Episode3 帝都と異界人と出会いと別れと——— 中編
「うるさいでやんす!」
「…ま、まぁ…とにかく見知った仲で良かったよ。じゃあ後はよろしく頼むねヨーダ君」
「仕方ないでやんすねぇ~まぁここでの生活はおいらが先輩なのには変わりないでやんすし、しばらくはおいらが面倒見てやるでやんす。あ、そうだせっかくだし祝賀会するでやんす!水無月君購買でポテチとコーラ買ってきてくれでやんす。二人分でやんすよ、ポテチは勿論バニラ味でやんす~」
俺もモリシマも呆れながら、俺は荷物を下ろすために一度中へ、荷物を下ろしてからモリシマの案内で購買まで行き、モリシマは他の業務があるとそこで解散する流れとなった。
「「かんぱーい」でやんすーっ」
荷物も片づけ終わりシェアハウスの中央に小さな机を出してそこに買ってきたポテチを広げコーラで乾杯をする。俺はクザスの村の話を、依田君からは帝都内でこの世界に来てすぐに異界人として逮捕されこの施設に入り、最低限まとも程度な生活を送らされた話を延々と聞かされた。その割にはこの部屋に飾ってある彼のコレクションの数々とか、荷物を片付けている間に見つけた彼の成績表の様なものに『金遣いに難あり、出所までの期間に影響の可能性』と書かれていたけど…それでも元の世界の顔が見れ、しかもこうして悩みを共有できるのは嬉しい限りだ。今は元の世界の今期アニメとか特撮とか半分見てしまったから続きを見れなくて凄く文句垂れているなぁ
「ところで水無月君、異世界に来たからにはあれをやったでやんすか?」
「…あれ?」
「あれでやんすよ。ステータス確認!ステータスオープンするでやんす!!」
「…す、すてーたすおーぷん…?」
俺がそうボソッと復唱すると突如ブオンッと電子音のような音が響き俺の目の前に半透明の薄いウインドウ画面のようなものが浮かび現れた。俺は変な声を出して驚きつつもコーラを溢さないように注意しつつまじまじと画面を眺めた。画面には『ミナヅキ アラタ』俺の名前と共にLv表記や攻撃力や守備力、体力や魔法力など様々な項目と共に数字が書かれていた。
「…へぇ~、よく分からねぇけど…なんか便利そうだな。これって依田君からも見えるの?」
「おいらからは水無月君のは見えないでやんす。ちなみにおいらも今ステータス画面開いているでやんす」
確かに俺から見て依田君のは見えていない。つまり本人にだけしか見えていない画面ってわけだ。それなら確かに…クザスの村にいたときに誰のも見たことないし誰からも見るのを勧められたりしなかったのもまぁ…確かに納得はする。だけど、でもこんな便利で損のしようがないものがあるならみんながみんな勧めてもいいと思うけど…
「でもこんな便利なものがあるならもっと早く使えばよかったなぁ…このステータス画面からは他にどんなことが出来るんだ?」
「もっと早く使えなくても問題なかったでやんすよ。なにせ…何の役にも立たない画面でやんすから…」
「…、…は???役に立たない?」
「水無月君、君が見てる画面とおいらが見てる画面が一緒だとしたら、そこに書かれているのってなんでやんすか?」
「え、えっと…体力とかレベルとか、攻撃力とか防御力、魔法の攻撃と防御とあと…」
「ちなみにその数値は内部的な変動値が変動しない限りは不変の数値でやんす」
「どういうこと?」
不思議に思ってると依田君は徐に立ち上がり、机をどかすと突然俺に向かってパンチをしてきた。驚きつつも咄嗟に俺がガードし思いっきり突き飛ばすと依田君は背後にあった自分のベッドの上に倒れた
「な、なにするんだよ依田君!いきなり」
「…懐かしいでやんすね。部活中にイライラしてお互いに衝突し合ったりして、こうして突き飛ばされたりもしたでやんすね~。それで、今のって調子のいい状態で全力での攻撃ってことでいいでやんすか?」
「んっ…?…え、…いや、もしかして…」
