表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/42

Episode3  帝都と異界人と出会いと別れと——— 前編

 帝国…正式名を《聖ルーマルコーランド帝都》建国から28年、長きにわたるティストレイ・トシヴェ連合国家との戦争から解放されたムロコナル大国の領地の殆どは今や帝国領土として指定された。新たに創られた帝都の中心から小さな国々は時間と共に帝都へと取り込まれ、帝都内近くを流れる運河から造った天然の堀と高くそびえ立つ城壁で囲まれ都市内部だけで1000㎢をも超える超大型都市、その内部は古くから伝わるレンガ造りの建物だけでなく近代的な高層建造物までまさに様々な文化や技術が回り合ったといっても過言でない。帝国と呼ぶのに相応しいであろうこの都市の上空に、今一艇の左右に帆を広げた空を飛ぶ船が外からゆっくりと降下するように入ってきたのだ。

 船はゆっくりとゆっくりとまっすぐ降下していき、その降りる先にはかなり広い面積を高い鉄檻で囲まれた芝生と建物が見える空間で、広い芝生の周りには多くの統一された制服を着た人達が見上げたり、空に向かって旗を振ったりまるで空飛ぶ船を待っているかのような状態で構えており、芝生に近づいた船は帆が畳まれ代わりに船底からアンカーのようなものがゆっくりと降りてくる。すると一斉にそのアンカーを所謂受けのような装置で捉え、さらに船底にぴったりな土台のような物を牽引する車が動き出し、様々な人の指示や合図が飛び合いながら慎重にかつ迅速に船は無事着陸した。

 しばらくすると船のハッチと思われる出入り口部分が解放され、そこから数人の同じく制服を着ている人たちに混じって…この俺、水無月 新と、俺と一緒に帝都へと向かっていた友人のウルヴァとトレイスも船を降りている。 


「いやぁ~、ここまでの長旅ご苦労。空の旅は快適だっただろう」


 そう俺の前を先導して歩く少しお腹周りの制服がぴっちりとした中年くらいの男が見た目よりも甲高い声で話しかけてくる。


「えぇ…そうですね。思ったよりも凄い静かだし船の中も広いし、こんなすごいのあるんだって驚きましたね」


「飯もまるで本でしか見たことないような高級レストランに出そうな感じだったし、うまかったしな」


「はっはっは、そうだろうそうだろう。この帆浮船は帝国の最新の技術を取り入れた代物でな、搭載されたマニュピレーターの自動姿勢制御機能に高い消音機能が追加され、さらに帆から発生するはためき音も20%カット、これにより夜間使用の際の周囲への騒音問題を一気に解決する次世代の帆浮船なのだよ」


「…これって軍用だよな。どっちかって言ったら夜襲用じゃね?」


「あんま変なこと言うなよトレイス。そーゆ―事は状況悪くしかねないからな…」


 トレイスが小言で呟くのを俺が小さく戒めた。

 そう、そんな最新技術を積んだと教えてくれた船…帆浮船にわざわざ遊覧飛行の為だけに俺達三人を乗せて帝都まで送ってくれた訳じゃない。…護送されたのだ。

 俺達はトレイスの親父さん…トーマス先生に帝都まで送ってもらっている道中、立ち寄った大きな街の入口でこの兵爵方に俺達を帝都まで送ってもらうように依頼したのだ。そしたら事情を知っていたのか兵爵の人達もすぐに快諾してくれたのでトーマス先生は帰っていったのだが、俺達もまたすぐに四方を鉄の壁で囲まれた部屋に押し込まれたのだ。理由はやっぱり、俺が異界人という事。そして、ラプスラスト…彼女と接触したからだ。俺の身体にどんな仕掛けがされているか分からないため俺達はわざわざ空路で護送されたってわけだ。


「それにしてはだいぶ贅沢な旅だったよな。てっきりゴラドンの餌でも出てくるのかと思ったぜ」


「何を言っているだい、えーっと、確かミナヅキ君と言ったかね?ミナヅキ君は大事なお客様なのだよ。そして君達二人は帝都の子、我ら兵爵にとって息子同然、何より子供は未来への可能性!ぞんざいに扱う事は許されないのさ…おっと」


