現代の防人
奇襲、速攻、勝利
7月8日
06:00
東京都 東京港
自衛軍
陸軍 特殊航空戦闘旅団 戦闘ヘリコプター隊
AH-64E ガーディアン1-1
ガンナー・鷲村美憂
「目標、破壊! ナイスショット、美憂!」
「ありがとう、菊池さん。」
簡単だったけど、褒められるのは嬉しいものね。
さ、敵を探しましょう。
今、敵テロ組織"カチューシャ"が乗っていたコンテナ船の敵部隊・物資を攻撃中。
(なぜこのようになっているかは、前作『非公式任務・制圧』を御覧ください!!)
状況によっては空軍が所有する戦闘機や攻撃機(F-15/5機、F-16/5機、A-10/2機)による対艦攻撃をする予定。
『指揮所よりガーディアン1-1。状況知らせ、オーバー』
「こちらガーディアン1-1だ。敵コンテナ船の敵は沈黙しつつあり。しかし、依然として攻撃を受けている。また、敵対艦ミサイルを無力化。艦艇の脅威はないと言えよう。オーバー」
『こちら指揮所、了解。ガーディアン1-1は、そのまま......。ガーディアン1-1、攻撃を中止せよ。繰り返す、攻撃中止! 敵コンテナ船から降伏する白旗を揚げたのを海上保安庁が確認した。』
「了解! 総員へ、攻撃中止!撃ち方やめ。」
白旗、白旗......。あ、あれだ。武器を捨てた敵が立っている。安全装置で武装を制限する。
国際VHF(船舶共通通信システム)とかで呼びかけできんかったのかな?
「甲板からじゃなくても船倉とかから通信できたろうに。」
「言い訳になるぞ。気づかなかった俺らも落ち度だ。」
菊池さんらしい発言だね。
今のうちに残弾確認っと......。
『こちらR国籍のコンテナ船"カチューシャⅡ"。こちらは降伏する。これ以上の攻撃はやめてくれ!こちらは平和的解決を要請する!』
「テロ組織が何言っているんだよ、畜生め。」
「嫌な予感がする。これだけで終わるとは思えないです。」
「あぁ。俺もだ。総員へ、警戒せよ。」
違和感、違和感......。
そういえば、今回機関砲、あまり使っていないな......。あ。
06:25
自衛軍基地 中央指揮所
自衛軍司令官 白河美那
「コンテナ船、無力化確認。シールズ及び海保と海自の立検が行動開始。」
「空軍機は帰投せよ。別名あるまで待機!」
何かがおかしい。こんなに順調にいく作戦などない。
東京都及びその周辺の県は警察や海上保安庁の警戒と警備。自衛隊も協力してくれている。こんな厳重警戒だ。違和感があるはずがない。
いや、この考えがアウトだ。冷静になれ。
『こちらガーディアン1-1。少し発言よろしいか?』
「続けろ、ガーディアン。」
『ガンナーの美憂が気づいたんだが、このコンテナ船に敵の人員がほとんど乗っていなかったんだ。』
人がほとんど乗っていない?
「司令。シールズの小隊長から報告です。コンテナ船に侵入し、ブリッチを確保したそうなのですが人がいなかったそうです。というか、白旗を揚げた敵二名しか発見していないとのこと。」
因みに、自衛軍部隊は部隊名称に規模のでかい部隊名をつけている。
例として、ガーディアン1-1が属する陸軍特殊航空戦闘旅団は、旅団となっていても旅団規模ではない。 海軍の艦隊も、"第1"とあっても、陸上自衛隊第1空挺団のように第2、3の艦隊はない場合もある
「司令。日本政府、内閣総理大臣よりお電話です。」
「そろそろ問い合わせがあるかと思ったけど、意外と遅かったわね。」
こちらはこちらの仕事だ。現場とは違うが、思いは同じだ。
07:20
東京都 東京港
敵カチューシャ・コンテナ船(先のコンテナ船とは別)
自衛軍 海軍海軍特殊部隊・ネイビーシールズ チーム1・アルファ
アルファ指揮官 中野悠人
『総員へ。現在攻撃中の敵コンテナ船は陽動だ。こちらが指定するコンテナ船等を確認せよ。』
『アルファ指揮官、こちらオーバーロード。敵船舶の目標は、計3。その中でも、コンテナ船が最優先目標である。急ぎ、制圧を。』
「こちらアルファ指揮官、了解。アルファ総員へ、こちら指揮官。敵船舶三隻の内、コンテナ船が最優先目標となる。我が部隊は、そのコンテナ船を制圧する。以上。」
自衛海軍特殊部隊/ネイビー・シールズ。シールズ指揮官であり、シールズでは精鋭部隊チーム1の指揮官、中野悠人。
俺ら、チーム1は、計20名の隊員で編成されている。そして、MH-60Mに搭乗し、この東京港で行動していた。人数は少ないが、自衛軍内でも精鋭部隊だ。
どうやら、自衛軍部隊の編成を変えるそうだが......。
「こちらカワセミ2-1、目標確認。デッキ付近に接近する。」
『こちらガーディアン1-1。カワセミ隊を援護する。』
ブラックホークのM134 ミニガンをガンナーと、攻撃ヘリのガーディアンが支援してくれている。降下中に敵が現れた時には攻撃をしてくれる。
「降下用意! 降下地点には敵はいないとの報告だが、油断するなよ。」
「ロープ。 ゴーゴーゴー!!」
ファストロープを投げ、降下開始だ。
ファストロープを用いるこの降下は素早い降下ができる利点があるも、器具は使わないため手をロープから離せば落下し、最悪死亡する。
『チーム1が降下完了。カワセミ全機は離脱する。』
『こちらガーディアン1-1。引き続きチーム1の支援を行う。』
操舵室があるブリッチに降下し、操舵室への突入準備をする。
この船には敵しかいない。ダイナミックエントリーによる突入だ。
板状のC4爆弾をセット。
合図で爆破。
フラッシュバンを投げ入れる。
突入。
「クリア!!」
「Moving! オーバーロード、こちらアルファ指揮官。操舵室を確保、これより船内を確認していく。」
『オーバーロード、了解。』
隊員らの後ろからついていくが、キッチリと射殺している。流石、俺が見込んだ奴らだ。
Mk.18を使うことなく、進んでいく。
『指揮官。敵を一掃しました。他の場所はチーム2が片付けたようです。それと、降伏した敵がいます。』
「了解。すぐに向かう。」
チーム2は立検を主任務とする部隊だ。専門部隊であるため、知識は俺よりもある人間が多い。
さて、捕虜を拷問でもして、情報を吐かせるか......。
『こちらカワセミ2-3。捕虜の輸送のために待機中。いつでも、どうぞ。』
『こちらガーディアン1-1。他の敵船舶は他部隊が無力化してくれた。ゆっくり、絞り上げろ。』
上部甲板
「さぁ、吐け!」
「お前らの狙いは? ここで何をするつもりだ!?」
暴力をすることは今はしない。ここではな。
完全武装の隊員が敵を囲み、圧で情報を吐かせる。しかし、なかなか吐かない。
どうしたものか......。
「吐け!」
『こちらスター3-1。そちらより、10時方向より侵入する。』
「? スター?」
MH-6を見ると、オーバーロードこと、神居美郷が乗っていた。
おいおい。STFやデルタの指揮は?
「オーバーロード。どうした?」
「締め上げる。」
「まさか。奴を? マスコミに見られませんかね?」
自衛軍がこのように公に姿を見せたのは、この作戦が初めてだ。民間軍事会社だからといって暴力や拷問を公の場で見せることは絶対にないようにしなければ......。
「ねぇ、君。取引きしない?」
「......。」
この男はずっと黙っている。ベネリM4 散弾銃を持った隊員が突入した時に......。
アルファ3-3
「3、2、1、ゴー!」
フラッシュバンが投げ込まれ、ほぼ起爆と同時に突入する。
ベネリM4は、イタリアのベネリ社製の散弾銃。この部隊以外にも重宝されつつある。
1.正面のAKを持つ敵
2.拳銃をホルスターから抜いている敵
3.AR-15を......。投げ捨てた!
4.投げ捨て、降伏した敵は無視。
5.慌てて、落ちていた武器を取ろうとした敵。
6.もう一名。降伏......。いや、見せかけてこっちに接近。
「動くな! こっちに来るな! 撃つぞ!」
7.ナイフ。止まらない。無力化。
クリア。 以上
「クリア!」
「こ、こっ、降伏する!」
「両手を挙げ、膝を付け!見えるように、ゆっくりとな!」
アルファ指揮官 中野悠人
「降伏した時は、あんな弱々しいしかったのに......。」
ベネリM4のショットガン持ちがボソッと言うのが聞こえる。
さて、元自衛隊特殊作戦室室長の交渉術。いかがなものかな?