「そうでやんす…このステータス画面、ある意味でゲーム的な処理のみで書かれていて、種族や戦い方そして所謂成長ビルドを内部的に算出しただけのものであって、その個人の特徴や調子とかコンディションとか…そういうのは一切考慮してくれないでやんす…と言うかそもそも戦い以外で全く役に立たないでやんす!!ちなみにスキルもボタン一つでーとか、頭の中で考えるだけでとかそんな風に使えたりもしなかったでやんす…そのせいでおいら大恥かいたでやんす…」
やたらと早口であれこれ言う依田君の内容をかいつまむと、このステータス画面ってのはあくまでこの世界の能力をゲーム的に数字で表現しているだけであり実際の個人の状態とかは考慮されてないってわけだ…。なんでこんなものが存在するのかは分からないものの、言われて分かった。こりゃ確かにわざわざ教わる必要がないな…そしてもう一つ解った…あの時の彼女の言葉の意味が
『他の異界人はやれスキルだとかステータスだとか、そういった『飾り』ばっかり気にして、本質の伴わない実力者ばっかりなの』
『この世界では当たり前でありきたりな経験と努力で培った個の能力こそがね…この世界の戦いの全てなの』
俺の元の世界の一体何人が異世界というものの理解がある人間が多いのか分からないが、少なくともこの世界にも同様の飾りが存在した。だけどその飾りではなく本質部分こそがこの世界で戦うために必要なんだ。そして…
…———そう、君にはその本質部分に光り輝くものがあるの———…
…俺は、多分少なくとも異界人の中ではこの世界で真の意味で、戦士として強くなれる素質がある。のかもしれない。
なんてそんな風に考えていると急に扉がどんどんどんと激しく叩かれる。俺は驚いて飛び上がった依田君と見合い、恐る恐る扉の戸を開けた。そこには明らかに機嫌の悪そうな一部が青い肌…というか鱗のついた俺よりも背の高い龍人種の大男が首の後ろを掻きながら突っ立っていた。
「あ、えっと…何か御用でしょうか…」
恐る恐る声を絞り出すがその男の眼光はさらに鋭いものになった。すると後ろからひょこっと細身で顔立ちの綺麗な、目の細いイケメンの男が笑顔で顔を出した。
「ごめんね~、僕らとなり部屋のものなんだけど…龍ちゃん昨日からずっとオールして今眠たいの。だから少しだけ静かにしてくれると嬉しいかな」
「あ、そうでしたか…ホントにごめんなさい。気をつけます」
「あはは、大丈夫だよ~、ってか君見ない顔だけど、もしかして君が噂の新入り君?てかてか歓迎会の邪魔をしたのはこっちだったりする?ごめんね~」
「い、いえ…全然大丈夫です…」
なんだか飄々としてて逆に距離感が怖いなこの人…。龍ちゃんなんて呼ばれた人の事もあるし、俺は依田君に小さな声で
「なぁ…自分たちの部屋以外で食べれる場所ないの?」
「食堂ならあるでやんすよ」
「おっけ、…すみません。なら俺らすぐに食堂に移動しますんで、ゆっくりしてください」
そういうと龍人種の男は細身の色男と共に隣の部屋に戻っていった。俺達はすぐにお菓子などを子袋に詰めて持って依田君について食堂へと向かった。階段を降り一階の購買の近くにあるとある一室に飛び込むと、そこには元の世界でもよく見たような飲食コーナーのような雰囲気の場所で二百人くらいは座れるであろうテーブル席がずらっと並んでいた。俺達は入り口近くの席に座る。
「迷惑かけちゃったな…依田君さっきのあの二人って知ってる?」
「うーん、よくは知らないでやんす…おいらがここに来る前からあの二人は隣の部屋だったでやんすし、怖くてあんまりしゃべったことないでやんす。あといつもお酒とか香水の匂いとかして苦手でやんすし…あ、でも天野川さんは優しいしお菓子もたまにくれるしいい人でやんすよ、あーゆータイプは苦手でやんすけど」
「天野川さんって…後ろにいて話してくれた人?」
「そーそー、天野川 巧。よろしくね新人君♪」
俺の肩にぽんっと手を置かれると俺達二人で驚き慌て、そんな様子を見ていた天野川と名乗った男はけらけらと笑っていた。しかも彼の後ろには3人の女子もいた。天野川さんは数名の女子と一緒に俺達と一緒の席に着いた。
