表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/23

殺人鬼もしくはヘビが誘拐犯もしくはカエルを告発する

その時の光景はよく覚えている。

黒髪ロングの美女が均整きんせいのとれた顔を鬼の形相よろしくゆがめ、魔を払い病を治す鍾馗しょうきのように片手で男の胸ぐらを掴んでいる。

もう片方の手に剣がないのが不思議なくらいだ。

「先生に何をするんですか!」兄が慌てて間に入るが、彼女の耳には届かない。

「あんたが冬樹をさらった事はもう分かっているの!

さあ!観念してあいつの居場所を白状しなさい!!」

それに対して、男。

「ごぼふぉ、く、くびが」

「あ、先生の顔色がとても赤いです。なるほど、血が溜まっているんですね」冷静に観察する兄。

一体、そのスレンダーな体のどこに男一人を持ち上げる力があるのか。本当に人ならざるものなのかもしれない。「あ、今度は青くなった」

、、、ああ、もう。

「お姉さん、すいませんがその男を放してやってくれませんか」

まるで私の事が目に入っていなかった彼女は__玄関開けたの私なんだけどなぁ__小さな女の子の登場にびっくりしたように目を見開く。

驚いた拍子に手の力が緩み、どすん!、男の体が床に落下した。

苦しそうに息をする男。傍に駆け寄る兄。

「きみ、さっき僕の事真面目に助けようとしなかったな」

「ええ!?俺が先生の危機にそんなわけないじゃないですか!!

なるほど、酸素不足による幻覚作用は本当だったんですね」

恨めしそうに睨む男と兄。「なるほど、幻覚だったのか」こいつ、ちょろすぎないか。

この二人に構っているといつまでも話が進まないので、私は場の進行をになう事にした。

「お姉さん、この男が何をしたのか教えてくれませんか?」

「それから一体僕に何をするつもりなのかも!それによっちゃあ地下シェルターに逃げ込まなきゃならない」余計な茶々を入れる男を睨みつけて黙らせる。

女性の方は、第三者の介入で冷静になったようで恥ずかしそうに額の汗にハンカチを押し当てている。さっきよりかは話が通じそうだ。

私は兄に水を持ってくるように頼んだ。

「ありがとう」

受け取ったそれを彼女はぐいっと飲み込んだ。空になったそれを兄にぐいと差し出す。「おかわり」何だかようすがおかしい。

コップを持って台所の流しに向かった兄をこっそり観察していたら、なんとブランデーの瓶を傾けているではないか!

「おにいちゃん!何してるの!!」

驚く私に、兄は全く動じなかった。

「もちろん、おかわりを用意しているのさ

それに落ち着きのない人にはブランデーを処方するのは当たり前のことだよ」

「それはお兄ちゃんの読んでいる探偵小説の中の話よ。

日本人はそんなぐびぐびアルコール度数の高いものを飲まないの!」

「相手に教えずに飲み物にお酒を入れたら犯罪なのよ」と教えると兄は「世知辛い世の中になったものだ」と渋々、琥珀の液体を注ぐのを辞めた。

純度100%の水道水を持ってリビングに戻ると、彼女は椅子に浅く腰をかけ、男が少しでも逃げるそぶりをしたら飛び掛かってやろうと静かな緊張を全身に張り巡らしている。

そんな感じだから男の方も下手に立ち上がる事ができず、床にへばりついたまま終始彼女の挙動に注目している。

まさに蛇に睨まれた蛙。

その戦線に割って入って彼女におかわりを渡してあげた。

一口飲んで、不満げな物足りないような表情を浮かべてこちらを見てきたが、無視する。

「それで、この男が誘拐犯というのは一体どういう事なんでしょう?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