特別な日
ラーシャがセイラから解放されたのは、待ち合わせギリギリだった。
急いで、ルーキスに飛び乗るラーシャの背に向かってセイラが声を掛ける。
「気をつけてね!髪型崩れちゃうからあんまり激しく動かないようにっ!」
セイラがそう言っている側から、ラーシャはコクコクと激しく首を縦に振った。
「わかってるよ!じゃあ、行ってきまーすっ!!!!」
ラーシャの声と共にルーキスは力強く地面を蹴り上げると一気に飛翔して、待ち合わせ場所に向かって飛んでいく。
そんなラーシャ達を見て、セイラは苦笑する。
「本当にわかってるのかしらね?せめてみんなの元に行くまでは髪型持って欲しいんだけど」
「大丈夫よ。もし崩れたとしても、ラーシャの魅力が無くなるわけじゃないもの。ふふ、お茶でも飲みましょう?」
一緒に見送っていたシューリカはそう言うと、ハクレンを引き連れて先に家の中へと戻って行く。
セイラもその後に続こうとして、立ち止まるともう一度、ラーシャ達が消えて行った空を見上げる。
【セイラ、どうかしたんか?】
「ううん。ただ、ラーシャにとって今日がすごく特別な日になるんだろうなって思ったら感慨深くて」
セイラの言葉に、ドルフは納得したように頷いた。
【ラーシャはそういうところ疎いからな。普通ならもう少しセルジュ達の気持ちを察してもいいとは思うがなぁ…】
「まぁね。でも、それもラーシャの魅力の一つでもあるんだけどね」
セイラはそう言うと、ドルフと共にシューリカとハクレンが待つ家の中へと戻って行った。
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ラーシャは広い開けた場所で、ルーキスから降りると待ち合わせ場所まで小走りで進む。
【おい、ラーシャ。セイラにあんまり激しく動くなって言われてるのに大丈夫か?】
体を小さくして隣を飛ぶルーキスの言葉にラーシャは、ため息をついた。
「ダメだけど、時間がないからしょうがないでしょ?毎回、遅いって怒られるんだから…っ!」
息を乱しながら集合場所に到着すると、周囲を見回す。
祭なだけあっていつもより人が多く、なかなか見つけられない。
【ラーシャ、あそこにいるぞ】
ニクスの気配を察したルーキスが、いち早く見つけて教えてくれるとすぐにラーシャは駆け出す。
走り出して、すぐにセルジュ達を見つけた。
もうすでに全員集まっている。
「ごめん!遅くなった…!!」
背を向けているセルジュ達にラーシャは到着すると開口一番に謝る。
「いつものことだから気にするなって…」
振り向いたソルは、そこで言葉を飲み込んで固まった。




