厄介な相手
ーーーーーその刹那、
リーダーの男が突然立ち上がり椅子が音を立てて倒れた。
そして、真っ赤な顔して身体を硬直させると腕を大きくガタガタ震わせながら手を首の方に伸ばしていく。
「どうした!?具合でも悪いのか?」
デイルの声が耳に全く入っていない様子で、必死に何かに抵抗しているかのように身体まで震え出した男は叫び出した。
「…や、…やめ…っ!俺が、俺が悪かったから!!言わない!!言わっ、言わない!!ああああああああああああああっ!!ゆる、ゆる、ユユユる、しテっ!!!あああっ、ぐっ…!」
リーダーの男は泣き喚き散らしながら、自らの首を締め出す。
「何やってる!?」
「あ、がっ…!」
首を仰け反らせ、口から涎を垂れ流しながらどんどん己の首を絞める。
ゼンとエルドラが慌ててリーダーの男の腕を両サイドから掴み、首から引き剥がそうとするがその手は人間の力とは思えないくらい力が強く引き離そうとすればする程、首に指が食い込む。
「馬鹿!死ぬ気か!?」
ゼンが怒鳴りながら叫ぶと、男の血走った目と目が合った。
「かひゅ…!た、たす…け…ぐぇっ!」
涙を流し、グルンっと白目を剥くと男はそのままぐにゃりと力を失って膝をつく。
ゼンとエルドラが驚いて手を離せば、その身体はぐしゃりとその場に倒れ込んだ。
「…」
唖然とするゼンをよそに、エルドラは男に屈んで男の首の脈を取る。
しばらくして、エルドラは首を横に振った。
「ダメですね…死んでます」
そう言ってエルドラは、白目を剥いた男の瞼を閉じてやった。
「これは…制約の魔石じゃないね…能力だ…」
デイルがポツリと呟くと、勢いよく扉が開いた。
顔を真っ青にして入ってきたのはフリーラ。
「団長!!大変です!牢に入れていた密猟者たちが自分たちで首を締め出して…!…これはっ…!」
死んだ男を見てフリーラは絶句する。
デイルはため息をついて髪を掻き上げた。
「…全く、これは厄介な相手のようだね…」
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海を航行する貿易船の甲板の上で一人の農緑色の髪を持つ男が鼻歌を歌っていると、突然驚いた顔をして歌をやめた。
それから残念そうな顔をして首を横に振った。
「あーあ…。あれだけ絶対言っちゃダメだって言ったのに」
そう言う声は表情とは別にどこか楽しげだ。
「人間ってすぐ裏切るんだから。まぁ、いいや。竜に復讐するのはまた今度かなぁ…。早く彼女を解放してあげなきゃいけないしね」
「失礼します」
背後から声をかけられ濃緑髪の男が振り返ると、金髪の男が恭しく頭を下げた。
「どうした?」
「明日には風の国に到着するそうです」
「そう!じゃあ準備しなきゃね」
濃緑髪の男の言葉に金髪の男は頷くと、すぐに踵を返して船内へと戻って行く。
「種まきも順調で何よりだね」
そう言って男は再び鼻歌を歌い出した。




