Episode4 義勇兵爵講習合宿、開講——— 前編
この世界の人間史で1389年、帝国…正式名を《聖ルーマルコーランド帝国》、この国の歴史は浅くまだ建国から28年しか経過していないが、この国の多くを語るには今から約230年も昔、幾代か前代の祖人種の王の証を持つ男が諸小国間の諍いを無くし新たにムロコナル大国を建国し、今なお未開の地を含めても114万㎢という国土を手に、次なる侵攻の地を求め少ない食料を奪い合う南西の痩せ細った高原の地、現在のティストレイ連邦となる諸小国への植民化計画を開始した。だが厳しい気候環境や根深い略奪文化によりムロコナル大国とティストレイ連邦となる諸小国間との衝突が長く続き…120年の月日が流れ建国の王、そして次王も死去後、大国内で次世代の王の誕生が現れず、事態を深刻化した臣下達は大国中に祖人種の優遇化を新興し他種族の奴隷に対する扱いが日に日にひどいものとなった。そんな中でとある諸小国で獣人種の王が誕生したという噂が広まり、さらに奴隷解放活動グループの活性化が激化を強めた。
そして1328年、ついに悲劇が起きた。奴隷解放事件が始まった。大国中が大パニックとなり、莫大な領土内の全ての中小町村を巻き込み多くの命が失われた。だがそれとほぼ同時期に獣人種の王が諸小国を束ねティストレイ・トシヴェ連合国家を形成、悲劇的な状況に陥っているムロコナル大国に対し大規模な略奪…侵略、いや征服戦争の開戦を布告したのだ。生き残った数少ない兵士や傭兵たちは飢えながらも終わりのない戦いを続け、国内外問わず絶えず襲われる恐怖感に安息の地を失った元国民たちは抵抗すら諦めるものもいた。そしてただ願うことしか出来なかった。
———…この地にも、王の証を持つものがいれば…———
その願いが通じたのか、1350年頃から各地でとある少年の活躍が元大国内を駆け巡った。その少年の名は…『アーテュール』そう、のちの祖人種の王、アーテュール・コーランド聖帝。各地でのちに英傑と呼ばれる勇士を集い獣人種の王、そして100万人にも及ぶティストレイ・トシヴェ連合国家の軍勢を退けた建国の王だ。それから1361年、アーテュール聖帝は17歳で帝国を築きあげたのだ。
この帝国の歴史は、ティストレイ・トシヴェ連合国家改めティストレイ連邦との深い深い因縁の歴史でもあり、それは今でもお互いに静かに牽制し合い続ける戦争というかたちで続いているのだ。そのため帝国は常に更なる兵力増加を模索しなければならない。だが王は少し優しすぎた、国民への強制徴兵は行わなかった。そのため英傑達はあの手この手で兵士、『兵爵』を集める手段を講じたのだ。その一つが国を守ること、そして後の兵爵を育成・サポートしていく事を義務とした『国衛兵爵』、そしてもう一つが、有事の際には出動してもらうが様々な権限を許可し自由な活動が認められ、自主取得を推奨とした『義勇兵爵』の二分化だった。
そして今まさに新たな義勇兵爵となるであろう優秀な若者たちが、13月と言う乾いた寒空の下、帝都の一区画…軍の私有地内の一つ、義勇兵爵試験合宿場に一人、また一人、時には団体で、次々と足を踏み入れるのだった。そしてその中に…
水無月 新、俺もまたこの世界で知り合ったウルヴァ・クザスとトレイス・マー・クザミメの二人と一緒にこの合宿場に訪れたのだ。会場には正装をした様々な国衛兵爵の人達が受付やら書類審査、説明等で何十人もの人が慌ただしく広い会場内を狭くなるように動き回っていた。合宿の会場は俺がつい昨日まで収容されていた施設と大差ない感じで馬鹿でかい複合宿泊施設のようなところにだだっ広いグラウンドまでついているみたいだ。
「やっべぇ~、なんか緊張してきたな。トイレ行っていい?」
「さっき行ってきたばっかじゃねーか」
「だってよぅ、なんかもうなんもしてないのに手汗は凄いし、喉乾くからジュース一杯飲み切ったら腹タプタプで」
