現代の防人 自衛軍
私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。
自衛隊 服務宣誓
7月8日
16:00
日本国 警視庁 屋上 前線指揮所/火力調整所
自衛軍 特殊作戦室長 神居美郷
「了解、ガーディアン隊は6分後到着。到着後は報告を。」
「こちら火力調整所。スカイシャーク、作戦空域到着予定時刻を伝えてくれ。......了解。火器使用は、30mm機関砲とマーベリックのみとする。オーバー」
指揮所兼火力調整所を設置した、警視庁の屋上。自衛軍他、自衛隊、警視庁の隊員、職員がそこまで多くはないが、集められ、指揮・調整をしていた。
人質の回収するヘリ。負傷者搬送のための救急車やヘリ等の調整。突入したSTF、デルタ、シールズ。特殊作戦群、SAT。彼らへの指示や調整。彼らからの要請された支援の調整。国会議事堂へと向かう敵の阻止をする、戦車部隊や自衛軍のTF1と2への指示。
「やることが多い。くそ。」
「オーバーロード。報告です。上空のリーパー2-1によると、敵の車両と思われるものが国会正面の門へと続く道路に複数確認したとのことです。敵の到着は、おそらく3分。」
「不味いわね。ガーディアンとスカイシャークは?」
「ガーディアンは5機の編隊で、あと5分で到着。西から侵入する予定。スカイシャークは、補給が完了し、自衛軍基地より出撃。10分後には支援可能。」
指揮運用パソコンを確認。これは、本当に不味い状況になりつつある。航空支援できる航空機がいない。小隊規模の戦車や特殊部隊だけでは対応しきれない。どこかに、いないか?
「ブラックホークは?機銃で対応できない?」
「負傷者搬送のため、全機出払っています。ここ以外でも作戦で動き回っていますから。」
国会でけでなく、残りの敵施設の対応もしている。そこで出た負傷者や人質の搬送、危険物資の運搬。国会作戦中の隊の搬送でも手がいっぱいなヘリ。しかも、護衛なしでの作戦はきつい。
「不味い。どうすれば。」
もう、手札がない。そう思っていた。
『こちらガンイーグル。航空支援まで三分。AC-130 ゴーストライダーにて作戦空域に接近。武装は、30mm、40mm機関砲。AGMヘルファイア搭載。』
「イーグルだ。」
国会議事堂 正門
陸軍 陸軍機甲戦闘師団 第1戦車大隊 M1A2エイブラムス
キング1 小田美九
「全車、攻撃用意。目標、接近中の敵車両隊。弾種、徹甲。」
「確認!」
「装填よーし!」
「全車、攻撃開始。砲手、撃て!」
「On the way.」
なぜに英語?
「命中。砲手、撃ち方やめ。」
戦車4台によって敵車両隊は一掃されたようだ。だが、まだ接近している敵がいる。
どうやら他の場所でも同様に対応に戦車は動き回っている。
「次だ。目標、大型トラック。3、4号車は待機。2号車と私達で対処。」
「砲手、目標、敵大型トラック。弾種、徹甲!」
「か、確認。」
「装填!」
「距離、約400。......撃て!!」
空薬莢が飛び出し、装填手が装填の用意をする。
ドローンのリーパー隊からの報告では敵車両隊は沈黙したそうだ。だが、大規模な不審車両が接近していると報告ではを受け取った。さて、やばいね。
小隊は疲労困憊状態。弾薬はまだある。機銃もあるけど、このままだとやばい。
「CP、こちらキング1。航空支援を要請する。付近の空域に何でもいいから航空支援を! オーバー」
『こちらCP。現在、航空支援を行える航空機が一機。そちらに向かっている。到着予定は、約一分。』
おいおい。敵車両隊とほぼ同時刻に到着とは。
応援の戦車隊、機動戦闘車隊、後方支援隊の到着は航空支援できる航空機よりも遅い。
「全車に通達。現在、航空支援機が向かっている。到着は、一分。なんとか耐えろ。」
「隊長! 正面、敵車両隊。装甲車あり!」
「全車、目標、敵車両隊。各車の判断で攻撃、敵を食い止めろ。砲手は装填確認後、直ちに攻撃。装填手、迅速な装填を。頼むよ!」
「「了解。」」
遠隔操作型の機関銃で制圧射撃。
すると、突如爆発が起こる。
「自爆車両が複数いる! 機銃による制圧射撃! TFチーム、援護を!」
『こちらTFチーム、了解だ!ジャベリンを発射。Mk.19グレネードランチャーで援護開始!』
無線を切り忘れるほど緊迫状態だ。自爆車両は脅威だ。戦車をも破壊する爆発物があれば危険だ。糞め。
機銃で攻撃していると、数台のトラックが停車した。荷台に人影が見える。
『隊長。トラックの荷台に狙撃手。他、対戦車ミサイルのようなものあり!』
「! ミサイルのレーダー照射を受けている!あのトラックからだ。」
「トラックを破壊しろ。急げ。」
モニターで敵を確認。機銃でも敵トラックを確認し、攻撃する。
砲撃によりトラックは破壊。だが、同時にモニターと照準器もが真っ暗になる。
「? どういうだ? 照準器もモニターも真っ暗だ。」
「まさか。照準器とモニターを撃ったのか?」
「素人ばかりのテロ組織ではないな、カチューシャは。」
戦車の照準器やモニターに映し出される装置は車長、砲手が座る位置にだいたいある。装填手が座る後ろの方の車外にもある。車体には様々な場所に対戦車兵器等の警戒装置がある。そこは、脆い部分でもある。12.7mmのような口径のでかい狙撃銃で狙われれば、破壊できなくはない。戦車は目を失う。
敵テロ組織は基本的に素人が多い。銃器を使ったこと、見たこと、触ったこともないような者が大半を占めている。よく訓練された人間は少ないそうだが、どうやら国会占領組と敵増援組に優秀な人材が集められたようだ。
損傷した戦車は2個小隊の8台の内、この車両を合わせて計5台損傷した。
「く、何も見えない!」
