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転生初日

なろうどころか執筆処女なので、好きな作品の投稿が滞ってる時にテキトーに読むノリで読んでください


異世界転生した。


 物凄く単純だ。階段で滑って転んで頭打って死んだ。痛かった。辞世の句を詠む暇すらないほど瞬時に死んだので余り死ぬ前の景色は覚えていないが、少なくともこんな透き通る青空の下、瑞々しい草木に横たわってはいなかった。


「……」


 特段嬉しくも悲しくも無かったがまぁ旅は好きなので悪い気はしない。なるべくポジティブに行こう。

 そう決心し、遠くに見える町並みの影へ足を踏み出した。




 街には門番がいたものの軽い会釈を互いにするだけで入る事が出来た。意外と平和な世界なのだろうか。


 町並みはRPG的な西洋の中世を想像していたのだが、もう少し文明が進んでいるようで、街灯や電信線が立ち並び、舗装された平らな車道を馬車や時には自動車も通っていく。西洋というか米国臭いな。

 姿は見えないが遠くから微かに汽笛らしき音も聞こえる。最低でも蒸気機関は発明されているようだ。


 武具店の看板には剣、杖に並び銃も描かれていた。あまり銃には詳しく無いが見た感じレバーアクションか?となると1800年代後半ぐらいの文化水準だろうか。

 しかし杖が書かれているぐらいだし魔法もあるのだろう。これ以上無理に元居た世界に当てはめても意味は薄いかもしれない。

 

 取り敢えず鎧か何かが欲しいとその店の前で足を止めたものの、金が無い。そこで俺は身につけている出社直前の格好、つまりスーツやカバンの一部を売る事にした。多分役に立たないしな。


 そんな軽い気持ちで買い取りの相談をしてみたが(言葉は日本語ではない筈だが何か分かったし通じた)俺の所持品はちょっと引くぐらい高値がついたらしく、店の好きなものを持っていって良いと言われた。現代製品はそりゃこの時代からすればオーパーツになるのだから価値は高いだろう。


 もしかしたら行くとこ行けばもっと高値がつくのかもしれないがそんなお宝を丸腰で着て練り歩く等怖すぎるのでここで妥協することにした。


 ただ何分武具の購入経験は無いので判断に困る


「すみません。俺田舎者でして何が良いとか全然分かんないんですけど初心者にオススメみたいなもの有ります?」


「ええ、それでしたら……」


 かなり上機嫌で色々と教えてくれた。オススメはやはり剣だと言う。杖は魔法の才能が無ければマジにただの棒だし、銃はどうも狙うべき対象の魔物(どうせいるとは思っていたがやはりいるらしい)を仕留めきれない事が多いようだ。


 俺は鉈のような少し大振りの刀を選んだ。理由は物凄く大雑把だが強そうだったからだ。防具は魔物の革を利用した上下服に鋼鉄のチェストプレートをつけた動きやすいものを選んだ。


 店員にはミスリル銀で出来た魔法の鎧とやらを進められたがそんな目立つもの着て歩きたくないので丁重に断った。最後にこの世界で冒険者になる方法を訪ねてみた。店員のおっさんは少し笑って店の奥の扉を指差した


「この店のすぐ裏が受付です。武具店と冒険者ギルドは大抵連携してますから」


いやはや、これは恥ずかしい……おっさんに礼を言って俺はその扉をくぐる。そこは紙がいっぱいに貼られた壁と受付嬢が座っている机のあるいかにもな場所だった


「あ、ご新規さんの登録ですか?」


 こちらから声をかけるつもりが先手をうたれた。それに顔を一瞬見ただけで新規の客と見分ける等元接客業の人間としては尊敬すべき相手に感じる。


「はい。あ、でも俺かなり遠くの田舎からきた世間知らずでして…色々教えてくれると助かるのですが…」


 受付嬢は垂れていた前髪を耳にかけながら微笑んで

「了解しました。ではまず雇用制度のご説明から入りますね?」

「お願いします」


「はい。雇用の形としては大きく分けて3つあるのですが恐らく貴方様にご紹介出来るものは一つとなります」

「?あ、登録料金的なアレですかね」

「いえ。ギルドでの冒険者登録は基本どの契約でも無料です。ただですねぇ〜……お名前を伺っても宜しいですか?」

「え?……あ〜……佐藤で」


 世界観に合う名前にしようか悩んだが面倒くさいので取り敢えず本名

「はい。サトウですねぇ〜……はいはいはい」

そう言って彼女は机上にあった書類を手に取りパラパラとめくる。

「……はい。紹介出来るご契約はやはり一つですね」

「差し支えなければどういった理由なのか聞いてもいいですかね」


 登録さえ出来るなら何でもいいのだが単純に少し気になったので聞いてみた。

「構いませんよ。まず冒険者という職業は体を使った仕事なので元々血の気の多い……もといお手手を血で汚したような方が登録なさる事も多いんですね?そういった場合の雇用体制として色々と規制が多いものがあるんですよ」