「取引き。わかる? 子供でも分かる言葉だよ。君が知っていること、聞いたこと。一つでも話したら、開放するし、殺さない。永遠に安全に暮らせる。どう?」
「信用ならないな。」
口を開いた。
「これを......。」
09:00
東京都 国会議事堂前
自衛軍 陸軍機甲戦闘師団 第1戦車大隊
キング1 小田美九
自衛軍には大隊でも規模は2個小隊だの戦車小隊がいる。つまり、一個小隊が4台で編成されているため、計8台の戦車部隊だ。
第2、3戦車大隊は存在せず、ストライカー旅団や特殊航空戦闘旅団(ガーディアン隊 等)と共に、この師団に戦車、戦闘ヘリ、装甲車等の部隊が編成されている。
戦車大隊長である小田美九 一等陸佐。元々は、陸上自衛隊第2師団第2戦車連隊に属していたが、美九自身の理由で退職、彷徨っていたところを自衛軍に拾われた。性格は、自衛軍所属の隊員らからすると、可愛らしいものだ。
「隊長。敵の狙いが再度分かりました。指揮所からの文を読み上げます。」
【自衛軍全部隊へ】
本作戦に従事している全部隊へ通達する。
敵の狙いが再度確認できた。
敵は東京都を襲撃するという計画は先日の特殊作戦部隊らによって判明したが、詳細の位置は不
明だった。敵は、東京他、アメリカやイギリス、ロシア、中国の首都に位置する国会や首相官邸、省庁を
襲撃する計画だったようだ。また、計画実行日も本日という情報だったが、東京港における敵の失敗や準
備の遅れにより明日に延期になっている。
以上より、自衛軍は撤収を開始。国会周辺地域の警戒は警視庁及び自衛隊に任せることになった。
出撃中の部隊は、直ちに撤収せよ。
以上 特殊作戦室室長
「以上です。」
「しかし、敵の狙いがよく分かったな。」
「どうやらオーバーロードが"取引き"という戦法で情報を吐かせたようです。」
あれか。あれは、きついと聞く。敵さんも大変だな。
さて、撤収だ。
「戦車全車、撤収用意!」
『ストライカーは離脱開始。』
09:04
東京港
自衛軍 ガーディアン1-1
「ガーディアン全機、離脱だ。」
『こちらチーム1。援護感謝するよ。』
「こちらこそ。」
対空兵器持ちを排除してくれたシールズの彼らにも感謝しなければ。勿論、援護を直接しているのはガンナーの美憂だ。どうせ、デートでもお願いするんだろうな。
「お疲れ、美憂。期待はするなよ?」
「どうでしょう。」
おや。これは、大変なことになるな。
10:00
自衛軍基地 中央指揮所
自衛軍司令官 白河美那
「全部隊、撤収完了しました。」
「分かったわ。さて、皆に集まってもらったのは敵の計画への対処よ。」
「STF、TF、デルタ、シールズ。SWCC、特殊航空部隊の指揮官を集めたからには、特殊戦ですか?」
STF指揮官の海千救一がイラツイた顔をしながらこちらを見ていた。
ま、理由は分かるけども。
「全軍を撤収させた理由は、政府からの命令だ。国連とアメリカからも命令されたからには、撤収しなければならない。規則には独断行動は、国連と二カ国による撤収命令があれば撤収しなければならないというルールだ。仕方ない。」
デルタ指揮官の千崎が腕を組みながら、キレていた。
ある意味、鬼神の連中が集まっている。色んな意味でね......。
「さて、本題よ。テロ組織の狙いを知った日本等の政府は軍や警察機関を動かし、対処を始めている。敵のいる隠れ家が一番多いのは、日本だ。諜報員が多い国でもあるからこそ、潜伏しやすいんだろうね。ここで、日本政府は治安出動を発令し、自衛軍に協力要請を出した。」
「!!」
あの首相が、"治安出動"を!? という顔している。......笑.
治安出動とは。
「間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては、治安を維持することができないと認められる場合」には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる(自衛隊法78条1項)。同条に基づく治安出動を「命令による治安出動」という。
・命令による治安出動では、内閣総理大臣は、出動を命じた日から20日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない(自衛隊法2項)。
・ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会において、すみやかに、その承認を求めなければならない(同条項ただし書き)。
・国会により、不承認の議決があったとき、又は出動の必要がなくなったときは、内閣総理大臣は、すみやかに、自衛隊の撤収を命じなければならない(同条3項)。
「マジか......。」
「ということで。今回は、陸上自衛隊特殊作戦群、海上自衛隊特別警備隊。警視庁特殊部隊。海上保安庁特殊警備隊と合同で敵の掃討を実施する。」
7月8日
12:30
東京都江東区 海浜公園入口 交差点
敵テロ組織"カチューシャ"
『自衛軍による独断行動という情報がネット上で溢れる中、自衛軍の存在を危険視する声が高まっています。また、日本政府も自衛軍の管理について話し合う必要があるという声も−。』
『自衛隊の行動が命令等なしに行動したとして、政府はー。』
「この国のマスコミは使える。いい意味でも、悪い意味でも。」
「そうですね。しかし、どうしますか?」
俺は、東京港から逃げてきた同志を回収し、隠れ家に逃げるところだった。
正直、逃げ場がなくなりつつある。これで、この世界は変えれるのか?
ん?
同時刻
女子高校生
「今日、この後どうする?」
「そうだね〜。」
たまたま今日は学校がすぐに終わり、お台場をぶらぶらと友達と歩いていた。
何かしらイベントがやっているのかな? 人が多く感じる。
「何かやっているのかな? 人がいっぱい。」
「あれ、あの車。」
敵車両
「! 右から車だ!」
「くそ、何だ?」
目の前にピックアップトラックが急に出てきた。こちらを塞いでいる。
どうする? 敵か?
「下がれ!」
ドライバーに怒鳴り、車を下がらせる。
だが、無駄だった。
「後ろにもいるぞ!」
1分前
自衛軍 特殊作戦部隊/STF
STF0-1 海千救出一
『こちらリーパー3-3。敵車両が1、そちらから5m位置。赤信号で止まっている。武装の有無は不明。オーバー』
「こちら0-1、了解した。前進だ!」
運転手のSTF3-4/東雲公平がピックアップトラックを動かし、交差点に侵入する。荷台にはブリーチング担当のSTF3-1/鎌木真輝とSTF3-2/杉山由花が待機いている。
「敵の目の前に行くぞ!」
「展開用意! 誤射には注意。」
敵車両の前に停車した。
「展開!」
持っているHK416を握り、ドアを蹴り飛ばすように外に出る。
由花が盾を持ち、真輝を守るように立ち回る。
真輝は車両のフロントガラス破壊用の斧を構え、フロントガラスを破壊する。
運転席に銃口を向ける。安全装置は解除されているため、いつでも撃てる。
車両正面に俺とSTF2-0/山内考尚。右に由花、左にSTF3-3/水瀬春奈が。後方にSTF5-2/奈良陽光、STF5-3/根元高二が展開する。各員は、銃口を向けた射線上に味方、民間人がいないこと場所にいる。
「撃て。」
頭、頭、胸。
フロントガラスには敵の血が付着する。ドアを開け、再度頭と胸を撃つ。
公平が爆発物がないか確認してくれる。
銃撃戦で盾にできるレベルの装甲ではない。だからこそ、このような敵が車両に乗っている場合でも車外から撃っても無力化できるのだ。逆に言えば、味方や民間人への誤射の恐れもある。
「クリア。」
「クリア。オーバーロード、こちらSTF0-1。敵車両沈黙。予定通りに余所者に伝わっただろう。」
『こちらオーバーロード、了解。予定通りに行動開始。』
「ラジャー。」
12:34
東京都港区 敵テロ組織カチューシャ/隠れ家・会社事務所
自衛軍 陸軍特殊部隊・デルタフォース
千崎龍介 デルタリーダー
「警視庁特殊犯捜査係ですか?」
「そうです。今回は共に戦えて光栄です。」
「こちらもだ。さ、早速作戦を開始しよう。」
敵の潜伏する事務所からは見えない位置にデルタの総勢20名とSITEの隊員が集まっていた。
周囲を歩く民間人は、何事かとこちらを立ち止まって見ていた。
『総員へ、作戦開始。』
「ゴーゴーゴー!」
突入のために使う梯子をSITの隊員が3人走り、3ヶ所に設置する。
目標の事務所は二階建てだ。全ての出入り口から突入する。
「設置!」
『こちら1班! 一階より侵入する!』
「こちらデルタ、二階より侵入!」
梯子を使い、窓の前につく。ブリーチングハンマーで窓ガラスを破壊し、そのまま事務所に投げ込む。
隣にいた隊員がフラッシュバンを投げ込んだ。
「フラッシュアウト。」
「突入!」
ダイナミックエントリーにて事務所に突入する。
AA-12の味を敵に叩き込む。
AA-12は、アメリカ合衆国のミリタリー・ポリス・システム(MPS)社が製造する、珍しいフルオート射撃が可能な軍用散弾銃だ。今は、32発入りマガジンを装填し、ライトやフォアグリップを装着、自分が使う上で改造したこの武器はとても好きだ。