 中年の男がうきうきと話すことにうんざりしながら聞いていたが、俺達の前にあるコンクリート壁のような建物を背に立ち塞がっていた若い金髪の男の前で足が止まるとお互いに敬礼を交わしていた。俺達もとりあえず軽い会釈をする。顔を上げその男をじっくり眺めると頬は痩せこけて目の下には隈がある。髪はゴムで無理やり束ねてあるがぼさぼさで服は小汚くてよれよれ…あとちょっと煙草臭い。


「紹介しようミナヅキ君。今日から君がこの帝都でしばらく生活をしていくにサポートをする、異界人特別拘置施設管理職員のモリシマ国衛兵爵だ。ではモリシマ君後は頼んだよ」


「了解しました。ご苦労様です」


 そう言い残すと中年の男は俺達に軽く手を振り船の方へと戻っていった。そしてモリシマと呼ばれた男は俺達の前に立つと俺に手を差し出してきたので、俺もその手を恐る恐る握り握手を交わした。


「ご紹介がありましたが私はここの職員を務めているモリシマと申します。さてそれでは話はさわり程度だけど聞いているから早速君を中に案内するよ。やることはたくさんあるからね」


「は、はぁ…」


「なぁ、俺達も一緒に入るのか?」


「えぇ、君達からも彼のこの一か月について詳しく聞きたいので、少しだけお付き合いください」


「まぁ…それなら?」


「ちょっと面白そうだしな、それに村にいたときよりも豪勢だったらみんなに言いふらさなきゃならないしな」


「流石にそれはないだろ。多分」


 モリシマと呼ばれた男は俺達のやり取りをはははと愛想笑いのような空笑いをして俺達の前を歩く、俺達もそのあとを追って建物の中に入っていく。建物の中は無色な壁でシンプルなものになっており、程よい温風で心地よい暖かさであった。すると俺達全員が入った途端建物の入り口が閉まり、なんと外から鍵をかけられたのだ。


「お、おい!出れなくなったじゃねーか」


「落ち着けってウルヴァ。ここはそういう施設だから仕方ないだろ」


「まー俺とウルヴァは言えば出してもらえるしな」


「はいその通りでございます。それでは改めまして…ようこそ、異界人特別拘置施設へ、当施設は例外を除き基本的に全ての異界人を収容・保護することを目的とし、帝国での常識を含めた歴史的知識と法律を学ぶことで帝国内での爵位取得までを円滑にサポートして、最終的に帝国民の一人として自由に生活をすることを目標にした施設となっております」


 モリシマの説明を受けながら建物内を進んでいく。すると入ってきた入り口とは逆側の窓の景色から、グラウンドで遊ぶ数名の人影が見えた、年齢も性別も、なんなら種族ですらバラバラだがみな楽しそうにしていた。


「ん?まてよ?この施設は異界人をほぼ全員ここに入れるのが目的なんだろ?けど帝国って今異界人炮烙措置懐柔策があんだろ?そのための施設ならもっと早くミナヅキはここに連れて来なくちゃいけなかったんじゃないのか?」


「その話なら俺もヴィレインさんから聞いたことがある。実はこの施設への収容って強制力自体はない。ある程度任意で入ってもらうしかないんだ」


「ある程度任意?なんじゃそりゃ」


「実は帝国で今使われている爵位制度って、建国を急いだための法整備の関係で重大な欠点があるんだ。ミナヅキも今の爵位制度は知ってるよな」


「あぁ、旧貴族を一新して帝国の為に活動する家族に与えられる称号の貴爵。一般市民と奴隷の区別をなくさせ帝国の所有物と言う形で保護管理されている個人に与えられる称号の隷爵。さらに帝国軍の研修を経て認められることで様々な権限や資格を得られる代わりに帝国の為に戦う義勇と国衛の二つの兵爵…そして今の話で重要になってる、帝国領土内で帝国と七大都市の管理外領土の管理を任されている領爵…この四つで構成されてるよな」


