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Episode2Ex  やがて大きな衝撃へと変わる小さな波紋——— 番外編

 騎士団…この世界にある聖ルーマルコーランド帝国に限っていう話だが、騎士団とは帝国における帝国軍に認可された義勇兵爵達による組織的小規模部隊の総省の事である。帝国軍が認可するために決めている基本的な条件として、明確な住所番地を持つ騎士団拠点を所有している、固定団員数が16人以上の集まりであることだ。

 現在数百にも及ぶ様々な騎士団が存在しており、全員が高い戦闘能力を有し最強の騎士団を目指して他の騎士団と切磋琢磨している一方で、全員が一切戦いをせず目的の一致する趣味や仕事をやる騎士団も存在する。バイク愛好騎士団、カフェ経営する騎士団、雑誌出版する騎士団、特定の武器だけで戦う騎士団、変身ヒーロー騎士団、魔法少女騎士団、いろんなグッズを作ったりヒーローのやられ役をするオタク騎士団…様々な騎士団が自分たちのしたいことの為に集まっている。

 そしてまた…ここでも騎士団のことを考え義勇兵爵になろうとする若者たちの姿があった。




「そういえばミナヅキ君、兵爵叙爵後は何かしたいことあるかい?」


「うーん…まだ考えてないですけど、とりあえず第一志望はスポーツ騎士団に入団することですかね、ただまだ絶対そうしたいってわけじゃないですけど」


「んだよ、まだ決めあぐねているのかよ」


「んなこと言ったってよ、そもそも他の騎士団をしっかりと見てないからどんなのがあるか分かんねぇだろ」


「まー確かにな…ミナヅキが買ったスポーツ雑誌に、トレイスが持ってたのがお堅い生物研究をしているフィールドワーク騎士団の二つしかわかんねーもんな」


「おいウルヴァ」


「はっはっは、申し訳ないな。トレイスには私の仕事に少々付き合わせすぎてしまってな」


「あ、いえ…すんません…」


 四人の男を乗せた車が田舎道のような土をしっかり踏み固めたような舗装道を走り帝国の首都《聖ルーマルコーランド帝都》…に向かうための間の街まで走っていた、トレイスの父トーマス先生の運転で走るこの車は50㎞/h程度程の速さで周りは本当になぁーんにもないただの原っぱのような場所が広がっている。こんなにも何もないならもっとスピード出せばいいとか思うが多分あんまり速度は出ないんだと思う。この世界の車の限界的なものなのかそれとも道が土だからなのだろうか…。

 朝から走り出したこの車は談笑しながらかれこれ1時間半は走ろうとしていた。するとようやく早朝に話をしていた小さな町の外壁が見え始めた。そう俺達は帝国に行くために車から近くの町で帝国軍の人達に送ってもらうようにお願いするのだ。なにせ俺は今非常に危ない状態かもしれないため一刻も早く帝国軍に任せないといけないのだ…。


「ん…?なんだ?なにかあったのか?」


「どうしたんですか?」


 運転しているトーマス先生が訝しそうにフロントガラスに顔を近づける。そんな様子にトレイスが窓を開け顔を少し出して、車に乗せてある双眼鏡を使い前を見る。


「…国衛兵爵の人達だ。なんか慌ただしい感じだな」


「なんだよ、また魔人種の集団がこの辺りうろついているってのか?」


 国衛兵爵、いわば帝国軍の兵隊さん達だ。まぁ兵隊って言い方を撤廃するための代用語らしいが、ともかくそんな国衛兵爵が町の外で慌ただしくしているってことは…もうすでに俺の情報が軍の方に入ってきているからだろうか…?


