番外編 メリークリスマス
遅くなったな。
メリークリスマス。
12月24日
23:15
自衛軍基地 中央指揮所
航空管制班 班長
『マスター隊は現地に到着。クリスマスドロップ作戦を開始してます。空自と米空軍と協力して行動していく。では、また連絡します。お休みなさい。』
「はい、了解。ご苦労さん。」
受話器を置き、メモをした紙を持ち作戦室長のところに持っていく。
さてさて、自衛軍航空管制官は航空作戦についての管制や他部隊との調整を主に基地から行う。
階段を登り、司令スペースに向かう。
「室長。報告です、クリスマス作戦についてです。マスター隊、現地に到着。クリスマスドロップ作戦を開始しました。」
「了解。ありがとう。」
短い報告を済ませ、管制班のベースに戻る。
俺らのベースには少人数しかいない。ほとんどは基地の管制塔や任務がないため休んでいる隊員が多い。
まだ今はクリスマスイブ。あと数十分でクリスマスってね。
「あ、班長。お疲れ様です。」
「おう、お疲れ。交代はまだ時間があるだろう。」
次の交代時間は明日の午前3時。まだ時間がある。
「メリークリスマスですよ。」
女性管制官がコーヒー缶と簡単でまぁ普通に上手いケーキを渡してくる。
は。まさか俺にもクリスマスがあるとはね。
女性管制官は交代に備えるため自室に戻る。
コーヒーを一口。指揮所はとても温かい状態であるが、もっと温かく感じた。
23:32
東京都上空
自衛軍 陸軍特殊航空戦闘旅団 戦闘ヘリコプター隊
AH-64E ガーディアン1-1 ガンナー・菊池将人
『こちら管制。さてさて、めちゃくちゃ暗い時間でも熱い熱いカップル方を盛り上げてやれ! 因みに、君らも熱い熱い夜をお過ごしを。以上』
俺らガーディアン隊は、東京上空で飛行訓練をしつつクリスマスで盛り上がる場所を飛行するように依頼されたため同時に飛行する。機体には飛行に影響がないように付けられたLEDが光っており今は分からないが塗装もされている。
『こちらキング1。意外とこちらも盛り上がっている。ライトアップ戦車、凄いな。』
地上でパトカーに誘導されて走る小田美九率いる、M1A2エイブラムスのキング隊。彼女らの戦車にもLEDと塗装がなされている。
現実世界ではアメリカでエイブラムスやストライカー装甲車にもやっているらしい。
「いやいや、熱いんかね。」
「前にデートの約束したのに、いつまで経っても誘いがこないのはどうなんです?」
一応、付き合っている俺とガンナーの鷲村美憂。デートに誘おうにも今まで誘ってこなかった。
「許せ。明日、行くじゃないか。」
「はぁ、まったく。」
さて。行こうか。
操縦桿を傾かせ、機体を回転。イベント会場付近を旋回する。
メリー・クリスマス!
00:01
自衛軍基地 特殊作戦部隊 待機所 (中央指揮所と同じ施設にあり)
自衛軍特殊作戦部隊 STF 指揮官 海千救一
「はぁー。」
コーヒーを飲みつつ柔らかいソファに体を任せる。
温かい部屋で柔らかいソファ。窓から見える夜空。うまいコーヒー。
......装備がなければな。
M4を傍らに、ホルスターにはM17。プレキャリや暗視装置といった作戦に必要な装備を身に着けた状態だ。あー、辛い。
「どうしたの? 渋い顔をして。」
「あぁ。柚木。」
STF2-1。機関銃手の原 柚木。機関銃の弾帯をまとめた弾倉を身に着けた状態だ。装備は俺より少ないが重い装備だ。よく動けるな。
「いや、ゆっくりと休めればな。とね。」
「あーね。去年はデルタがクリスマス待機だったからね。おかげでデートに行けたけど。」
自衛軍では恋人関係である人が多い。その一組が俺らである。
去年はゆっくりと柚木と歩きまわり食べまわったりし楽しめた。
「ふぅー。」
「去年はクリスマスプレゼントあったのに、今年はなし?」
「用意はしたよ。ただ、まだ渡せないな。待機が終わってからな。」
「そっかー。私はもう渡せるよ。ほら。」
お、これは。
「気付いた? サングラス。前に壊れたのを買ったの。私も同じのほしかったからね。」
「ペアでか。まあ、俺もそうなんだが。」
「え、そうなの?」
「......。同じ小型ワッペン。」
「可愛らしいデザイン。」
互いに笑っていると、後ろからSTFの隊員らがニヤニヤした顔で迫ってくる。
はぁ。
メリークリスマス。
私もクリボッチよ。 くそ。