「そうだな、んで問題ってのが…まぁざっくり言えば、その領爵のシステムが領爵主が領民に爵位を貸し与えるって感じだ」


「まぁそうだな…、あ」


「そう、領爵主が異界人に爵位を貸し与えるってのが出来ちまうんだ。現にお前たちのとこの領爵主がミナヅキをクザスの村の領爵として囲い込もうとしただろ」


「まじか…そうだったのかよ」


 トレイスが説明してはくれるが今思うと、クザスの村の領爵主…ヴィレインさんは一体何を思って異界人である俺をクザスの村で囲んでくれたのだろうか…?まぁ確かに村の若手は割と少なかったとはいえ、証明するべき身分を持たない俺を


「えぇ、トレイス君の言う通り…もともとと言いますか、そもそも帝国が建国されるよりもずっとずっと前から異界人に対する法整備というものは全くありませんでした。ある時代には彼らを知識人や素敵な隣人として異界の様々な文化や技術を授かる一方、異界人の横暴な活動のせいで深い傷跡を今でも語り継ぐ人達も中にはいます。なにより…まだ歴史にも新しい、あの凄惨な事件の引き金となったのも、異界人だったと言われています」


 俺の中で何かがずきんと痛んだ。俺にはきっと何の関係もない事件なのに…異界人だから、という言葉はこの世界、この帝国内で呪いのように根深いものとなっているのだ。




 奴隷解放事件、それは帝国が出来るよりずっと前、今から80年近く前の時代、その時代この地には一つの大国があった。この地にはいくつもの小さな国々があり戦争の絶えない地であったが幾代か前の祖人種の王が小さな国々を束ねて強大な一つの国としてまとめ戦争を終わらせた英雄の創った大国だった。

 永きにわたってその大国は平和そのもので、その祖人種の王亡き後も大国内で新たな祖人種の王が現れては国のリーダーとして活躍し、さらに遠くの国からの侵略も阻止して平和を築いていた。

 だけど、新たな祖人種の王の死後この大国で次なる祖人種の王が現れる事はなかった。それはこの大国を狂わせるには十分な要因となった。この大国…と言うかこの地域は祖人種が最も多い地であり、これまで永い間支えてきた祖人種の王という存在の消失はこの大国と祖人種たちにとって大きくも異なる意味であり、上層部の祖人種たちが他の種族たちを見下したかのような政策を実行し、元々人道的かつ経済的目的で存在していた奴隷制度は人為的に悪辣な扱いをするものとなり大国の腐敗が進んでいた。

 そんな時期に一人の、異界人の少年を中心とした奴隷解放を呼び掛ける一団が活動をしていた。彼らの活動は地道ながらも少しずつ腐敗した奴隷制度にメスを入れいずれは歪んだ大国の姿を正す、そんな存在になるのだと…多くの者がそう思っていた。

 だが、たった一夜にしてそれは儚い幻となった。それまで地道な活動をしていた異界人の少年はその日、大国内の奴隷たちを一斉に解放させ、さらに武器を握らせて奴隷達に大国の国民を襲わせたのだ。多くの国民は命を落とすこととなったが、それ以上に派遣された軍隊により多くの奴隷達も殺され、さらに混乱に混乱が重なり奴隷が奴隷を殺したり、奴隷解放活動していた一団が奴隷や軍隊と争い、街に火を放たれ、国民も奴隷も入り混じって逃げ惑う大混乱へと発展したのだった…




 …この大事件を覚えている人は寿命の事もあってもう殆ど生きてはいないと言う話だが、今でも風化することなく語り継がれ、そして異界人は危険な存在…という偏見を生み出したきっかけそのもの。俺だってもっと疎まれても仕方なかったかもしれないが、それでも優しく接してくれた村のみんなの優しさが今になってじんわりと温かく感じる。

 そんな様子を感じ取ったのかウルヴァは不意に俺の背中を軽く叩いて


「大丈夫だって、お前にはそんな大層な事件起こせるようなタマじゃねーからよ」


「んだとぉ~、俺だってやろうと思えばもっと凄い事出来るからな」


「お、言ったな」「あーあー、言ったぜ」「じゃあやってみろよー」


 おらおらーとトレイスも交え三人で軽いジャブの打ち合いをする様子にモリシマは呆れた様子で俺達のしょうもないやり取りが落ち着くまで足を止めてくれてた。


「…まぁ今ではユージ様もいますし、あの人が推進した異界人炮烙措置懐柔策やこの施設などあり帝国民の異界人に対する考え方は昔ほどじゃないので気難しく考えなくて大丈夫ですよ」