「いや、そうじゃないな…トレイス、周りを見回してくれ。何かいないか?空だ、空の方を重点的に」


 そう言うとトレイスはさらに顔を車の外に出しながら双眼鏡で空を眺める。トレイスも俺も車の窓を開けて周りを見回す。トレイスとウルヴァが車の右側、俺が車の左側を見回している。すると空に何かが見えたような気がした…


「トーマス先生、左側の雲の隙間から何か飛んでいるような…」


 すると車がゆっくりと止まり、運転席からトーマス先生も窓を開けて双眼鏡で空を見た。


「…ほぉ…なるほど、レッドゴラドンだな。この距離からじゃ分からんが、確かに町に被害が出るには十分なサイズだろうな」


「レッドゴラドン!?ちょ、ミナヅキそこ変われ!俺も見たい!」


 トレイスが靴を脱いで助手席から後部席に移動してくるわ、ウルヴァもこっち来るわで車の窓に三人の男がぎちぎちに押し寄せる。


「おいっ、バカせめぇよ…」


「何処だミナヅキ!トレイスそれ貸してくれ!!」


「おぉーすげぇ、俺も生のレッドゴラドンを見るのは初めてだな…出来ればもっと近くで見たいんだけど、町まで行けば近くで見れるかな」


「トレイス、車動かすから戻りなさい」


 全員が席に戻るとトーマス先生は再度車を発進させた。その際トレイスから双眼鏡を手渡された。


「ミナヅキ、レッドゴラドンの動向見ていてくれ。こっちに近づいてきたりするようならすぐ言ってくれ」


 俺は顔を出さず窓を開けたままで双眼鏡でさっきの影を探した。双眼鏡では視野が狭まるためどこにいるのか見当たらなかったがしばらく探していると、視界にまさにドラゴンとも言うべきだろう、大きな体に翼、トカゲのような尖った顔に全身が碧とも葵とも思えるような色鮮やかなアクアマリンの鱗で覆われた綺麗なゴラドンだった。


「…全然赤くないけど、あれがレッドゴラドン?」


「あぁ、レッドゴラドンは生きている状態ではああやって鮮やかな青緑色の身体をして空や緑に溶け込む性質を持っているのだが、その鱗の中の成分が死後変色によって今度は立派な赤色に変色するんだ。そのため暫くこのゴラドンは死後変色時と生きている状態とでは別の生き物と考えられていたが、今では統合され馴染みあったレットゴラドンという呼ばれ方で定着したのだ」


「へぇ…死んでから赤くなるからレッドゴラドンかぁ…」


「あれだ、エビをボイルすると赤くなるのと同じようなもんだ」


「いや、それとは違うが…まぁ、そんな風に覚えておけばいいか…?」


 なんて会話しながら俺はぼーっとレッドゴラドンを眺める。優雅に空を飛んでいる姿はどこか神々しいというか神秘的と言うか…それと確かに一瞬目を離すとまた見つけ直すのが大変なくらい迷彩効果がある辺り合理的な色をしているのだろうとも思った。そんな風に見ていられるのもレッドゴラドンはこちらに気付いていないのか全く気にすることなく真っすぐ真っすぐ…町の方に飛んで行っているのだ。


「なぁ…レッドゴラドンが町を襲ったりするのって日常的にあったりするのか?」


「いや、そんなことはねぇぜ…普通の野生のゴラドンなら人を見れば怯えて逃げるし」


「だが、縄張り争いに負けた、十分な餌を他で確保できなかった、そのほか様々な要因でゴラドンが人の開拓した地域にまで出て行かないといけないことはいつでも起こり得てしまう話だ。だからこそこう言う事の為にも義勇兵爵、そして騎士団というものがあるのだよ」


 すると町の方から一つの船の様なものが飛び上がった。船はまるで気球のようにゆっくりゆっくりとまるで気球のように浮かび上がっていっているが、気がつくといつの間にか空に上がっていったのが見えた。


