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実力と協力

投稿遅れました。申し訳ありません。

9月20日 

10:11

自衛軍基地 第1ゲート(正門) 第1警備所

自衛軍基地警備隊 第1警備隊 土方隊長

『こちら中央指揮所。警視庁関係者がもうすぐでそちらに到着する。待機してくれ。』

「こちら第1警備隊指揮官、了解。」

 第1警備所には他の門とは異なり、監視塔でも巨大な監視塔を設置し、自衛軍基地正門を守っている。また、車両の誘導や出撃時の交通誘導も行うため防衛を行う役割を担っている。

 重要な役割を担っているからこそ、基地警備隊は、TFチームと同レベルの装備と練度を誇る。

 例として挙げるなら俺が近くに置いている高性能、高価アクセサリーを付けた、HK416だ。あとは......監視塔の部分にはM2機関銃が設置。カール・グスタフも置いてある。他警備には必要なものが備わっている。

 さて、今日はどうやらお客さんが来るようで警視庁の捜査一課、だそうだ。


自衛軍基地 第1ゲート前

警視庁刑事部捜査一課 特殊犯捜査係 SIT 東城咲

「にしても、デカい。自衛軍だけで国を潰せそうだ。」

「それ、冗談に聞こえないですから」

 隣に座る特殊犯捜査係の係長が窓から見える自衛軍基地を見て言う。特殊な人だけど面白いし優しい人だ。少し前の事件では別行動だったけど。

 自衛軍という組織は元は自衛隊非公式部隊、その後は国連の管理の下で職務に務めていた。

 少し前。テロ組織との戦闘で自衛軍の監視管理は日本政府に。権限も一部は独立している状態になった。それでも、未だに謎は多い民間軍事会社である。

 そして、先の同時多発銀行襲撃及び籠城事件で私を助けた人達が自衛軍だった。

「おいおい、本当にここから入るんですか?」

「そうだ、どうした?」

 まず、なぜ警視庁捜査一課特殊犯捜査係が自衛軍基地にきているのか。それはまだ言えないがとある件で警察、捜査一課代表で自衛軍に協力を要請するために自衛軍宛にメールを送った。その後、自衛軍からメールが送られてきた。メールには自衛軍基地に入るための地図があった。

「うわ。機関銃かよ。」

 信号で停車しているため門が見えた。

 とてもでかい門に監視塔。そこには機関銃が設置しており武装した隊員に車両がいる。

「威圧感が半端ないな。」

「ほら、青信号。進んで。」

 運転手が躊躇しているので、声を掛ける。

 運転手はここ最近うちに入ったばかりで、運転手や雑務が多い。それこそ前の事案は隣りにいる係長のサポートにいたのだ。

「うへー。寿命が縮む。」

 門手前に車が入ると巨大な門が開く。アニメみたいに自動で動き始め、自衛軍基地内が見えてくる

 自衛軍の隊員が誘導する。誘導する隊員の周囲には完全武装の隊員がいる。

入りますよ。

 門は有刺鉄線、分厚い壁。門の内側は武装した隊員に重装備の装甲車。

 停車するように合図されると同時にノックされる。

「お待ちしておりました。駐車場まで案内します。」

「分かりました。」

 監視塔の横を通り、装甲車の隣りに車を停める。

 降りると検査室に移動させられた。どうやら本人確認と不審物を持っていないかと検査するらしい。

 自衛隊基地とかもこういうのがあるのかな?

 身元確認で警察手帳を見せたり、所持品検査をしたり。 身体検査をしたり。意外と時間はかからなかった。

「自衛軍基地警備隊、第1警備隊隊長の土方です。協力ありがとうございました。ここからは我々の車両にて移動となります。」

「分かりました。」

「一つ質問だ。拳銃と警棒の確認をしてすぐに返却されたが、いいのか?こういうのは預けるものだろ。」

「確かに、預けるのが一般的です。ただこちらは皆様を信頼した上で基地に案内しています。それに、そちらは3人。ここには完全武装の隊員が待機をしている。お分かりで?」

 この土方っていう人。装備品で分からなかったが、よく見たら体がゴツイ。

 ......周囲の隊員が銃器を動かす仕草をし、近づいている気がする。

「ま、確かにな。」

「では、ご案内します。すぐ到着しますので。」

 外に出ると車が待っていた。ここからは自衛軍が主導で移動だ。

 座り心地が良い。さっきまで乗っていた警察の車両と同じ車なのに。

「どこに行くんだ?」

「中央指揮所、会議室。という指示だけ聞かされています。私は戦車隊の操縦手ですので。」

 戦車の操縦手というパワーワード。

 む? 戦車? 