「仕方ない。全車に通達。照準等の装置が破壊された車両については後退。危険だが、 損傷した車両をバリケードとして配置。門内部へ後退! 操縦手、後退用意。後へ!」
順番に戦車隊は後退する。機関銃による弾幕で敵を寄せ付けない。
あとこの戦車と3台。
『くそ、RPG! 正面、残骸の影にいる!』
「後退急げ! くっ。」
ハッチを開け、遠隔操作型機関銃を解除し、手動で機関銃を撃つ。装填手もM240を使い、射撃する。
門に到着したため、撃つのをやめる。残り2台。
「操縦手、停止用意。とまれっ! キング2-2、2-4だけだ。急ぐんだ!」
キング2-2 M1A2エイブラムス
「ドライバー、急ぐぞ! 砲手、目標、敵集団。機銃で対応。撃て撃て!」
「発射。」
砲塔にあるM240や12.7mm機関銃で敵歩兵集団を一掃する。
すると、ミサイルのレーダー検知装置の音が響き、光が点灯する。
「くそ。対戦車兵器だ!」
『2-2、右にRPG!』
「くそ、間に合わない。」
キング1 小田美九
「キング2-2がRPGに被弾。2-4は後退完了。」
「2-2、応答を。2-2、応答を!」
『こちら2-2! 車体はなんとか、無事。動きます。』
車外に出て、2-2を見る。
車体の後部に被弾したようだ。布や整備するために必要な道具等に火が出ているが、致命傷ではなさそうだ。ハッチが開いていなければ、乗員は大丈夫だろう。
「いや、ハッチが開いている。」
ハッチから血だらけの腕が見えた。2-4が盾となり、操縦手や砲手、装填手、車長が出てくる。操縦手を除いた乗員全員が怪我をしていた。RPGを受けた時にハッチが開いたままだったため、被弾時の爆発が車内にまで入ってきてしまったようだ。
これは、アメリカ軍も経験していることだ。戦車が動いても、ハッチが開きっぱで乗員が負傷することがあるのだ。基本はハッチは閉めるが、車長が指示したり機関銃で対応したりする時にはどうしてもハッチを開く必要があるタイミングはある。
「2-4、直ちに後退。敵がくるぞ。」
『こちら2-4。自爆車両と思われる車両が接近中! 対応します!』
「駄目だ、2-4!」
仲間を失う。誰か!
その時だった。2-4の戦車まで5、6メートルくらいで車両が爆発した。火柱が上がっている。
誰だ? 誰が破壊した?
『こちら2-4。後退する。』
「オーバーロード、こちらキング1。戦車隊は壊滅的損害を受け、門内部に後退。ぎりぎりで敵を誰かが倒したようだけど、航空支援は誰が?」
『イーグルよ。』
イーグル? ......あ、あのイーグル社か。
『こちらイーグル社のAC-130。コールサイン、ガンイーグル。作戦空域に到着、待たせてすまない。これより、航空支援を開始する。そちらは対応可能戦車を門の一番前まで前進を。』
イーグル・カンパニー
AC-130 ゴーストライダー コールサイン:ガンイーグル
???
「目標、命中。敵は混乱状態。」
「良し良し。続けて、敵を一掃しよう。各自の判断で撃て。優先目標が現れた時には俺が指示する。」
アメリカ合衆国、民間軍事会社。イーグル・カンパニー
30mm、40mm機関砲に加え、ヘルファイアミサイルを搭載した最強空飛ぶ戦車、AC-130で彼らを支援する。それが、俺らの任務だ。久しぶりに日本に帰ってきたというのに。戦場になっているとはね。
『こちらリーパー3-1。敵車両が後退開始。指揮所からは無力化するように指示が出ている。対応を。』
「こちらガンイーグル、対応しよう。ガンナー、逃げている奴らを倒せ。」
映像で40mm機関砲によって敵車両が破壊、残骸になったことが確認できた。仕事が早い。
いいぞ。これこそガンシップだ。
「オーバーロード、こちらイーグル0-1。目標が後退していたが、なんとか無力化。第1目標はクリア。簡単な仕事だったな。オーバー」
『こちらオーバーロード。支援に感謝するわ。今度奢ろう。そのまま警戒待機をお願い。』
「ラジャー、アウト. よくやった、ガンイーグル! イーグル2-0、状況は? STFと合流できたか?」
『こちら2-0。もうすぐで到着する。』
16:46
日本国 国会議事堂 皇族室前
自衛軍STF STF0-1 海千救一
「特戦、デルタが到着。」
「良し。ここが最後だ。」
国会議事堂で敵が籠城しているのはここ。皇族室、御休所のみ。ここには敵の指揮官と人質。仲間がいる。必ず救出しなければならない。
STFは皇族室。デルタは御休所。特殊作戦群はサポートに入る。
「突入まで。5、4、3、2、1。GO!」
デルタと同時に皇族室に突入する。
真輝が少量の爆薬で作られた爆発物を爆破し、ドアを破壊。由花が盾を持ち、春奈がフラッシュバンを投げ込み、突入。
ここまでは順調だった。
ピッピピッ!!
? 壁から音が......。
......音と共に、俺は後ろに倒れていた。
壁とドアが爆発され、破壊されている。
やられた! 敵は壁とドアに爆発物を仕掛け、爆破したんだ。
とある戦場で。
ある国の部隊が突入する時に壁に張り付き、突入する隊列を作っていた。
その時、敵が仕掛けた爆発物で壁を爆破。そこに張り付いていた部隊は巻き込まれた。敵は突入の方法、隊形等を知っていた。
「ぐっ。」
メインのHK416を失った。サブのグロックを......。
煙や破片で視界が悪い中、人質と敵の姿が見えた。そして、彼女も。
「クソッタレ。」
左腕、足に感覚がない。だが、右腕はある。前には由花が倒れていた。由花の胸付近に装備しているグロック18を取り、敵を倒す。
AK持ちが2。グロックで撃ち込む。
『救一!』
鐸下、うるさい。
くそ。敵がまだ二、三人残っている。
仕方ない、こうするしかない!
