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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
恋と友情と建国祭
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どんなに頑張ったって

「今日、一年近く交渉していた結構大きな商談が成立したんだ」


 ポツリと話すフォルテに、ベインは目を丸くする。


「すごいじゃん!おめでとう。…でもなんで、そんな嬉しそうじゃないんだ?」


 首を傾げるベインにフォルテは、憎々しそうな表情をして麦酒を一気に口の中へと流し込むと、グイッと袖で口を拭う。


「その商談の手柄を弟のロアンに取られた」


 フォルテの告白にベインは言葉を失った。

 自嘲気味にフォルテは笑うと、空になったジョッキを、爪が白くなるほど両の手で握りしめる。


「契約の締結をすると言ったら、ロアンが着いてくると言い張るし、親父も連れてけって言うから、許可したら案の定これだよ」


 その時のことを思い出すと、今だに腹が立つ。

 愛想が良く、口が上手いロアンは契約の場に来ただけで取引先の心を掴んだ。

 その結果、契約書にはフォルテではなくロアンの名前が記されることになった。


 ここまで、漕ぎつげるのにどれだけ努力したと思ってるんだ。

 この契約さえ取れれば家族に認めてもらえる。

 そう思って頑張ったのに。


「結局、俺が頑張ったところで何も意味がないんだ。どんなに努力したって結局最期は全て奪われて虐げられる…!!!俺が何をしたって言うんだっ!」


 ギリッと奥歯を噛み締め、絞り出すように唸るフォルテ。

 それを心配するように、ラソがスリっとフォルテの腕に頰を擦り寄せた。


【そんな事ないよ。ボクはちゃんと、フォルテの努力している姿見てるよ?】


 ニコッと笑うラソに、ツンッと喉の奥が痛み出してフォルテは顔を背ける。


「ラソの言う通りだ。フォルテ、お前の努力は俺だってちゃんと知ってるし、ダルテだってわかってる」


 学校を卒業してから、自分を嫌う父親の会社に入り、他の社員に馬鹿にされながらも懸命に結果を出し続けてたフォルテをベインは知っている。

 あの、傲慢でプライドが高いフォルテが、だ。

 その忍耐力は、計り知れない。


 ベインは心の底から、そう言うと店主が持ってきた麦酒をフォルテに差し出す。


「だけどさ、頑張りすぎるとそのうち疲れるからな。またこうやって一緒に飲みにきてストレス発散しようぜ?」


 そう提案するベインから麦酒を受け取ると、フォルテは首を横に振った。


「俺の行動は親父に制限されてる。今日だって、父親の目を掻い潜って飲みにきてるんだ。お前みたいに頻繁には来れねぇよ」


 そう言って寂しそうな顔をするフォルテを見て、ベインも胸がチクリと痛み出す。

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