正面、AKの敵。右、ハンドガン。その少し奥、AK。
デルタ2-2
中央と左側の空間は、指揮官や2-1らが対処する。右側の空間は俺とデルタ3-2と共に対処する。
デルタでは全員の標準装備となっているSCAR-H。これを使い、敵を倒す。
正面、ナイフ。右にショットガン持ちとUZI持ち。 ......む、自爆ベストを取ろうとしている。優先排除。
千崎龍介
「敵を排除!」
『一階クリア。二階に向かいます。』
「待て。こちらのクリアリングはまだだ。スタンバイ。隅々を確認しろ。」
机の下、段ボールの影、ごみの山。隠れることのできる場所は多い。気をつけなければ。
取り回しやすいグロック18を取り出し、細かく確認する。
「こちらはクリアです。」
「こっちもクリア。」
「オールクリア。爆発物は、その自爆ベストだけのようだな。総員へ、事務所を制圧。後始末は警察に任せるとしよう。デルタチームは、次の場所に移動準備!」
グロックをホルスターに戻し、一階に行く。一階と二階への階段には爆発物や敵の存在はないことは確認をしてくれていた。安心して行ける。
『こちらオーバーロード。次の目標地点に向かえ。次は特戦群との共同作戦だ。』
「こちらデルタリーダー。了解した。」
一階に到着すると、SITの隊長がいた。手を出している。
「今回はありがとう。いつか、また合えることを。」
「こちらこそ。では。」
握手。たった漢字二文字で書く単語だが、この握手は忘れることはない。
同じ思いを持つ同志だった。
12:43
東京湾 海ほたる
女性 高校教師
「いやいや〜。意外と綺麗な景色で。」
「これが夕日の時間だと、もっと綺麗なんどろうな〜。」
休日を利用し、昔からの友人ら三人と近場で出かけていた。
まだ学校はある。テストは完成しているから、明日で再確認して終わりだ。夏休みは部活や補習で忙しくなる。今のうちに休もう。
「ところでさ。あの子、どうしているかな?」
「? 誰のこと?」
「ほら、連絡が突然としてできなくなった子。」
「あぁ、あの子ね。」
あの子。それは、私達と同じ同級生でとても仲の良かった子だ。名前は、賀川愛生。
大学卒業後、彼女の祖父母が経営している旅館の手伝いをしているということは聞いた。高校の教師2年目の時に久しぶりに、このメンバー全員で合うことになった時に唯一、連絡が取れずに今日に至った。
「旅館がどこなのか知らないのよね。」
「また笑い合いたい。あの時のようにね。」
「そうだね。」
綺麗な海を眺めつつ、波風に当たる。永遠の時間だ。
「......。あれ?」
「どうしたの?」
高校・大学では射撃部で活躍し、今では立派な射撃の選手だ。
指を指す方向に目を向けると、船首をこちらに向けて進んでいく船がいた。
「ちょっと、不味くない?」
「うん。嫌な予感がする。」
警察官の子が仕事の目になっていた。
どうやら、周囲にいた人達も気づき始めたようだ。スマホを片手に撮影している。結構危険な行為かも。
「このままだと、ここにぶつかるかも。」
「? 船首に人影が......。」
すると、こちらに何かが飛んできた。
そして、カッターフェイスの巨大モニュメントに何かがぶつかり、爆発する。
「え?」
何が起きたの?
爆発して、それに巻き込まれた人が......。
「きゃーーー!!!」
女性の悲鳴が響いた。しかも、モニュメント周辺にいた人が次から次へと倒れる。
何が? どうなっているの?
「伏せて! 銃で攻撃を受けている!」
「どういうこと? 何が!?」
悲鳴。怒声。何かが当たる音。過ぎ去る音。倒れる音。
声を出したくとも出せない。嫌だ、死にたくない!
モニュメントの方を見ると、黒い影が見えた。
本当にやばい。逃げなきゃ、逃げなきゃ! 体が動かない。 走らなきゃ。
「全員殺すんだ。行け!」
黒い服装の集団がこっちに歩いてくる。よく見ると、銃を持ってる。あれで全員殺すんだ。
逃げなきゃいけないのに。腰が抜けて、動けない。
すると、警察官の子が銃を持った男に飛びかかった。
後から聞いた話だけど、黒い集団はバラバラに行動しているから、一人なら対処できると思ったんだという。でも、とても強い彼女でも敵わなかったそうだ。銃で殴り倒され、ナイフで刺されてしまった。
「うぐっ。」
誰か。助けて!
「攻撃開始!」
後ろから銃声が響き、今度こそ死んだと思った。
......。あれ?
「クリア! 負傷者を確保、非戦闘員を避難させる。指揮官、こちらはクリアです。」
自衛軍 海軍特殊部隊/ネイビーシールズ チーム1
賀川愛生 アルファ副指揮官
『指揮官了解。敵船舶一掃まで30秒だ。A-10で破壊する。誘導頼むぞ。』
「ラジャー。3-1、頼むよ。」
「了解です。」
自衛軍には本当にお世話になっている。大学卒業後、友人らには旅館経営している祖父母の手伝いに行くと言ったが、あれは嘘だ。自衛軍に入隊したのだ。
航空自衛隊 航空総隊 警戒航空団 飛行警戒管制群 第602飛行隊 E-767
「自衛軍より渡された航空支援マップを確認しろ。自衛軍のスカイシャーク隊をキルボックス2-Aへ、デンジャークロースに注意せよ」
「ホッグ隊へキルボックス1-Aへ向かわせろ、100ft 先に友軍、デンジャークロース
「攻撃区域内に友軍あり」
今回、自衛軍と自衛隊、警察、海上保安庁との共同作戦。治安出動が発令されたため、この早期警戒管制機も出動し、自衛軍もサポートしていた。
『こちらアルファ3-1・JTAC。赤色のスモークの北側に攻撃せよ。キルボックス 2-Aへ飛行、敵と交戦せよ。攻撃針路は西、攻撃を許可する。攻撃管制、ホッグ隊の状況送れ、オーバー』
「スカイシャーク2-1、こちらゴットハンド、状況送れ、オーバー」
自衛軍 A-10 スカイシャーク2-1
「こちらスカイシャーク2-1。こちらは海軍艦艇上空。まもなく到着する。到着まで1分!攻撃準備良し。」
『こちらゴットハンド。地上に赤色スモークでマーキングしてくれる。目標の大きさはでかいため、簡単に当たる。攻撃を許可する。船を吹きとばせ。地上には友軍他、民間人がいる。至近距離における航空支援だ。デンジャークロース。』
「デンジャークロース了解。攻撃まで30秒!ミサイル、機関砲準備良し!」
『こちらアルファ3-1。目標はデカブツだ。中型の船、対空兵器なし、友軍及び非戦闘員が近くにいる。注意せよ。」
「2-1了解。スモーク及び目標確認。攻撃開始、デンジャークロース!!」
賀川愛生
『1-0、攻撃まで10秒!』
「伏せて。」
民間人を攻撃目標から遠ざけ、隊員らが民間人の上に覆いかぶさる。
同時に、ミサイルの発射する音とA-10どくどくの機関砲の音が響き、爆発が起こる。
Boooooooooo!!!!!!!!!!
キューーーーーーーッ!!!!!!!
『こちらアルファ3-1。目標に命中、敵船舶破壊。周囲にいた敵をも一掃した。全目標を破壊及び無力化した。いい腕だ。支援に感謝する。他に敵影なし、任務完了だ。』
『こちらスカイシャーク。全目標を排除。任務完了、帰投する。』
チラリと見ると、敵船舶は破壊され、敵部隊は無力化されていた。しかし、モニュメント周辺には敵がまだ複数いた。
メンバーに目を配る。そして、地面においていたM4A1 SOPMOD-IIを持ち、敵を一掃する。
隣にいるMK48 Mod 0を持つ隊員が制圧射撃を敵にお見舞いする。
「撃ち方やめ! リーパー2-1、こちらアルファ1-0。そちらから敵は確認できるか?」
『こちらリーパー2-1。敵は確認できない。現時点ではクリアだ。』
「了解。シールズ総員へ、モニュメント周辺はクリア。」
『こちらシールズ指揮官。シールズ各隊は、モニュメントをLZとし回収ヘリに民間人を収容する。行動を開始せよ。』
銃口を下げ、安全装置をかけ、民間人の方を見る。
あれ? この人とこの人。それに、この人。......。あ。
「副長?」
「あ、ごめん。アルファ総員へ。こちら1-0。これよりLZを設置し、受け入れ準備を開始する。また、アルファ2、4は民間人を護衛せよ。3は、ヘリの調整を。」
「イエッサー。」「ラジャー。」『3、了解!』
近くの海域には自衛軍所属の艦艇と海上自衛隊、海上保安庁の艦艇が待機しており、そこからヘリが展開し、民間人を艦艇か近くのヘリポート、病院等に運ぶ。海ほたるにおける敵や爆発物等の捜索はシールズの各部隊が担当する。
さて、民間人に説明を......。
「愛生? 愛生なの?」
ゑ? ......。 ゑ?
どうして分かったの?
「愛生? ごめんなさい、自分は愛生ではありませんよ。」
自衛軍に入隊
=入隊したことを親や家族、恋人、友人であろうとも伝えてはいけない。
これは守らなければならない。
やっぱり、彼女らだ。小学校から大学までほとんど一緒だった彼女ら。本当ならば今すぐにでも素性を明かし、再開を喜び合いたい。でも、それはできない。
「失礼。アルファ2−1、説明してあげて。」
「イエッサー。……これが、彼女の電話番号とメールアドレスです。」
……る? 何で電話番号とメールアドレスなんかメモって渡しているの!?