「アート!!」
由花の隣に倒れている春奈のグロックをアートの所に投げる。
「死ね。」
敵に気づかれ、撃たれた。
痛ッ!
チョッキに当たった。
「任された!!」
痛みを感じつつ、彼女の声が耳に入る。
五発の発砲音と共に、敵が倒れた。
「クリア!」
『イーグル、突入。』
『ファルコン、突入する。』
手からグロックを落とす。
視界が暗い。チョッキで受けた痛みとどこかを被弾した痛みで意識が、やばいな。
「クリア!」
「人質を確認。敵指揮官もな。」
どうやら、イーグルと特戦が到着したようだな。なら、大丈夫だ。敵の親玉も確保してくれるだろう。
「救一。STFの負傷者を運ぶぞ!」
「こちらイーグル2-0。オーバーロードへ報告する。最後の部屋を制圧。しかし、STFの隊員が負傷した。救援ヘリの回収を要請する。」
イーグル2-0
???
『オーバーロードよりイーグル2-0。ヘリにて回収する。回収地点は中央玄関で、回収機はチヌークで航空支援がある状況。追加で情報があれば随時報告を。アウト』
「ドクター。STFは?」
俺らとはまた違うある組織に属する指揮官だ。戦闘から医療知識も優れているため、精鋭以上の人だ。
M4を下げ、ドクターの隣に屈む。
「STFのほとんどは大丈夫そうだ。ただ、カマキリとセンセイが負傷している。危険な状態なのは、コマンダーとサムライ、イージスだ。」
「手伝います。」
STFの衛生。メディックこと、零士だ。零士も医療知識豊富だ。顔に切り傷があるも、目はキマっている。M4を預かり、対応させる。
「さて、ドクターらがいるなら。こっちはこっちの仕事だ。」
自衛陸軍 デルタフォース
デルタリーダー 千崎龍介
「さてさて。さぁ、話してもらいましょうか。副総理に外務大臣さん。」
「な、何のことだ?」
「もう情報は出ているんだよ! お仲間からもこちらからもな。」
鐸下が大声で敵にぶちまける。
敵2人は腰を抜かしているが、こんなものでは終わらない。
「まず。テロ組織、カチューシャ。その親玉は国際連合、国連事務総長。日本に潜伏している奴らをまとめ、今回のような腐った作戦を立案したのは、あんたら副総理と外務大臣。まぁ、他にも色んな組織にも裏切りや協力しているのがいるが。軍や自衛隊、警察、海保が掃討しているから関係ないな。」
日本以外の国も掃討作戦が始まっている。
今回の作戦で敵の隠れ家や指揮官といった様々な情報が得られた。他国にも情報を渡し、他国の軍や警察機関が対応しているらしい。夜でも昼でも。状況に合わせ、各国のやり方で敵を倒している。
「では本題だ。君たちが日本にいる敵をまとめている指揮官である証拠は、2つ。ひとーーつ!! 敵の自白。これは、多くの捕虜が証言している。しかも、親玉の事務総長もな。俺らも確保した敵も言っていた。だが、これは信憑性がない。だがしかし。ふたーーつ!!! これだ。」
一枚の写真を取り出す。
「これは......。」
「そう。これは、あんたらが敵と合っている写真だ。動画や録音した音声もあるぞ。他にもある。」
「さて。これでも、反論するかい? そうだった。今も生配信で世界中に拡散されているからな。」
17:12
自衛軍STF
STF0-1 海千救一
「良し、連行しろ!」
「ラジャー、回収は3分だ。イーグル、今なら撤収可能だが。」
「いや、今回は自衛軍として参加している名目だ。それに、オーバーロードの指揮下にいるしな。一緒に離脱するぞ。」
空。夕暮れか? 空が綺麗だ。
体が軽い。
「おっ。コマンダー、大丈夫か?」
「ドクター。到着していたのか。少し体が重いくらいだ。」
「奇跡的にチョッキで守れていたよ。まぁ、骨折はしていそうだ。あと、爆発時に負傷した時に足を負傷したようだ。病院で検査するぞ。他の隊員も無事だ。」
チョッキか。防弾チョッキで防いだか。胸と腹、足は少し痛いくらいだ。
まだ死ねないようだな。
「よぉ、コマンダー。」
鷲と銃、ヒマワリの刺繍がされているワッペンがある黒い戦闘服にM4を持つ隊員が顔を覗き込む。
「イーグル。久しいな、2-0。0-1はガンシップか。」
「あぁ。ま、無事でなりよりだ。」
イーグルにドクターか。仲間が勢揃いだな。
すると、俺の体に抱きついてくる奴がいる。
「? 柚木か。何だ?」
「"何だ?" じゃないよ!」
前STF解体後、STFにいたことを明かした時から、よく怒られるようになった。明かした時も危険な任務いたこと、体を大事にしなかったこと。色んなことを黙っていたこと。
「悪かった悪かった。」
「もう慣れたけども。う〜ん。」
凄い困った顔をしている。複雑そうだ。
柚木は元々は教師だった。同じ学校で副担任であった雪村と担任として働いていた。元自衛官や警察官ではない。自衛軍創設と同時に自衛軍に入ったのだ。最初は俺や考尚。雪村は反対した。危険過ぎだ。それでも入った。柚木らしいく、昔からそうだった。
「複雑。でも、心配したんだからね!」
「はいはい。」
「はぁ〜。ま、AAR(After Action Review)でまた話し合おう。」
「そうだな。」