「驚かせちゃってごめんね、それとせっかくの歓迎会パーティーを男二人でやっても花がないでしょ?だからお友達連れてきちゃった♪」
「は…はぁ」
「うおおおお!ありがとうございますでやんす天野川さん!!いや、天野川先輩!兄貴!!おいら一生ついて行くでやんす!いやー天野川の兄貴は一目見たときから頼れる素晴らしい御方なのは気付いてはいたでやんすが、こういう時でさえ気を利かせちゃうなんて流石兄貴、出来る男は違うでやんすねぇ~」
「うん、依田君はちょっと黙ろうか。つかさっき自分でなんて言ってたか覚えてる?」
「いやいや何を言ってるでやんすか水無月君!天野川先輩は優しくてイケメンで気を利かせれるしいい匂いもするパーフェクトなおいらの兄貴でやんす!水無月君も兄貴を見習った方がいいってさっきそう言ったでやんす」
「面白いコンビやなぁ~、それじゃあ気を利かせられるワンポイントとして、女の子たちのおやつ何か買ってきてくれないかな?きっと喜ぶよ」
「任せてくださいでやんす兄貴!!というわけで水無月君おやつ買ってくるからお金貸してくれでやんす」
「なんでだよ」
渋々俺は財布からお金を依田君に手渡すと受け取りすぐに猛ダッシュで購買へと向かっていった。そんな俺と依田君のやりとりをみんなはくすくすと笑っていた。
「ごめんなさい騒がしくして。異界に来たのにまさか同じ高校の同年代の部活仲間に会うなんて思ってなくて…」
「なるほどね~、それでここにくるの初めてだったのにあんな仲良かったんだね。んじゃ改めて…俺は天野川 巧、勿論成人済みで元々の世界ではいくつかのクラブやバーのバーテンやホストをやってたの。んでこっちの世界でも最近ようやく夜の仕事をやってもいいよって許可が下りたの。龍ちゃんとはこっちの世界で知り合ってボーイ仕事を手伝ってもらってるの。あ、龍ちゃんの紹介をしておくと黒城 龍之介って名前で、今は龍人種っていう種類の見た目になっちゃったけど元々は普通の人間だったんだって」
「っえ!てことはこっちの世界に来たから龍人種になったってことですか!?」
「龍ちゃん曰くそうみたいだね。それともう一つ、龍ちゃんの世界の東京は普通の人間しかいない世界だったんだけど、俺の元居た東京には化物のいる世界だったんだ~」
「えぇ!?東京に化物!!」
「そーそー、同じ現代の日本でも異なる世界から来たってわーけ。…ま、俺の話はこれくらいで、次はココアちゃんいってみる?」
そう言うと隣に座っている…座っているのか?机からは辛うじて頭と手だけが出ているくらいの背丈、というか座高しかない眼鏡をかけた耳長の女の子が指名された。
「あ、あの、あの…私は、無月 心愛といいます…あの、私……よ、よろしくおねがいします…」
話すにも恥ずかしそうにぎくしゃくと名前だけ名乗って机の下に顔を隠してしまった。巧さんはニコニコしながら小さく拍手すると続けて残る2人も拍手した。
「ココアちゃんはね、元の世界にも様々な種族のいる世界からやってきたんだけど、彼女はハーフリングって言う種族なんだけど元の世界じゃ卑しい種族って扱われてたんだ、こんなにも可愛いのにね」
「確かに、小柄で恥ずかしがり屋タイプはやっぱり王道な可愛さがあるでやんすね。個人的にはツインテール一択でやんす」
「うわ、いつの間に戻ってきたんだ」
依田君がお菓子を机一杯に並べ始め、ジュースも配り始めた。お菓子の匂いにつられてか心愛ちゃんもゆっくり顔を机の下から出す。
「だけどそんな彼女もこの世界じゃ軽蔑されることはおそらく滅多にないよ♪」
「ないもんなんですか?」
「それもこれも全て戦争をしているからね…敵を国外に作ってるから、この世界の今のヘイトが人種じゃなくて国籍に向いてるうちはね」
なるほどなと思いつつ、隣の女の子がコホンと咳払いをする。彼女はどことなく日本人っぽさが感じられない…なんとなくこの世界の雰囲気のある人に感じた。まぁ服装も洋装っぽいドレスのようなものを着ているからってのもあるけど
