」


 なんて呆れながら集まった全員がそれぞれが勝手に話を始める。ウルヴァが既に話をしたからかすんなりと1組作戦会議が始まった。3組の名簿をみながらそれぞれが持っている情報を出し合ったり、グループごとの戦闘技量で得手不得手を確認し合ったりなど…みんながあれこれ言うのを俺やコノハが一生懸命まとめる。いつの間にかパーティみたいに盛り上がってる俺達一組メンバーだが、俺はふと俺達の輪から距離を置くようにぽつんと座っているドロフィーの姿が目に入り、俺はこっそりドロフィーの傍に移動した。


「…やっぱり、こういう雰囲気は苦手か?」


 俺が話しかけてきたのに驚いている様子だったが、すぐに俯くように下をぼーっと見ながら、首を横に振った。明らかにそんなわけない、とは思うが勿論そんなことは口からもらすわけにはいかない。


「そうか、でも無理はしなくたっていいぜ。辛かったら遠慮とかしなくて大丈夫だぜ」


「…うん」


「なぁドロフィー…一応聞いておくが、別にカトレナさんのペンを盗んだとかそういうわけじゃないんだろ?」


 ドロフィーは首を動かすこともなく、うんともすんとも言わなかった。


「…大丈夫さ、俺はドロフィーを信じるよ。俺もそうだが案外なくしものってわけわからないところに置いてあったりするもんだからさ。まぁでもとりあえず10日後の集団戦闘訓練に勝って、条件をのんでもらおう」


 …嘘だ、正直俺はドロフィーをあんまり信じていない。どうしても何も言ってくれないドロフィーを信じてやる事なんて出来なかった。どうして何も言わないのか俺にはわからない。…だけど、信じるというよりも信じてやりたいという気持ちはあった。これをきっかけにドロフィーが、ドロフィーとのなにかが変わるんじゃないか…そんな気がしていた。劇的に全てが変わるとは思っていないにしろ、それでもきっかけってのは期待せずにはいられないのだ。俺はそれを知っている。元の世界でも信じてあげたことで変われた人を知っているから。

 その言葉にドロフィーは俺の顔をじっと見つめた。するとドロフィーはそわそわしだしたかと思うと急に荷物の中からノートを取り出して、白紙のページを破くと何か書き始めた。


「おいミナヅキ、俺達の班の動きだが…みてくんねーか?」


「あ、あぁ…ちょ、ちょっと待ってくれ。すぐ見るから」


 Aグループのマアダが俺を急かすが、ドロフィーが何を伝えたいのかだけ待ちたかった。かき終わったのかドロフィーが書いた紙を俺に手渡した。中は…自分自身の出来る魔法戦闘技能に関する内容だった。これは彼女の…作戦に参加する意欲の示しで間違いない!自分自身で一歩を踏み出した、んだと思う


「ありがとうドロフィー!一緒に頑張ろう」


 俺はこの紙を手にみんなの輪の中に戻っていく。ドロフィーが輪の中に入るのはとても難しくとも、俺がこうして繋いであげればきっと変わっていくかもしれない。それはきっとカトレナのペンが見つかるきっかけにもなるかもしれない。きっとやりたいカリキュラムが見つかるかもしれない。俺はその一歩分の思いを手に握ったまま来るべき10日後のために準備を始めたのだ。

 だが…そんな様子を覗き見ていたとあるグループに俺達は気付かずにいた…




 …———……


「…ミナヅキのやつめ、随分調子に乗りやがって」


「ライオネット様、あいつ全然悪いことはしてないでゴワス」


「分かっているガーランド。下手に突っかかったらこっちが悪者になる」


「でも、でもでも成績で言えばライオネット様の方が上ですよ」


「当然だプラノ、だがあんな異界人如きが成績でも落ちぶれていないのが不愉快だ」


「ピー…ライオネット様の方がイケメンっピよ」


「…ありがとうヨハン」


 ライオネット達2組Aグループは廊下の壁から談話室を…1組の相談を覗き見ていたのだ。


「ともかくだお前達、これはむしろあいつをぎゃふんと言わせる絶好のチャンスだ」


「なるほど!あの異界人が情けないくらいボコボコにされてあいつのせいで1組が負けさせられたらショックで兵爵になるの諦めるってわけですね」


「その通り。ならばさっそく僕達も作戦会議だ!2組の奴らを全員集めるぞ、あいつらは全員集まれていない。僕達が全員集まれば連携力で勝てるさ」


「「「おぉー…」」」


「1組とは確か12日後だったな。しかもその前に3組との模擬集団戦闘訓練を盗み見れるしな、いくぞお前達」


「「おーっ!!」」「ピー!!」


「声が多きい!バレるだろっ!!」


本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。


ようやくEpisode4も終わり、ここからは個人的にもやりたかった戦闘パートをぎっちり書いていくつもりです。とその前に、Episode3のExもちょっと自分の中ではいい感じに書けたと自負してるので、是非そちらも楽しんでいただいて、そして次の戦闘も楽しんでいただけたらなと思ってます!


また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。


次回は8/23にEpisode3のExを投稿しようと考えていますので、もし少しでも面白かった、続きが待ち遠しいと思えたら嬉しいです。次回もよろしくお願いします。

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