一緒に
広場に着くと、多くの人々が集まっていた。
みんな陽気な音楽に合わせて、それぞれ思い思いの振り付けで踊っている。
老若男女、みんな楽しそうに踊っているが、圧倒的に割合を占めているのはおそらく今日成立した恋人達だろう。
お互い踊っている最中に目が合うと、恥ずかしそうに顔を赤らめている。
その光景を、先に来ていたソルが何とも言えない微妙な表情で眺めていた。
「どうした?ソル。変な顔をして」
セルジュがソルの顔を覗き込んで首を傾げる。
するとソルは、踊っている人々を指差した。
「いや、だって、あそこでイチャイチャしながら踊るってる大半が俺たちの同級生だぜ?」
ソルの指摘に、ラーシャ達も踊っている人達をよく見ると顔見知りが大勢いるのに気が付く。
【それがどうした?構わず踊りに行けいいだろう】
ベルナデッタの言葉にソルは顔を引き攣らせた。
「流石に知り合いのカップルがひしめき合うあの中に踊りに行くのは勇気いるって…」
【なら、好きな人と踊ればいいんじゃないですか?ねぇ?】
エルの無邪気な提案に、ソルだけでは無くセルジュまで体を硬直させる。
今ここでそんなこと出来るわけがない。
急に無言になったソル達にラーシャは首を傾げて、ニアの方を見る。
「ソル達はどうしたの?」
「あまりにお気になさらなくて大丈夫ですわ。どうせ踊るかどうか悩んでいらっしゃるだけですわ」
ニコッと笑うニアだが、その笑みが何故か薄寒いものを感じて、ルーキスの方を見るがただ首を横に振るだけで何も教えてくれない。
その時、不意に服の裾を引っ張られた。
それに驚いてラーシャが振り返るとそこには、男の子が顔を真っ赤にして立っていた。
「やっぱりラーシャさんだ!」
そう言う少年にラーシャは、少し戸惑った顔をした後、すぐにパッと顔を輝かせる。
「シズ君ね!それから、相棒のリー。一年見ないうちに大きくなっちゃったから、誰だかわからなかったよ」
一年前、竜の契約試験の際にファイボアに襲われていたのを助けたのだ。
まさか、こんなところで会うとは思わなかった。
予想外の嬉しい再会にラーシャが心から喜んでいると、シズは照れ臭そうに頰を掻く。
「えへへ、僕はすぐにわかりましたよ。ラーシャさんは綺麗な銀髪だから」
シズにそう言われ、ちょっと驚いてからラーシャは柔らかく微笑む。
「そう?嬉しいな。ありがとう」
ラーシャは膝を折って、お礼を言うとシズが恥ずかしそうに目を逸らす。
少しモジモジと体を揺らすシズにラーシャは、首を傾げた。
「どうかした?」
ラーシャの問い掛けに、シズは一度俯き耳まで真っ赤にする。
それから、意を決っして顔をあげてラーシャに手を差し出した。
「あ、あの!もしよかったら、僕と踊ってくれませんか…?」
「「え!?」」
シズの言葉に、ラーシャではなくセルジュとソルが綺麗に声を重ねて驚いきの声を上げた。




