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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
過去と挫折と約束
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呪縛

 ラーシャ達が密猟団から、ルーキスを取り返して1週間が経った。

 ゲオルグに怒られた後、寝不足と疲れているだろうからとラーシャとセルジュはその日は学校を休ませてもらい、次の日から登校したのだが騎士団から学校に今回の事を報告され、校長とフラウにそれはもう物凄く怒られた。

 ゲオルグにもめちゃくちゃ怒られたのにも関わらず学校でも2時間みっちり怒られ結局、罰として1週間放課後に学校の掃除を言い渡された。

 最終日の本日、ラーシャはルーキスに乗せてもらって外側の窓を一生懸命拭いていた。


「おーい、ラーシャ。そこ、まだ汚れてるぞ」

「わかってるよ…っ!見てるなら手伝ってよ!!ソル!ニアも!!」

「だって俺今回仲間外れにされたから関係ねーし」

「私もですわー」


 せっせと掃除するラーシャの後ろでそれぞれベルナデッタとエルの背中に乗って嫌味を言ってくるソルとニア。

 この1週間、二人は今回のルーキスの救出の際に呼んでもらえなかった事に不服だったようでずっと不貞腐れている。

 特にソルはセルジュが何も言ってくれなかったのがショックだったようで、ゲオルグに怒られた後二人が喧嘩したとベルナデッタとニクスから話を聞いた時は、申し訳なさでいっぱいになった。

 今では、仲直りはしたようだが今日みたいに時々チクチク嫌味を言っている。


「ラーシャ、水の替え持ってきた」

「ありがとう!セルジュ」


 ニクスと共にバケツの水を替えて戻ってきたセルジュにラーシャは笑顔でお礼を言う。


「よし、後少しだから頑張ろうね!!」

「あぁ」


 ラーシャから雑巾を受け取り、綺麗に濯ぐとそれを渡しながらセルジュは頷いた。


「早く終わらせて、遊びに行こうぜ」


 ソルの言葉にラーシャとセルジュは頷くと先ほどよりも早く窓を磨く。

 それを見てソルとニアは顔を見合わせて笑う。



 あの後、密猟団がどうなったのかはラーシャは知らない。

 ゼンに聞こうかと思ったのだが、帰ってきたゼンの顔があまりにも怖くて何も聞けなかった。

 ただ、一つわかることは何か良くない事があったのだと言うことだ。

 ルーキスに関わるのはやめとけと釘を刺されたので、ラーシャも気にしないように努めている。




「…終わった!」


 最後の一枚を拭き終わり、ラーシャはやり切ったとルーキスの上に寝転がる。


「お疲れ様ですわ!さぁ、先生に報告して遊びに行きましょう?…今日はソルもセルジュもお手伝い免除だそうですからみんなで新しく出来たお店にケーキを食べに行きましょう!!」

「賛成!!」


 ラーシャはニアの提案に嬉々として同意すると、ルーキスに地上に降ろしてもらい、その後すぐに来たセルジュの腕を引っ張って職員室へと向かう。


「あ、おい!ラーシャ!!バケツ!!」

「片付けといてー!」


 ソルに悪びれる事無くラーシャはそう言うと足早に校舎へと入って行ってしまった。


「マジか…」

「仕方ありませんわ。手分けして早く終わらせましょう」

「だな」


 肩を落とすソルにニアは苦笑すると、雑巾を手にして一緒に水道へと向かう。


 残された四匹の竜はただ、相棒の背中を見送った。


【そういえばルーキスは今度こそ人間を信じる覚悟は決まった?】


 唐突にニクスに尋ねられてルーキスはちょっと嫌そうな顔をした。


【なんだ急に】

【だって、最初契約した時は“もう一回くらい人間と契約してやってもいい”って言ってたけど全然覚悟できてなかったから】

【お前って本当に嫌味な奴だよな】

【失礼だね】


 兄弟喧嘩が始まりそうな空気を感じて、ベルナデッタはため息をつく。


【よせよせ、竜の喧嘩ほど見苦しいものは無い】

【そうですねぇ。仲良しが1番ですよね!…それでルーキスはラーシャと共に夢を叶える覚悟は出来たのですか?】


 エルが質問するとルーキスに視線が集中する。

 ルーキスは一瞬、たじろいだがすぐに持ち直した。


【まぁ、な。ラーシャと約束したしな】

【一緒に世界を巡ろうと言うやつか?】


 ベルナデッタの言葉にルーキスは首を横に振った。


【それもあるけど…まぁ、二個目の約束が俺にとって一番大切なんだ】


 “運命を共にする”

 ラーシャがそう言ってくれたから。

 その言葉がどれだけルーキスの心を軽くしてくれただろう。

 その言葉があるだけで、全力でラーシャの夢を一緒に叶えることが出来る。


【やっとあの子の呪縛から抜けられるんだね】


 ニクスの言葉にルーキスは少し考える、首を横に振った。


【どうだろうな】


 そう言うとルーキスは笑った。


【でも、呪縛と一緒に生きてやってもいいかって思えるくらいには多分抜け出せたんだろうな】


 ルーキスの言葉に三匹が顔を見合わせて、安心したように笑っていると、自分たちの相棒が帰ってきた。


「ルーキス!!行こう!!」

【ああ!】


 ルーキスはラーシャの肩に止まるとその頬に自分の頬を擦り付けた。

 珍しく甘えてきたルーキスに驚くが、すぐにラーシャは笑顔になる。


「これからもよろしくね、ルーキス」

【もちろん】


 その頭を優しく撫でる。

 それからラーシャ達は1週間頑張ったご褒美にケーキを食べに商店街へと繰り出したのだった。

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