「あれは先日私達の村でも大変世話になった…えっと、トレイス、なんだったかな…?ほら、グローブボックスに名刺入ってるだろ」


「…酒場兼遊撃騎士団『不思議な苗木亭』、団長ハーレー・テイル…だってさ」




 …———………


「ダンチョーっ!このまま真っすぐゴラドンのとこまで飛んでくよ~」


 女性の甲高い声が船の中に響き渡る。それは先ほど街の外の車からもはっきりと見えた帝国の空を飛ぶ船『帆浮船』の中、そこでは団員と思わしき男女合わせて16名程が慌ただしく船の操縦や戦闘準備で右往左往している。16人と言ったがその殆どが女性ばかりで、しかも大半が豊満なものをお持ちな上に布面積より肌面積の方が多いんじゃないかと思うほどに際どい恰好ばかりしている。そんな中で慌てる様子もなくただひたすら船の甲板の前部分に立つ、団長と呼ばれた青く長いポニーテールが特徴の、大きな星模様が目立つ赤いラインが入ったライダースーツに身に纏った女性…いや顔立ちが非常に中性的な祖人種の少年が一息ついて


「今回の依頼は町に接近するレッドゴラドンの討伐だ、あの個体は数日前から何度もこの町に接近しようとしている、放っておけば町が大変なことになるかもしれない…みんな、今日もいつも通りやればきっと大丈夫さ。一緒に頑張ろう!」


 少年の一声に全員の手がピタッと止まるが、すぐにみんながニッと笑い


「勿論だよダンチョー」「任せて、ハーレー」「ハーレー君も気張り過ぎんとね」


 女の子たちの黄色い返事が返ってくる。そしてまた着々と船の準備を進める。ゆっくりと浮上する船は隠れるのが難しく、まっすぐゴラドンに向かって浮かび上がるため当然ゴラドンからも目を付けられる。ゴラドンは急に大きく旋回を始めた。明らかな警戒行動なのは目に見えた。


「ハーレー!ゴラドンが動き出した!」


「まだ刺激させちゃダメだ!町の上空からなんとか遠ざけるんだ…えっと、テューリ何とかできないかな?」


「なんとかって言っても…とにかくこのまま直進してても仕方ないし、こっちもゴラドンに合わせて旋回運動しないと、リサ!」


「オッケー!!」


 テューリと呼ばれた背の低さに釣り合わない銀髪ロングで豊満なものを持っている大人びた精人種の少女は、リサと呼んだ赤く長い三つ編みポニテの豊満なものが殆ど露わになったようなビキニアーマーを着た祖人種の少女に指示を出すと、リサは目一杯に帆を回し風を受ける向きを変えると浮かび続ける船はゆっくりとその方向を変えゴラドンから逸れるように進みだした。

 ゴラドンと船はゆっくりとお互い距離を取ったまままるでメリーゴーランドのように周り始め、しばらく回ってると船は突然旋回を止めまるでゴラドンから逃げるように進みだした。それを見たゴラドンはすかさず船の後を追うように飛び鋭い蹴爪で船に襲い掛かった。だがそんなゴラドンの一撃は金髪で豊満な持ち主のエルフ系と思われる精人種の女性の華奢な身体からは考えられない大型のハルバードの一撃によって弾かれることになった。


「うわぁ、あ、ありがとうミーシャ!」


「…お礼言うよりも、早く次の指示を」


「ご、ごめん…、船は引き続きこのまま町の外まで移動、テューリとアルラウスとバーティアはいつも通りの展開をしてほしい」


「うっしゃあぁぁ!ようやく私の出番だぜ!いっくぜぇ!!」


 そう言うと真っ先にぼさぼさの銀髪に袖も丈も殆どないような赤いライダージャケットにアーマーブラ、デニムのショートパンツに胸…よりも真っ先に目に行くバッキバキに割れた腹筋にまるで怪獣のような鱗でびっしりの足、そして背中に生えた翼竜のような翼膜のある龍人種の女性がその翼膜を大きく広げそのまま空へ飛び出していった。