なんてたわいもない会話をしながら俺達は同じく受付を済ませていた人達と一緒に複数の長机のある待合室で開講式が始まるのを待っていた。俺達が到着した時点でも既に多くの人が待合室で待機していたり後からも次々と入ってくるがその参加者たちは様々な風貌ばかりで、これまでも馴染みある祖人種や精人種、翼人種、獣人種に龍人種は勿論の事、煌びやかな和装に身を包んだ鬼人種と思われるグループや、身体の至る所から『ヒレ』が飛び出ている水人種と呼ばれる人や、身体が『甲殻』のようなものに覆われている虫人種をこうしてじっくり見たのは初めてかもしれない。ただ、そんな種族による特徴なんかよりも圧倒的におそらくあの人は貴爵だろう、あっちの数人は隷爵だろうと思わせるような服装や雰囲気、こっちのグループは別の都市から長旅してきたのかと思うような荷物の違い、さらには砂漠や海から来たんかと言わんばかりの特色ある格好。とにかくこの待合室の中が濃いメンバーで埋め尽くされているのだ。
「…それにしても凄い人数だな。いつもこんな感じなのか?」
「多分そんなことはない筈だ。今の時期から始めれば兵爵叙爵した頃に冬も終わり丁度新年がスタートするからな、この時期が一番人数が集中する時期だって聞くぞ」
…あれか、高校卒業までの間に車の免許取るようなものか。というか免許合宿って感じか。そう考えたらなんか急に気が緩くなってきたな。二本目を震える手で飲み始めたウルヴァももっと気を楽にしたらいいのに…なんて考えてると、一人の兵爵が待合室に入ってきたかと思うと名簿用紙のようなものを見ながら俺達が座っている机を軽くたたくようにして周っている。
「…なぁトレイス、あれは何やってんだ?」
「おそらくだが…組み分けを考えてるんじゃないか?兵爵はグループが重要だからな。まぁおそらく大丈夫だと思うが万が一にも俺達が別々のグループにされる可能性もあるかもな」
「ふーん…組み分けって何の組み分けなんだ?」
「この合宿中では基本的に4人一グループ、もしくは5人一グループとして生活をするんですよ。それでメンバーそれぞれがグループメンバー全員の行動を把握していつでも教官に報告できるようにしていないといけないんですよ。つまりこの合宿中は常に団体行動意識のテストをさせられるって事ですね」
「なーるほどなぁ…俺達別々のグループにされるんかな…」
「滅多にないと思います。基本的に気心知れたグループをわざわざ崩してバラバラにするよりも、それぞれがコミュニケーションの取りやすい環境の方が自由にやりやすいし報連相もやりやすくなります。それに目的が同じグループ同士の方が都合がいいこともありますからね」
「…おい」
「それならいっか、てか目的が同じって…例えばスポーツやるからスポーツ騎士団はいるってグループを作ったりって事か?」
「はい、既に右奥にいるあの五人組はいろんな都市から集まったにも関わらず合宿後はスポーツ騎士団に入団する人で集まったって言ってましたし、その隣のお洒落な女性陣4人は演劇騎士団への入団を決めてると言ってました。後はそれぞれの大都市からやってきたメンバーがそのままグループになったりとか」
「…おい、ミナヅキ」
「なんだよトレイス」
「お前今誰と会話してんだ?」
えっ…?と思ったが、俺はてっきりトレイスかもしくはウルヴァと喋ってたと思っていたが、そういえば確かにどことなく丁寧な口ぶりだし、声が高いような…と考えながら横を向くと、そこにはウルヴァ…ではなくウルヴァが座っていた席には知らない女性がちょこんと座っていた!俺はびっくりして変な声をあげながら椅子をひっくり返して飛び上がるくらい驚いた。
「およっ、そういえば自己紹介が遅れました!自分スンボリから来ました天狗系翼人種のコノハ サキョウと申しますです、はい。自分の他にもスンボリから何人か来たみたいですが、あんまり面識がないのでソロ参加しつつこうして色々話して回ってるんですよ。ところでお二人も学童院からの卒院前参加なのでしょうか?」
「学童院…?いや、俺達三人は小さい村からの出で…」