「自衛軍は戦車を持っているのか?」

「えぇ。数台は。あ、少し止まりますよ。」

 信号が赤で止まるようだ。トレーラーや装甲車が通る。ここは一つの町みたい。

 ......撤回。戦車がキャタピラとエンジンを響かせつつ、通り過ぎた。

「エイブラムスか。アメリカから供与されたのか?」

「そうです。お詳しいですね。」

「これでもオタクだ。」

 初耳なんですが。


10:40

中央指揮所 会議室

自衛軍特殊作戦部隊 海千救一

 会議室には俺、デルタの千崎、運用室長の美郷がいる。

 でかい防弾防爆窓の前に置かれたテレビの前にパイプ椅子を置いてお客が来るまで待っている。

『ー事件の建物を解体する予定でしたが、急遽中止が発表されました。政府主導で解体する予定で、依頼した解体業者の親会社が買収されたことが影響されています。買収したのは......。』

「あそこ、解体中止か。」

「オーバーロード。F-35とA-10が爆撃して解体すると意見具申しろ。」

「馬鹿言わないで、千崎。近くには住宅地がある。簡単には許可しないわ。それに、解体したとして瓦礫は? 瓦礫はを運ぶ時に使うトラックはいくら金がかかると思っているの。」

 基本、自衛軍は正規軍相手との戦闘=戦争への参加はない。そのため、自衛軍発足当時から「戦闘機や攻撃機といった空軍能力は必要ない」とされていた。実際、そう言われてきた。だが、「テロ組織との作戦にて味方と友軍部隊への航空支援から護衛、敵施設や設備破壊に対しての能力が自衛軍には必要」と、ある作戦後に判断。

 発足から数年後の自衛軍大規模作戦”ーー作戦”後、アメリカ軍からF-35A及びA-10を供与。そして"防人作戦"を受けて役割の変化でF-35B供与が決定。F-35Aは返却。A-10C、F-15Eを供与された。これにより対地攻撃だけでなく対空戦、対水上、対潜戦が可能になった。余談だが、F-35Bを供与することになったのはアメリカ海軍などの西側空母との運用及び海上自衛隊が進めているいずも型護衛艦の空母化計画での運用を狙っているとも言われている。また、日本の国会において「密約があったのではないか」、「戦争するつもりか」などと様々なことを与党側にぶつけた。

「ちっ。もう見たくないんだよ。あの建物を見るだけで傷が痛む。思い出す。」

「私だって。ここから見ていたし実際に行った。友人もあの中にいた。」

 それ言ったら俺も。いや、自衛軍にいるほとんどの隊員が。いた隊員が経験した。自衛軍以外にもいる。


そして、もうこの世にはいない人もいる。


 会議室がしんみりしているとノックが部屋に響く。

「失礼します。警視庁の方々をお連れしました。」

「ご苦労。さ、準備準備。」

 パイプ椅子を片付け、自衛隊とほぼ同様の制服を整える。

 警視庁からはSITの人間と言っていたが、三人か。

「自衛軍特殊作戦運用室長、神居美郷です。」

「自衛軍特殊作戦部隊指揮官、海千です。」

「デルタチーム指揮官の千崎です。」

「警視庁特殊犯捜査係、係長の西方です。」

「同じく特殊犯捜査係、東城です。」

「倉沢です。」

 西方は千崎が対応した現場にいたらしい。東城は俺らが対応した現場にいた。そして、生意気にこちらを見る倉沢も千崎の現場にいたようだ。しかし、なぜに生意気にこちらを見る。

 席に座るとすぐに本題に入る。

「まずは、昨日はありがとうございました。」

「いえいえ、大丈夫ですよ。さ、本題に。」

「そうですね。警視庁から自衛軍に協力要請です。昨日の事案にて逮捕できた被疑者により、テロ組織カチューシャの残党に加えて、別組織が関わっているとのことが分かりました。ハニービー、この組織については自衛隊の方々が詳しいでしょう。」

 ハニービー。

 カチューシャと同様にテロ組織に認定、自衛軍が対応していた奴らだ。名前の由来は、蜂だ。甘い蜜からオオスズメバチのように凶暴にというように、ハニートラップといった工作、ゲリラやテロの実力行使。人身売買、サイバー攻撃、銃器や大麻などの密輸。サイバープロパガンダなど、カチューシャがテロやゲリラしかやっていないのに対して、ハニービーは多種多様だ。

「えぇ。しかし、奴らはあの事件で壊滅状態に追い込み主要な幹部や下っ端も無力化してきましたが。また、カチューシャ対応の先の作戦でも残党は無力化しました。」

「分かってますよ。 私も千崎さんと共に突入しましたから。ですが、どんなに殲滅しても思想というのは消えないものです。宗教のように信じたものを貫き通す人だっています。それが人生を壊すことになろうともね。」

 まるで自分がそうだったと言っているようだ。顔もそうなっている。

 宗教か。

「警視庁刑事部、公安部及び警察庁公安部による情報収集で分かったことです。テロ組織カチューシャ及びハニービーの残党又は準ずる組織が存在し活動しているとのことです。それを受けて、一斉検挙を実施することになりました。警視総監より自衛軍に協力を要請します。」

