才能アリか凡人か
殆ど設定羅列回です
「どうもです」
「あ、おかえりなさい。どうでしたか?薬草のほうは」
あれから数日たって、俺は薬草とキノコを刈るお兄さんとなっていた。一度角の生えた兎みたいな明らかな雑魚とタイマン張ったが大地とディープキスする事になった為、以降剣は薬草を刈る道具へジョブチェンジした。いや〜、鉈っぽいの選んだのは正解でしたね。
「それより、これ見てよホラ!」
そういって俺は握りしめた拳から一気に親指を抜き出す。その親指の先には火が灯っている。
「おお、無属性魔法以外も使えたんですね」
彼女の言う無属性魔法とは自身が持つ魔力を自然の力へ変換すること無くそのまま撃ち出す、火力無い、燃費悪い、ダサいの三重苦技だ。しかし、かわりに才能というものが存在せず誰でも一定以上の強さを引き出せる万能魔法の側面を持つ。
「酒場で言われましたよ!『ギャハハ無属性なんてどんなに鍛えても火の半分ぐらいの強さだぜギャハハ』って!」
俺は教会で自身の才能の欠如を突きつけられて以降受付嬢に進められるままに無属性魔法を練習していたのにこの仕打ちである。
「まぁまぁ、落ち着いてください」
そう言って、彼女が両手を前へ突きだすと両の掌に小さな火球が現れ、その火球を使ってお手玉を始めた。
「私がこの忘年会用隠し芸をマスターするのに費やした時間は2日程です。貴方のかわいいチョロチョロ火種の発火にはどれぐらい掛かりましたか?」
「…………4日」
「ごめんなさーい。もう少し大きな声でお願いします」
「いや、もうやめましょ?俺が悪かったです才能ないです」
というか、正直ここに来る前に教会前で小さな女の子が紙を貰った直後に口から火噴いてて自信も何もあったもんではなかった。
「大人しく無属性魔法を鍛えましょうって。オススメした肉体強化の魔法は覚えました?そこまで習得出来ればそこらの魔物ぐらいなら挽肉に出来ますよ」
───火種づくりにご執心でまだ指先からほっそいビームしか撃てない事は黙っておこう。そう決めた俺は新たに薬草刈りの仕事を受け、再び森へ向かった。
誰に教える訳でもないが、ここで俺なりの魔法習得法を纏める。
まず書店で売っている『魔法の九九』を購入する。この本では掛けられる数を魔法の種別、掛ける数を魔法の強度として表している。ここからお目当ての魔法を選び、イメージし、馴染ませる。これが1プロセスだ。
まぁ『火の1×1【火球】』で火種しか作れなかったり才能で出来栄えに差は出るが。
さて今回目指すは『無の3×1【鎧装】』だ。肉体強化と言っても初歩の初歩なので利き手に魔力を纏わせるだけらしい。
まず、魔力を練りだす。俺のイメージだがおしっこを想像して欲しい。あのちょっときばって『チョロッ』と出す感じ。そして出た魔力を解き放たずに右腕へ移動させる感じだ。
「………出来たのか?」
実感が無いので適当に石を握ってみる。ぐっと力を入れると粉末とまではいかないが粉々に砕く事が出来た。こりゃ凄い。この調子で『3×3【全鎧装】』までは行きたいところだ。薬草は今日じゃなくてもいいし、ぶっ通しでやることにした。
ヤバい。俺には才能があった。『無の3×6【他者干渉】』まで習得してしまった。たった1日でだ。おいおい、これは何処も俺を放っておかないのでは?
「『おい、聞いたか?何でも有能なイケメンサポート魔法使いがいるらしいぜ?』」
「『本当かよ?俺は今丁度肉体強化の魔法を掛けられるイケメンを探してんだよ』」
「いや、そんな事は無いですね」
俺のお人形遊びに受付嬢が水を挿す。
「確かに、1日で6段まで行けた事は素直に凄いですよ」
あらやだ、褒められちゃった。異世界生活初じゃないかこれ。
「でも前提を忘れてますね。酒場で言われたらしいですがもし『火の3×6』と比較されたらあちらは無の効果に加え火の破壊力を得るんですよ?なんなら才能があれば全身に業火を纏って敵を寄せ付けない効果とかもつくんですよ?ねぇ勝ち目あります?」
「そんなボロクソに言う?」
「ごめんなさい。自分でイケメンとか言い出して引いたので」
そこについては俺も謝るがやっと俺の専売特許が見つかったかと思ったのに上位互換がいるのか。やってられないね。
「でもそこまでマスターしたなら魔物討伐もやれるんじゃないですか?」
「いや、どうだろ?マスターしたとは言っても石砕けるぐらいよ?魔物わりとと強いし」
「大丈夫大丈夫。私がそれぐらいで行けるクエスト見繕ってあげますから」
「そんなに後押ししてくれるならやってみますかね」
俺は受付嬢がピッタリのクエストを朝までに見つけてくれるというのでもう寝る事にした。自分はいつ寝るのか尋ねたが適当にはぐらかされた。女は不思議な生き物だ……
「フフ、それにしてもサトウさんったら見栄張っちゃって……」
「石砕く破壊力なんて3×1で出るわけないのに……あの魔法、ビンの蓋開ける為に主婦が覚えるぐらいの魔法なんだから……」
「まったく、私じゃなかったら真に受けて高難度クエスト紹介しちゃうとこでしたよ。感謝して欲しいですねぇ」
次回やっと戦闘です