「全く…バーティアってば」


「まぁまぁ、私達も後を追うわよ」


 続いてテューリが背中に魔法のような、透き通る妖精のような羽を開き、その隣でおそらくアルラウスであろう翼人種の女性が、まるで黒いベビードールのような薄くひらひらが多くついた際どい衣装に相変わらずの豊満なもの、そしてセキセイインコのような美しい黄色と緑のグラデーションの翼を大きく広げ首に巻いている紫のマフラーをなびかせながら、テュールとアルラウスの二人も船を降り空へと飛び立ち、先に飛び出したバーティアと合わせ三人、船の近くで編隊飛行を開始した。

 ゴラドンは先ほどの斧との衝突で興奮状態に陥ったのかけたたましく咆哮をあげながら船の周りで飛び始めた三人に向かって無作為に襲い掛かり始めた。テューリとアルラウスはゴラドンの攻撃をひらりひらりと躱しながら魔法や短刀でゴラドンの鱗に傷をつけようと奮闘し、バーティアは踏ん張る足場が無いのにもかかわらず盾でゴラドンの攻撃を防ぎながらそのまま盾で殴り返した。するとゴラドンは船や回避に専念する二人を差し置いてバーティアを集中的に攻撃を開始した。


「まずいっ…タゲ取り過ぎた…」


 ゴラドンの蹴爪や牙による猛攻を防いでいると、突如どぉんっっ、と爆発音とともにゴラドンの背中側で小さな爆発が発生し大きくふらつくようにバーティアから離れるように飛んで行った。バーティアが船を見るとその船からまるで大砲のような経口を持つマスケット銃のようなものから煙を出して構える女性陣とは対称に分厚い上着に身を包んだ黒い毛の髪に猫耳と尻尾のついた獣人種の男がそこにいた。


「…俺の女だ、勝手に触ってんじゃねぇ」


「リゼラ!助かったぜ」


 そんなバーティアとリゼラのやり取りしており傍ら、今度はゴラドンが船の右舷船縁に蹴爪を喰い込ませ掴んできた


「きゃああぁぁぁっ!!」


「みんなっ、身体に巻いたロープが外れないように!しっかりと船にしがみついてっ」


 船に残っていたメンバー達は大きく横揺れする船から投げ出されないようにしがみつく、しかし一人の水色ショート髪にカッターシャツとミニスカートというまるで学生服のような恰好の祖人種の少女が悲鳴と共に船から投げ出され、ロープでぶら下がっている…いや船に繋がれ振り回されている状態になってしまった。


「っ、みんな船からゴラドンを追い払って!…僕がリルルを助けに行く!!」


 そう言い残し団長であるハーレーは自分に縛っていたロープを外し、激しく揺れる船の上をものともせず走りゴラドンとは反対の船縁にある小さな救命ボートのようなものを外して乗り込んで、落っこちた少女…リルルの真下に滑り込むように落っこちてから再浮上しリルルを抱きとめるようにして救出した。


「大丈夫かいリルル」


「ご、ごめんなさいハーレー団長…」


「気にしないで、それよりリルルはこのまま船から援護射撃を頼む」


 そういうとハーレーはリルルに巻かれていたロープを外すとそのまま救命ボートから降り暴れるロープを手繰りながら船まで戻っていった。


「こんっの…いい加減揺らすの、止めろっ!!」


「…ハーレー、いない時に揺れたって…仕方ない…」


 ハーレーが甲板に戻ると丁度そのタイミングでリサが大振りなハンマーを、ミーシャが斧を振りかぶってゴラドンに強力な一撃ずつを与えた。ゴラドンは耐えられず船から足を離すとフラフラと体勢を立て直す。


「今だよ。ゼシカ、カエデさん、アンカーを」


 揺れが収まった甲板に立ち弓に番える二人、一人は黒髪ポニーテールで着物姿に胸当てをした和弓を持つ鬼人種の大人びた女性、そしてもう一人が髪が地面についてしまうくらい背丈が低く髪の長い穴あきのアオザイに身を包んだ短弓を折れるくらい目一杯引き絞るハーフリング系の精人種の女の子。二人から放たれた数発の矢には船に繋がれた銀の糸と一体となっており、その矢がゴラドンに突き刺さると数本の糸で船と繋がれるような形となった。


