言い訳なんて
「追いかけないのか?」
リーツェのその言葉で、ベルの凍り付いていた身体が動き出す。
ベルは何度が瞬きを繰り返した後、ゆっくりリーツェに視線を合わせる。
「私は…」
ベルはそう呟いて、黙り込む。
ジルヴァが自分に劣等感を抱いているのは、知っていた。
方や竜の国の騎士の頂点に立ち、方や竜の国随一の腕を誇る騎士たちを集めた第零騎士団
に所属しているにも関わらず、能力を持たない。
そんな二人が交際をしていたら、周りから比べられ、陰口を叩かれないわけがないのはベルにだってわかっていた。
だけど、そんな事は関係ない。
お互いが惹かれあって愛し合えば、他人からどう思われようがそんなものはどうだっていい。
そうベルはずっと思っていたし、ジルヴァ本人にも伝えた事がある。
そして、その時のことを思い出して眉を顰めた。
それをきっかけに一度だけ、ジルヴァと喧嘩したのだ。
『優秀で人望の厚い君には、君より全てが劣っていて卑下される対象の俺の気持ちなんてわかるはずがない』
ジルヴァにそう言われた瞬間、頭に来たし、正直傷付いた。
でも、本当に傷付いているのはジルヴァだ。
地位も名誉も手に入ったからこそ“他人なんて関係ない”と言えるのであって、ジルヴァと同じ立場だったら?
…一緒にいるのが辛くなるかもしれない。
それなのに、今の彼を追い掛けてもいいのだろうか。
余計苦しめるだけかもしれない。
もう少し時間を空けてから…。
「お前、言い訳ばっかり思い浮かべてるだろう?」「…っ」
心の中を見透かされ、ベルは言葉に詰まらせる。
そんな彼女を見て、リーツェは呆れたような顔をした。
「言い訳なんか考えてる場合じゃないだろう?」
「そ、そんなこと…!それに今は陛下の警護中ですから」
そうだ。ジルヴァを追い掛ける、追い掛けないの前に今は仕事中でそんな事をしている場合じゃない。
ベルが一人納得して頷く。
「あたしを言い訳にするんじゃない」
リーツェの冷たい声にベルはビクッと肩を震わせた。
「今追いかけないと、取り返しのつかない事になる。ジルヴァの事が本当に好きなら今すぐ追い掛けるべきだ。…そうだろ?」




