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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
恋と友情と建国祭
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想いを

「ロベリエ…これは…」


 掠れた声で呟き、セルジュはブローチからロベリエに視線を移す。

 セルジュと目が合うと、ロベリエは少し恥ずかしそうに目線を逸らした後、覚悟を決めて視線を合わせた。


「…好きなの。セルジュ、あなたのことが」


 静かに告げるロベリエにセルジュは息を飲む。

 二人の間に冷たい風が、木々を騒めかせながら吹き込んだ。


 ロベリエは風で乱れた髪を整えると、小首を傾げた。


「スノウコルドに行く前の訓練で、私を助けてくれたことがあったの覚えてる?」

「食人花に襲われた時のこと、だよな?」


 セルジュの言葉にロベリエは、嬉しそうに笑うと頷く。


「覚えていてくれたんだ…。嬉しい」


 ロベリエはそう言って高鳴る胸を抑えるように、両の手を押し当てた。


「あの時、人生で初めて他人に助けてもらったの。ほら、私って強いじゃない?」


 冗談ぽくそう言うロベリエは、出会った時の彼女のようでセルジュの胸に懐かしさが込み上げて来る。

 騎士としての経験を積み、自らラーシャと比べているうちに、ロベリエはあまり笑わなくなり難しい表情を多くするようになった。


 今の表情の方が、ずっといい。


 セルジュはそう思ったが、何も言わずに口を閉ざす。

 そんなセルジュに気づかずに、ロベリエは話を続ける。


「だから、助けてもらった時、すごく嬉しかった。…あの日から、セルジュの事を意識するようになったの。騎士団で一生懸命働く姿も、第零騎士団に入るって目標を決めて、自ら厳しい訓練を課す姿も、いつだって冷静で仲間思いで…そんなセルジュから目が離せなくなった」


 そう言うロベリエの頰は紅潮し、緊張からなのか不安からなのか、瞳は揺れていた。


「好きよ、セルジュ…どうか、どうか…!」


 震える声で、そう告げるとロベリエは深く頭を下げる。

 セルジュはそんな彼女を見てから、再びブローチに視線を戻すと蓋を静かに閉じた。


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