「さぁ、今度はこっちの番だよ、みんな一斉攻撃開始!リサ、いつもので」


「まっかせてダンチョー、いっくよーっ!」


 ハーレーの合図でゼシカ、カエデ、リゼラが船の上からの一斉射撃。そしてテューリ、アルラウス、バーティアによる飛行メンバーからの遊撃、小舟からもリルルによる狙撃でゴラドンはハチの巣状態に、そして甲板ではリサの構えるハンマーの上にはハーレーが


「いっっっ………っけえええぇぇぇ!!!」


 リサが思いっきりハンマーを振りぬくとハーレーが上空に放り出される。そしてその勢いのままにハーレーのグローブがゴラドンの身体に直撃した。ゴラドンの悲痛な叫びを間近で聞きながらそのままゴラドンの身体を足場に大きくジャンプすると、そのまま何もない上空をゆっくりと降下していく。だがすぐにハーレーの伸ばしていた腕をアルラウスがキャッチする。


「あ、胸で受け止めてあげればよかった?」


「え、えと…それだと追撃が出来なくなっちゃうから…」


「はいはい、団長ってば真面目なんだか…っら!」


 そのままアルラウスに投げられ再度ハーレーがゴラドン目掛け強烈なパンチをお見舞いする。そして今度はリルルのいる小舟に移っては再度跳躍しゴラドンに攻撃、その次はテューリと…翼も道具も何もないただの祖人種である団長ハーレーが宙を舞い今誰よりも空を制しているのだ。そしてバーティアがハーレー目掛けて両足を構える。


「団長!そろそろ地上に落としてやろうぜ!!」


 バーティアの足にハーレーの足を合わせ、そのまま強力な蹴りでハーレーを射出、その勢いのままの強力な一撃がゴラドンの顔面に直撃した。


「星拳、ビクトリーシード!!」


 その一撃のままにゴラドンはついに飛行が困難となりゆっくりと降下を始めた。それと同時に船も同様に降下しつつ銀の糸で引っ張り街から遠ざかるように落下位置を調節、町の離れの何もない荒れ地に船もゴラドンも着陸した。上空を飛んでいるメンバー達も次々と地上に降りてきた。

 だが飛ぶことが困難になって地上に降りたとはいえ未だゴラドンはごああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ、と轟音のような雄たけびを上げ暴れるだけの力と体力は残っていた。『不思議な苗木亭』のメンバー達は船から降りゴラドンと対峙した。盾を構えて騎士団全員を守ろうとするかのようなバーティアを筆頭に数名の前衛職が前に並び、射撃していたメンバーや魔法職が後衛に並ぶ。そして機動力を生かした遊撃メンバー数名が左右に展開した。ゴラドンはまるで我を忘れたかのような怒りを露わにしながら、口には真っ赤に燃える火球が生成されるのが見えた。


「ケリー!フォローお願い!」


「まっかせて、『我らを守れ、聖域となりて、光の壁よ』」


 ハーリーの指示に応えるように、胸元や太腿の開いたような白い騎士衣装に身を包んだ祖人種の女性が詠唱すると、バーティア他前衛達が光の柱に包まれる。間髪入れずにゴラドンが火球を飛ばすのをバーティアが光りの柱越しに盾を構える。着弾と同時に爆風に包まれる…、爆風が晴れるとほとんど無傷なバーティアたちが軽く盾で払いながら立っていた。


「さぁ今度はこっちの番だよ。リィーシャは右!マリエットは左から!!」


「了解しました」


「にゃー!!」


 そう言うと地上を猛ダッシュで駆け抜けゴラドンが対応するよりも早く回り込んだ二人、片方は布面積が殆どなく極限まで身軽にした…強いて重たいものをあげるならその豊満なものくらいな祖人種の女性が右側から、もう片方はこっちはちゃんと上着をしっかり着て橙のショートボブから猫耳が見えている猫系獣人種の少女が左側から。同時に駆け抜け短剣と手甲鉤で立つための足の腱を素早く的確に切り裂く。完全な断絶とまではいかずともゴラドンが立っていることが出来なくなるほどには十分効果的な攻撃だった。


