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殺人鬼の語るプロローグ

浅草冬樹あさくさふゆきと連絡がとれなくなったのは3日前の事なの」

彼女__上野朋美うえのともみはカップの縁を指で撫でながら話し始めた。

「その日、私は彼と喧嘩して__

ううん、喧嘩なんかじゃないわ。

一方的に私が怒って冬樹は言い返す事もなくだんまり。

いつもの事なんだけど、なんだかカチンと来てね。

コップの水を、それこそ安っぽい恋愛ドラマみたいに冬樹の顔にばしゃって。

それなのにあいつ怒りもしなければ、文句も言わない。私もう嫌になっちゃって「あんたなんか別れてやる」って、それで喫茶店を出ていって、それっきりなの。

後を追いかけてくることもなかった。

椅子に座って私に水を掛けられた体勢のまま、まるで石みたいに固まってた」

「あの喫茶店もういけないな、お気に入りだったのに」彼女ははぁと溜息を吐いた。

「それから、あいつに「2日待ってあげるから、それまでに荷物をまとめて出て行って」ってメールした。

むしゃくしゃしてたのよ。

そのまま友達の家でやけ酒をして、夜の10時になって鞄の中にあいつの財布を見つけたの。

いつも手ぶらで私の鞄に物を入れる罰が当たったのね。

財布の中には鍵が入っていて、つまり私の家の鍵と合鍵は私の手の中にあって、あいつが締め出しを喰らっているって事が分かった。

それでもしばらくは「知った事か」って思ってたんだけど、12時ぐらいからまた雨が降り出したから気になって、家に帰ったの。玄関扉の前で座り込んで待っているかもしれないって思って。

でも、誰もいなかった。

家に入ったら冬樹の携帯が充電中のまま置いてあった。

財布も携帯も持たずにどこにいるんだろう。

最初は友達の家に居るのかもしれないって思ったけど、次の日になっても携帯と財布を取りに来る気配もなくて共通の友達に聞いてみたけど誰も知らないって。そもそも携帯がないんじゃ連絡のしようもないじゃない?

それで、今日になってもまだ音沙汰がないから、、、それに仕事をしていれば気がまぎれたけど、休日で何もやる事がないってなると、どんどん悪い事が思いついてきて。

もしかしたら、ヤクザとかにお金を借りる代わりに捕まったとか、あいつ、見た目だけはいいのよね、ほんと見た目だけは」

ここで上野さんはコップをぐいっとあおった。

「先生はヤクザじゃありません」

兄が腹に据えかねるといった風に口を挟む

「そんなつまらないものじゃない。先生は探偵なんです。

それも『メイ』のつく」

私は心の中で『メイ』を『迷』に変換した。助手に助けを求めて命からがら、そんな名探偵がどこにいる。

けれど、まだ男の本性を知らない上野さんはその言葉を聞いて眉をぴくりと跳ね上げた。美人がすると中々迫力がある。

「へぇ?探偵さん?とてもそうは見えないけど」

私も心の中で同調する。

「で、なんでその男が浅草さんの失踪に関わっているって言うんですか?」

「それはね、この男の玄関に冬樹のスニーカーがあったからよ」

「スニーカーですか」

私のものいいたそうな表情を見て上野さんは首を振る。

「その靴はそんじょそこらのものとは違うのよ。

有名なブランドの人気シューズその試作段階のものでこの世に一点しかない、とても希少価値の高いも記念品なの。

側面にデザイナーのサインが描かれているし、所々出回っているものと違うから分かる人が見れば一目で分かるわ」

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