AARとは、事後検討会。元は米陸軍用語だがビジネス用語に一般化したものでもある。反省会が一番分かりやすいだろう。プロジェクトやイベントをレビューすることにより、発生した事柄、それが発生した理由、そして、それを改善する方法を理解するための手法だ。様々なことが起こる戦場、作戦地域、施設等。俺らは毎回反省し、次の任務に役立てていく。
『こちらパラディン2-1。到着まで一分。コマンダー、待ってろよ!』
『こちらガーディアン1-1。王様と王女さんの護衛を任されている。』
『こちらキング隊。キングがキングを守るのは少しおかしいかもしれないけど、まぁ守ろうか。じゃ、また。』
イジってる。完全にバカにされている。
MH-47G。特殊作戦に多く使われる特別な機体を自衛軍が採用、米軍側が供与した。
チヌーク独特の爆音が聞こえてくる。
その頃......。
自衛軍 第6特殊部隊 L-ATV
TF6 隊長
「中央指揮所へ。目標地点まで10分、現状異常はない。」
『了解だ、6。警察は自衛軍基地に収容後直ちに撤収する予定。予定通りに基地まで護送をお願いします。中央、アウト』
TF6はイーグルさんやデルタ、特戦が確保した敵指揮官の副総理や外務大臣。他の敵兵を自衛軍基地の地下に輸送する。警察が輸送し、軍が護衛する。
TF6は車両を使った任務、作戦に従事する。車両は基本、アメリカ軍で使われるものやピックアップトラックが多い。
「隊長、リーパー隊が2分で到着します。」
「了解。STFが負傷したらしいな。交代か?」
STFは自衛軍部隊の顔だ。TF隊の一番上に君臨する部隊。そんな彼らが負傷したのは結構、恥では?」
すると、ドライバーが不機嫌そうに言う。
「そういう隊長はどうなんです? 少し前の作戦。一目散に逃げたのは誰でしたか?」
前の作戦というのは、ある国での護衛作戦だった。予想外の少人数によるデモ隊が俺らと護衛対象に接近、その後過激派の一部が銃撃してきたのだ。これは、日本も報道されたことだ。
「それは......。あ、あれは警察の封鎖がしっかりしていなかったことや偵察機がしっかりと偵察していなかったからだ! それに、逃げてなどいない!!」
襲撃に遭い、俺は下車し反撃するように指示した。だが、副隊長が無視し勝手に護衛対象と共に駐車場に逃げた。立派な命令違反だ。それなのに!
「あの室長もだ。命令違反の奴を褒め、俺は処罰。何が悪かったんだ?」
TF6 ドライバー 6-4
「あれも、これも全て副長が悪い。これが終わったら司令部に意見具申してやる!」
......。こんなクソ野郎といたら早死する。確か、こいつは自衛隊で問題を起こして軍に追いやられた陸曹長だったな。俺は、三等陸尉だったのに。
「ついでにお前も司令部に訴えよう。自衛隊ではお前は階級が俺より上だったからな。空気を読めない奴はここにはいらん。」
理不尽だな。俺らは命令に服従する義務はあっても、空気を読んだり同調圧力に屈する義務はない。とうとうやばい奴になってきたな。
「勝手にどうぞ。」
「......。」
? あれ? 返答がない。
寝てやがる。
「クソ野郎。6-4、こいつ後ろ弾で殺したい。」
6-2、6-3が後ろの席からM4を構えて言う。俺もホルスターから9mmを取り出して殺したい。
「護衛任務だぞ。周囲に警戒しろ。」
護衛任務は周囲に警戒が必要だ。敵が先に攻撃するようでは、こっちは負けだ。
前回の作戦もこいつは寝ていたな。本当に元軍人か?
『こちらリーパー2-1。不審車両は確認できない。そのまま進め、あと少しだ。アウト』
『こちら6-1。総員、気を抜くな。』
副隊長の6-1。6-1の福田誠さんが警察にも伝わる無線で呼びかける。
福田さんは元陸自のスナイパーだ。護衛についても知識は豊富だ。この人も三等陸尉だった。憧れるくらいかっこいい人でとても強い。この人が隊長ならな。
すると、急に車列が停止した。
「何だ?」
「6-3、機銃につく。」
キング隊の戦車にある機銃は遠隔操作で、車内から操作できる。残念だが、この車両にはないため機銃には直接隊員がつかなければならない。
「あぁん? どうした?」
機銃に6-3がついたと同時に隊長が起きた。この顔がウザい。
警察も混乱しているのか、パトカーから降りている警官もいる。目標対象を乗せる護送車にある監視カメラからの映像を見ると護送車にいる警官も周囲を確認している。
「こちらTF6。リーパー2-1、こちらの車列が停止した。周囲に脅威は見れれるか?」
『こちらリーパー2-1。周囲に脅威は見られない。先頭車両が停止し、その車両はドアが開いている。信号はないため、その車両が問題だろう。周囲には高い建造物もある。急ぎ、対処の必要がある。』
「隊長、どうします?」
隊長を見ると、面倒くさそうに欠伸をしていた。
だから? そんな顔をしていた。
「隊長、指示しなければ俺らもですが、警察も動けません。基地が近くても応援部隊の到着は遅くなります。指示を!」
勝手に動けば、混乱状態が悪化する。隊長が指示しなければ警察も止まってしまう。
すると......。
『RPG!!』
「不味い!」
RPGの弾頭がスローモーションに見えた。護送車に向かっている。
どこからだ?