「なるほど。じゃあさっき見てたのはここ最近の逮捕事件の名簿ってとこですか」

「半分正解です〜。もう一つは既に功績のある方の名簿です。元騎士団であったり傭兵だったりですね。そういった有力株には特権のある契約もご紹介できるんです」


「へ〜、そっちなら登録してもらっても俺は構いませんよ」

「ふふ、駄目ですよ。最も一般的な特に規制も特権もない冒険者契約をしましょうねぇ〜」

「……はい」

「素直でいいですね。ではこれに名前を書いてください。それで登録完了です」


「あれ、もうですか?偉く簡単じゃないですか」

「なってはやめて、というか亡くなる方も多いので来るものは拒まないんですよ」

「なる程ね〜…あ、契約の更新とかってあります?」

「一応1年に一度生存確認がありますけど仕事の関係上貴方がここに顔を出す度に勝手に更新されるので何年も篭もるような仕事じゃない限り心配しなくていいですよ」


「へ〜、楽でいいですねぇ〜。っと名前書き終わりました」

「はい。確かに受け取りました。では最後にこちらをどうぞ」


「ん?銅貨?」

「ギルド公認冒険者の証です。頑張ると銀とか金になって特権も貰えるので頑張ってくださいね」

「ん〜、何か買い物とかで間違って使っちまいそうだな…」

「一応先程の登録用紙があれば再発行できますけど有料ですからね」

「あら、そんじゃ気をつけます」

「はい。そんじゃ気をつけて。金の冒険者を産出すると受付嬢にも泊がつくんで、頑張ってください!」


「ははっ、文字通りの金箔って奴ですね」

 受付嬢に手を振り華麗に去る。ここから俺の異世界での大冒険が始まるわけだ。俺は高鳴る胸を抑え、出口の扉に手をかけた。

「……あ…」


 ある要件を思い出し、踵を返して受付へ戻る。

「すんません……仕事紹介してもらっていいですか…」

「んっっっふゅwwは…はい勿論」

 笑いたきゃ笑え小娘。カッコつけたのにすぐ帰ってきた憐れな俺を





「何か悪いですね。付いてきてもらっちゃって」

 仕事紹介の前に行くべきだと俺は受付嬢に連れられ、何処かへ向かっている。


「いえ。これも仕事……でもないんですけど、まぁ暇なので」

 彼女の話では冒険者は専属で受付嬢と契約しているらしい。言われてみれば先程の契約書には彼女の名前が書かれていた。


「仕事の融通を聞かせるのにその冒険者が何を得意とし、何を苦手としているのか。そういった事を理解した人間が中継にいると便利でしょう?」


 ご最もだ。まぁ俺のいた世界にそんな正論は無かったけど。

「はい、ここです」

 そういって彼女が立ち止まった場所はこれまた凡庸ではあるが見事な装飾のあしらわれた教会だった。


「おー、随分と立派な……入るんですか?」

「いえ、内部は特殊な儀礼を経なければいけません。今回の目的はこれです」


 そう言って彼女が指差した先を見る。郵便ポスト……いや、自動販売機か?俺が考え込んでいる合間に彼女はその自動販売機に銅貨を入れ、出てきた紙を破り、こちらに渡す。


「……何ですかこれ?ケツ拭く紙にしては大げさですけど……」

 受け取った紙を裏返したり、陽光にかざすと紙の繊維がうっすらと見える、まぁそれなりに良い紙なんだろう。


「う〜ん、説明が難しいですね……一回返して貰っていいですか」

 俺が紙を返すと彼女はその紙を小さく破って口の中に入れる。なんとびっくりこの紙は食べ物だったのか


「…そんな未開の地でなにかの幼虫を食べる子供を目撃した時みたいな目で見ないでください…」

 そうボヤいて彼女は紙を口から取り出す。

「見えますか?少し赤色に染まっているでしょう?」

 なるほど。確かにほのかな朱色がさしている。虫歯菌の検査用紙か何かなのだろうか


「これは唾液から対象の魔法適性を見抜く優れものなんですよ~。私の場合赤色が少しだけ見えるのと実はここ、ほんの少しだけ青いでしょう?これは私に火の魔法とほんの少しだけ水の魔法の適性があることを表しているんです」


「へ〜、面白いですね。それじゃ俺もやってみます」

 彼女から紙を返してもらいそれを口に含む。ものすごい苦くて吐き出したかったが先程彼女が顔色一つ変えずにこなしていたのを見た手前、俺も必死に耐えて見せた。


「お〜、初めての人は不味すぎてすぐ吐き出しちゃうんですけど凄いですね~」

 ニコニコした顔で俺を見つめる。だがもう限界だ。紙を手のひらに吐き出し色を見る。


「おおっ!!……お?」

 俺の妙な声に首をかしげた受付嬢は俺の手元を覗きこむ

「………白紙ですね」

 口に入れた時間が短かったのだろうか?


「検査用紙は一秒もあれば結果が出るはずなんですけどねぇ…」

 暫く考え込んだ受付嬢だが、不意に「あ」と声を漏らす。その理由を問いてみると驚きの答えが帰ってきた。

「多分ですよ?多分なんですけど貴方、魔法の才能いっっっっさい無いです」


 へ〜〜〜、そんなことある?

「そんなことある?」

「あるんですね。たまげました」


 受付嬢4年目の彼女は少なくとも見たことも聞いた事もないらしい。どんな駄目な奴も多少紙をピンクにするぐらいは出来るそうだ(火の魔法は習得難度が低く、イメージとしてはあやとびと同じくらいっぽい)


「え、じゃあ俺剣オンリーで戦う感じ?」

「……剣の腕に覚えは?」

「……ガキの頃に光って鳴るおもちゃ振り回したくらいですね」

「あ、もう駄目ですね。一生キノコと薬草刈る人生ですよ。これは」



 俺の異世界転生ライフ初日は、才能無い奴は異世界行っても才能無いって事を突きつけられて終わった

こんなノリでやれるとこまでやろうと思います。

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