「要請了解です。司令官に代わり受諾します。」

「ん? 待て、オーバーロード。」

 俺が言おうとしたが、千崎が先に止めた。

「敵組織の施設が分かったのか? それとも幹部を捕らえればいいのか? 規模は?」

「施設及び幹部と指導者です。施設は数は大小区別なしで4箇所。場所は分かりますが、規模は不明です。

不明ですか。必要な兵力が分からないな。航空支援が必要ならガンシップがいるし最悪戦車も投入も。部隊編成も考える必要があるわね。」

 戦力が少ない状態だと万が一の時に困る。逆に多過ぎると面倒なことになる。交通規制や空域封鎖をした場合に必要がなかったでは言い訳はできない。

「情報が少ない。これ以上はないのか?」

「申し訳ない。今回は協力要請の書類と一部の情報しかないので。機密情報なのでメールで送ることもできないので。」

「なら、俺は降りるぞ。部下を死地に送ることはできん。」

 おい、千崎。そう言いかけた時、生意気そうな倉沢が口を出した。

「怖いんですか? 友人や最愛の人をまた失うのは。」

「何? 貴様、もう一度言ってみろ。」

「怖いんですか?」

 あ、これは不味い。

 千崎はドアに向かっていたため、ドアに一番近い席に座っていた倉沢の胸ぐらをつかむのは、特殊部隊である千崎にはあっという間のことだった。

「貴様には何が分かる?」

「く、短気ですね。」

あーあ、手を離すんだ千崎!

 美郷は廊下で待機していた警備隊を呼び出し、数名の隊員が入ってくる。機動隊のようにヘルメットとバイザーを付け、拳銃や盾を装備している。

「デルタ指揮官、手を離すんだ。」

 取り敢えず千崎と倉沢を引き離すことができた。一人の隊員のバイザーがへし折れているが。

 一先ず休憩にすることになった。司令官の白河さんも帰ってきたため、最終判断をしてもらう。

  

11:10

中央指揮所

海千救一

 司令官の白河さん、室長の美郷、俺、千崎を除く特殊作戦軍や統合作戦軍の指揮官が集合した。デルタ指揮官は副長の六上千歳が参加している。一番最後に来たのは演習帰りのシールズ指揮官の中野悠人だった。

「何事だ? 水中にいる俺を呼び出すとは。」

 ウェットスーツに身を包み、マリンゴーグル、閉鎖循環式リブリーザーを装備している。演習場からここまで来たので髪は濡れ、装備もそのままだ。しかし、弾倉と弾は別だ。弾倉を抜き、マガジンポーチには弾倉はない状態だ。銃と弾が一緒になることで危険なもの、威力を発揮するものだ。このような場所では緊急時以外では銃と弾は一緒になることはない。

「警視庁からの要請についてだ。千崎が警視庁の刑事に対して胸ぐらをつかむ事態になるくらい無謀な要請でね。さっき詳細の資料を渡してくれたんだけどね……。」


資料には次のようなことがまとめられていた。

テロ組織カチューシャ及びハニービーの拠点は4箇所

内訳:小さなセーフハウスが1箇所。レンタカー会社に偽装した施設1箇所。静岡県熱海民間船舶停泊地、大型ショッピングモール施設1箇所。

目的:国内に存在するテロ組織残党指導者及び幹部、所属メンバーを逮捕し壊滅させるため

規模:武装あり。規模不明


「おいおい、情報はこれだけか? 舐めてんのか?」

「こりゃ千崎も怒る。写真は外だけ。公安が調べてんならもっと情報はあるだろう。そこまで無能ではないだろうし。」

 自衛軍には元警察もいる。機動隊、特殊部隊出身だけでなく刑事、普通の交番職員にいた人間も少ないがいる。実力さえあればできる限り採用している。

「Fで全部吹っ飛ばせればな。」

「千崎も言っていた。しかし、このショッピングモール。解体業者の親会社が買収され、解体中止になったショッピングモールでここはあの事件と同じ場所。これは、買収した会社は黒だな。」

「えぇ。その予想でいいと思う。それと、さっきCIAからの連絡があってね。どうやら敵の親玉が日本に入ったらしいの。驚くことに、知っている奴。」

 CIAのマークがある紙が一枚。長文に写真付きの。

 写真は一人の女が羽田空港で撮影されたものと、AKやMP5を持った集団の2つ。

こいつは。


12:00

自衛軍基地 食堂

東城咲

「で? さっきはどうして挑発したの?」

「テロ組織解体と指導者を逮捕する。メリットしかないのにどうして断るんです?」

「はぁ、お願いする側がこの態度でどうする? 数年すれば定年近いから言うが、俺はこれでも元SATだ。情報が少ない場所に突入するのは嫌なんだよ。ま、結果的に行くしかないけど。」

 ん? 元SAT? 

「SATだったんですか?」

「あぁ。それにお前らが知っているように情報は今日持ってきたものだけじゃない。本部にはもっとある。なのに今日渡されたのはこれだけ。自衛軍もブチギレるよ。」

「ですが。」

「お前だって悔しいのは分かる。妹さんが被害に遭った、これは俺が同じ立場なら悔しい。だが、自衛軍も被害者なのだ。」

 自衛軍も被害者? そういえば、千崎という人もそうだったらしいし。

 私の知らないことばかり。でも、なんで倉沢は知っていたんだろう。

「警視庁の皆様。」

「ん?」

 先程いた海千さんに女性が一人。きれいな人。

「自衛軍司令官の白河美那と申します。先程は千崎が失礼しました。」

「いえ、自分が悪いのです!」

「それでも挑発に乗った彼にも問題はあります。今頃、彼は地獄を見ているでしょう。」

「ゑ?」

 どういうことなんだろう? 地獄?