「…ん?ゆーじ様?誰ですかそれ」


「お前ユージ様を知らないのかよ、ユージ・オガサワラ、この帝国を建国した現祖人種の王アーテュール聖帝と共に奴隷狩り騒動鎮圧や同時期に発生したティストレイ連邦侵略作戦阻止で活躍した13人の英傑のうちの一人で、13人の中で唯一お前と同じ異界人という存在だぞ」


「へぇー…」


 異界人はこの世界で悪名ばかりじゃなくて、ちゃんと頑張ってる人もいるんだと思うとすこしだけ、俺だってこの世界で頑張ってもいいって思えた。


「さて、着きました」


 そうこう話しながらずっと歩き続け、ようやく目的の部屋に辿り着いたみたいだ。モリシマが扉を開けると中には驚くことに、まるで近代科学の結晶とも呼べるような巨大な機械やモニター、様々な精密機器のようなものが置いてあった。そしてさらに驚くべきものは、部屋の壁が薄いガラス状のものになっており透明で、その奥の部屋に…まるでMRI検査機のような馬鹿でかい横倒れの筒状機器が置かれているのが俺達の視線を釘付けにした。


「うおぉ…すげぇ」


「なんだありゃ…」


「まさか、MRI?本物見るのは初めてだな…」


「ん?MRI…?もしかして俺の世界にあるものと同じものだったりするのか?」


「トレイス君の言う通り、これはMRI検査機、通称魔波共振画像診断装置と言って、おそらくミナヅキ君の知っているであろう元の世界のMRIとは別の進化を遂げた装置です。この装置は特殊な波動を全身に当てる事によって体内に残存する本人の魔力状況を正確に検査したり本人以外の魔力を検知したりすることが出来るのです。これを使ってミナヅキ君の中に仕掛けられているであろうラプスラスト嬢の微量の魔力も残さずチェックすることが出来ます」


「つまりこの機械で何も検出されなければ…」


「彼女からの接触は無害なものであった証明となります」


 俺達三人は同時におぉ…と詠嘆した。科学の力ってすげー…ん?科学?魔法の力か?まぁ全部ひっくるめて異世界の技術ってすげー。


「まぁとは言ってもすぐ入れて君の身体自体に支障が出るといけないし、同時にミナヅキ君のこの世界でのこれまでの生活状況など聞きながらメディカルチェックも早速進めていこう。その間に二人からもある程度ミナヅキ君の話を詳しく聞きたいな」


 そう言いながらモリシマは元から部屋にいた白衣のような服装に身を包んだ男女三人の職員にハンドサインを送ると、俺が持っていた手荷物やカバンを預かり、近くの椅子に座らせると問診や指診が始まった。その間にモリシマはウルヴァとトレイスを連れて部屋を出て行った。

 俺の方は服もまるで患者服のような簡素な格好に着替えさせられ、身長から体重、目や耳や喉まで診断され、さらに魔力測定器と説明された機械…見た目は億タイプの血圧計みたいなので測定された。ありとあらゆるメディカルチェックを一通り受けた後にそのまま今度は俺のこれまでの生活を聞いてきたので、クザスの村での一か月、そしてラプスラストと出会ったあの日をなるべく覚えている限り事細かに話した。白衣を着た職員達はそれぞれ内容を紙にまとめていた。

 1時間半程でようやく全ての話もチェックも終えMRIの検査の準備にとりかかるタイミングでウルヴァとトレイスもタイミングよく終わったのかこっちの部屋に戻ってきた。


「よ、もうそのMなんちゃらってのが終わったか?」


「いや、今から始めるとこだ。MRIもだいぶ時間かかるってさ」


「そっか、なら俺達はもう出てくことにするわ」


「…え?」


「しばらく帝都に滞在するためにも宿屋取りしてこないといけねーからな」


「っつーわけで俺達は一足先に宿取りがてら帝都を楽しんでくるぜ。いやー俺達だけで先に楽しんできちゃうの申し訳ない気持ちで一杯ではあるんだけどなー」


「明日にでもMRIやった感想聞かせてくれよなー、俺達は帝都の話のタネを探して来るとするぜー」


 とにやけたような顔で煽ってきた。俺は無言で二人にだけ見えるようにくたばれフィンガーを送った。その様子を見た職員達はくすくすと笑いながら俺をMRIまで連れて行った。