「ご、護送車がやられた!」
「自衛軍中央指揮所、こちらTF6! 護送車が攻撃を受けた! 至急、応援を要請するオーバー!?」
やっと隊長が動いた。慌てた顔で無線機に食いついている。
自分はドライバーだ。M17を取り出し、いつでも車を出せるようにしつつ臨戦態勢に入る。
「敵を確認! 敵は、前方のトラック!」
「撃て! 撃って構わない!」
「射線上に味方の警察車両!」
「いいから、撃て!」
パトカーには警官がいるのが見えた。フレンドリーファイアーだぞ。馬鹿げている。味方もろとも撃ち殺すことは軍人。いや、俺らの軍事に関わる者がやってはいけないことだ。しかも、この車両載せている機関銃は、12.7mmのブローニング重機関銃だ。装甲車も破壊するものをパトカーに撃てば簡単にパトカーと警官は......。
「ガンナー、こいつを動かすから待て!」
「おい、勝手に! ぐぁ!」
アクセル全開! 車両を動かせば、撃てる。危険だが、こいつの命令を実行するよりいい。
急に車両を動かしたため、隊長は舌を噛んだようだ。ざま見やがれ。
「撃てる! 攻撃開始!」
『こちらリーパー2-1。多数の敵をこちらで確認。早急な離脱を。指揮所は周辺の部隊及びガンシップを派遣した。到着は5分。』
五分か。予想より到着は早い。それでも、それまで隊が保つか? それに、隊長も。
「敵トラック撃破!」
「いいぞ。副長に通達! そちらの車両に乗っている隊員を連れて護送車を確認しろ。お前達も行け。」
「え? ラジャー。」
まともな指示を出すとは。少し驚いたが、敵指揮官確保が最優先だ。
M17をホルスターに戻す。ドアに固定し、いつでも取れるようになっているSCAR-Lを取り、車両から降りる。
「6-2、6-3。良し。」
「行こう!」
武器を持ち、6-1の福田さんと合流しようと走り出そうとすると......。
「あ! 隊長が逃げた!」
「え?」
L-ATVが走ってきた方向に戻っている。車両には隊長しかいない。あのクソ野郎、逃げやがった!
「部隊を放置して逃げる指揮官がいるか!!!」
「仕方ない。急ぐぞ、ここじゃ的になる。」
6-2がSCAR-LのアンダーバレルのあるM203グレネードランチャーを操作しながら走り出した。そうだな。ここから移動しなければ危険だ。
6-3のM249の予備弾薬があるバックを持ち、護送車に向かう。
「無事か?」
福田さんが待っていた。SCAR-Lを片手に煙幕のスモークグレネードを持っていた。
横には警官が倒れている。軍には負傷者はいないようだが、警察側は多数出ているな。
「RPGの衝撃で護送車のドアが破損した。内側からも開かないようでバールでこじ開けようとしたが無理だったため、エンジンカッターで破壊する。......隊長は捨てておけ。勝手にいなくなるさ。今は仕事をするだけだ。いいな?」
「イエッサー!」
何も思わない。任務をやり遂げることが、優先事項だ。あいつを気にすることはない。
SCAR-Lを持ち、周囲を警戒する。
17:54
自衛陸軍 特殊航空戦闘旅団 戦闘ヘリコプター隊
AH-64E ガーディアン1-1
ガンナー・鷲村美憂
国会から負傷者を乗せたチヌーク隊やブラックホーク隊を護衛していたが、ガーディアン隊のAH-64E、3機から自分らが抜けた。基地周辺に敵がいるようだ。火力が足りていないらしい。
『総員に告ぐ! こちらTF-6、6-1だ。護送車内にいた敵指揮官らは7名の内、3名死亡。その中には外務大臣も含まれる。監視の警官は負傷者が多数だが死者はいない。パトカーにいた警官はほとんど死亡。自衛軍基地前に到着したが、敵が複数いる!』
「こちらガーディアン1-1。こちらはAH-64Eでそちらに向かっている。敵の状況は? そちらは大丈夫なのか?」
機長の菊池さんが地上部隊と連絡している。航空支援をする時は地上と空との連携が重要となる。周辺の状況から味方の位置や敵の位置。対空兵器等の脅威。必要な火力等の情報だ。
今、搭載している武装は標準の30mm機関砲。ハイドラロケット弾、ヘルファイアミサイル計8発。火力は十分。状況によっては使えないのもあるけど。
『こちら自衛軍第1基地警備隊だ。TF-6は収容したが、敵の攻撃を受けている。こちらの火力では足りん! 急ぎ、航空支援を! 目標は敵車両隊。対空兵器等の脅威はなし。敵とは至近距離! 攻撃を許可する。こちらは緑のスモークを掲げている! オーバー!』
「いた。」
「あぁ。結構やばいな。TF-6、基地警備隊、確認したぞ。結構、至近距離だが大丈夫か?」
警備隊からは至近距離とは言っていた。それでも、近すぎる。誤れば誤射する可能性もある。30mmでも怪しいな。ロケットとミサイルは勿論のこと、使えないだろう。
『構わない! 攻撃しろ!』
門を挟んで味方と敵が撃ち合っていた。
車両を盾に門を越えようとする敵が見える。敵車両も見える。
「了解した。攻撃を開始する。デンジャークロース。ミサイル、ロケットの使用許可。美憂、攻撃開始!」
「ラジャー。ヘルファイア発射!」
自衛軍基地
TF-6 6-1 福田誠
「航空支援がくるぞ! 備えろ!」
『ヘルファイア発射!』
機体は黒をベースとした赤と黄色で見ると圧倒させる塗装をしている、ガーディアン隊のアパッチが見えた。頼むぞ。
「警備隊は後退した! 航空支援に備えろよ!」
門にいた敵及び車両がミサイル着弾と同時に起こった爆発に巻き込まれる。
爆風が車両の後ろにいても感じるくらいだ。至近距離でもここまでとはね。
『機関砲を使用!』
ガーディアン1-1 美憂
「30mm、射撃開始。」
「ガンズガンズガンズ。」
30mm機関砲で敵を掃討していく。いい音と共にバイザー越しに敵がバタバタと倒れていくのが見える。
時よりRPGで狙ってくる奴がいる。
「ロケットを使用。」