「要請につきましては現在各指揮官が計画を立てておりますのでお待ち下さい。」

 指を指す方向にはテーブルを囲み、しかめっ面の人達がいた。


ほぼ同時刻

自衛軍基地 野外射撃訓練場

デルタ指揮官 千崎龍介

「あと10セット!」

「クソが。」

 挑発に乗った罰

弾倉はないM240を持ち、5.56ミリ弾倉を6本入れたポーチ付きのプレキャリ、だいたい60kgの何かしらのものが入った背嚢を背負いつつ、グロックをホルスターにしまっている状態で、走る。

「ぐぉ。」

「射撃用意!」

 だいたい20mくらい走り、20m先の的に脳天と心臓を打ち込む。使用するのは定番のM4とホルスターにあるグロックだ。

「ヒット、ヒット、ヒット。全弾命中。ダッシュ!」

「鬼め!」

「無駄口を叩く前に走れ!」

 STF副指揮官の山内さんが監視している。サボれない、逃げられない。

 はー。六上に指揮官を譲ろうかな?


12:15

自衛軍基地 食堂

海千救一

「小さなセーフハウスはSATだけでも問題はない。最悪、TF-2が参加しよう。ここは川に近いから潜水に長けている彼らは得意分野だな。レンタカー会社は、そこまで大きくはないが車の死角が怖いな。」

「第1機甲師団の戦車小隊を護衛に入れるのはどう? 車両は機銃で破壊するわ。」

 機甲師団団長が小田美九率いる戦車小隊のことを推薦する。

 M1A2エイブラムス率いる戦車2個小隊なら車両などに隠れる敵を一網打尽できるだろう。

 しかし、美郷は反対した

「いや、目立つから駄目だな。ストライカーを連れてTF-3が対応させよう。熱海は言うまでもないね。」

 シールズ指揮官の中野悠人を見る。演習で体中が濡れ、顔が苛ついていたが出番にニコリと笑う。

「へへ。お任せよ。」

「特戦艇とヘリからの航空支援と監視を入れよう。海保にも巡視船とSSTを要請しよう。特別艦隊司令官。」

 自衛軍唯一のFFM”桜"を一隻、保有している。保有数より艦隊ではないが艦隊と呼んでいる。

 FFMは海上自衛隊と同様の艦種で、対潜・防空能力を持ち、揚陸部隊や補給部隊などの護衛を任務とする艦艇フリゲートのFF(Frigate)に多目的(Multi -Purpose)と機雷(Mine)のMを足した多機能護衛艦。

は!

「艦隊は特戦艇及びヘリの支援。海保の参加あれば巡視船等の支援も実施せよ。」

「了解!」

 作戦参加の機会が来たため、この艦隊司令官。元自衛軍海風艦長山本は、先程の中野より笑顔になる。

「さて、問題は。」

 廃墟となり解体する予定だった大型のショッピングモール。

 このショッピングモールは日本屈指の規模で多くの人々で賑わっていた。だが、実情は違った。表向きはショッピングモールでも、裏では誘拐、人身売買、密輸などをするハニービーの活動場所でもあったのだ。

 

あの事件


自衛軍が忘れることはない。いや、全ての被害者は忘れられない。


「1時方向!」

「3-2ダウン! メディック!」


「戦術は前の時と同じようには無理。でも、私達は強くなり、今は戦車、戦闘機、ガンシップ付き。」

「ま、やれないことはない。」

「さて、どうやって突入するんだ? SAMもある可能性がある。気をつけないとヘリボーン部隊は危険だぞ。戦闘機にも脅威だ。」

「建物の構造上、戦車の支援ができません。逆にやられるかも。」

「今回はSATとの合同対応であって非公式に自衛隊の支援は無理だぞ。特戦群、SBUもな。」

......。


 千崎はこれを見越して怒ったのかね?


1300

自衛軍基地

白河美那

「今日はありがとうございました。期待された結果にはならなかったと思いますが。」

「いえ、こちらも用意した情報が少なかったことが失礼でした。また来ます。その時は宜しくお願い致します。」

 SITの方々をお見送りし、歩いて指揮所に向かう。

 最終的に警視庁からの要請は受諾しなかった。いや、一部は受諾した。大型ショッピングモール以外は対応できるがショッピングモールは部隊が各地に分かれている以上、敵が大勢いる場所に少数の隊で対応するのは難しいという判断だ。


中央指揮所

 指揮所の屋上は指揮所にいる多くの隊員が行きつけでもあるのだ。

 私は迷ったらここ。何を迷っているかって?

