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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
恋と友情と建国祭
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奪う者


 その言葉に、セルジュの一瞬だけ言葉を失うとやがてゆっくりと首を横に振る。

 そして、泣きそうな顔でロベリエに微笑みかけた。


「もしも、ラーシャがいなかったら俺はとっくにこの世にはいなかった」


 そう断言するセルジュをロベリエは、目を見開いて固まる。

 そんな彼女の手から抜け出すと、箱をしっかりと持たせた。

 それでやっと我に返ったロベリエは、何度か瞬きを繰り返す。


「それって一体…」


 ロベリエがそう聞いた瞬間ーーー。



『後、二十分で花火が始まります。竜による飛行の移動はあと、十分までに行ってください。花火の打ち上げの際は、危ないですので飛行はご遠慮下さい』



 花火を告げるアナウンスが街中に響いた。


 花火はラーシャが楽しみにしていたイベントの一つだ。

 早く戻って、一緒に見たい。


 セルジュがアナウンスに気を取られていると、再びロベリエに腕を掴まれた。


「さっきの言葉の意味って…」


 ロベリエの質問にセルジュは、真剣な表情をする。


「そのままの意味だ。俺は子供の頃、一度だけ死のうとした。…それを助けてくれたのはラーシャなんだ」


 そう言って、セルジュは八年前の竜との契約試験の時のことを思い出す。

 リライに試験を妨害され、部屋に閉じ込められたセルジュはそこでリライと口論になり叩き割った鏡のカケラを自分の喉に突きつけ、自殺を図ろうとした。

 それを実際に助けたのは、ラーシャの兄であるゼンだがラーシャがセルジュが助けを求める為に吹いた笛の音を聞いて、助けに来てくれなければあのとき確実に死んでいただろう。


「俺はあの時から、ずっと…いや、その前からか」


 そう言って、ロベリエが見たことの無いくらい優しい笑みをセルジュは浮かべる。

 その笑みを見て、ロベリエの手から力が抜けセルジュを手放した。

胸の中にどろっとしたどす黒いものが湧き上がるのをロベリエは感じた。

祖父が死んで以来、久しぶりだった。


 いつも、そうだ。

 ラーシャは、いつだって自分が心から切望するものを簡単に奪っていく。

 憎い。自分から全てを奪っていく彼女が、心の底から憎い。

 同じ地獄をラーシャにも味合わせてやりたい…!


 ロベリエがギリッと歯を強く噛み締めた瞬間、花火が打ち上がった。

 花火の真っ赤な光がロベリエを鮮烈に浮かび上がらせるのだった。

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