もう二度と
やっと、全て終わった…!!!!長かった、本当に…っ!
歓声を聞いて安堵と共に緊張から解放されたラーシャは、身体が力抜けそのまま後ろに身体が引っ張られた。
崩れ落ちる前に、セルジュとソルがラーシャの身体を抱き止めた。
「あと少しだ」
「そうだぜ?ここで倒れたらカッコつかないだろ?」
セルジュとソルに励まされ、ラーシャは涙目で頷くと震える足に鞭を打って再び一人で立ち上がる。
それから深く頭を下げると、両サイドにいるセルジュとソルの手を掴む。
何をやるのか気づいたニアは、ベイン達に視線を送り、自分たちも手を繋ぎ一列に並ぶと全員で手を上げた。
「「「「ありがとうございました!」」」」
ラーシャ達が一斉に頭を下げる。
その瞬間、ワッと歓声と拍手がさらに大きくなりラーシャの身体にブワッと鳥肌が一気に立つ。
嬉しすぎて鳥肌が立つとは、思わなかった。
ラーシャが感動に震えていると、ニクスの闇が再び、舞台を覆い隠した。
闇の向こうで、いまだに拍手が聞こえてくる。
「やりましたわねっ!!うまくいきましたっ!」
「おわっ!ちょっ…!!!」
ニアがそう言ってラーシャに飛びつくと、そのまま二人は舞台の上に倒れ込んでずぶ濡れになる。
それでも、ニアは興奮が止まらず頬を染めて笑っていた。
「頑張った甲斐がありましたわっ!日が出るタイミングもバッチリでしたし、歴史に残りますわ!」
「そうだね!…でも、演出だってわかっていてもみんなの攻撃怖かった!!本当に当たるかと思って内心震えてたよ!」
ラーシャはソルに引っ張ってもらいながら立ち上がると、身体を震わせた。
騎士での仕事ならよくあるが、無防備のまま竜の攻撃に晒されることなど、そうそう無い。
【本気で炎を放ったからな。どうだ?余の炎は夜によく映えて美しかろう?】
「見てる余裕ねぇよ」
ソルが引き攣った声でそう言うとベルナデッタはムッとした表情をする。
【貴様に言っているのでは、無い!ラーシャに言ってあるのだ!この愚か者め!】
そう言ってベルナデッタはソルの頭をカジカジと噛み付いた。
「ニクス達の息も昨日の予行練習よりもピッタリですごかったな」
セルジュがそう言えば、ニクスは苦笑する。
【最初は息が合わなすぎてどうしようかと思ったけどね】
【なにせ、竜はみんな我が強いからな。自分が目立とうと大きな技を放ちたがる】
ルーキスが肩を竦めると、エルもニコニコと頷く。
【ええ、ええ!こんな目立つ晴れ舞台ありませんからねぇ!全力で雷を撃たせていただきましたっ!!!楽しかったですねぇ…!もう一回やります?】
【【「「もうやらないっ!!」」】】
エルの提案にその場にいる全員が声を揃えて拒否した。
達成感もあり、最高だった。けれど、もうあんな大変な思いは二度と御免である。