「いや、ちょっ、待てよ!」
「忘れたのですか? 指揮官。いや、司令官から言われたではありませんか。そろそろ素性を明かし始めても良いと。」
? そうなの?
……あ。そういえば、少し前に司令官からそんな話があって、海軍の艦艇が海自のイベントに参加した時に素性を明かしていたような…。
「まったく。とにかく、副長は行って下さい。はい、これがあの人が愛生さんであるか、今度分かりますから。」
「愛生……。本当に愛生なの?」
「それは彼女から話すこと。私は話せません。」
M4を握りしめ、泣くのを我慢する。
サングラスを外し、少し滲み出た涙を拭き取る。
「…またね。」
振り返らない。特殊部隊でも泣きたい時はある。振り返ると本当に泣いてしまいそうだ。
13:00
アルファ指揮官 中野悠人
『良かったのでしょうか、指揮官。』
「構わないよ。司令もそろそろ自衛軍を影から光の当たる場所に出す必要があると考えていたみたいだしな。そろそろ羽根を伸ばす必要もあった。」
ここ最近は、テロ組織への対処に引っ張りだこだった。STFやデルタ、シールズ、TFチームは忙しい日々だった。プライベートなど、『なんそれ、美味しん?』という隊員もいるくらいだった。
『では、今度また話をします。』
「ああ、勿論だ。......シールズ総員へ、フェーズ3に移行する。」
13:16
埼玉県 川口市 敵隠れ家
陸上自衛隊特殊作戦群 第1中隊 第4小隊
第4小隊 小隊長 六上鐸下
『総員へ。作戦開始、作戦開始』
ショットガンを持つ隊員が、ドアを壁と固定している場所を狙い、発砲する。
撃ち終わり、ドアを蹴り飛ばすと同時にフラッシュバンを投擲する。
「突入。」
長く広い廊下。日中の作戦ということもあり、明るかった。
玄関に入り、左、右に隊員が入り、正面に自分が入る。
ホロサイトの先に見える敵。AKを持っている。
撃つ。
「玄関、クリア。」
「4-1は右の部屋に侵入する。」
「3-1は左を調べる。」
「5-1は、玄関及び廊下で待機。2-1、階段前へ。」
M4A1を持ち、警戒しつつ階段手前まで進む。他の部屋に侵入した班が発砲したと思われる銃声が聞こえてくる。住宅街ということもあり、サプレッサーが装着されているがサプレッサーがあっても銃声は少ななからず聞こえる。
『こちら4-1。敵を無力化、こちらはクリア。』
『こちら3-1。部屋を制圧。』
「了解。2-0、4、5はここで待機。2、3は二階に向かう。」
「了。」
壁につき、銃口を二階の方向に向ける。上から足音が聞こえる。
こちらの存在は気づいている。つまり、反撃してくる可能性は十二分にある。
「正面、何かいる。左、右の部屋。ドアが開いている。」
敵の隠れ家は、二階建て。廊下は広いし、部屋の一つひとつが広い。作戦前の確認でも分かっていたが、とても広くでかい建物だ。正直羨ましい家だ。
「2は右、3は分かれて俺と右の部屋と正面だ。ダイナミックで行け。」
フラッシュバンを二個ずつ投げ入れ、邪魔な家具があれば蹴り飛ばしたり、敵とまとめて撃ったりした。
俺と3-3が担当した右の部屋には敵が一人。なんとびっくり。刀持ちだった。
特殊作戦群 ファルコン2-1
フラッシュバン起爆と同時に部屋に突入し、敵を判断。
計4、武装した敵3。内一名は非武装、人質と思われる。
MP7A1のサイトを覗き、敵の脳天と心臓を撃ち抜いていく。9mmの至近距離攻撃は痛いだろう。
2-2、2-3、2-4、2-5もMP7A1を使い、敵を倒す。
「チェック!」
死体と思われる敵に脳天と心臓部分を撃ち、完全に無力化したことを確認する必要がある。
俺含め4人の隊員が3人の敵の無力化を確認する。残りの二人は援護する。
「OK。」
「無力化。」
残りはこいつだ。
「まって、危ない!」
? 何だ?
サイトを覗き、引き金を引こうとするタイミングだった。
「残念だね。」
心臓を撃たれていた。でも、動いている!
急ぎ引き金を引き、脳天を撃つ。
くっそ!
ファルコン3-1
「ゴー!」
敵2。拳銃所持。
M4A1の引き金を引き、無力化する。至近距離における拳銃は恐ろしいものだ。まぁ、一番恐ろしいのはナイフでもあるけど。
「クリア。」
「クリアだ。」
死体撃ちで完全に無力化したことを確認し、敵の拳銃から弾倉を抜き、薬室から弾薬を出す。完全にクリアな状態にする。
「イーグル指揮官。3-1です。こちらはクリアでー」
報告の途中で大きな爆発が起こる。
!?
「何だ!?」
「2の部屋から爆発です。」
『総員へ。爆発物に注意。4-1上がってこい。』
『了解、4-1は移動する。』
ファルコン2-1
......。 ......。 ......。
『了解。総員へ、爆発物の警戒を解け。この建物はクリアだ。』
「おい、担架を! 急げ。」
......。遠くから仲間の声がする。
力が入らない。目も開かない。暗い。
「2-1! くそ、人質の女性はクリアだ。この人も運べ!」
「メディック!! 2-1以外は軽傷だな。」
どうやら重傷なのは俺だけのようだな。痛いような、痛くないような。
ん? 体が持ち上がっている。
「運ぶぞ!」
「回収はどうするんです!? 爆発で周辺の民間人が集まってきています。」
「無視だ。家の前にある駐車場に自衛軍ヘリが回収にくる。おい、2-1。しっかりしろ!」
運ばれているのか。病院に?
俺は。助かるのか?
13:32
神奈川県 横浜港
海上自衛隊特別警備隊 /自衛軍特殊作戦航空連隊・MH-60M コールサイン:カワセミ2-1
第4小隊 小隊長 水谷理央
『目標を確認。』
「良し、ファング各員に通達。目標は敵テロ組織カチューシャが乗っ取ったプレジャーボートだ。豪華なことに、その目標の船は少しでかい。気合い入れろ!」
「「おぅ!!」」
完全武装のSBU隊員ら計19名の隊員が、自衛軍ヘリに搭乗し敵船舶に接近している。
海上からは自衛軍部隊が舟艇に乗って、共に接近している。目標は二つ。スピードが出る船の方を私達が。そこまでスピードは出ないが船体が大きい船を自衛軍が担当する。
最初は、自衛軍の舟艇が停止させるそうだ。
自衛軍
海軍特殊部隊 特殊作戦舟艇部隊 第1舟艇部隊・ブルーバイキング
ブルーバイキング指揮官 朝倉陽一
「攻撃開始! 撃て撃て撃て!」
第1舟艇部隊は、"河川特殊作戦舟艇"という特別な上陸用舟艇を持っている。
"河川特殊作戦舟艇"
英語で、Special Operations Craft – Riverine,、SOC-Rと呼ばれ、アメリカ海軍で運用されている上陸用舟艇。特殊部隊を河川地域において、短時間で投入・撤収させるために使用されている。
アメリカで運用しているものを自衛軍が持っている理由は、自衛軍の海軍特殊部隊が行動する上で河川での作戦が多くなると想定してアメリカ軍側から供与を提案されたのだ。これを、あの室長は快く引き受けた。
*本シリーズのep.1であった部隊とは異なる
この舟艇は、基本的に5基の武装が搭載できる。舟艇前部に、GAU-17 7.62mmガトリング銃2基。中央左右に二連装のM240 7.62mm汎用機関銃2基、後部に12.7mm重機関銃M2 1基を兵装している。M240に関してはMk19自動擲弾発射器2基にして搭載することもある。
「白い民間船。プレジャーボート! こちらは自衛軍、海軍特殊作戦舟艇部隊。そこの二隻、直ちに停船せよ。停船しなければ、警告射撃を開始する!」
停船せず、逆にスピードを上げて逃走し始める。しかも、武装した人間も複数見られた。
「そこのプレジャーボート、直ちに停船せよ! 応じなければ、警告射撃を開始する! くそ。12:40。停船命令に応じなかったため、これより警告射撃を開始する! ミニガンガンナー、ミニガンで牽制しろ。」
「了解!」
ミニガンで目標船舶、前方の海に向かって撃つ。警告射撃でも止まらないとは思うが......。
まぁ、そうだよな。止まらない......。止まった。
意外だ。まさか、停船するとは。
「カワセミ。突入用意を。援護する!」
『カワセミ了解。』
『こちらレッドバイキング指揮官。スナイパーは配置についた。こちらから見える敵は、いつでも無力化可能だ。オーバー』
レッドバイキングは、Mk5特殊任務艇を保有した舟艇部隊だ。
Mk5特殊任務艇
アメリカ海軍特殊戦コマンドが保有する特殊作戦用のボート。また、本来の任務以外にも輸送力や機動力を活かした哨戒や海上の治安維持および交通監視も行う。
狙撃手を設置。機関銃による制圧射撃といった火力支援は勿論のこと、狙撃による支援も可能だ。彼らも重要な部隊だ。いや、自衛軍の全て部隊が重要で、最強だ。
『カワセミは、部隊を展開する。』
カワセミ2-1
SBU/水谷理央
『ファング指揮官、こちらブルーバイキング。バイキングは、目標船舶を監視中だ。いつでも対応可能だ。』
「了解。降下よーい!」
ボートのギリギリまで高度が下げられ、ファストロープが投下される。
素早く、確実に。
「降下完了、移動しろ。」
『ファングは降下完了。カワセミは上空にて待機する。』
M4を構えた状態で、船内に入るドアに張り付き、突入隊形になる。
ブリーチングハンマーでドアをぶち破り、フラッシュバンを投げ込む。
「ゴー!」
「両手を挙げろ! 見えるように!!」
船内を囲むように隊員が移動し、敵を確保する準備をする。
三名の隊員が操舵室を確保し、また動くことがないようにしている。監視もいるし。
「人質、発見! バスルームだ。」
バスルームにガムテープで拘束された人質が二人。女性だ。二名の隊員が対応し、ヘリに運ぶようにする。まだ、この船の安全が確保されたということではない。