 警視庁からの要請を断ったこと。自衛軍という立場上、テロ組織を壊滅させる機会や要請があればすかさず行動を開始するだろう。でも、前の事件のように多くの死傷者を出す可能性もある。

 救一や美郷達には申し訳ないけど、押し通すことも出来た。

 元は自衛隊統合幕僚長の副官であり、組織を動かす司令官という立場はよく分かっていなかったし、知識もほとんどなかった。

「ここでまた考え事?」

「桜乃?」

 そこにいたのは、野田桜乃がいた。

 ......いや、違う。彼女はもう死んだ。実際、目の前には誰もいない。

 野田桜乃は誰かって? 簡単に言えば一番の親友であり、素晴らしい高校教師だった。ある意味好きだった。同性愛とかじゃなくて、桜乃という人間が好きだった。違いはないかもしれないけど。

 すると、ガラケー −携帯電話のコール音が響く。

「はい、白河。」

「司令官、中央指揮所にお越しください。」


13:30

中央指揮所

海千救一 

「第2無人航空隊のグローバルホークによる偵察結果です。大型ショッピングモールにはブルーシートや段ボールなどで隠していますが、SAMや機関銃が隠されています。コンテナにも隠されているようです。数は、SAMがおよそ15。対空機銃は30くらい。ヘリボーンには脅威対象です。」

 UAVによる空からの偵察で得られる情報は多い。敵の大まかな人数、配置、装備。作戦を立案するにも、作戦行動をするにも情報は必要だ。身近な例とするなら、学校の入試や登山や旅行などだろう。情報を得て、行動する。基本はそうだ。

 机に置かれた写真は何十枚とある。一応全て目を通すが頭が痛いものだ。実際にここに突入はどのようになるか。

 すると追加で写真が置かれる。

「これは?」

「警視庁公安部からです。警視総監命令で送ったようです。今、警視庁から続々と写真に資料が。」

「彼らが動いたね。」

 白河さんが疲れた顔をしつつも、ニヤリと笑う。

 統合通信隊のメンバーが箱ごと持ってくる。

「おいおい、こんなにあるのか?」

「あともう2、3箱は......。」

「くそ、出し惜しみをするなとは思ったが、ここまでとは。」

 確認済みのテロ組織のメンバー情報、目標施設の情報、保有している装備。

 やはり、人身売買や密輸もやっている。

「SAMだけじゃなく、戦車に装甲車。武装はないが、ヘリも持っている。」

「規模の小さい軍隊か。でも、作戦案はできたかも。」

「お、美郷が覚醒した。」

 情報が集まり各指揮官はやる気に満ち溢れていた。

 美郷に関しては、もう作戦行動の案を紙に書き出していた。

「しかし、立入禁止の場所にどうやってここまで発展できたんだ?」

「内通者か、裏口か。」

「さて、司令官。どうします?俺らはやる気はありますが。」

 中野は白河さんに問いかける。情報が集まり、命令あればいつでも行動できる指揮官連中が待つ。

 訂正。

 一人、無我夢中で作業をしている奴がいる。

「いや、別に駄目とは。」

 さっき屋上で考え事してたくせに。

「私は皆が準備が完了し、美郷から作戦についての説明があれば許可します。でも、千崎は?」

「おいおい、まだSITの若造に根を持っていると思っているのか?」

 いや、パイプ椅子に踏ん反り返りタバコを吸うジジイには奴も言われたくはないだろうよ。


9月20日 

1400

自衛軍

警視庁宛に要請受諾、日本政府内閣総理大臣及び防衛大臣宛に連絡7

作戦準備に着手


1600

特殊部隊待機所

海千救一

「そういうことなので把握しておいてくれ。」

「了解。」

 STFメンバー全員に作戦についての説明を終えた。他部隊に関しても各指揮官がやっている。

 勿論、参加する部隊だけである。

「海千さん。私の銃、どうなりました?」

 昨日のカチューシャに対する作戦で、俺のHK416に由花と春奈のハンドガンを壊した。

 416は勿論、二人が持つグロックは自分が使いやすいようにアタッチメントを付けるなどの改造をしている。銃だけでも高価であるが、アタッチメントだけでも物によっては高い。

「勿論、持ってきたよ。アタッチメントとかの調整は自分で頼むぞ。春奈のも渡してくれ。」

「ありがとうございます。」

 由花はスライドを引き、チェンバーチェック。

 マガジンを抜き、何度かスライドを引く。

「ふむ。バッチリです。」

「そっか。 なら、良し。」


最終的な今回の作戦参加部隊の担当は次の通りである。


小型セーフハウス

 TF-2


レンタカー会社

 TF-3

 第1機甲師団 ストライカー隊


熱海及び敵勢船舶

 シールズ

 特殊作戦舟艇隊

 特別艦隊


大型ショッピングモール

 STF

 デルタチーム

 TF-0、1、4  TF5、6、7は基地で待機 


各作戦地域にて特殊航空作戦隊のヘリ、第0航空隊の戦闘機及び攻撃機。第1無人航空隊のドローン、機甲師団の戦車などによる支援や情報収集など、自衛軍全部隊が直接又は間接的にでも作戦に参加する。

なお、熱海は海上保安庁、海上自衛隊が。それ以外では警視庁と陸上自衛隊も参加。

自衛隊は戦闘には参加せず、非公式輸送や整備、情報提供の支援のみだ。

理由は簡単。自衛隊最高司令官からの命令は出ていない。


翌日

9月21日

09:00

警視庁特別捜査会議室

自衛軍特殊作戦部隊STF 指揮官 海千救一

 誰も来ることがないという警視庁の奥にある会議室一角に対テロ組織の対応すべく捜査一課や特殊犯捜査係、組織犯罪対策部といった刑事部や機動隊隊長や特殊急襲部隊の連絡員の警備部の警察官が揃っていた。

 スーツや制服を着る人間が集まっているその中に、自衛隊の制服に似た制服を着た神居美郷とSTFの部隊マークを肩に付けたプレキャリを身に付け、弾倉ポーチやメディカルポーチを身に付けたチェストリグやその他付属品。ミッドライドと呼ぶ位置にグロックをホルスターを入れた俺と。俺とほぼ同じ装備のシールズ副隊長、賀川愛生がいる。

「なんとも、場違いな感じ。」

「美郷さんはいいですよ。制服だし。それに比べて私は。」

 そう言いつつ、愛生はプレキャリのショルダーをつかむ。

 そうだね、私はね......。む?