 少しイラっとしたままMRIの機械の前に寝そべり、寝台がゆっくりと機械内部に俺ごと入っていく。俺は機械の中でぼーっとすること30分…ゆっくりとまた機械が動き外に出る。すると二人の姿は既になく代わりにモリシマが三人の職員と共にモニターをマジマジと眺めていた。俺が機械から完全に出きったことに気がつくとすぐに近寄り


「お疲れ様でした。立って大丈夫ですよ、検査は無事終了しました。お体の方は問題ないですか?」


 との言葉を聞いて俺はゆっくりと立ち上がり、首をぐるりと回したり手足を振ったり伸ばしたりと軽く動かすがどこも問題はなさそうだ


「大丈夫です。ちょっと眠気あるくらいですかね」


「そうですか、こちらも検査の結果…おめでとうございます。君の体の中の残存魔力の99%以上は君の魔力そのもので異常に関しては全く検知されませんでした」


 とりあえず俺はほっと胸をなでおろした。これで少しでも早くクザスの村に帰ってあげられる。そう思っているとモリシマがさらについてこいと言うジェスチャーをしたので俺は荷物を持ってモリシマに同行し、お世話になった三人の職員に頭を下げ部屋を出て行く。


「とは言ってもまだ厳密に爵位のないあなたを自由にさせるわけにはいかないので、爵位取得までの間はここで生活していただきます」


「分かりました…そういえば領爵の取得って認められるにはどうすればいいんですか?」


「ん?あぁ、主に三つかな。一つ目は領爵の管理領地内で産まれた子供…まぁこれはミナヅキ君には不可能なので除外するとして…二つ目は本人が住むための住居を持ち3年以上定住し領爵主と帝都の軍で審査し問題ないと判断した時、そして三つ目、領爵の子と結婚し家内になる事だ」


「成程…ヴィレインさんもなかなか先の長い計画しようとしてたんだな…」


「そうか?自分が聞いた限りだとそんな大変でもなさそうだったが」


「…?」


「…、まあいいでしょう。一応話だけしておくと貴爵の叙爵は現状ではほぼ結婚することでしかなり得ませんのでほぼほぼ無理ですね。ですのでほとんどの人が帝都及び七大都市で半年以上の生活をして軍の審査基準を満たすことで取得可能な隷爵の叙爵を望む人は多いですね」


「半年か…それでも半年ここに拘束されるのも大変だな…」


「ですが、今回ミナヅキ君…と言いますか、三人で授爵を考えている兵爵、義勇兵爵の授爵合宿への参加に関しまして合宿期間100日の拘束期間、そしてクザスの村での一か月の生活を加味し、例外的ではありますが次の合宿開始である二週間後に爵位取得というかたちにしてこの施設から出てもらって問題ないということにします」


「えっ!?マジですか!良いんですか!!やったー!!」


「…今回は特例ですが、もし君が問題ないなら今後は義勇兵爵取得することによる施設による拘束期間を短くすることのできる要望を上に通すことが出来ますからね。君は色んな意味で恵まれていると同時に多くの人の希望なのかもしれませんね」


「希望とか、そんな…」



   …———大丈夫だよ。もっと自信もって———…



「…、…ミナヅキ君?」


「あ、い、いえ…なんでもないです…。ところで今俺達ってどこに向かっているんですか?」


「これからここで生活するために君にも寮室が与えられますからね。申し訳ないですが部屋数も限られててルームシェアしてもらうのでまずは同室の人と仲良くしてください。彼もまた君と同じくらいのタイミングで同じような世界からやってきたみたいなのでうまくやれると思いますよ」


 階段を上ったりしばらく歩いて気付いたが先程から男の姿しか見ていない、どうやら男性の居住エリアまで歩いてきていたみたいだ。すると322の番号の部屋をノックするとモリシマが扉のドアノブを回して中に入る。


