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第4話 恋愛

 伊達さんとは、そのままお付き合いが続いていた。

 レベルの高い進学校のため、またお互いお小遣いも少ないのでデートは頻繁ではなかったが、それでも色々なところにも出掛けたし、今では一緒に下校もしている。

 付き合い始めてしばらく経ったときに、伊達さんから、

「白藤くんは、私と付き合っていることは学校では秘密にしたい?」

と聞いてきたので

「わざわざ言いふらすこともないけど、隠す必要もないと思ってるよ」

と伝えたら、結局その翌日から一緒に下校するようになった。

という訳で、あっという間に付き合っていることが広まってしまった。

『まぁ、いいんだけどさ』



 そして、夏休みに入ると定番の海に一緒に出掛けた。

「あまり日焼けしたくない」と言っていたのに、海について見ると意外や意外、はしゃぎまわっていた。

 勿論、日焼け対策はバリバリしていた。

 水色の水玉模様のビキニも似合っていて、良い目の保養にもなった。

 そりゃ、思春期の男子だから当然だ。

 彼女は普段は、あまり肌を出さない服装をしているから、尚更嬉しかった。

 夕方になると雰囲気も出てきて、とうとう初キスを交わした。



 そのままお互いの誕生日を祝ったりと、順調にお付き合いが続いていた。

 そうそう、後期では美波も室長に就任していた。

 各クラスの室長が集まる場でも顔を見ることができるようになったのでお互い喜んだ。

 自分は美波と付き合い始めてからも女子から何度か告白されていたが、すべて「美波と付き合っているから」と断った。

 美波も他の男子から何度か告白されていたのだが、律儀に毎回報告してきた。


 実は夏休みが終わったころから何度か、母から聞いていたように美波との将来をイメージしたのだが、途中から妄想になってしまい結婚して子供が生まれるまでしか、どうしても浮かばなかった。

『まだ高校生なんだしな』

とも思ったが、心にブレーキが掛かっているのを感じていた。



 それからも付き合いは続き、冬休みの定番クリスマスイヴの日になっていた。

 当然、当日はデートしプレゼントも交換しあった。

 夜景を見てキスも交わした。

 だが美波の様子に、少し違和感があったので思い切って聞いてみた。

「美波。何かあったの?」

すると

「勇輝くん。そのね……私って、女性として魅力ない?」

と聞いてきたのだ。

「え? なんで? どうして?」

「美波は優しいし温かい。安心できるから、ずっと付き合っているんだよ」

「それに……美人だ。魅力がないなんて、ある訳ないだろう」

と本心を伝えた。

「うん。勇輝くんがね。他の女の子から告白されても全部断っているのも知ってる」

「それに、とても優しいし大切にしてくれてるって感じてる」

「そのね……キスはいっぱいしてくれるのに、でも……それ以上は私を求めてこない」

「だから、私には魅力がないのかなって凄い気になって仕方ないの」

と本心を明かしてきた。

『あぁ。そういうことか。苦しめてしまっていたんだな』

と反省した。

 だから自分の恋愛観を伝えた。

 流石に、例の将来のイメージについては伝えなかったが……

「そっか。そういう理由だったんだね。少しほっとした」

「でも、私は……私はね! 勇輝くんと、もっと仲良くなりたい」

「はしたないって思われちゃうかも知れないけど友達にも、もうとっくにそういう関係になっているって思われてる」

と勇気振り絞って正直に伝えてくれた。

 だから美波を、そっと抱きしめて、

「ありがとう。自分だって思春期の男子だから、そう思うことはある」

「美波のことを、抱きたいって思ったことは数知れないよ」

と正直に答えた。

「だったら!」

と言ってきたので、

「でも、ごめん。理由は、先ほど話した通りなんだ」

「充分、美波は魅力的だし、この先もずっと一緒にいたいって思ってる!」

「そのことは、信じて欲しいんだ」

と言葉を遮った。



 その後は、お互いのためにと駅まで一緒に行き、そこで別れた。

『自分って、やっぱり古い人間なのかな』

『母さんから聞いた恋愛観が、何故かスッと染み込んできて納得しまっている』

『どうしても、イメージがあの先に進まないから、踏ん切りが付かない』

『そのために美波を苦しませてしまったのが、初めて分かった……恋愛って難しいな』

とつくづく実感した。

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