「今だよみんな、一気に仕掛けよう!!」


 明らかに自由が利かなくなりボロボロになったゴラドンに十数人がかりで一斉に攻撃を仕掛ける。ゴラドンも最後の抵抗とばかりに暴れ狂うのを躱しては追撃を加え、後衛部隊からの一斉掃射を一身に喰らい続ける。流石のゴラドンもこの猛攻には耐えられずついに力尽きたのかゆっくりと力なくその場に伏せってしまい、わずかだった呼吸音も完全に聞こえなくなってしまった。それを確認した騎士団の全員は警戒しながらも攻撃の手を止め、ハーレーの指示で数人で頭を完全に取り押さえ、ミーシャの斧でゴラドンの首が斬り落とされた。


「…ごめんね、君は悪くないんだよね。どうしても人のいるところに行かなくっちゃいけなくなっただけだもんね…、僕もみんなを、町を守らなくちゃいけないんだ、だから…ゆっくり休んでね」


 ハーレーが切り落とされたゴラドンの頭をそっと撫でる。その様子を見ていたメンバー達も静かに手を合わせたり十字を切ったりと討伐したゴラドンの鎮魂を祈った。そんな様子に応えるかのようにゴラドンの全身はゆっくりと紅く紅く色鮮やかな赤色に染まっていった。

 その後騎士団のメンバー達はゴラドンの身体に繋がれた銀の糸を回収しつつ不時着した船の調整を行い、討伐を確認した軍の人達が持ってきたトラックにゴラドンが載せられるのを眺めていた。


「ハーレー、私疲れた~。おんぶして~」


「ダンチョー、私も~」


「…肩もみとオイルと、それと仕事終わりのバニラアイスも」


「ちゅ、ちょっとみんなっ!」


 眺めている間にハーレーの周りには女性達が群がり、たわわな部分をわざとらしく押し付けながらからかっている。そんな様子にハーレーはあたふたしながらみんなを制止しようと試みるがされるがままだ。


「あらあら、先越されちゃった」


「…ハーレー団長…」


 そんな様子を遠目から楽しそうに眺めているカエデと、赤面しながら頬をめいっぱいにまで膨らませハーレーを睨みつけるリルル。


「ん、俺も疲れだぞバーティア」


「だーっ、からってみんなの前で抱き付くなっていつも言ってるだろリゼラ!」


「俺は気にしん、近くのあの車にも見せつけるぞ」


「やめろってバカぁ!!」


 ハーレーたちのやり取りの傍らでバーティアに背中側から抱き付くリゼラと、口ではそう言いながらもされるがままのバーティア。みんながそれぞれに思い思い楽しみながら無事に依頼達成の余韻に浸っていた。




 …———………


「…んー…、多分レッドゴラドン討伐完了、したのかな?地上にいるとよく見えないな」


「なぁ親父、俺もあの騎士団のとこ行きてぇんだけど。まだ変色前のゴラドンまじかで見ておきたい」


「今はミナヅキ君のことが最優先だし、そもそもおそらく今から言っても遅いだろう。生きたままの捕獲でもない限りな」


 俺はゴラドンと騎士団の戦いの一部始終を見ながら注意しつつ車を走らせていた。そしてゴラドンが町の外に落ちたのを見ておそらくもう大丈夫だろうとさらに車の速度を速めた。


「それにしても…上空で戦う騎士団、なんかすごかったな」


「そうだな、スポーツ騎士団もいいがああいうのにも憧れるな」


「おっ、なんだなんだこの期に及んでまださらに悩むのか?」


「そりゃ…まぁ、そう思うだろ」「まーな」「確かに」


 俺は異世界にもスポーツがあるから自然とそっちに引かれたが…、ここは俺がいた世界とは根本から全く違う世界だ。あっちの世界で出来なかったことがこの世界では出来る…俺がもしかしたらスポーツ以上に求めていたものがあるのかもしれない…。