「お邪魔するよ、今日話した通り新しい住居者が来たから挨拶と、それからここでの生活を教えてあげてね」


 すると部屋の奥から俺より少し背が低く、眼鏡をかけた俺と同じ年くらいの男が雑誌を片手に出てきた。


「これから生活を共にしていくヨーダ君だ。彼は少々癖が強いし、金銭感覚に少々難ありだが基本的にはいい子だ。二人とも仲良くするように」


「…ふーん、あんたがミナヅキ君でやんすか。その名前を聞くと前の世界にいた奴を思い出すし、あんたの顔もそいつによく似て生意気そうでやんすねぇ…まぁおいらは大人でやんすからそんな細かい事でいちいち根に持ったりはしないでやんす。でもこの部屋の先輩として色々面倒を見ていくでやんすから、まずはその少なそうな荷物をさっさと全部物置にしまったらどうでやんすか?しまう場所が余ったらおいらが有効活用してやるでやんすから」


 …ふーん、ヨーダ君って言うんだ…、確かに彼の言う通り俺もヨーダ君によ~く似た顔を知ってるなぁ~…それもそのはず。彼が着ているのは、野阜高校指定の黒のブレザータイプの制服だ。


「…なんでやんすか、初対面の人の身体をじろじろと…気持ち悪いでやんすよ」


「あぁ、ごめんごめん。こっちこそよろしく依田君。ところでなんだけど…この前貸した数1の教科書返してもらってないんだけど」


 モリシマは不思議そうにしているのをよそにヨーダ君は顔がみるみると豹変しながら雑誌を落とすと、唐突に抱き付いてきた。


「うおおおおおおぉぉ!!水無月君、いやキャプテーン!おいらの心の友よ~。おいらこんなへんちくりんな世界に飛ばされて急に怖い人たちにここに連れてこられて心細かったでやんす~。でも水無月君が来てくれたからには百人力でやんす~。あとついでにジュース買いたいから100円貸してくれでやんす~…あ、さっき言ったことは全部嘘でやんすよ、おいらと水無月君の仲でやんす。ミナヅキ君はおいらの頼れる相棒、ズットモ、ベストパートナーでやんすよ~」


 周りの視線を気にせず気持ち悪い行動と言葉を並べるこいつは『依田 昭仁』。俺と同じ野阜高校三年バスケ部で、基本ベンチ。オタク趣味全開で部室に漫画本とかを持ってきては回し読みでニッチな作品を普及させようとしてた。バスケ部に入った理由はモテる為とあまり本気度は感じられなかったが、結局三年間一緒に頑張った仲間だし、辛い時の心の支えとなったメンバーの一人…依田君のおかげで勝てた試合もいくつかあるくらいに大事な仲間だ…ただこいつに貸した総額5000くらいは帰ってくることはなかったが


「まさか依田君もこの世界に来てるとは思ってなかったよ、ホントに俺と同じタイミングでこっちに来てたんだな」


「…もしかして二人とも、同郷だったりする」


「同郷も何もおいらたちは共に青春を共に燃やした熱いパートナーでやんす!来る日も来る日も朝早くから練習、暑い体育館で練習、夜遅く身体がボロボロになってもまだ練習でゲームする暇もなかったでやんす。そんな過酷な日々から解放されたと思ったらこんな世界に飛ばされて…それでも水無月君と出会うなんて、やっぱりおいらたちはソウルフレンドでやんすぅ~」


「やっぱり君バスケ向いてなかったんじゃないか?」

本投稿を読んでいただきありがとうございます。SKMRでサキモリと申します。




今回からEpisode3という事ですが…今回はちょっとやりたいことを優先してしまい文字数も少しだけ少なく、小話回みたいになってしまいましたが、まぁゆったり見ていってくだされば幸いです


それと…やっぱりまだ繁忙期で辛いです(




また今回も誤字脱字、文章構成などまだまだ課題がありますのでよかったらアドバイスなどしていただければ幸いです。




次回は7/12にEpisode3の中編を投稿しようと考えていますので、もし少しでも面白かった、続きが待ち遠しいと思えたら嬉しいです。次回もよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