するとコノハは少し考えた後、3?とハンドサインをする。俺達も3とハンドサインしつつ頷く。三人で俺を指さして1、トレイスを指さして2、そしてコノハが自分の今座っている椅子を指さす。そして丁度そのタイミングで待合室の扉が開くとズボンで手を拭きながら戻ってくるウルヴァの姿が見えた。
「ふぃーすっきりした…、………誰?」
「…、…悪いなウルヴァ!この席三人用なんだ!」
「今後俺達三人組はこのメンバーでお送りするぜ!」
「およっ!?およよよよよよ!!??」
「ちょっおいてめーら!目の色変えてんじゃねぇぞふざけんな!!」
「っへ、隙を見せたお前が悪いんだよ」
「んだとー」「お、やんのかー」「かかってこいよ脱落者~」「てっめ」
おらおらおらと、しょうもない脛の蹴り合いが始まると不意にコノハが間に割って入り止めに入る…と思ったが、何故か唐突に腕をクロスさせファイッ、またおらおらおらぁと三人でしょうもない小競合いをして四人でげらげらと笑った。ちなみに周りは半数くらいが小笑いってとこだった。
「いやー愉快な人達ですね。お邪魔してしまって申し訳ないです」
「それにしても黒天系の翼人種なんて珍しいな」
「黒天系?コノハさんは天狗系の翼人種って」
「あぁ、それはただの別称でして意味は一緒ですよ。帝都では黒天系と呼ぶ人が多いみたいで、自分の故郷では天狗系って呼ぶことが多いです。帝都では祖人種って呼ぶのが主流ですが他の国では原人種とか、純人種って呼ばれているみたいなものですよ」
「あれだ、棒アイスをポッキンアイスとかチューチューとかパキッと棒とか色々呼び方違うみたいなもんだ」
「は?キンキン棒が入ってねーぞ」
「うわ過激派かよこいつ」
そんな過激派コノハさんの背中には確かに目立たないくらいに真っ黒な一対の翼が背中から生えていた。黒いロングポニテに肌色に黒い翼の風貌は確かにアニメとかで見たような天狗っぽい感じにも思えた。まぁ恰好はもはやこれを袴と呼んでもいいのか分からないくらいの半袖ミニスカート化しているミニ袴の上から薄茶色のケープを羽織ってるだけの天狗らしからぬ足元の寒そうな姿をしている。まぁじろじろ見るのも失礼なのですっと視線を逸らす。
「そういえば小さな村から来たと言ってましたが、という事は三人とも領爵という事で?」
「あぁ、いや…二人はそうなんだが、俺は別に爵位がなくて」
そういった途端急に周りが静かになった気がした。今の俺には周りを見渡すだけの勇気がないが、多分きっとおそらく…今俺に視線が集まっているのだろう。目の前にいるコノハさんですらきょとんとした顔で目を見開いている。
「おいミナヅキ」
「い、いい、よ…あとでバレるよりかは最初に自分から言っとくさ。お、俺は異界人で…その帝都に定住するため叙爵のためにこの合宿に参加したんだ」
「そ、そうなんですか…そんな話聞いたことないのですが」
「まぁ…特例で許可貰って受けさせてもらうことになったから」
「なんと!第一号!ふぅーん、へぇ~…」
コノハさんは興味ありげに俺の事をじろじろ見回しながら何やらメモを取り始めた。いつのまにか周りの静けさも次第に騒がしさを取り戻していた。すると待合室の扉が開き受付にいた兵爵の人達が入ってきた。
「大変お待たせいたしました。これより開講式を始めますので会場に移動し名前の付いた席にお座りください」
その声に参加者はゆっくりと席を立ち荷物をまとめ移動を始める。中には出入り口に近いのに荷物が多くなかなか進まない通路もあったりもした、俺達も邪魔にならないよう荷物をまとめ始めた。
「あぁ、もう、せっかく面白、いいところだったのに」
「まぁまぁ、多分後でゆっくり話せると思うから」
コノハさんもいそいそと荷物を持って全員の流れに沿って移動していく、本館内通路から吹き抜けホールを抜けまっすぐ順路を進むと、そこにはまるで高校の体育館そのもののような作りの場所に辿り着いた。スポーツコート二つ分の広さにコーティング塗料でつるつるになっている床、この懐かしい感覚に俺はきゅっきゅっと足で擦り音を出す。他の参加者もきゅっきゅきゅっきゅ鳴らしながら進んでいく。