「私はカノン・フィズィーネ。貴爵フィズィーネ家の正統な実娘で将来はフィズィーネ家の正式な家督となる、筈でした…。今は藤峰 奏音花という意識で動いています」
「…?どういうこと?」
「いわゆる転生したら悪徳令嬢だったって奴でやんすよ」
「勝手に人を悪徳令嬢にしないでちょうだい。フィズィーネ家は至極真っ当な紙製造企業のECO家系よ、帝都の紙を隷爵が手頃に買えるようにずっと苦労と努力を続けている善良な貴爵一家なのよ」
「…えぇと、話が見えてこないんだけど…そんな善良な貴爵の御息女様がどうしてこんなところに…?」
「ニューゲームシンドローム」
「にゅー…なに?」
「転生症候群、帝都で精神病の一種として扱われているんだけど、だいたい15歳に満たない未成人、主に女性に多く発生する現象でこれまで生きていたその人の人格がまるで人が代わったかのように入れ替わり、しかもその人が知り得ない知識などを持ち合わせるという現象。言ってしまえば心だけ転生したって感じだね」
「そんなことが起こるのですか!?」
「えぇ、今まさに目の前にいる私こそ…関西国際大学グローバル学科1年生、将来は青年海外協力隊もしくは海外通訳としてグローバルで活躍することを夢見ていた、藤峰 奏音花19歳!…夢半ばで世界どころか異世界に飛び出しちゃったのです!!」
彼女の力強い自己紹介に俺は少し圧倒され、そんな中で巧さんは隣に座っている心愛ちゃんのためにお菓子やジュースを寄せてあげたり、依田君は話を聞いているのか分からないくらいボリボリとお菓子を貪ってる。そして最後の一人は奏音花さん、いやカノンさん?の話に楽しそうに拍手していた。そしてカノンさんは隣で楽しそうに拍手している彼女にバトン渡しのハンドサインを送った。
「んじゃあ私が最後だね!私は桃井 咲良、とは言っても私は他の人と違って特別っぽいことはあんまりないかな~…元の世界も平和そのものの日本だったし…まーしいて言うなら、折角の異世界だし出所後は兵爵の試験合宿に参加しようかなって考えてるよ」
「へぇ…俺も一応兵爵の試験を受けるつもりで考えていました」
「えぇ!?異世界転生でおなじみの自由にできる権限貰いに行っておいらより早くモテモテになる気でやんすか!?抜け駆けでやんすか!!ずるいでやんす!」
「違うよ、俺はただ元の世界で高校バスケやってて、こっちの世界でスポーツでやってくには兵爵にならなきゃならないみたいだから…とりあえず兵爵になっておこうかなって」
「なーんだ、まだバスケやるつもりでやんすか?」
「それはまだわかんない。と言うか依田君も一緒にバスケで全国の舞台にまで行けたんだし、ちょっとは未練みたいなのはないの?」
「無いでやんす。そもそも全国には2年の時で先輩たちがいたから行けたでやんす。それに全国行ったけど結局全然周りからモテなかったでやんす。もうスポーツはこりごりでやんす!!」
俺は依田君の言葉に呆れていると、他のメンバーからは興味津々な眼差しを感じた。
「でも全然、2年だったとしても全国行けるなんてすごいじゃん!!んでそのために兵爵になるのってホント凄いと思うよ!!ねぇ、ホントにこの世界でもバスケって言うかスポーツでやっていくの?」
「い、いや…それが、まだそこまでは決めてないんだ。一ヵ月ちょい前に知り合った領爵の同年代と一緒に兵爵の試験を受けようって決めて帝都まで来てるだけで」
「あら残念、未来のトップアスリートの下積み時代のサイン貰っとこうと思ったのに…。ところで、なんとなくってことは咲良さんと同じ国衛兵爵の試験でなく義勇兵爵の試験合宿に参加するということですの?」
「ふぅ~ん、そっか…なら私もやっぱり義勇兵爵の試験に参加しよっかな」
「おいらもやっぱり兵爵の試験受けるでやんす~」
全く…とまたも呆れる様子をみんなに笑われながら俺達の楽しい歓迎会はまだまだ続き、俺の新しくも短い施設生活が始まったのだ…