ロケット弾は文字道理にロケットのように向けた方向に飛んでいく。無誘導のため、しっかりと狙い敵を無力化するには厳しい。その時はミサイルを使用する。まぁ、その状況次第か。無誘導でも効果は発揮できる機会がある。それは、今のように。
「燃やしてやれ。」
「勿論。」
車両をロックオン。発射。
「ファイアファイアファイアッ!!」
「ミサイル発射。」
2発を敵車両に向けて発射する。真っ黒だ。
「黒焦げだな。」
「車両破壊。」
その後、数名の敵兵を機関砲で攻撃する。
そして、こちらのモニターやカメラ。地上部隊からの報告で排除したことを確認した。
『ガーディアン1-1、敵を全て無力化した。いい腕だ、今度奢るよ!』
「ラジャー、6。中央指揮所、こちらガーディアン1-1だ。」
『ガーディアン1。状況を知らせ。』
18:21
自衛軍基地 中央指揮所
自衛軍司令官 白河美那
『TF-6及び基地警備隊からのデンジャークロース要請により正門付近及び侵入した敵部隊を無力化。味方への被害はない。目標に関してはTF-6が報告した通りだ。報告としては以上。』
「了解だ、ガーディアン。STF及び負傷者を乗せているチヌーク隊がまもなく到着する。護衛任務は終了だ。御苦労だ、ガーディアン。補給を受け、別命あるまで待機を。」
『ラジャー。任務終了、待機する。』
敵重要幹部や指揮官数名、警察官。そして、自衛軍TF-6の隊員2名が死亡したことを確認。
また、仲間を。また......。
「パラディン2-1が到着。負傷者を基地病院に搬送開始。」
ある意味悪運の強い彼らが到着した。良いニュースと悪いニュースと、様々な情報が次から次へと入ってくる。
良いニュース。多くの自衛軍、自衛隊、警察、海上保安庁の隊員らが無事であること。敵の組織について、多くの情報を入手。 しかも、世界中の隠れ家や関係者の情報についても入手できた。
悪いニュース。日本にいる敵幹部、指揮官が死亡したこと。
いや、一番は大切な仲間を失ったことだ。自衛軍では今作戦で参加した作戦で一番死者を出している。
「司令官。死者について、報告が。」
「続けて。」
「自衛隊から。陸上自衛隊特殊作戦群 6名。海上自衛隊特別警備隊 2名。航空自衛隊百里救難隊 6名。」
「救難隊?」
航空自衛隊航空総隊隷属。航空自衛隊の捜索救難(航空救難)の中核を担う組織。その中で、茨城県百里基地に所在しているのが百里救難隊だ。災害派遣等に出動し、多くの人々を救ってきた部隊だ。
「負傷者搬送のため、海ほたるに向かう最中に敵の携帯型対空ミサイルで撃墜されたんです。負傷者はその後、死亡してます。」
「ごめん。続けて。」
もう、聞きたくない。でも、忘れてはいけない存在だ。最後まで聞く必要がある。
辛いのは、報告している隊員でもあり、亡くなった部隊の仲間や家族だ。自衛軍は隊員の一人ひとりが家族のような存在だ。私は司令官。母でいなければ。勝手な考えでもあるけど。
「自衛隊は以上です。警察、警視庁特殊部隊10名。第一、三、五機動隊計45名。海上保安庁特殊警備隊1名。警察、海上保安庁は以上となります。」
「分かった。自衛軍は?」
「自衛軍。陸軍、M1A2エイブラムス・キング隊、4名。デルタフォース1名。TF-6、10名。TF-7、8名。海軍。ネイビーシールズ、6名。イエローバイキング、2名。空軍。特殊任務部隊、20名の全滅。自衛軍、計50名死亡。いえ、戦死。」
戦車隊のキング隊。1台の乗員が全員死亡。TF-6は半数。特殊任務部隊は、全滅。負傷者も多い。
名簿を見るのが怖い。自衛軍に限らず、隊員の一人ひとりに物語がある。
「ありがとう。」
「失礼します。」
敬礼し、隊員がいなくなると同時に座る。
......。代償が酷すぎる。この世界は、これでいいのかな?
「司令官、少し良いでしょうか?」
「? どうしたの?」
「お伝えしたいことが二件。」
TF-6の副隊長。6-1の福田誠だ。先程まで敵目標の護送と基地防衛をしていた元陸自スナイパーだ。血や砂といったものが装備に付き、M4も部品の至る所が壊れている。
「一件目。TF-6の隊長が逃亡しました。6-2らを置いて逃げたそうです。武装した車両で逃げているので警備隊に捜索させています。」
「逃亡か。やはりあの時辞めさせるべきだったわね。」
「いえ。あの時は人員も足りていませんでしたし。それで、二件目です。日本政府、内閣総理大臣からです。”今回の件については感謝申し上げます。今後について、いつかお話ができればいいのですが、いつがいいでしょうか。連絡お待ちしています。TF-0の隊長さんにもありがとうと言ってください。本当にありがとう。亡くなった方々に御冥福お祈り申し上げます。"とのことです。」
お話ね。0指揮官に関しては私の判断は良かった。あの首相とは前に合ったが、このメッセージを送るような人間とは思ってなかった。これで改心でもしたのかな?
「ありがとう。福田さん、お疲れ様。ゆっくり休んで。」
「了解です。失礼します。」
ゆっくり休んで。どの口が言ってんだろうね。
19:00
自衛軍基地 病院棟
STF0-1 海千救一
「検査では特に異常はありませんが、脳震盪によるダメージや爆発時と被弾時の負傷した部分。防弾チョッキで防いだ所で肋骨が折れていますので、数週間は入院ですね。」
「入院中の作戦や行動については?」
「それは、医官が司令官らに報告し、司令官らが決めることですので。とにかく、今は体を休ませることが第一優先です。では、失礼します。」
STFメンバーの状態に関しては、一番最初に説明された。俺が一番知りたいことを言ってくれた。ありがたいな。
チヌークに乗せられ、様々な情報を耳にしつつ病院に運ばれ、治療と検査を受けた。
「まさか、爆発物があそこに仕掛けられていたとはな。」
同じく負傷し、重傷を被ったカマキリこと、真輝。女性専用ゾーンには、イージス/由花。サムライ/春奈。センセイ/雪村が同じ病院棟に入院している。彼女達も負傷したが、生きている。
......。あ。そういえば、HK416とか。どうしたっけ?