「いや、俺は?」

「海千さんはいいですよ。」

「うん、何が?」

「いいじゃないですか、似合ってるし、ほぼ将来を約束した人もいるし!」

 理由の大半は後者だな。

 ありがたいことにSTF2-2、原柚木とお付き合いをさせてもらっている。

「そういえば、愛生は友人と会ったのよね?」

「えぇ、まぁ。先の作戦で隊長が電話番号を教えたので先週、あっちから誘われました。」

 自衛軍に入った頃から多くの自衛軍軍人が秘密にしている人間が多い。愛生もその一人だ。

 先週見かけた時の笑顔はそういうことか。

 そんな話をしている間に警視総監が入室した。

「警視総監、入室!」

「やっとね。」

 声が漏れているぞ、美郷。

 警視総監は自衛軍を理解している一人だ。以前から対テロから治安維持までも互いに協力と教育支援をしてきた。特に対テロや小部隊による近接戦闘術の点では、特殊急襲部隊、SATと能力値が競合する部分もあり、格闘能力などはSATが高度であると評価している。元自衛隊や警察や海上保安庁の特殊部隊所属であったとしても学ぶことはまだまだある。

 先程までこちらを見ていた連中も姿勢を正し、会議が始まった。

「対テロ組織カチューシャ及びハニービー、一斉検挙の事前会議を始めます。」

「テロ組織の拠点は計4箇所。内、1つは熱海の民間港ですが海上保安庁が検挙しますが、警視庁も介入します。対応に関しては自衛軍が基本しますが、警視庁SAT、SIT、機動隊も協力して対応します。制圧後は捜査一課などが捜査などをしていく方針です。では、自衛軍の皆様お願いします。」

 説明は美郷が行う。司令官の白河さんに伝えた内容と同じだ。

 俺と愛生はサポートだ。

「自衛軍特殊作戦運用室長の神居です。では、早速ですが本題に入ります。まず、小型のセーフハウスから。」


小型セーフハウス、一階建ての小屋。

事前偵察では敵は5人。車両1台、ピックアップトラック。


「ここは川が近いため潜水した自衛軍部隊が接近。こちらが敵を無力化できるならやりますが、基本はSATかSITと共に制圧します。」

「これくらいならSITが対応するとしよう。」

「潜水部隊と同時にSITは配置につくように頼みます。詳細は後で担当者にお渡しします。では次、レンタカー会社。」


レンタカー会社、レンタカーが約15台前後だが作戦当日の台数は不明。

敵は3、4人。非戦闘員の出入りもあるため注意が必要。


「ここは非戦闘員がいる可能性があります。狙撃の対応が難しい場所もあります。ここはSATに協力をお願いします。市街地ですので派手なことは出来ません。」

「少し質問いいか?」

「はい、どうぞ。」

 一人の捜査員が手を挙げる。あの席は捜査一課か。

「俺らは自衛軍やSATらが制圧した後に逮捕とか捜査するのだろうが、全員射殺の場合もあるのか?」

「勿論。一応、隊員の数名には非殺傷弾のショットガンを持たせますが、絶対とは言えません。」

 あ、黙ちゃった。

 生きたまま検挙を優先する日本警察。対テロ組織でも検挙、捜査をしたいことは分かる。

 だが、相手は機関銃やミサイルも保有している敵だ。あの時のように多くの死者は出したくない。

「こちらから制限を設ける必要は?」

「ないです。非戦闘員や降伏した敵を無力化しないというような国際法など、基本の法令は遵守します。ですが、基本は制限などは設けません。設けることで私達は動きにくくなり、余計な犠牲者を出すことになります。歴史に汚名を残したくないならね。」

 現場に出たことがある美郷だからこそ、上からの命令で現場のやりにくくなることは分かるのだ。

 テロ組織を制圧し、捜査できるようにするのは俺らだ。

「ふむ。警視総監としても全員の逮捕が望ましい。だが、相手はあの連中だ。本当なら自衛隊が出るような事案だ。それでも奴らを根から根絶できる機会だ。それだけでも、日本と世界の平和と安全に貢献できるなら警察官として十分ではないかね?」

 「ほんと、真面目だな。」


大型ショッピングモール

敵の数、不明。50人以上との見込み。SAM、機関銃、戦車を保有している。


「ここは要塞ですね。よく気づかれないでここまで要塞化しましたよ。ここの攻略は参加部隊のみでの話し合いとします。」


別室

「うわ、やりたくないな。」

「SAMがある時点でヘリの急襲は難しいですな。フレアが装備されている自衛軍でも危険でありましょう。」

 SATの連絡員は一応、SAT内の指揮に関する班にいる人間だ。現場での経験も十分である。

「今回、作戦参加部隊は自衛軍とSAT以外に自衛隊も一部参加します。ただあくまでも支援です。主に負傷者の搬送や物資の補給と輸送。そして航空支援の調整と航空機の補給。」