体育館の前の方には長机に椅子が均等に並べられ、それぞれに名前が書かれた封筒が置かれていた。俺達も名前を探して進むとすぐに見つかった。しかも両隣はウルヴァとトレイスだった。俺はちょっと安心しつつ椅子に座る。ウルヴァも座ると早速封筒の中身を取り出した。俺も気になったので早速中身を取り出すと、パンフレット用紙に、いろんな誓約書、そして必要単位の書かれた予定表のようなものなど様々な必要書類が入っていた。全員が座ると壇上に一人の兵爵の男が演台の前へと足を進めた。
「皆さん、当合宿にご参加いただきありがとうございます。開講式挨拶と進行を務めさせていただくレゾットと申します。今後皆さんの教官の一人としてこれから一緒に頑張っていきたいと思うのでこれからよろしくお願いします」
レゾット教官の元気なお言葉から始まった開講式はビックリするほど話の内容が頭に入ってこないが、大事なことだけを要約すると
まず一つがグループ分けについてだ。今同じ長机を前に座っているメンバーが同じグループ同士という事だった。つまりウルヴァとトレイスとは別れることなく同じグループなのは確定した。だが他の長机は4人座っているが俺達は3人しか座っていない。それは後ろの長机を前にしている2人と合同の5人グループとの事らしい。一人はなんとコノハさんだったのだ。後ろから静かに拳突き出してきたので俺達は拳を突き合せた。ただもう一人の子は分からなかった。まぁ後で挨拶とかできるだろう。ちなみに5人グループは3つあるみたいだ。
だが大事なのはここからで、俺達が座っている長机は3列あるのだ。そしてその列一つをさらに大きなグループ、組として扱い大きな行事には共に活動するメンバーとのことだった。一つの組には4人グループが三つ、5人グループが一つ、1組に17人…それが三組あり、総参加者は51人とのことだった…。そう、俺達はこれからこの51人、同じ組なら17人と約100日の合宿生活を共にしていかないといけないのだ。
そしてもう一つが、試験に合格するまでに必要なのは単位と、最終テストでの筆記・実技での最終合格点、そして実習の参加と合宿中の参加日数とのことらしい。最終テストは最低限の一般教養と最低限の身体能力と体力さえ身についていれば簡単に合格は出来るらしい。だが大事なのは単位と実習であり、100日ある合宿期間中の最低80日を合宿場にて活動しつつグループと共に生活し、出席義務のある講習には参加、提出書類を全て退出しなければならず、さらに最も大事なのはなんと野外行軍実習と集団戦闘実習は必須科目だという事らしい。
まぁだいたいはその辺りの話が大事そうで、あとは合宿内施設の説明や教官の紹介とか挨拶、それからありがたーいお言葉を聞いて40分くらい経過したころ
「それでは最後に、かつてアーテュール聖帝と共に戦った13英傑が1人にして、兵爵養成機関総監督長のイヴァン・ポプラウス・ネムドリ―ヴィス様からのお言葉です」
そうレゾット教官が言うと、檀上の幕から一人のよぼよぼなお爺ちゃん龍人種の人が杖をつきながらゆっくり歩き、その後ろからは付き添いと思われる二人の職員がステップを出したり、転ばないよう支えてあげたりとサポートしてなんとか演台の前に立った。
「えー、皆さん…此度は義勇兵爵の試験合宿に参加して頂きありがとうございます。皆さんが無事この合宿を終え、立派な義勇兵爵となることを我々一同大いに期待しております。ですが皆さんは兵爵、などと言う肩書きを重く受け止めている人がいるとしたら…そんな風に思う必要などありません。確かに今はまだ隣国と戦争が続いたままの状態、そしていつ本格的な戦争に発展してもおかしくない状態ではあります。そうなってしまうと国衛兵爵だけでは兵が足りず義勇兵爵の皆さんも出兵願を出されることになると思います。ですが、そんなことに自分の大切な人生を壊されるわけにはいかない。そう思うのも当然です。ですから、皆さんには兵士として戦場で戦い死んでしまうのではなく、義勇兵爵として自分だけの自由な人生を目指しつつ、そして戦場に行くことになったとしても絶対に生きて帰る。生きて帰り戦争のない世の中で自分の人生を満喫し最期を迎えられる…そんな風に生きられるようにするためにここで我々が全力でサポートしていくのです」
