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邂逅②

「ふふふ、そんな険しい顔しないでよ。少し場所変えて話さない?」


 不快感が顔に出ていたのか、彼女はそう言って笑顔を見せた。悔しいがこれだけ整った容姿で満面の笑みを見せられると、つい全てを許してしまいそうになる。


 彼女は俺の返事を待つ事なく、踵を返して歩き出す。呆気に取られて見つめていると彼女は振り返り満面の笑みを見せた。


『来ないのか?』


 そう言われている様な気がして、俺は仕方なく後をついて歩いて行く。

 少し歩いた所にある公園に入ると、隅にあるプラスチック製のベンチに彼女は腰を下ろした。


 彼女はこちらにちらっと視線を送ると僅かに笑みを見せ両手を合わせる様にすると、その上に自らの顎を乗せた。


 この女性は何がしたいんだ?


 そう思いながら俺は彼女を観察していた。顔は整っており、スタイルも良い。容姿は完璧で実際、今ベンチに腰掛け自らの手に顎を乗せて遠くを見つめているだけなのに妙に様になっている。


 俺の視線に気付いたのか、彼女はこちらを見るとニコッと笑って見せた。


 何よりこの笑顔が不思議だった。美人な彼女が笑いかけるが、その笑顔が何処か哀しげなのだ。


「何? 何も言わずじっと見て。目の保養かしら?」


 こういう発言を聞いて、この人は自分の容姿は理解しているんだなと、理解した。


「ああ、いや、貴女の様な美しい人が一体何の用かなって思って」


「ああ、ちゃんと私が綺麗な事は褒めてくれるんだ。偉い偉い」


 笑顔で手を叩く彼女を見て、貴女に謙遜という感情はないんですか? と思いながら俺は苦笑いを浮かべていた。


「さてと、じゃあ本題に入ろうか。まずは……あっ、君、名前は?」


度会(わたらい)将平(しょうへい)です。貴女は?」


 変わらない笑みを見せて彼女が問い掛けて来たが、俺はついぶっきらぼうに答えてしまった。


「……私は鬼龍(きりゅう)(かなえ)。よろしくね度会君」


「あ、よろしくです。えっと鬼龍さん? 叶さん?」


「下の名前は特別な関係同士じゃないと呼び合いたくないの。だから鬼龍の方でお願いね」


「あ、すいません鬼龍さん」


 先程までの笑顔とはまた違う少し冷たい笑顔を浮かべて鋭く言い放つ鬼龍さんに気圧される様に、俺はつい謝ってしまう。


「さて、本題に移るわね。度会君、険しい顔してあそこの交差点を見つめていたけど、何かあるの?」


「いやまぁ、何かあるというか、なんていうか……」


「はっきりしないのね。じゃあ質問を変えるわね。あの交差点に立っている制服姿の長い黒髪の女の子は知り合いかな? すらっとした可愛い顔立ちの女の子」


 それを聞いて俺は一瞬、詩織を思い浮かべる。


「あ、やっぱり知り合いなんだ」


 俺の表情を見て、そう言って少し笑う鬼龍さんを見て、俺は不快感をあらわにした。


「どういうつもりか知りませんが、そういうの辞めてもらえませんか。不愉快です」


「あら、ごめんね。でもあの子が寂しそうでさ。ずっと首の辺りから胸元の辺りをさすってるの」


「なんですかそれ? 知りませんから。失礼します」


 注意してもくだらないオカルト話を辞めようとしない鬼龍さんに苛立ち、俺はその場を去ろうと反転した。


「あら、帰っちゃうの? 彼女の話は聞きたくない? 左の目元に小さなホクロがある彼女」


 俺はその言葉を聞き、驚き思わず振り返ってしまう。

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