「え?」

 美郷の言葉にSAT隊員に加え、警視総監も驚く。まぁ、自衛隊非公式参加のことは自衛軍以外の場では初公開だ。

 自衛隊は非公式の参加となり、戦闘には直接関わらず後方支援のみとなる。内容としては美郷の言ったことである。陸上自衛隊の第一ヘリコプター団や東部方面後方支援隊、海上自衛隊第1護衛隊群第1護衛隊の護衛艦いずも、まや、いかづち。航空自衛隊警戒航空団飛行警戒管制群第602飛行隊の早期警戒管制機、入間ヘリコプター空輸隊が支援してくれる。

「スゲー。」

「ある意味、多国籍軍の作戦行動みたいだ。」

「それで、ここの場所は......。」


1200

自衛軍基地食堂

海千救一

「何とか説明は終えたな。」

「えぇ。今日の2000にはFFM桜が作戦海域に向けて出発。ほぼ同時刻に海上自衛隊の護衛艦が出発。2100にはF-35Bが艦隊と合流する。また、F-15EとA-10がいつでも出撃できるように待機、空自のAWACSや空中給油機とその護衛機が百里基地と浜松基地にて待機をしている。」

 白河さん、俺、美郷、愛生。中野が集まった。

 中野は海上保安庁、海上自衛隊との調整をするために護衛艦いずもに行っていた。

「海上保安庁の巡視船あきつしま、いず、あしたか。また、SSTが出動。今日には羽田基地に到着し、船隊と合流。明日の05:00には護衛艦と合流することになった。」

 陸海空の連携ができた。残りは本番だ。

 作戦の流れは決まった。協力してくれる機関の準備も整いつつある。

「さて、そろそろ訓示をするかしらね。」


1230

自衛軍基地 中央指揮所

白河美那

「先の。自衛軍が発足した頃の話をしたい。あの頃は、自衛軍が発足したばかりで、まだ未熟であった私や仲間が集まり、装備もここまで充実していなかった。そして、あの事件。アキメネス作戦を発動し救出作戦を実施。残念ながら多くの犠牲を出した。同時に何かを失い、自衛軍を出て行くことになった人達もいた。」

 手に持っていたドッグタグ。数えられないほどのドッグタグ。血がついたものもある。


秋待たで 枯れ行く島の 青草は 皇国の春に 甦らなむ 


「私は皆の後ろからしか支えることができない。それでも皆と共にある!」

 基地全体に伝えるカメラに向かって。いや、自衛軍で命を救い、守り続けることを誓った者達に向けて。

 