「敵を拘束。こちらファング指揮官。第1目標はクリア。人質を発見した。」
『カワセミ2-1。人質回収機は30秒後に到着する。なお、第2目標に関しても人質を発見、敵を確保した。』
ブルーバイキング
朝倉陽一
「ラジャー。ブルーバイキング総員へ。正面方向より、敵船舶が4、接近中。指揮所から攻撃し、無力化するように命令が出された。海保の警告を無視し、ここに接近しているとのことだ。総員、攻撃用意!!」
『こちらリカバリー3-2。人質回収完了! 離脱する。』
『こちらバイキング指揮官。カワセミ隊はSBU収容し、敵はレッドバイキングが回収した。存分にやれ。』
舟艇を動かし、搭載している兵装を敵舟艇に向ける。
敵が見えた。前甲板には機関銃。後ろには敵がうじゃうじゃいる。
「周囲には民間人及び友軍はなし。攻撃準備。......攻撃開始。」
ミニガンと機関銃による射撃が始まり、敵船に穴を作る。船舶、敵をまとめて排除する。
......あっという間だよね。
「撃ち方やめ。目標の無力化を確認。」
13:55
東京都 練馬区 敵 隠れ家
『こちら佐川小隊。配置に到着しました。自衛軍部隊は、普通科連隊は第1、第2、第3小隊、配置につきました。そちらの幸運を。』
『こちらオーバーロード。第1普通科連隊、第1偵察戦闘大隊は配置についた。STF、SOG。そちらの合図待ちだ。』
STF0-1
海千救一
「了解。こちらはもうすぐだ。」
「爆発物、設置。」
『急いで。陽動やマスコミを利用した作戦は上手くいったけど、上手く行き過ぎた。そちら周辺にマスコミや野次馬が集まりつつある。ここの隠れ家は潜入した隊員によれば、人質はいない。敵全員の無力化を。』
周辺には住宅街だ。誤射、射線には注意が必要となる。万が一に備え、警察や消防、自衛隊が協力し、避難誘導が行われ、万が一。銃弾が住宅に当たった場合でも、民間人負傷の事態は防げる。が、周辺に野次馬やマスコミがいる。これは、気をつける必要がある。
今回、マスコミ他、ネットを利用し、自衛軍部隊の作戦行動を編集版だが、配信した。敵に少しずつ近づいていることを知らせるためだ。危険かもしれないが、奴らにとっては恐怖そのものだったようだ。抵抗もほとんどなかった。陽動もいい結果が残っている。
「その潜入した人間は?」
『もう逃げ出しているよ。流石、プロね。』
「公安か。」
彼らも大変な仕事だろうからな。感謝しなければな。人質がいれば、こんな突入方法は選択してなかった。そう、こんな方法だ。
「SOGファルコン指揮官。準備完了。」
「こちらもだ。オーバーロード、準備完了。」
『オーバーロードより全部隊へ。行動開始、行動開始!』
「爆破しろ!」
真輝が爆発物の起爆スイッチを押す。小規模の威力だが、素人から見ればでかい爆発だ。
爆破と同時に、破壊した玄関に向けて考尚と柚木による機関銃掃射を開始する。
「撃て撃て!!」
ベーコンも焼ける銃器のバレルが焼け、壊れるても撃ち続ける。
流石に危険な状態になれば、バレルを交換する。煙がこちらにもくる。
「弾切れ!!」
7.62mm弾の空薬莢、使ったバレル、部品が機関銃と二人の周辺に転がっている。
機関銃の掃射終了。
「総員へ、突入!!」
「フラッシュアウト。」
フラッシュバンを投げ込み、突入する。至る所に機関銃によってできた穴や壊れたものが散乱していた。
死体と思われるものにも射撃する。生きた敵、脅威は排除する。
部屋を一つ一つ、確認していく。
「右のエリア、クリア。」
『左、クリア!』
「おい! ここのドア、変形していやがる!
特戦の鐸下がドアを開けようとするが、どうやら爆発や機関銃による衝撃で変形したようだ。
背負っていたハンマーやバールでこじ開けようとするも、一向にドアを破壊できる目処が立たない。
「どけ。」
真輝がトラックの荷台から取ってきたエンジンカッターを片手に俺と鐸下をどかし、切断する。
切断している真輝の右には、M870をドアに向けて突入の用意をする春奈が立つ。
『おい! 外からドアを切っているぞ!』
『突入してきたら、機関銃をぶちかませ!』
「敵は気づいている。サムライ、フラッシュを投げ入れろ。総員へ、こちらSTF指揮官。自分がいる場所は、危険な状態だ。接近には注意しつつ、援護せよ。」
『こちらオーバーロード。残りの部屋はそこだけだ。やっちまえ。』
もうすぐで切断が終わる。終わり次第、突入だ。ド派手なダイナミックエントリーでな。
ハンマーやバールと共に背中に装備していたAA-12を用意する。
「切断完了!」
「サムライ、やれ!」
「フラッシュアウト!!」
部屋はそこまで大きくはない。情報では小さなパソコンがある部屋だそうだ。パソコンは、ドア近くにはないため、流れ弾がパソコンに当たることはない。
「行け!」
ショットガンによって、怯んでいた敵三名を無力化する。
部屋には二番目に突入した。正面にいる敵を担当する。簡単だ。当てればいい。
「クリア!」
「見事だ、STF。」
懐かしい顔だ。この馬鹿者め。
「こちらSTF指揮官。クリアだ。」
『オーバーロードより総員へ。この敵施設は無力化した。残りは、後方部隊に任せろ。直ちに撤収し、別命あるまで待機。現時点では、敵の施設や部隊等は全て無力化したことになる。アウト』
なんとかなった。敵は壊滅状態。これから調べるパソコン等からの情報やデルタとSITが制圧した事務所にあった情報を元に敵の息の根を止める。
14:21
自衛軍基地 臨時特殊作戦チーム 待機所
海千救一
「よっ。海千。」
「久しぶりだな、六上。」
自衛軍の指揮所近くに自衛軍、自衛隊、警察、海上保安庁の特殊部隊が待機できる場所が設置。食事や睡眠、談笑、準備ができる優秀なプレハブを設置してくれた。今はSTF、デルタ、シールズ、特戦群・ファルコンのメンバーしかいないが。
陸上自衛隊特殊作戦群、第1中隊第1小隊長の六上鐸下が声をかけにきた。
「お知り合いですか?」
由花がインスタントラーメンの三分を待ちながら聞く。くそ、俺もインスタントラーメンにすればよかった。量重視で大盛りのカレーにしなければよかった。
「前のSTF。つまり、自衛隊非公式部隊の前は特戦群でな。その時の俺は分隊長で、部下がこいつだったんだ。一応、同級生で高校は一緒だった。」
「そうだったんですか。」
由花は三分経ったインスタントを食べ始める。くそ、いいな〜。
サングラスを外し、少し椅子に体重を預けつつ食べ始める。因みに、鐸下は鳥ゴボウ丼の大盛りとコーヒーだった。
「よくコーヒー飲めるよな。」
「山内さん。ご無沙汰してます!」
STF副隊長の山内考尚。この人も元特殊作戦群だ。俺と鐸下の上司にあたり、小隊長だった。
山内さんは栄養補助食品を持ちながら隣に座る。
「コーヒーは集中を高められますから。」
「俺はトイレに行きたくなるからな。作戦前、作戦中は飲みたくないな。」
コーヒーは、利尿作用がある。隊員によってはコーヒーを飲んでから作戦に向かう隊員もいる。他にも、食事の有無もある。隊員によって工夫や対策がある。食べる物から飲む物までも。
「まぁ。人それぞれですし。任務によっても違いますから。」
「ああ。ところで、ファルコン2-1が負傷したと聞いたが。」
埼玉で作戦に従事していた特戦群。彼らの隊員が敵の自爆ベストによって負傷した。人質の教えがなければ全滅していたそうだ。
「どうやら、全員無事です。命に別状はなし。威力は弱かったようで。」
「そうか。なら良かった。」
とりあえず、良かった。現状、作戦に参加した部隊で死者は出ていない。
残念ながら、民間人への死者は出ている。海ほたるで、特に死者が一番出ている。
「今は、情報収集中だが。敵の指揮官は誰なんだ? 今まで姿を現したことはないが。」
「どうやら公安とこちらの指揮所は予想だが、判明してきている。」
「まじか。」
鐸下は自衛軍と公安の調査スピードに驚いている。この国の公安も舐めちゃいかん。
今も昔も、戦いにおいて重要となるのは情報戦だ。いかに情報を正確に、多く得る。これは、作戦の成功、失敗をも左右する。
『こちら自衛軍中央指揮所。自衛軍STF指揮官、特戦群のファルコン指揮官は直ちに中央指揮所に集合を。繰り返す。自衛軍、とくせ――』
「さ、行くぞ。」
「俺らもか。中央指揮所に入ってもいいのか?」
自衛軍基地にはヘリで入ってきた、特戦群。指揮所近くの待機所案内の時に中央指揮所には立ち入らないように徹底させてある。ショットガンを持つ隊員を複数配置させて。
「いいからこい。でなければここでカレーでも食っとけ。」
「そこは。......帰れ。......だろう。てか、何でカレー?」
中央指揮所
六上鐸下
「ようこそ、自衛軍中央指揮所に。」
俺は、指揮所の迫力に圧倒された。
自衛軍中央指揮所には、部隊、作戦、偵察機の映像、隊員のボディ・ヘッドカメラ等の様々な情報が表示されている大型ディスプレイ。多くの隊員や机、パソコンがある光景には驚きだ。
『こちらブルーバイキング指揮官。ブルーバイキングは、弾薬補給完了。これより元の警戒区域に移動する。アウト』
『こちらシールズ指揮官。埼玉の隠れ家掃討完了。そちらに情報をアップデート中だ。完了まで3分。』
『こちらパラディン2-1。自衛軍病院に負傷者搬送完了。補給後、待機する。』
続々と各部隊からの通信の声が響く。主要なものは大型スピーカーで流すが、基本は各部隊ブースのみだ。それでも、司令官やオーバーロードのいるブースにはほとんど聞こえる。
救一がロープで下げているHK416のストック部分に手を置きながら、司令官に集合したことを伝える。
「初めまして。自衛軍司令官の白河美那です。元統幕長です。」
「......。」
若くない?