 そんな風に考えているとトーマス先生がブレーキを踏んだのか車が少しずつゆっくりとした速度になった。窓の外を軽く見回すと外はいつの間にか国衛兵爵の人達に囲まれていた。武装している…という感じではなくまるで車両整理のように何人かで指示を出し合って案内棒を振りあっちだこっちだと案内されるがままについて行く。すると町まで行く道から逸れて軍の簡易敷地内へと案内される。


「なぁ、これほんとについて行って大丈夫なのか?」


「もしかして俺ら、誰かと間違われてたりとか…」


 なんて冗談交じりに話するが、トーマス先生は窓を開けると外にいる国衛兵爵に声をかけようとするが、むしろ窓を開けたのを確認すると向こうから近寄ってきて


「お話は届いております。異界人の少年を搬送しにこられた方ですよね」


「あぁ、はい…その通りです」


 どうやら既に俺の話は向こうには伝わっているみたいだった…そして準備も既にしていたみたいだ。俺達の面前には、先ほど空で戦っていた騎士団と似たような、大きな船が停泊している場所に連れてこられたのだ。トーマス先生が駐車し俺達が車から降りると、すぐに国衛兵爵の注目が俺達に集まった。


「あ、あの…すみません、俺です。俺がその例の異界人です」


「変な奴ですけど、こいつ悪い奴じゃないんで!俺が保証するんで」


「一言余計だウルヴァ」

 

 国衛兵爵の注目は一気に俺に集まったが別に武器を構えたりとか拘束されたりとかはしていない。するとリーダーと思わしきまぁ人相のよさそうな中年の男がこちらに近づいて、俺達…というかトーマス先生に語り掛けてきた。


「大丈夫ですよ。我々は安全にご友人方も含め帝都までお送りいたしますので。車での移動お疲れ様でした。このまま車で帝国まで向かうのは大変だと思いますが、運転されていましたお父さんはお車をこちらでお預かりしてご同行されますか?」


「いや、私は子供達だけ置いて帰ろうと思うよ」


「畏まりました。よろしければこちらで燃料を補給してからお帰りになられますか?」


「あぁ、そうさせてもらうよ。…ミナヅキ君」


「っは、はい」


「私は一足先に村に帰るとするよ。ヴィレインさんにも無事に軍に預けてきたことを報告しないといけないしな。色々大変だったと思うが、くじけず頑張りなさい。何かあったら私も、息子だって力を貸すだろう」


「ありがとうございます」


「トレイス、私の事は気にせずお前のやりたいことをやってきなさい。それと身体には気を付けるのだぞ。ミナヅキ君やウルヴァ君の事も気にかけてやるんだぞ」


「わーってるって、親父も気を付けて帰れよ」


「お前達を見送ったらな。それじゃあお願いしますね」


 その言葉を聞いた国衛兵爵達はトーマス先生に敬礼後、一斉に慌ただしく出発の準備を進め、中年のリーダーらしき人は俺達を船の方へと案内する。俺達は帆浮船で帝都に向かうようだ。乗り込む直前に再度振り返り、トーマス先生に…いや村の方角に向けて俺達は改めて挨拶をした。


   「「「 行ってきます 」」」


本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。


今回はミナヅキの物語になってからあまりがっつりとした戦闘をしなかったなぁ~と思ったので、がっつり戦闘を書いてみようと思い、こういう形で仕上げてみました。勿論彼らは今後ミナヅキ君達とはまぁどういう形でかはまだ未定ですが絡ませるつもりなので、彼らの活躍がもっと見たいという方々はもう少しお待ちいただけると嬉しいです。


また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。


次回は8/2にEpisode4の前編を投稿しようと考えていますので、もし少しでも面白かった、続きが待ち遠しいと思えたら嬉しいです。次回もよろしくお願いします。

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