敬礼


「テロ組織の奴らの息の根を止める作戦行動である。作戦に臨むにあたって、細心に。大胆に。威風堂々と働くことを期待する!!」


大和作戦 開始


20:00

海上自衛隊横須賀基地

自衛軍特別艦隊 FFM桜 山本艦長/司令官

「武装準備良し!」

「各班、配置完了。」

 艦橋から見る護衛艦隊に、米軍の艦隊が見えるのは久しぶりだ。しかも、ライトアップ付きだ。

 紺色で桜のマークがある帽子を被り直す。

「了解、出港用意!」

「出港よーーい!!」

 海上自衛隊でも有名なラッパの合図と共に舫いが外される。

 海上自衛隊のミサイル艇ならタグボートという曳船による離岸の支援はいらないため、すぐに出港できるが、FFMのサイズとなれば難しい。少しずつでも離岸していく。

 タグボートにより曳航が終わり、東京湾を抜け、海上自衛隊との合流海域に向かう

「この時間帯は民間も海自もアメリカ海軍も出入りが少なくて助かる。そろそろ速度を上げよう。第三戦速!」

 いいぞ、いいぞ。

「最大戦速!」

 エンジンの音はここまでは聞こえないが、何となくでも聞こえる気がする。

 うん、やっぱり聞こえん。

 FFMでもアメリカ海軍のインディペンデンス級沿海域戦闘艦と同じエンジンを積んでるため、大胆ではあるが、40ノットの速度。時速75キロ出る。

 ヨシヨシ。さて、行こうか。


21:00

自衛軍基地 エプロン

自衛軍第0航空隊 カワセミ隊 F-35B

カワセミリーダー 川嶋

 格納庫より発進し、エプロンで順番待ちだ。先にC-17輸送機が離陸していく。

『管制よりカワセミ1及び2。滑走路2に移動を許可する。ラインナップし待機せよ。』

「こちらカワセミ1、滑走路2に移動、ラインナップし待機する。」

「こちらカワセミ2。滑走路2へ移動し、ラインナップして待機します。」

 滑走路への進入許可は出たが、まだ離陸許可は出ていない。C-17が一機いる。

 夜の基地は照明が照らされ、綺麗である。が、今日は作戦だ。景色を楽しむ余裕はない。

 滑走路2に移動し、待機。

『カワセミ1、 滑走路22の離陸を許可する, 風は方位0-4-5より4ノット、3,000ftまで上昇し高度を維持せよ。』

「滑走路2の離陸許可、3000ftまで上昇し高度維持する。」

 離陸許可が出た。すみやかに離陸し、指定された高度まで上昇する。

 アフターバーナーを点火、スピードアップ。

 浮いたな、行くぞ。

「カワセミ1 離陸完了。」

『カワセミ1, 方位2-4-0に旋回せよ、周波数の変更を許可する。護衛艦いずもの誘導に従うように。カワセミ1、健闘を祈ります。』

「方位2-4-0へ旋回、 周波数変更許可、了解。」

 カワセミ2が離陸し合流後、海上自衛隊のいずもがいる海域まで飛ぶ。


23:31

茨城県百里基地

自衛軍第1機甲師団第1戦車小隊 小田美九

「はい、オーライオーライ!」

「良し、直ちにトレーラーに載せろ。積み終わり後は勝田駐屯地へ急ぎ輸送しろ。」

 冷たい缶コーヒーを一口。うん、美味しい。

 敵の大型ショッピングモールは茨城県にある。機甲師団の戦車及び装甲車。そして回収車がC-17で自衛隊の百里基地に輸送してきた。私の車両はトレーラーに載せられた。残りの一台を載せれば移動開始だ。もう一個小隊は基地に帰還しているC-17輸送機が運んでくれる。

 法律で戦車の移動は法令により夜間限定とされている。先導車をつけた上で、緑色の回転灯を発光させて走行しなければならない。自衛軍でも日本の法律を守らなければならない。

 今回のトレーラーは自衛軍がわざわざ高速道路や一般道を使ってここまで来た。お疲れ様。

 M1A2エイブラムスは自衛隊には採用されていない車両だ。10式戦車や90式戦車とは違う。重さ的には90式戦車は似ているが、自衛隊にはそこまで負担はさせられない。置き場は自衛隊、輸送は自衛軍が行う。

 ちゃんと蓋を閉め、缶コーヒーをポケットにしまう。

 ふぅー。今回、私達戦車隊の役割は敵の機甲部隊無力化及び特殊部隊の支援だ。出発前の情報確認では、UAVの上空と細部の偵察によると、戦車や装甲車、SAM、機関銃陣地に戦闘と輸送ヘリが確認された。

 戦車はT-72が10台。装甲車はBTR-90、5台。対空砲で2K22、4台。SAMの2K12、2台。

 戦闘ヘリがMi-28。輸送ヘリ。Mi-24の一機ずつ。

 機甲兵力は基本はロシア製。数は多いが、アパッチの航空支援があるから問題ではないが、対空兵器関連は航空支援するヘリが近づけない。対空兵器は戦闘機か攻撃機で破壊する予定だが。

「隊長! 輸送準備完了!」

「了解。行くぞ!」

 考えては致し方ない。ただ、撃つだけだ。

 

23:30

自衛軍基地 特殊部隊待機所 屋上

海千救一

「ふぅー。」

 ベンチに座って滑走路側を見る。C-17に戦車や装甲車を積んだり、人員が乗っていったりしていく。

 嵐の前の静けさか? 

 輸送機やヘリの音でうるさいのにな。それでも感じる、嫌な感じだ。

 アキメネス作戦。アキメネスという花からきている。あの作戦に参加した元ー==部隊の一員。もうこの世にはいない隊員が夢に出てきた。アキメネスは彼女が好きな花だった。

「救一?」

「む? 柚木か。」

 すると腕に絡みついてくる。

「どうした?」

「甘えさせて。」

 初めて会った時、俺はこいつをこう思った。

 猫だな。

 何でかって? 怯えていた姿、衣食住を与えた時の夢我夢中の姿、甘える時の姿。

 可愛らしい。だからこそ、自衛軍入隊には反対した。

 可愛いという理由かって? 実を言えば、女性が軍人として前線へ出る部隊に入れることが反対だった。    


 女性差別ではないか?


 そう言われてしまうのも無理はない。だが、負傷して泣き叫ぶ声や姿を目にした時。

 あの感情は、もう嫌なのだ。

 男が負傷した時とは違う辛さがあるのだ。


「どうしたの? 顔、怖い。」

「あ、いや。すまん。」

 いかんいかん。顔に出るのは悪い癖だ。昔から怒りを言葉として発せずに、顔に出るのだ。

 ふぅー。

 あん?

「すー。すー。」

「寝ちょる。」

 

海千零士

「な、中野さん」。

「あぁ、リヤ充特別警戒!」

 たまたま目が覚めた時に零士と会い、屋上に来てみれば。

「お熱いね。」

「そうですね。」

 もし、軍人じゃなければ、今頃は。

「いい夫婦みたいだ。」

 あぁ、その通りだ。

 零士が変わりに代弁したな。

「さ、戻るぞ。軍人も、恋はするのだよ。」


次回

作戦開始

戦艦大和

大日本帝国海軍が建造した大和型戦艦の1番艦。

史上最大の46センチ砲を搭載した超弩級戦艦である。建造当初は、世界最大の戦艦。

呉海軍工廠で建造。

昭和16年(1941年)12月16日就役、昭和20年(1945年)4月7日、天一号作戦(坊ノ岬沖海戦)にて沈没。

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