統幕長といった将官クラスは歳を取っていることが多い。長年の経験
「STFが非公式に自衛隊に設置した時は統幕長の副官だったんだが。アメリカでの行動でSTFはたった三年で解体。当時の統幕長は優秀な人だったが、特戦室室長と退くことなった。」
「でもね。それは、表向きの話。本当は、自衛軍創設することになったため副官である私を統幕長にさせ、私は退職させられた。そして、軍司令官にさせられた。無理な話だけどね。」
情報量が多いな。じゃ、その統幕長は、どこに?
え?
「副群長!?」
「御苦労だな、ファルコン。」
「当時の統幕長は、この人よ。流石に群長にすると身バレするので副群長になったのよ。」
いきなり驚きの情報だ。色々狂ってくる。素性を隠すには特戦のような機密部隊はとてもいい。だが、まったく知らなかった。元統幕長だと?
「教えずにすまなかった。だが、これには深い理由があるんだ。」
「この機会で全てを話そう。救一にも。」
ただの特戦の小隊長に話すんか。
「機密等は気にするな。六上に関することだから話すんだ。」
「はぁ。」
弾倉は入っていないM4A1を床に置き、用意されたパイプ椅子に座る。
手元にはコーヒーまで渡された。よく、飲むことを知っていたな。こわっ。
「まず、自衛軍創設の理由。これは創設時に説明したように対テロ組織や厄介事を起こそうとする奴らに対応するために創設された。これは裏の理由はない。でも、成果はなかった。自衛隊非公式部隊STFから調べていたし、CIAといった機関から情報も得た。でも、成果はなかった。しかも、敵を倒すたびに民間人への死傷者も発生した。そして、自衛軍は影ではこう呼ばれたの。”現代の防人”と。」
「え? 防人は、日本を守るためにあったものですよね。」
防人。確かに、守っていた組織だった。なぜ、影で呼ばれるんだ?
「古代、筑紫・壱岐・対馬つしまなど北九州の防備に当たった兵士が、防人。663年の白村江の戦い以後制度化され、諸国の兵士の中から3年交代で選ばれ、のちには東国出身者に限られるようになった。その後数度の改廃を経て、延喜(901~923)のころには有名無実となった。」
「まさか。」
「あぁ。そのまさかだ。 創設して3年。ここ最近は成果を上げたものの、それまでは成果や実績はなかった。アメリカからは多くの武器弾薬、兵器。イギリス、韓国は軍事訓練協力。国連からも、多くの支援があった。だが、敵は倒せなかった。表向きには、成果は上々。裏では、役立たずと。」
STFが自衛隊にあり、その部隊指揮官が救一なのは驚いた。実際、ニュースでは自衛軍創設後、敵が倒されている情報を流していた。嘘だったのか。情報は鵜呑みにはしないが、救一の部隊だったから。
『大丈夫だ』
と勝手に思っていた。これは、相当苦労を。......いや、世界のために尽力してくれたのか。
「創設した時には、私は色んなとこに引っ張りだこだった。その時に、アメリカから自衛軍というPMC創設を提案。それを、了承しなければならなかった政府。だが、創設するにも司令官を誰にするかが問題になった。」
アメリカの提案だったのか。あの大統領、悪だな。
この副群長も、大変だったんだな。
「そこで提案されたのが欺瞞情報を流し、こちら側が全部決めることになった。退職や左遷、減給等したのは嘘。本当は、統幕長の自分を特戦群副群長に。副官の白河を自衛軍司令官に。特殊作戦室室長を部隊運用のサポートにさせた。前STFは、新STFに数名を引き継がせ編成。他部隊も同様にな。」
「よく隠し通せましたね。」
ここまで隠し通すとは。日本ならまだしも、アメリカまでも。
現代の防人。かっこいいけども、 馬鹿にされていたんだな。
「しかし、自分に話してよかったんですか?」
自衛軍に関する、超重要機密情報では? どんなに関係があるからと言っても。
すると、ここに近づく隊員が二人いる。まるでデルタの装備に似ている。
「陸軍デルタ指揮官。参りました。」「デルタ副指揮官、参りました。」
デルタ。確か、東京の事務所を担当していた部隊だったか。
SCARか。装備は、こちらとそう違わないか。いや、結構高いのもあるな。
「作戦、お疲れ様。六上さん。貴方には妹さんがいると聞きました。」
「えぇ。そうですが。」
俺は思った。目の前にいるのが、妹ではないかと。
いや、そんな出来話。ある筈がない。そうだ。ないよ。
妹は、俺が高卒で自衛官になった時に事件に遭い、そのまま行方不明だった。高校時代に父を亡くし、母一人で俺らを育ててくれた。妹のためにも父と同じ自衛官となり働いた。ちょうど、配属が決まり4年目の時に、事件に巻き込まれたと連絡を受けた。俺の誕生日プレゼントを買いにいくためにな。
「妹は、事件後。行方不明で、今もどこにいるか。」
「自衛軍には親や家族を失った者。病気だった者。記憶を失った者。色んな経験をしてきたのがいる。彼女もな。」
「こんにちは。そして、久しぶり。兄さん。」
「......。いや、いや。る〜??」
おんおんおんおん。おん? おん?
