撤収
デイル達の迅速な対応によって密猟者達を一人の死者も出さずに全て捕獲する事ができた。
セルジュも治療を終えて、ラーシャと共にアルボルの涎をアイシャに綺麗に流してもらい、他の団員の相棒の赤竜に服を乾かしてもらう頃には、デイル達が海岸へと戻って来た。
「お疲れ様です!」
フリーラが走ってデイルの元へ行くと報告を始める。
何度かデイルは頷くと、フリーラに指示を出してラーシャ達の元へとやって来た。
「二人とも大丈夫?」
ラーシャとセルジュが頷くのを見てデイルは安心したように笑った。
「ルーキスも無事に戻って来てよかった。…少し説教しようかと思ったんだけど、ゼンがやってくれたみたいだし…セルジュはきっと帰ったらゲオルグがまた怒ってくれるだろうから、やめとこうか」
その言葉に、セルジュは顔を真っ青にしてガクガク震え出す。
「わ、私のせいだし、一緒に怒られるよ…」
【オレが逃げ出したのがそもそもの原因だ。オレも行く】
【そもそもルーキスを一緒に助けて欲しいってお願いしたのは僕だから…】
あまりの震えように、ラーシャ達が声をかけるがセルジュは首を横に振った。
「いや、行くって決めたのは俺だから…」
泣きそうな顔で笑うセルジュにものすごく可哀想で、申し訳ない気持ちになってくる。
ラーシャ達が必死にセルジュを励ましている姿をデイルは笑いを噛み殺して見ている。
「ゲオルグってすごい怖いよね」
そう言ってデイルは咳払いをするとラーシャ達に声をかけた。
「何はともあれ、君たちのおかかで密猟団達を捕らえる事が出来た。それに子竜もみんな無事だ。本当にありがとう」
ラーシャ達は顔を見合わせると、照れくさそうに笑い合う。
「じゃあ、ゼン。ゲオルグに説明よろしくね」
「え!?俺ですか!?団長行かないんですか!?」
「えー、だってゲオルグ怖いじゃん。絶対セルジュとラーシャ巻き込んだから怒られる思うんだよね。だからさ、サクッと怒られて戻って来てね!この後密猟団の取り調べとかやる事たくさんあるんだから」
「えー…俺もゲオルグさん怖いんですけど…」
「じゃあ、任せたよ!…撤収!!」
デイルは強制的に話を切り上げ、ポンポンとゼンの肩を叩くと、騎士団達に撤収を呼びかける。
他の団員達はゼンを憐れんだ目で見ると、慰めるように肩をトンっと叩いてから自分の竜に乗って飛び去って行く。
団員達が去って行くのを見送っていると、空が白んできた。
「夜明けだ…」
ラーシャがポツリと呟いた。
少し前までの死闘が嘘のように静かでまるで、夢だったんじゃないかと錯覚させるが海に浮かぶ貨物船が夢じゃない事を物語っていた。
「あの船どうするんだろ…」
【この後ひと段落したら、騎士団が回収しにくるのよ。ほら、ゼン!ラーシャ達を早く家に連れて帰ってあげないと!!呆然としてないで行くわよ!】
アイシャがゼンの頭に噛みつきながら、急かすとゼンはその場にしゃがみ込んだ。
「やだー!行きたくない!!めっちゃ怒られんじゃん!ゲオルグさん怖いんだよっ!マジで…!!」
【小さい子じゃないんだから!ほら立ちなさい!!】
すごい駄々をこねるゼンを見て、内心ラーシャ達は心の中で平謝りをするが、ゼンが居てくれてよかったと思っている。
ゼンが居れば怒りの矛先が少しでもそちらに行くのではと少しだけ期待してしまう。
その後、何とか嫌がるゼンを説得して先にセルジュを送ったのだが、案の定ゲオルグが玄関の前で仁王立ちで待っていた。
その脇には何故かメソメソと泣いているソルもいた。
ゲオルグの話だと、セルジュを行かせた責任で物凄く怒られたらしい。
それからラーシャ達はゲオルグの工房に連れて行かれると小一時間ほどみっちり怒られる羽目となったのだった。