「…ったぁー、終わったー。開講式ながかったぜー」
「午前中は荷物持ったままの移動ばっかだったし、開講式は座りっぱなし…体凝っちまうぜ」
開講式終了後、俺達は宿泊棟に早速案内されようやく荷物から解放された。内装は俺が14日ほどいた異界人特別拘置施設と比較的同じような作りとなっていて
強いて言うなら1個室はこっちの方が広く一部屋に二段ベットが二つの四人共同部屋という事だろう。そんな個室に俺とウルヴァとトレイスの三人で使うことになった。コノハともう一人の女性は女性区画内で同じ部屋にいるという話らしい。ちなみにこういうところから既に試験の評価対象にもなっているという話をウルヴァから聞いたがどこ情報なのだろうか…
兎にも角にも俺達は荷物を下ろすとすぐに部屋から出て、他の何人かの参加者たちと共に階段を降り食堂へと向かう。そもそも開講式が終わった時点で12時を既に回っている。つまり昼食だ。開講式後コノハにすぐ合流することを伝えていたこともあり食堂にはもうコノハがおり合流するが他にも2人一緒にいた。
「お、へいへい旦那方ぁ、こっちこっち~」
コノハが高く手を振ると俺達に気付いた隣の二人の女性は、片方は耳が長くおそらく精人種と思われるが、なんと肌が青く、髪もさらに濃い青のロングストレートのような見た目の落ち着いた女性で俺達を見るとぺこりと会釈をし、もう片方は普通の女の子のような見た目だが頭に大きくぐるりと巻いたような角が一対ある女性で俺達を見ると怯えた様子でコノハの後ろに隠れてしまった。
「そっちの二人は…もしかして同室の?」
「まぁまぁ自己紹介は食べながらでも」
そう言われたので俺達は他のみんなと同じように昼食を受け取り一つの長机に集まって座り早速食べ始める。ちなみに今日の昼は白身魚を野菜とオイルの水煮料理…いわゆるアクアパッツァにサンドイッチの付け合わせだ。
「さてさて、まずは旦那方からご挨拶をお願いしますよ~」
「俺達からかよ…まぁいいけど、俺は水無月 新。さっき待合室の時にも少し聞かれたかもだが、異界人だ。クザスという村で長い事お世話になってから爵位を貰うために帝都に来て義勇兵爵の試験合宿に参加したって感じだ。こんなもんでいいか?」
「いんじゃね?次は俺でいいか、俺はウルヴァ・クザスで爵位は領爵だ。ミナヅキとはクザスの村からの付き合いだ。ここ出た後のあてとかは…まだ考えてないだっけ?まぁどうせ村には帰らねーと思うから帝都に俺達は移り住むつもりだぜ。あ、それと俺らは全員13で同い年だ」
「俺はトレイス・マー・クザミメ、父さんは隣村のクザミメの村の領爵主だ。と言ってもそろそろ歳も歳だし、俺も兵爵を叙爵してからいつか跡を継ぐつもりだ。まぁとは言ってもまだあと十数年くらいはこっちで自由にやっていいって言ってくれたからしばらくはこいつらと一緒にいるつもりだぜ」
そんな俺達の話をコノハは食べ物を口に頬張ったままやたらとメモを取ってくる。青い女性は周りに気を遣いながらパチパチと小さく拍手し、角のある子は小さく縮こまったまま目を合わせずに食べすすめていた。
「それじゃあ今度は自分ですね。まぁ先ほど旦那方には少し話しましたが自分はスンボリから来ました天狗系翼人種のコノハ サキョウと申しますです。自分も13歳です。自分の他にもスンボリから何人か来たみたいですが、あんまり面識がないのでソロ参加って感じで、叙爵後は帝都のジャーナル系騎士団に入団希望を考えています。ハイ拍手~」
なーるほど、執拗にメモとるのは記者の練習のつもりなのか…?