施設での生活は以外にも気楽なもので、基本的に起床や就寝は規則などで決まってはおらず、三食の食事時間と入浴時間だけが決まっており、しかも食事も不要の連絡さえすれば食べたり食べなかったり、他で済ませるのも自由だ。やらなければいけない事と言えば、毎日の点呼の参加もしくは外泊許可の提出だけくらいだろう。以外にも施設外への外出は簡単に許可が下り自由に帝都を満喫できる。ただそれもこれも…俺達が異界人クラスⅠという分類だからだ。
クラスは全部で3種類、クラスⅠは点呼の参加義務のみで、基本的に犯罪歴が不法入国以外になく、ルールに積極的に従い帝都に帰順し帝都内権限を取得する意思のある人だ。クラスⅡでは何か別の軽犯罪に接してしまったか、もしくは帝都に帰順する意思を示さない人だ。特に異世界に来たのだから俺は自由にやるぜって言うパターンの異界人は即座にクラスⅡに入れられるとの事だ。このクラスは自由が制限され決められた労働義務が与えられるとの事だ。
そして最後…クラスⅢ、ここは帝国に対し危険思想を抱いていたり…ラプスラストの術中に嵌り彼女の操り人形になった人を強制収容し、最悪の場合ほぼ二度と日の出を拝めない一生を過ごすこととなるクラスだ…俺ももう少しでここにぶち込まれていたことを考えただけでぞっとする…
だがそんな辛いクラスとは無縁になり、巧さんやカノンさん、依田君たちと共にこの施設での生活をしつつ、外出許可を得てウルヴァとトレイスと合流し帝都の街を散策しながら義勇兵爵の試験合宿に向けた準備を進め…三日ほど経った。
今日は帝都に来て頼まれていた大事な用事を済ませるために、俺は数名のメンバーと共に早朝5時半から外出許可を得てとある場所へと向かった。街中には宙に浮く市電の様なものやゴラドンが牽く馬車のようなもの…龍車?もあったが、意外にも車やバスなども多く走っており、所謂テレビとかで見たような近代的ヨーロッパ風というか、昭和の日本というか…なんというか経済成長の真っただ中な時代感を感じた。
しかし早朝という事もあるが街に人の気配はあまり感じられず、人気のない道路があったりするなど大きな街にしてはあまりにも静かだった。俺達はモリシマが運転をする車に揺られ目的地へと向かっていたが、あまりの快適なドライブで運転をしているモリシマと助手席に座っている俺は起きているが、二列目に座っている依田君、巧さん、龍之介さん、さらに三列目に座っているカノンさん、咲良さん、心愛ちゃんの六人はぐっすりだった。俺はそんな六人に気を遣い小声でモリシマに話しかける。
「運転ありがとうございますモリシマさん…でもどうしてこんな早朝に?聞いた話では夜までやってるから別にこんな早い時間じゃなくても…」
「確かに早い時間じゃなくてもいいけど…ま、これも社会勉強って事で」
「はぁ…」
静かにたわいもない会話を続けていると、こんな時間なのにもかかわらず次第に交通量が多くなり、そしてどの車も同じ方向に向かっているのに気付いた。その目的地はまだ遠くだというのにも関わらず俺達がいた施設よりも巨大で壮大な、まるで中にスポーツ複合施設でもあるかのようなとにかくデカい建物が近づいてきた。
建物が見えてからさらに20分ほどかけようやく駐車場らしき場所に停め、みんなを起こし俺達が異界人施設である事を証明する首掛けのネームタグを身に着けて、他のお客さんと思われる人たちと共に建物の中へと足を進める…
「「「…ぅうおおおおおぉぉぉ!!!」」」
そこには時刻が朝6時とは思えない、物凄い多くの人で溢れかえり活気で賑わっていた。さっきまで眠気と戦いながら歩いていた女子陣もこの活気に当てられ目を輝かせて見回していた。
「ようこそ、ここが聖ルーマルコーランド帝都最大にして唯一の隷爵市場…通称《エルフ市》です」