「真輝。銃とかの装備、どうした?」
「どうやら山内さんらが持って帰ってきたらしい。伝言も預かったぞ。」
"伝言"
救一の武器なんだが、HK416は壊れていたぞ。これは、直せそうにない。一応、俺が預かるがどうするかは任せる。
それと、由花のグロック。お前が無理に扱ったようであいつが改造していたところが壊れていたぞ。春奈のもな。
「まじか。416、大切にしてたのにな。」
自衛隊STF時代から愛用しているHK416。高価であるものの、俺はとても使いやすい銃だった。任務に合わせた改造や調整でいくつもの作戦を乗り越えてきた。
「あの二人にも悪いことをしたな。」
「あの2人、結構しつこいぞ。」
今から考えただけでも頭が痛い。
一週間後
7月15日
09:12
自衛軍基地 食堂-カフェ
STF0-1 海千救一
食堂と隣接しているカフェ。夜は酒類も提供している自衛軍の軍人にとっては憩いの場の一つだ。
「体はどう?」
「問題はありません。まぁ、もう少し休む必要があるそうですがね。」
なんとか、一週間でだいたいは治ってきた。しかし、まだ作戦に出向くことは難しい。
今日は話があるということで、カフェに司令官の白河さんから呼び出された。
「で、今日はどうしたんです?」
「昨日までの起こったことを伝えるわ。自衛軍は、先の戦いで日本政府及び世界各国。国連に信頼を得た。犠牲も大きかったけどね。その中、アメリカやイギリス政府から今回失った武器や弾薬等の補給。訓練の提案。日本政府は、生活に関する支援や、合同訓練。国連からも支援の連絡が大量に入ったのよ。」
「ほう。それは、軍の士気が上がりそうだ。」
「ただ、問題があって。」
ここまでいい提案と連絡があれば、条件もあるか?
「テロ組織、"カチューシャ"無力化によって脅威はなくなったけど、まだテロの脅威や平和を脅かす存在はある。協力関係の"イーグル・カンパニー"と"守護"とも協力するけど、自衛軍は今後も世界平和の協力をすることになったのよ。」
「まぁ、そうでしょうね。ただ、軍事だけで平和を手に入れるということではありませんけどね。」
軍事だけで平和は訪れるということはない。外交の努力もあってこそだ。
白河さんは一枚の紙を提出する。
「日本政府及び国連からの提案。今後、自衛軍の活動は対テロ警戒と対応。万が一の国際違法の行動をする集団、組織への対応。学校等への危機管理等の教育、支援。」
「結構多いけども、真っ当なことですね。大変ですが。」
「えぇ。それと、STFが機能していない状態は危険のため、新たにタスクフォースを創設することになったのだけど。」
「"TF-0" これが、新しいタスクフォースですか。」
自衛軍特殊作戦軍には、特殊作戦部隊/STF。特殊部隊チーム/タスクフォースといった編成されている。陸、海、空軍特殊部隊も指揮系統には含まれている。因みに、アメリカ軍特殊作戦軍といった組織を元に編成されている
「自衛軍の編成を改編するのは前々から話には上がってましたが、新しくタスクフォースを創設させるのですか? まぁ、反対はしないですけど。」
「良かった。ただ、メンバーはまだ決まっていないのよね。何人かはリストアップしたのだけど。」
「それなら、俺が選びます。上限は?」
「他と同じくらいかな。15名くらいの分隊。」
15名。候補者は35名か。様々な部隊から候補が出ている。
選ぶと言ったが、だいたいは決まっている。
「指揮官は、特殊作戦群/第1特殊部隊隊長の山本結菜。コールサイン、アート。」
「へぇ、どうして?」
「総理の護衛と、敵対象の監視。ここまでの訓練といった成績。指揮能力も上々。十分だ。」
「副指揮官は。そうだな、彼だな。タスクフォース6、6-4の松田翔太。」
「松田君?」
松田と白河さんとは同級生でもあり、顔見知りだ。因みに、結菜と俺は高校時代同じ学校だった。
結菜を指揮官としたのは、経験とスキルが優秀であること。松田を副指揮官にしたのは6の副指揮官、福田の隊での活躍だ。使えない指揮官の代わりに福田と共に戦場を踏破してきたのだ。この2人は、"0"の部隊に似合いそうだったからな。
「そっか。なら、文句なし。他のメンバーは?」
「残りは結菜らに任せたいな。STFの次に最強部隊に仕上げさせればいい。」
「やっぱり、自分の隊が一番?」
「当然だ。最強だぞ。まぁ、それも怪しくなったけどな。」
「あれは、仕方ないよ。」
10:31
自衛軍中央指揮所
特殊作戦室長 神居美郷
「天候、雨。最悪、今日の昼は外で食べようと思ったのに〜。」
「何を食べようとしたんです?」
「久しく、大盛りのラーメンとかかな?近くにできたラーメン屋が有名らしいのよね。」
雨で気温も少しだけ低く、肌寒い。ラーメンでも食べて温まろうと思ったのだけどね。食堂で頂こう。
少し甘いコーヒーを飲みつつ、万が一の時に備える。
「そういえば、イーグルと守護は?」
「イーグルさん達はガンシップで北海道を経由してアメリカに帰ってしまいましたよ。守護の方々は昨日一泊してすぐに拠点に。」
「ありゃ。感謝として奢る話をしていたのに。」
少し残念。彼らも忙しいからね。
テレビは連日、テロ事件の話ばかりだ。こういう時こそ少しは平和なスポーツでも芸能でもいいから流してほしいものだ。
一番苛つくのが、流れてくるのは自衛軍の隊員一人ひとりに装着されているヘッド/ボディカメラの映像を公開しているものを勝手に使い、あたかも自分らが撮ったものとして扱っている。
「ちっ。あの現場を踏んでから勝手に使ってほしいものよ。」
「そうですね。おっ。オーバーロード、第1基地警備隊から報告です。正門に首相が到着したそうです。」
「了解。司令に連絡を。」