「すません。まだ、信じられないな。」
「父は元陸上自衛隊中央特殊武器防護隊。母は、専業主婦。その後は、役所職員に。兄は、陸上自衛隊第一普通科連隊、第2中隊に配置になった六上鐸下。そして、私は......。」
いや、そんな。
「私は、六上千歳。今は、自衛軍。陸軍特殊部隊、デルタフォース副指揮官をやってます。久しぶり、元気だった?」
あっはーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
「あっは=======================!!!!!』
あっはーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
「あっはーー。ハハハ。冗談だろ?」
「冗談と思うなら、これを。」
白河司令官から一枚の紙を渡される。......。DNA鑑定。
......。六上鐸下。六上千歳。......。100%、一致。
「これが、証拠。一番の証拠は、これね。」
六上千歳が俺の前に立ち、腕時計を見せてくる。 腕時計が、どうしたって......。
む? これは......。
「気付いた? これは、世界に一つしかない腕時計。そう、貴方がデザインしたもの。そして、それを妹にプレゼントした。違う?」
15:10
中央指揮所
海千救一
「どうして教えてくれなかったんだ?」
鐸下がこちらを睨め付けてくる。そりゃそうだ。行方不明だった妹が自衛軍にいたのだからな。
「実はな、千歳は事件のショックで記憶喪失だったんだ。家族のことや自分のことはしっかり覚えていた。だが、事件前後は覚えていなかった。ある時まで思い出せなかった。心身の回復が早かったんで、彼女の希望もあり自衛軍に入れた。本当はお前に連絡したかったんだが、その時の自衛軍はな......。」
「あ。」
自衛軍にいる人間は極力知られてはいけない。実際、自衛軍司令官の白河さんのみだ。世の中に自衛軍の人間の名前が知られているのはな。
「すまん。自衛軍とお前のことを考えてなかった。」
「いや。こっちこそ、すまん。とにかく、これが終わったらゆっくり過ごせ。あの群長も休むように言っていたぞ。」
「あの群長らしいな。」
特殊作戦群群長は、俺も世話になった。多くを学んだし、強くなるために色々叩き込まれた。
HK416のバレル部分を持ち、立ちながら白河さんと情報が送られてくるのを待つ。どうやら、敵の情報は暗号化されていたようで、解読が終わるまで待機だった。
「解読まで30秒。」
自衛軍が持つ特別な解読装置と解読員が対応している。予想よりも作業が早く終わりそうだ。
「解読完了まで、5、4、3、2、1。解読終了。ロック解除。閲覧可能。」
「良し。司令ブースにあるモニターに表示して。」
「イエッサー。」
白河さんや、副群長。俺、鐸下、千崎、千歳、神居がモニターを囲むようにして覗き込む。
敵の作戦についてある。どうやら、総力戦を仕掛けるようだ。場所は......。
「くそ。最悪だ。」
「おい、シールズを呼び戻せ。全部隊よ! ヘリと、エイブラムスを出撃させて。」
「戻るぞ。補給は終わっている。」
416と武器係が持ってきてくれた装備を背負い、部隊のいる待機所に向かい走る。
鐸下。千崎、千歳も走る。
15:23
自衛軍特殊作戦部隊 ピックアップトラック
海千救一
「STF総員へ。これから開始する作戦を説明する。敵は総力戦を始めるつもりだ。総力戦の目標は、日本の国会議事堂だ。情報では、敵は既に国会内部に侵入しているとのこと。こちらにも潜入している奴もいるが、敵が多く、人質もいるだろう。気を引き締めろ!」
助手席に備えられえているパソコンを操作し、情報を伝えていく。伝え終われば、目標付近の状況を確認する。国会周辺には、ストライカー中隊のみか。
『こちらオーバーロード。STFは、キング隊と共に正面門前に待機せよ。アウト』
「あれだ。キング、こちらSTF0-1。後方からピックアップトラックで接近する。」
『こちらキング、了解。』
すると、監視していたドローンから報告が入る。どうやら、敵は国会を占領したらしい。
内閣総理大臣と一緒にな。
15:43
東京都 千代田区 霞が関
国会議事堂前 ピックアップトラック
自衛軍 特殊作戦部隊
海千救一
「また。......ここに足を踏み入れるとはな。」
「え?」
「自衛軍創設時代にな。前身の組織の時。創設した時。そのすぐ後に。何度も何度も。クソみたいな質問をしてきた。」
「指揮官。言い過ぎだ。」
副長/山内さんから止められる。確かに、言い過ぎた。
あの時は大変だった。金なし、食料なし、弾なし。......たまに撃つ 弾が無いのが 玉に傷、ってね。
『こちらデルタ指揮官。周辺は、警視庁機動隊が封鎖した。キング隊もスタンバイしている。』
「ラジャー。オーバーロード、こちらSTF指揮官だ。STFは準備良し。」
『オーバーロード了解。国会対応部隊総員へ。行動開始。』
自衛陸軍 陸軍機甲戦闘師団 第1戦車大隊
キング1 小田美九
『オーバーロードより、機甲大隊へ。作戦開始!』
オーバーロードからの命令だ。我々は、陸上自衛隊と共に"先駆"で突撃だ。
まずは、邪魔な門だ。
「行動開始だ。砲手、目標、敵封鎖中の門!」
「攻撃準備良し!」
「撃て!」
「発射!!」
モニターを見ると、門を破壊できたことを確認できた。同時に、敵が慌てて銃を向けていることが確認できる。ふ、遅いわ。
「全車、前進よーい! 前へ!! 機関銃で敵を一掃しろ。」
「前進。」
操縦手がアクセル全開で進む。門の残骸を乗り越え、キャタピラとエンジンの音が響く。
モニターで敵を索敵。遠隔式の機関銃で敵を一掃する。
「主砲を撃つ!」
砲手には敵がまとまっていれば、主砲で攻撃するように指示していた。
キング隊の二個小隊が侵入する。
キング2 砲手
「右、右にいる!」
「装填!」
「確認!」
「撃て!」
主砲で敵を一掃。敵車両も攻撃する。
次から次へと。糞め。
「? ......! RPG、2時方向!」
「殺せ! 撃て!」
機銃では間に合わない。主砲だ。
照準、良し! 装填確認。発射!
「発射!」
キング1 小田美九
『隊長。こちらキング2。敵にRPG持ちあり。』
「ラジャー。総員へ、RPGに警戒せよ。RPG持ちが確認された。」
「奴ら、意外に訓練されていやがる。連携し、対処してきている。」
確かに。今までの敵とは少し違う。こんなに連携し、こちらを攻撃してきているのは今までなかった。
戦車はRPGといった対戦車兵器は脅威だ。優先して倒す必要がある。
「タンゴダウン。」
『突入部隊、前進開始。』
「戦車全車、突入部隊を援護。」
STF0-1 海千救一
「前進!」
ピックアップ前進。
戦車の護衛があるのは心強い。戦車が先頭を進み、こちらが続き内部に侵入する。
すると、正面の玄関から攻撃を確認した。
「ち。敵さんがいるぞ。」
『STF。キングが道を拓く。その隙に突入を。』
「了解。」
すると、戦車が整列し機関銃による制圧射撃が開始された。制圧射撃といっても、柱や敵の足元付近を狙って撃っている。これで敵は手出しできない。
「そこで、止めろ! 前進!」
降りたところで、敵を発見。無力化する。
出入り口付近の敵は一掃できたようだ。
『こちらリーパー3-1。敵と思われる車両が国会周辺の道路で確認。国会に向かっている。』
『STF指揮官。こちらキング1。ここは任せて、行って。幸運を。』
「了解。良し、突入だ。2-0、2-1。敵がいれば、機銃で一掃だ。トリガーハッピーを見せろ。」
STF2-0 山内考尚
「イエッサー。」「了解!」
M249を持ち、内部を見る。敵が、集まっている。
救一のグレネードランチャーを合図に射撃を始める。突入し、敵を倒す。
「10時方向、敵のRPG持ち。」
制圧だ。
BBBBBBBBBooooooooo!!!!!!
空薬莢が落ちる音と同時に敵が倒れる。
取り敢えず、クリアだな。
「クリア。」
やっぱり、地面に置いて撃ちたいものだな機関銃は。まぁ、柚木は違うようだが。
「うふ~ん。」
めっちゃ喜んでいる。
陸軍デルタフォース
デルタリーダー 千崎龍介
「STFは行動開始している。彼らは正面から突入し、首相を捜索する。俺らは......。ここだ。衆議院側を特戦群のファルコン、カラス隊と共に制圧する。」
「全員準備完了。特戦群も来ました。」
SCAR-Lを取り、地図を仕舞う。
特戦の連中がきた。M4やSCAR。M870といった基本装備はこちらと差はない。
軽い握手をした後、衆議院側の出入り口から侵入する。
衆議院議場 扉
「簡単だったな。こちらデルタリーダー。衆議院議場前まで到着、ファルコンはどうだ?」
特殊作戦群 ファルコン 六上鐸下
「こっちはもうすぐだ。あと一つの部屋を制圧する。」
「突入、用意良し。」
敵は入念にドアの一つ一つに針金を何重にも巻き付け、楽には突入できない状態だ。まだグレネードや爆弾がないだけいいか。
「突入だ、行け。」
ドアを開き、フラッシュバンを投げ込む。ほぼ同時に突入。
M4A1に装着したドットサイトを覗き込む。うむ。敵、4。
部屋はそこまで大きくないため、隊員の展開は大きくはできない。が、簡単に敵を制圧する。
俺は、三人目に突入した。右に隊員一名、ドアを挟んで二名。正面にグロックのような銃を持つ敵を対処する。他は、もう三名に任せる。
「クリア。」
「全員死体だな。人質なし。こちらファルコン指揮官。デルタリーダー、議場に向かう。」
15:57
参議院議場
自衛海軍 ネイビーシールズ
シールズリーダー 中野悠人
「衆議院側は議場以外は安全確保。こちらも議場のみですね。」
「あぁ。さ、終わらせよう。」
ドアの隙間に小型のカメラを入れ、ドア周辺には敵や人質はいないことが分かった。爆弾を利用した突入方法で行くぞ。C4をセット。ブラボーと共に突入だ。
「合図で突入だ。3、2、1、爆破!!」
爆破し、ドアの破壊が完了。すぐに突入すると、破片等もあるので爆破から少し時間を空けるが、そうは感じないくらいのスピードで突入する。木の破片がサングラスに当たり、怯んでしまう。
でもな!