エルフ市…それは帝都で唯一許されている隷爵の売買及びレンタルを行っている市場となっており、この市場の管理は帝都そのものが行っているのだ。そもそも隷爵とは帝都が奴隷狩り問題を解決した際大量に保護をした奴隷、一般市民に紛れ込んだ奴隷や逆に奴隷と間違えられた一般市民がいたりなど様々な問題に対しうち出した策であり、元奴隷及び元一般市民を全て隷爵という身分として扱いその全ての隷爵が帝都…国の奴隷として扱う事にしたのだ。
その後隷爵達は国の管理下の元で貴爵や兵爵への一時的な貸し出しや、売り渡しを行いほぼ全ての隷爵達を安全かつ安心できる環境に仕上げたのだ。それがこのエルフ市…言ってしまえば帝都が管理する巨大ハロワのプラットホームってとこだろう。実際このエルフ市には帝都に住まう6割の隷爵が今日の仕事のためにここに来て、今日や後日雇う隷爵を探すために多くの貴爵達が集まってきているのだ。ちなみにエルフ市と言う名前は開業当初この隷爵市場の約7割がエルフ系の精人種ばかりだったためそんなあだ名がついたが今では多種多様な種族があちらこちらで見える。
俺達はまるでテーマパークに来たかのようなお客の波に一緒に流されるように移動しながら様々なテナントを見て回った。力自慢の獣人種の隷爵ばかりたくさん抱えているお店や、美人のエルフ系精人種の隷爵が多い店、ぱっとしないようなお店もあれば、今年から隷爵として働き始めましたと宣伝するお店もあった。中には本日休業日と書かれシャッターの閉まったお店もあった。
するとどたどたどた…と俺達の後ろから慌ただしく進む、少し真ん丸とした中年の男がこちらに向かってきた。
「えぇい、どくでエルフ!吾輩は忙しいのでエルフ!」
うわ、語尾がエルフのタイプだ!?なんて思いながら俺達は道を譲るとその男は一直線にお店に向かう。するとその中年の男とお店の人が数回話をした途端呼び込みをしていた筈のお店がすぐにシャッターを閉めたのだ。
「なかなか珍しいタイミングが見れましたね…あれはお店ごと買占めするところですね、確かあの人は流通関係の大手だったと思うのですが…」
なんて話をしながらさらに進むと、いつの間にか俺達はショッピングモールにあるフードコートエリアのような場所に辿り着いた。ゆっくり眺めながら歩いたのでここらで朝食をとることにしたのだ。とは言ってももう日も出る朝方に差し掛かりこの建物にいる人達も朝食にしようと集まっているため賑わっているというか混雑していると言ってもいいくらいだ。
それにしても気になるのが、このフードコートエリアっぽいところにいる多くのお客を見ていると…どうやら大半は仕事を貰い待ちしている隷爵達みたいだ。それと若い女性だろうか、なんというか、結構な人数の恰好がミニスカにへそ出しトップスと言う目のやりどころに困るような服装が流行っている。しかも胸の大きい人が多くさらに目にいい、いやよくない。と言うかそんな恰好をしている人の殆どがエルフみたいな外見をしている。もしやこれがだいぶん前にヴィレインさんが言っていた精人種は環境の影響を受けやすいって事か!?
本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。
まだまだ暑いわ忙しいわに加え、さらに書く時間を奪われる書類業務が増えてしまいました…。Episode3と次のExストーリーまで書き上げてはいるので、それまでに書類仕事は済ませたい…。ってこれではこっち都合ばかりなので少しだけ本編の話を
実は今回お知り合いからキャラクター像を描いてくださった子を使わさせていただきました。こういったこの作品の為にこんなキャラを考えてみましたーってのがありましたら是非お預かりしたいと思っていますのでお気軽にお投げ頂けると、今後私の解釈にはなりますが動かさせていただきます。ぜひぜひ、よろしくお願いします。
また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。
次回は7/19にEpisode3の後編を投稿しようと考えていますので、もし少しでも面白かった、続きが待ち遠しいと思えたら嬉しいです。次回もよろしくお願いします。