そう。今日は日本の内閣総理大臣がくるのだ。
11:00
自衛軍基地 カフェ
STF0-1 海千救一
「聴いてないぞ。首相がくることは。」
「ごめんなさいね。突然。」
どうやら治療中に自衛軍基地に迎えることが決まったらしい。どうなってんだか。
ホルスターにあるグロック18を触る。
「まさか、武装してたの?」
「えぇ。万が一です。今、正門は修理中ですからね。」
「初めまして。山崎七海と申します。」
日本国内閣総理大臣、山崎七海。直接合ったのは今回が初めてである。
就任当時は、日本は少々混乱状態であったためある意味雑な決め方でもあった。就任から今日で3ヶ月くらいだ。最初は仕事もわからないため、容姿だけ評価されていた人でもあった。服装もヨレヨレでメイクも上手いとは言えなかった。今日は、メイクはそこまででも服装はしっかりし、姿勢も日本のトップの姿勢である。
「お久しぶりです、山崎さん。自衛軍司令官の白河です。」
「自衛軍特殊作戦部隊指揮官の海千救一将補です。」
流石に戦闘服の下に着る服とはいかなかったので、慌ててYシャツを取り出した。流石にヨレヨレではないぜ。勿論、武装も少ししている。
「こんにちは。その折は、有難う御座いました。」
深々と礼をする首相。後ろのSPを除く秘書といった御付きの人も深々と礼をする。
礼されてもな......。
「顔を上げて下さい。もう、終わったことです。」
「さ、座って。」
なんとか座らせることができた。にしても、頑なに座らなかったな。
グロックを装備していることをSPにバレないように座る。
「今日は、今後のことでお話が。」
「えぇ。様々な機関から協力してくれるという連絡が引っ切り無しに。」
「こちらにも連絡が複数ありました。まぁ、こちらに連絡していない国、機関等があるのでしょうけど。」
何件かはあった。非公式に行えるのもあったが、国際法に抵触する可能性及び違反する内容も含まれていた。自衛軍創設時に施行された法で自衛軍の行動に一つ一つに制限がある。面倒なものから国際法に遵守するものも。
「ルールに従って行動します。民間人や国際組織等への攻撃はしませんし、違法な行動もしません。民間軍事会社の立ち位置ですが、一応、国際機関の一部でもあるのですから。」
国際連合の管轄にも一応入っているのだ。常任理事国は管理しない規定となっている。
「国連からの連絡でして。今後、自衛軍の管理は日本がすることになりました。今後も責任等は国連が持つことになります。」
「それを、なぜ軍ではなく、政府に?」
「さぁ。管理を国連から日本政府に移すことになって初めての連絡だからか、国連事務総長が首謀者で気まずいか、苛ついているか。」
......。絶対、後者の二つだろうな。
すると、一枚の紙を秘書から首相に渡している。それを、机に置いた。
「これは、新しい依頼です。自衛軍に所属する方々が民間の学校や企業に対して、防犯訓練や警察機関との警備等の協力です。」
「司令の立場からすれば、依頼がルール範囲内ならやります。」
「司令が受けるなら俺らはやります。ただ、今は人員が不足しています。そこは、覚えてもらえるとありがたいです。自衛軍軍人も、一人の人間であり家族もいますので。」
命を懸け、命令あれば任務を遂行する軍人。軍人はロボットではないし、おもちゃの兵隊でもない。一人の人間であり、家族がいる。
事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓っている人達だ。
それは、自衛軍人も同じ。家族がいる。付託にこたえる存在は違っても、身をもって責務の完遂に努めている。いいかね。俺らも人間なのだ。
「勿論です。」
その言葉にどのような感情があるかは知らないが、重みがあるのは感じた。信頼できる人なのかもしれないな。この人は変わったようだな。
「最後に。今回の作戦名について、問い合わせが相次いでいます。歴史に記したいみたいですね。」
歴史に記す......か。敵は生涯、悪役として存在し続けることだろう。だが、彼らが主張していたものの一部には理解できるのもあった。全てではないが、敵に同情できるのもある。
関係ないかもしれないが、敵だあった彼らは最後まで正義を掲げていたのだろうか。
作戦中に見たあの目。今でも忘れられない。
だが。
自衛軍司令官 白河美那
歴史に記す。歴史は勝者が記す。これは、今も昔も変わらない。
彼らは武力。暴力で現状を変えようとし、無実である人々を傷つけていた。その無実の人々も見て見ぬ振りをしているのも事実ではあるのだけでも。
この辛さは私達ぐらいだろう。敵は分からない。......敵指揮官はそんなことは一ミリないだろうけどね。
この辛さは。この痛みは。どこに言えばいい。訴えればいい。
歴史に記し、後世に伝えていく必要がある。だが、自衛軍軍人が全員同じとは限らないかもしれない。
「司令、作戦名を。」
自衛軍特殊作戦部隊指揮官の海千救一が私を真っ直ぐ見ている。
そっか。何を迷っていたんだろうね。
「作戦名は......。」
『現代の防人』
序章【現代の防人】 終
次章【自らの意思で】
"It doesn't take a hero to order men into battle. It takes a hero to be one of those men who goes into battle."
- General Norman Schwarzkopf
英雄が兵士を戦わせるのではない。戦った一人の兵士が英雄となる。
―― ノーマン・シュワルツコフ陸軍大将
「歴史は勝者によって書かれる」
イギリス首相を務めたウィンストン・チャーチルが語ったとされる言葉