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エッセイ

16連打のクセが身に染み付いている

作者: たかさば

 ……毎朝、私は、格闘している。


 叩きたい欲を押さえ込み、滑らかな動きを心がけ。

 画面を見つめ、出てくる文字に希望を託し。


「…ッ!!エエと、【へ】は…み、右ッ!!」


 左手で握り締めるのは、愛用のスマホ。

 右手の親指が触れるのは、ひらがなの並んだ画面。


「あ、あああ、予測変換でへんなの出てきた、違う違う、【へっぽこ】じゃない、【弁当】を選択しないと!!」


 朝五時半…、底冷えするキッチンで娘の弁当を作る私は、かなり騒々しい。

 卵を焼いたりおにぎりを握ったり、おかずをつめたり、チャンスを見つけてゴミをまとめて、洗濯機を回し、猫のご飯を出し洗い物をしたり。


 ドタバタの最後を締めくくるのは、お弁当の写真をSNSに投稿する作業だ。


 特にものすごいお弁当というわけではないのだけれど、同じメニューが続かないよう、『先週のあのおかずはおいしかったからまた作ってね!!』といわれた時にすぐにどれを再び作ればいいのかわかるよう、写真に残すようにしているのである。


 もうかれこれ…五年くらい続いている朝のルーティンのひとつで、投稿が完了したらウォーキングに出かけるという流れが私に染み込んでいるのだ。


 そんなSNS投稿なのだが、このところちょっとぎこちない日々が続いている。


 というのも……、フリック入力というやつを…習得しようと思いましてですね!!


 ……そう、私は実はフリック入力というやつが、できないのだ。

 画面を滑らせて文字を入力する、そのスマートでお洒落かつ洗練された無駄のない動きがですね、一向に身につかないんですよ!!!


 長年叩き込まれた『文字は画面/キーボードを叩いて入力するもの』という習慣が、信じられないほど…最先端の入力革命技術の参入を拒むのである!!!


 ついつい入力画面がでると、親指で画面を叩いてしまうのだ。

 ついつい入力が必要になると、小刻みに親指を動かしてしまうのだ。

 ついつい文章を打ち込む時に、一心不乱にスマホ画面に連打をかましてしまうのだ。


 ……ふんわりと思い出すのは、ずいぶん若い頃にゲームのキーパッドをプチプチ押した記憶だ。


 弾をいかに早く連射するかということに命をかけ、勉強そっちのけで親指を小刻みに動かした経験がにわかに思い出される。


 シューティングゲームは勿論のこと、アクションゲームでジャンプしたり、アドベンチャーゲームの文章の早送りをするために連打した記憶が…フリック入力という新技術の習得を阻む。


 私の中には、長年にわたって身体の細胞の隅々にまで染み込んだ、入力の技術というものが蓄積されている。何度も四角いボタンを押し続け、かつて大ブームを巻き起こした16連打というウルトラテクニックまで習得したのは伊達じゃないのだ。

ついつい指先が勝手に、画面を叩いてしまうのである。


 ……学ぶことを、習得することを諦めて、『文字はタップ入力すれば良いのだ』と考えればいいのかもしれない。


 だがしかし、初めてスマホを持って一ヵ月後に…フリック入力をマスターした息子が目の前にいるのだ。私が50文字打つ間に、100文字打ってしまう若者が、目の前に、目の前にいるんだよぅ!!


 あの素早い入力、滑らかで腱鞘炎知らずの動き、ぶれないスマホ本体に、フリック入力できるんだぞというなんとなく鼻の高い感じ…うう、うらやましい!!


 ぐぬぬ…私だって、私だってぇええええええ!!!


 ……というわけで、毎朝私はですね。


 タップ入力で30秒で済む作業を、フリック入力で2分かけて行っているというお話です、ハイ……。


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― 新着の感想 ―
[一言] ファイトです!   う   ↑ い←あ→え   ↓   お の入力感覚が身につけば、サクサクっと入力出来るようになりました。 それでも、スマホ持ちたての頃は、キーボード配列で入力していました…
[一言] フリック入力できない仲間があぁぁぁぁ…!! キーボード入力でも腱鞘炎になったことない(元データ入力者)のに,スマホの入力で腱鞘炎になりかけています 連打した方がはやいです… あれほんと,皆…
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