公園にて②
「じゃあ鬼龍さん、詩織とは会えるんですか?」
このまま鬼龍さんの話を疑っていても埒が明かない。それにもし本当に詩織に会えるのなら、たとえそれが霊であっても会ってみたい。
そう思い問い掛けると、鬼龍さんは満面の笑みを見せた。
「会えるわよ。ただどうやったら会えるか今考えてるの。ひとまず貴方には、そこに詩織ちゃんがいるって事を信じてもらわないと前に進まないのだけは確かね。このまま放っておくとまずい事になりそうなのよ」
そう言って鬼龍さんは俯き、再び黙ってしまった。俺はどうすればいいのか鬼龍さんに尋ねたかったが、俯き真剣な表情で悩む彼女に問い掛ける事が出来なかった。
俺は本当にもう一度、詩織に会う事が出来るのだろうか?
俺と詩織は高校に入ってから知り合い、俺が一目惚れした事から始まった。
一度告白したが
「お互いの事、何も分からないから」
と言われて断られた。
それでも諦めの悪い俺は、事ある毎に詩織に話し掛け、遊びに誘った。詩織も次第に笑顔で話す様になり、二人っきりで話す事も増えて行った。
俺が再び告白すると、今度は笑顔で了承されて俺達は付き合う事が出来た。
俺達は放課後、カラオケに行ったりファーストフード店で喋ったりしながら楽しい時を過ごしていた。今思うと青春ていうやつを謳歌していたんだろう。
そんな楽しい時間を過ごして一年が過ぎた頃、俺はバイトして初めて詩織にプレゼントを用意した。高校生のバイト代なんてしれていたが、それでもシルバーのネックレスを用意した。
詩織にその事を話すと「どんな物でも嬉しい」と言って目を潤ませていた。
そして用意していたネックレスを詩織にプレゼントしようとしていた日、俺はそのネックレスを家に忘れてきてしまったのだ。
俺がその事を伝えると「ははは、将平らしいね」と言って詩織は笑っていた。
その日の放課後、
「出来れば今日プレゼント欲しいから今日は将平の家でデートしようか」
と詩織がはにかんだ笑顔で言ってきた。
俺は思いもよらない展開に驚いたが、笑顔で頷くと二人で俺の家に向かった。俺が心躍らせていると、それを察したのか詩織は
「何か変な事考えてないよね?」
と言って笑顔で釘を刺してきた。
俺も笑顔でなんとか取り繕ってみたが、俺の下心は少しバレていたのかもしれない。
それが俺達の幸せな最後の時間だった。
俺達は俺の家に向かっていた最中にあの交差点に差し掛かり、事故にあった。
「……! 鬼龍さん! 詩織は首元を気にしてたんですよね? ネックレスです。俺、詩織にネックレスをプレゼントしようとしてたんです」
「なるほど。それかもね」
そう言うと鬼龍さんは立ち上がりこちらを向いた。
「行ってみようか。詩織ちゃんに会いたいんでしょ?」
そう言って微笑んだ後、鬼龍さんは歩き出し、俺は後をついて行く。