「…ドロフィー…よろしく…」
長々と喋るコノハとは対照的に角のある子は周りの雑多にかき消されそうなくらい小さな声で端的にそれだけで終わった。だが確かこの子…ドロフィーは開講式の時にコノハの横に座っていたから同じグループのメンバーだったよな…これだけじゃちょっと情報少ないし、というわけで
「…ジャーナル希望」
「およっ!もっちろんちゃんと準備しておきましたよ。お任せください~、えーっと…ドロフィーちゃん12歳、ムフロン系の獣人種で爵位は隷爵。鉱業が最も盛んな都市、び、ビストリタル…ノフスティア・ぐ、ぐる、グルィツァから帝都に兵爵を貰いにきたとのことですね」
「ちょ、ちょっとまて、ビス…なんだって?」
「ビ・ス・ト・リ・タ・ル、ノ・フ・ス・ティ・ア、グ・ルィ⤴・ツァ、って名前の都市です」
「いつ聞いても言い辛い名前だよな…」
「そうか?言い慣れると案外すっと言えるようになるぜ。ビストリタルノフスティア・グルィツァ」
「早口で三回は?」
「ビストリタルノフスティア・グルィツァ、ビストリタルノスタルティア・グルィティア、ビステュリ、グリ、び、ビストリティアグリ…無理」
はははと笑っている俺達をよそにドロフィーは無心にゆっくりとしたペースでご飯を食べすすめている。
「え、えぇと…ドロフィーは叙爵後は何かしたいことある?」
俺が質問をしてみるが首を横に振るだけで返事は帰ってこなかった。微妙な沈黙が重苦しく感じた。
「ま、まぁ…まだ決まってないといけないわけでもないし、ゆっくり考えればいいよな。俺もなんも決めてないし…」
「ま、ドロフィーちゃんのコミュニケーションは私とコノハに任せて、男子だから警戒してるかもだしね」
「う…」
「それじゃあ最後に私ね。私はイヴ。隷爵では割と多い名前で私もそんな隷爵の中の1人よ。帝都では珍しいウンディーネ系の精人種で15歳、海に面している都市のベネトリーニから七人くらいのメンバーと一緒に来たわ。ちなみにここ出たら、ダーリンと結婚予定で二人で家族事業始めよって決めてるの~」
「ダーリン?」
「そいつぁ俺の事だぜ」
不意に俺の肩にごつい手が置かれ驚くと後ろには巨大な身体に青い肌色、そして何より服の隙間、体の各部からまるで魚のヒレのようなものが飛び出ている男が立っていた。
「俺はマアダ、ハニーと同じくベネトリーニから一緒に来た水人種の隷爵。16歳だ。そしてハニーと同じ1組Aグループだ」
1組…俺達は確か1組Dグループだったっけ。てことはマアダさんとイブさんは同じ組の違うグループなのか、それとマアダさんの後ろにはおそらく同じグループと思われる二人の男が立っている。一人はマアダさんと同じような水人種のような姿でもう一人は龍人種に見えるが…ヒレのようなものが見える辺り言うなれば水龍系龍人種…てところか?
「やーんダーリーン♡ホントはダーリンと2人部屋がよかったな~♡まぁ一人で一部屋は使わせてはくれないみたいだし、A女子とD女子合同になったって感じだね」
「一応紹介しておくと水人種の方がファイグル、龍人種の方がカロアだ。こいつらもベネトリーニから一緒に来たから同じグループになったって感じだ」
「一応じゃねぇよ、ちゃんと紹介しろ」「まぁ、よろしく頼むよ」
俺達もよろしくと軽く返事を返すとイヴさんは食べ終わった昼食トレイを持ってマアダの隣に行き
「それじゃ私達はこれから今後のカリキュラム打ち合わせてくるから、コノハさん達はまた部屋で。それじゃ行こダーリン♡」
とにっこにこでAグループで集って席を後にした。そう言えばこの講習中に受けるのが必須の科目と自由な科目、さらに任意で特殊資格を一緒に取得できる科目もありそれらをいつ受けるかをグループごとに決めれるって話だったっけか。俺達もあとで考えないとな…
「うーん、せっかくAグループと挨拶出来ましたし…せっかくならBとCグループともちょっと交流したいですよね。せっかくですもんね。当然ですよねぇ旦那!」
「え、あ、うん…?」
「よっしゃ、という事で今晩交流も兼ねて外食をしましょう!他グループとお店にアポ取ってきますね。あ、イブさんにもさっき言っておけばよかったな。また後でいいか。それじゃ自分、いってきまーす」
と早口で捲し立てるように言い残すとコノハは空のトレイを持ってさささっとステップで駆け出して行った。俺達は見送ることしか出来なかったが、ドロフィーはおずおずと落ち着きのない様子で座っていたが、まだ俺達と一緒にいるのが難しいのか立ち上がると頭を一回ぺこりと下げ、コノハの後を追うように走り出した。残された俺達もぽかんと呆気にとられていたが、みんなと話しながら食事も終わっていたし少しゆっくりしたところで俺達も食堂を後にした。
本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。
今回から兵爵への物語が本格的に始まりました。しばらくはこの合宿を舞台に物語を進めていくつもりですが…登場人物が圧倒的に多くなります!正直多いので全員を追いきれないと思いますので、勿論、もっちろん!キャラクターノートを投稿していきますので、そちらを投稿後改めて読んでいただけるとさらに楽しんでいただけると思います。ので現在そちらも急ぎ書いていますのでもうしばらくお待ちください!!
また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。
次回は8/9にEpisode4の中編を投稿しようと考えていますので、もし少しでも面白かった、続きが待ち遠しいと思えたら嬉しいです。次回もよろしくお願いします。