「コンタクト! 機関銃手!」
議場の議長席に機関銃が置かれていた。無力化するにはそこまで難しい距離ではない。だが、俺が撃つ前に報道スペースからM24 狙撃銃を持つ狙撃手が敵機関銃手を無力化してくれた。
他にも敵は大勢いる。アルファ部隊総員で、連携して敵を倒す。
「少しずつ前進。連携して敵を倒せ。」
通路を通りつつ、各議席もクリアリングしていく。隠れていた場合、後ろから攻撃させれば部隊は挟撃されることもある。細かく死角がないように二重に確認していく。
さて、ここで問題だ。小銃等のメイン武器が弾切れ。もしくは、給弾不良で使えない状態になった。その時、運悪く敵が接近した。さぁ、どうする。
「リロード。」
......。これは状況によるが、馬鹿だろう。正解は、拳銃を取り出して応戦。
「グワッ!」
「残念だったな! リロードする!」
M17をホルスターに戻し、M4A1の弾倉を交換する。サブの拳銃で応戦したが、隊列二番目の隊員が無力化していたようだ。弾倉交換時も前後の隊員が援護してくれる。基本中の基本かもしれないが、咄嗟のこととなると、動けない隊員や連携不足となる部隊がいるのだ。これは、何度も何度も訓練するしかないな。サバゲーをやる方も良い技術となるだろうね。
......。何様だよ。ってね。ごめんなさい。
「クリア。」
「議長席、クリア。人質、三名!」
議長席に三名の議員が人質として拘束されていたようだ。手首、足にガムテープで拘束されていた。口にはガムテープで塞がれ、声を出せないようにしていた。
人質の前に最後の確認する場所がある。これは、チャーリーとエコーが対応する。(デルタは、陸軍のデルタがいるため、名前を譲っている。)彼らが確認を終了させてから、人質の後送を行う。万が一、敵と遭遇した場合は、人質を守る必要がある。部隊が動きづらいことにもなる。
『こちらチャーリー指揮官。突入を開始する。』
シールズ チャーリー指揮官
「突入準備完了。」
少量の爆薬を木製のドアに貼り付け、起爆用意をする。
合図をし、起爆。フラッシュバンを投げ込み、突入する。
「行くぞ。」
フラッシュバンは気絶させるものではない。フラッシュバンを使うのは様々な状況で使われるだろう。その中でも、室内への突入だ。部屋といった場所に突入することになれば、状況によるが、フラッシュバンを使うことになる。アニメやゲームでは、敵に向けてフラッシュバンを使うことで気絶させる表現をしているが、実際ではそんなことはまず、あり得ない。
「コンタクト。」
フラッシュバンは、約一秒。その短い時を利用し、敵は少し怯んでいる間に無力化、制圧する。この一秒が、我々にとっては貴重となる。どうやら、某有名FPSの現代戦、2のフラッシュバンは実物と似ているようだ。
おっと。人質だ。
「伏せろ! 特殊部隊だ!」
「Get Down!! Special Forces!!」
訛りのある英語で警告する。
敵は、日本人やアメリカ、ロシア、中国、韓国、ロシア、インド、イギリス、フランスといった世界のほとんどの国から組織されている。基本は、日本語と英語で警告だ。
人質なら伏せる。伏せなくても、武器の有無で判断。あれば、射殺。
「クリア!」
「おい、武器を捨てろ!!」
一人の隊員が黒いスーツを着た男に銃を向けていた。その男の手には拳銃が握られていた。
脅威か? いや、こいつは......。
「SPか?」
「そうだ。官房長官付きのSPだ。」
「ち。紛らわしい。」
注意しなければ、SPだとしても武器をこちらに向けていれば脅威と判断し、こちらは射殺するだろう。部屋が暗かったため、伏せずに銃を向けていれば撃っていたかもしれない。
......。いや。スーツにはSPのマーク。それがあれば撃たない判断をした。
「こいつを調べろ!」
「ラジャー!!」
SPのマークであるバッチがある。こいつにはない!
「ナイフ。拳銃は、K5 拳銃!」
K5は、韓国のだ。SPでは導入されていない。敵だ。
「拘束!手足、口、胴体。完全に拘束だ。」
万が一だ。暴れたら面倒だ。動けないようにさせる。
他の隊員が人質確保、確認をしてくれた。
「こちらチャーリー指揮官。制圧完了。敵一名、確保。人質、五名。」
『こちらエコー。制圧した。敵はなし。人質二十名以上。食堂に人質が大量だ。』
「おい! 早くここから連れ出してくれ!」
官房長官の前に立ち、こちらに叫ぶ議員。
......。面倒だ。
シールズリーダー 中野悠人
「オーバーロード、こちらシールズ指揮官。参議院議場にて人質三名発見。また、参議院議長室には官房長官や秘書、議員の計五名。敵一名を確保。食堂には現時点で二十名の人質を確保。オーバー」
『こちらオーバーロード。そちらで先に検査を実施せよ。確認後、警視庁特殊部隊が急行する。到着後は、エコーを残し、シールズ総員は参議院に敵を入れさせないように。アウト』
「良し。シールズ各員、こちらシールズリーダー。オーバーロードからの指示だ。人質の検査を実施。警視庁特殊部隊の到着まで実施する。到着後はエコーを残し参議院を防衛する。」
シールズ突入とほぼ同時刻
陸軍特殊部隊 デルタフォース
デルタリーダー 千崎龍介
「特戦が到着したようです。」
副隊長の六上千歳が特殊作戦群のファルコン、カラス隊が到着したことを伝えてくれる。
SCARの残弾を確認。一人の隊員が残り二つのマガジンとなっていたので、自分のを二つ渡す。同じ、5.56mm口径のSCAR-Lのため、マガジンを共有できるのだ。
部隊の銃器はほとんどがマガジンを共有できるようになっている。というのが鉄則であろう。弾薬がなくなれば動けなくなってしまう。隊員同志でマガジンを共有できるシステムになっているのだ。
「大丈夫か?」
「あぁ。そっちは?」
「カラス隊に二人。負傷者が出た。」
必死に応急処置したのだろうな。手袋や装備に血がついている。
......。こちらは20名。特戦のイーグル小隊、カラス小隊はカラス隊2人を除いた計30名がいる状況だ。見る限り、ファルコン隊は疲弊していないようだがカラス隊は疲弊している。
「カラス隊は待機した方がいい。デルタとファルコンでやろう。計25名で突入だ」
「ですが。」
「いや、そうしよう。カラス隊は食堂で交戦して多くの隊員が疲弊している。ここは待機だ。」
「それなら、行動可能な隊員だけでも傍聴席から援護します。」
「分かった。頼む。」
M24、M14といった狙撃銃を使い、援護してくれるようだ。デルタの狙撃手も同伴させる。
爆薬をセットし、突入の用意をする。
「ドローン、発進。」
消しゴムと同等サイズで作られた特殊なドローンを隙間から入れる。
議場内の映像を細かく確認していく。
「敵、後ろから三番目。AK。各列にいるな。議場席にはマイクを持った敵。前にはカメラ。」
「人質、なし。」
「敵、計8人。武装している。基本はAK。議長席のは拳銃だな。」
『こちらデルタ4-1。狙撃支援隊、準備完了。いつでも。敵は捕捉しています。』
SCAR-Lを下げ、フラッシュバンを用意する。
全員が突入の用意を完了させ、合図で起爆。
「起爆!」
「行け!」
全てのドアからなだれ込んでいく。近場の敵を無力化する。
む。どうやら、敵は突入時に狙撃組が無力化したようだ。
「クリア。」「クリア!」「クリアッ!」
「「議場、クリア!!! ......。あ。」」
指揮官が俺と六上の2人いるため、同時に叫んでしまう。
ま、いっか。
「デルタ指揮官、ファルコン指揮官。こっちに来て下さい。敵が一名、生きています。」
「確保だ。ちょうどいい。ここで敵の指揮官を吐かせる。」
敵の指揮官は、自衛隊非公式部隊のSTF時代から今日まで敵テロ組織の頂点にいる人間を捜していた。糞みたいな呼び方をされたこともあった。裏では悪い意味で防人と呼ばれた。
「ここに座らせろ。」
議長席に座らせ、周囲を囲む。こちらの状況は通信士に連絡させた。
SCARを千歳に渡し、代わりにテーザー銃をもらう。
「起きろ!」
テーザー銃を使い、気絶しているところを起こす。こいつは、マイクを持っていた敵だ。武装していたが、特戦の隊員が検査し、完全にクリアな状態だ。
「グアアーー!!!」
痛いだろう。痛いだろう。だが、被害に遭った無実の人々はもっと。もっと、苦しかった。痛かった。悲しかった。怒った。
「教えてもらおう。お前らの指揮官は? 誰が、組織を動かしている!?」
「痛い痛い!」
「痛いか。なら、楽にしよう。」
六上兄がSIGを取り出す。同時に特戦の隊員らが銃口を向ける。
お。これは。
「言え! 誰だ。お前のボスは? 言えば一目散に病院に連れていくぞ。」
甘い言葉と威圧か。特戦も凄いな。
「言わないか。なら、病院への到着はどんどん遅れるぞ。どうする?」
「お......おれら.....ボスは。」
「誰かな?」
「多い。国ごとにいる。日本は......。」
次回に続く
序章.【現代の防人】が終わる。
Who Dares Wins
ー挑む者に勝利あり




